2005年8月30日 【秋田県】
昨日見学に行った喜久水酒造の喜一郎さんオススメのうどん屋『山彦庵』を、さんざん迷った末に住宅地でようやく発見した。
うおおおおおおお!!!!
これは美味い!!!
マジうまい。
まじで。
マジデ。
かなりわかりにくいとこにあるから発見できたらラッキーだね。
さあああああてええええええええええええ!!!
ついに攻め込むぞ男鹿半島!!!!!
男鹿半島といえばあいつらだ!!!
雪の夜に蓑を着て歩くやつら!!!
なまはげ!!!!
あいつらは一体何者なんだ!!!
出刃包丁持って怒鳴り込んでくるなんて押し入り強盗だ!!!
日本屈指の変な風習、なまはげ。
とうとうここまで来たぞ!!!
男鹿半島に向かう途中も色々あるので見逃さないように下っていこう。
船越を抜けてから海岸線を走り、まずは赤神神社五社堂へ。
駐車場から999段の石段を登るのだが、なんでもこの石段は鬼が作ったものらしい。
この近辺にいた暴れんぼうの鬼があんまり悪さを続けるもんやから人間が交渉をしたそうな。
『一夜のうちに1000段の石段を作ったら儂たちゃもう文句は言わん。しかし出来んかったら大人しく山に帰れ。』
お茶の子サイサイと石を積み上げていく鬼。
みるみるうちに999段まで積み上げてしまった。
やばい!!
そこにモノマネの上手な村人登場!!
『コケコッコー!!』
ニワトリの鳴き声を真似ると、朝が来てしまったと勘違いした鬼。
しぶしぶ山に帰っていったという。
人間ズルい。
その階段を登り終えてたどり着いた境内には、5つの立派な社殿が横に並んでいてなんとも珍しい光景だった。
ゴジラ岩という奇岩を無視して男鹿半島の先っちょの入道崎へ。
丘の上で焼き海苔を売っていたおばちゃんとおしゃべりして、よっしゃ!!!
いざナマハゲに会いにいくぞ!!!
勇んでやってきたのは男鹿半島のメイン、なまはげ館。
なまはげとは石段を作った鬼か、修験道の行者か、はたまた異人の姿を模したものか。
諸説あるが鬼の説が有力なようだ。
そんななまはげとは一体どんなモノなのか?
やつらが登場するのは12月31日。
夜の18時くらいから23時半くらいまで、自分とこの町内の家を1軒1軒回っていく。
基本は未婚の男がやるのだが、最近では若者が少ないので結婚してるおじさんもかり出されているとのこと。
なまはげ一行は3人組。
まず先立という普通の格好の人が、なまはげですけどいいですか?と家主に許可をもらう。
意外と礼儀正しい。
その年に不幸のあった家には入れないという決まりもあるらしく、実は気遣いできるなまはげさん。
それぞれの家では酒を振舞われるもんだから次々にノックダウンして何人も中の人が代わる。
女性は家で待っているのだが、おかげで何十年も紅白を一緒に見たことがないという。
のんびり家で年越し、というわけにはいかないのが男鹿の男たちの宿命というわけだ。
半島のそれぞれの地区でこの行事は行われており、地区ごとにお面も装束も少しずつ違う。
このなまはげ館には60地区のお面が展示されておりかなりの迫力だ。
暗い雪の夜道をシャクシャクと歩いていくなまはげの姿に人の生活の儚さを見るようだ。
すぐ隣にある伝承館は、東北ならではの萱葺きの曲がり屋を改修したもの。
ここではなまはげの実演を見ることが出来るみたいで、ワクワクしながら館内に入る。
ここでお待ちくださいと言われ、座布団に座る。
広い室内。
真ん中にぽつんと俺1人。
えーーーーっと……………
俺1人かよ……………
と思っていたらいきなり来た!!!!
バタン!!
ガラガラ!!!
ドダドダ!!!!
「ヴオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!泣く子はいねええがあああああああ!!!!」
2人のなまはげがマジで本気でぶっ壊れそうな勢いで障子戸を開けて入ってきた!!
ぶ、ブランカ!?!?
