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へそ祭りの夜に富良野出発







リアルタイムの双子との日常はこちらから






2005年 7月28日 【北海道一周】




急遽滞在を延ばした富良野。


1週間山田親方のところでバイトさせてもらうことになり、久しぶりの大工仕事でいい汗をかき、無事最後の日の仕事を終えたのが昨日だった。


俺が旅の資金を少しでも多く貯められるように、ご飯をご馳走してくれたり、飲み物をおごってくれたり、本当に山田親方は最初から最後まで俺のことを気遣ってくれた。



そしてバイト終わりに給料をいただく。


あれ?


6000円も多い。



「ユウキにも餞別あげたからな。まぁとっといてくれや。」



マジか…………


色々大変ななか、本当に本当にありがとうございます。









それから山田親方と一緒に旅人バスに様子を見に行ってみると、佐藤さんが宿泊する旅人のために鍋やフライパンなどを持ってきてくれていた。


それらを並べる棚が欲しいと思っていたら、山田親方がそこら辺にあった木を使って一瞬のうちにカッチョイイ棚を作ってくれた。


大工さんってほんとすごいわ。








16時に富良野の駅前商店街に行くと、すでに通りはホコテンになっており、たくさんの飾り付けがいつもの道を様変わりさせていた。


富良野で1番のお祭り、北海へそ祭りだ。



道路にはたくさんの人たちが出ていて、歩道の前列はガムテープで場所取りのレジャーシートが隙間なく貼られ、まるでパッチワーク状態。


へー、こんなに競争率激しいんだな