床が抜ける!!ってくらい暴れまわって酒飲んで餅もらって家主に説教する。
「どらどら?なまはげ帳面を見るどだな、息子はテレビばがり見で勉強も手伝いもしね?嫁は毎晩カラオケ!?うおおおおおおおおおおおお!!!!!出でこねがああああああああああああああああ!!!!!」
よ、嫁、可哀想!!!
家の中のこと晒されて可哀想!!!
いやぁ、でも微笑ましい。
前もって近所の人とかにリサーチして調べて来ているのか、いやそれとも田舎だからみんなそれぞれのことある程度知ってるんだろうな。
まぁこんなんがいきなり家に入ってきて暴れまくったらそりゃ子供泣くわ。
トラウマになるよ。
こんな恐ろしい行事だけど、ずーーーっと昔から続いているんだから地元の人たちにとっては大切な大切な行儀なんだろうな。
泣かされた子供も、いつか大人になって自分がなまはげになって、次の世代の子供たちを泣かして回る。
風習って面白いなぁ。
東北の夜の闇に、なまはげの雪を踏む音が聞こえる。
なまはげに大満足で車に乗り込み、八郎潟の一大稲作地帯の中を走りぬけていく。
八郎潟はかつては琵琶湖に次ぐ面積を持った湖だったのだが、戦後の食料難で農地拡大のため干拓。
水が抜かれ、一大稲作地帯が作り上げられた。
夕闇に浮かぶ干拓地らしい一直線の道。
規則的に並ぶ家。
直角に延びる川はまるで、外国の風景のように幻想的だった。
夜になり、県庁所在地の秋田市内に到着し、銭湯『星の湯』に入って路上にやってきた。
繁華街の川反通りは街の中を貫く旭川の川端にひしめくネオン街。
まるで京都の四条河原みたいに風情がある。
早速、NKビルってとこの前に陣取ってギターを鳴らした。
「ばっぺけっぱ!!ばっぺけっぱ!!これ全国行っで広めでな!!」
ばっぺけっぱばっぺけっぱと踊りながら消えて行った兄さんたち。
どういう意味?
秋田いいなぁ。
どこか昭和の匂い漂う懐かしい街だ。
今日は9000円でフィニッシュ。
翌日。
さぁ、秋田市を回っていくぞー。
秋田といえば竿燈祭り。
いくつもの提灯をぶらさげた巨大な竿を見事なバランスで持ち上げるあれだ。
残念ながら8月上旬のお祭りなので、すでに終わっており見ることはできなかったが、市内にある民俗芸能伝承館で実物を見学することができる。
ぬおおおおお!!!!
でけぇ!!
竿燈でけぇよ。
年齢によって4段階のサイズあり、大人の持つ『大若』は提灯46個で重さ50キロ、長さは12メートルもある。
祭り風景の写真を見ると、これにさらに飾りをつけ、継ぎ竹を繋いで長くしたものを、おでこに乗っけたり、手のひらに乗せたりしている。
大物が釣れたときの釣竿のように、『つ』の字にしなって、どうやってバランスをとってるのかわからない状態になってるけど、それが上手いこと支えられてるんだからすごい。
竿が腰から伸びてるぞ?
重力がどういうことになってるのか不思議だ。
竿燈とはもともと、ねぶたと同じく『ねむりながし』の行事の延長。
怠け心や睡魔を、燈籠や短冊に乗せて川に流すという七夕行事のことだ。
1780年ころに原型ができたといわれるこの竿燈は、今や演技披露で世界中を飛び回る人気振りらしい。
アメリカとか、色んな国でやってる。
というわけで、国境を越えて人々を魅了する伝統の技に俺もチャレンジしてみることに。
係員のサポートのもと、まずは15キロの『小若』に挑戦。
うん、鳶の現場でいつも5メートルの単管を持ってた俺にはなんてことない。
小若が持てたら、という約束どおり、次に30キロの『中若』を持たせてもらう。
う…………重い…………
30キロという重量はそこまで大したものではないんだけど、こんな長いものをバランス取って持ち上げるというのがかなり難しい。
それでこいつをおでこに?
できるか!!
するとそこに、1人のおだやかそうな初老のおじさんがやってきた。
「ちょっとやってみましょうか?」
そういって50キロの『大若』に手をかけたおっさん。
いやいや、おじさん。
23歳の俺が中若で苦戦してるのに、そんな大若とか絶対無理だからやめといたほうがいいって。
気持ちはわかるけどそんなの持ち上げて腰とか首とかやっちゃったら大変っていうか死んじゃうからやめといたほ、ウォウ!!!!!
ヒョイッと『大若』を持ち上げるおじさん!!!
スルスルと掌、肩、おでこ、腰と次々と技をこなしていく。
ハ、ハンパじゃねぇ!!!!
秋田のおっさんはみんなこんな達人ばっかりなのか!!!!
「ムチウチとかみんなやってますよ。僕も長年やりすぎで肩から腕が痺れてますからねー。足に落としたり関節痛めたり、まぁ体張ってますよ。ハッハッハ!!」
『力4分の技6分』っていうらしく、小学生で大若をピタリとキメる奴もいれば、祭り中にひっくり返して観客に怪我させる大人ももちろんいる。
幼稚園生から竿燈を持たされるっていうんだから、そりゃもうエリートだ。
こりゃあ秋田っ子の誇りだわ。
上の部屋でお茶でも飲んでかないかい?と誘ってくれるおじさん。
一体何者なのか気になったが、今日はこれから蔵見学のアポを入れている。
またいつかお邪魔しますと言って玄関を出ようとすると、受付の女の人が声をかけてきた。
「ちょっとお兄さん!!あの人この業界じゃかなり偉い人なんだスよー。あの人が上げるところなんて滅多に見られないんだスがらー。ラッキーだスぅー。」
そうなんや!!!
いやー、俺ラッキーだスぅー。
久保田城跡は秋田藩主、佐竹氏の居城だった城址だが、現在は公園として開放されているだけで特になく、先へ進む。
海岸線を南下、亀田の城下町へ。
秋田には久保田藩ともう1つ亀田藩があり、町並みも昔ながらの面影を残している。
亀田城もいいが、ここのメインは『天鷲村』というテーマパーク。
ここはいい。
まず入場無料。
場内には東北らしい萱葺きの豪壮な家屋が再現されており、かなり見ごたえがある。
ぜんまい織りというぜんまいの綿毛を横糸に織りこむ、亀田の織物の実演もやっていた。
毛玉から糸を撚るおばちゃんのすげぇ早くてリズミカルな手つき。
熟練ってこういうののことをいうんだなぁ。
その横の屋敷では、藩のお抱え鍛冶だった鎌田家の現当主による精錬が見られるはずなのだが、当主のじいちゃん、ウトウトしていてなんか申し訳なくて声かけられず。
疲れてんだろな。
お爺ちゃんになっても当主やってて大変だ。
いやー、ここは秋田の風俗を学ぶにはとてもいい場所だったな。
秋田の海岸沿いでここは外せない観光地だ。
能代の喜久水酒造の跡取り、喜一郎さんイチオシ蔵『由利正宗』の齋彌酒造店にやってきた。
(やっとここから写真復活…………)
この蔵のウリはオーガニック酒。
有機栽培のお米、吟の精を自社精米、さらに蔵付き酵母で仕込んでいく。
その間、手を石鹸で洗っちゃいけないし、服の洗濯も洗剤でなく熱湯消毒のみ。
昔ながらの地道な作業を貫く徹底した姿勢は、有機農産物加工食品生産工場の認定という酒造業界初の快挙という形で評価された。
他にも、酵母の自然な動きをさまたげないためにと、もろみに櫂を入れなかったり、山廃が得意だったりと、とにかく徹底している。
自然の節理を理解し、手をかけすぎず、サポートするだけという信念に自信と情熱を感じる。
40パーセント以上の精米歩合でないと大吟醸とはいわないです、というこだわりの大吟を試飲させてもらった。
山田錦のストレートなフルーツ味に山内杜氏の醸す旨みが広がる。
古酒のような香りと味に自然の力強さを感じる。
これはうまい!!
「有名蔵みだいな手に入りにぐいプレミア酒なんでなりだぐないだス。身近で親しまれる酒でいだいッス。」
案内してくださった総務部長の佐藤さんの、快活で的確な説明も心地よい。
酒に酔い、人に酔う。
いい蔵だ。
感服。
今日は県の南端、象潟町の道の駅でストップ。
あー!!
イチャイチャしたいよー!!美香ー!!
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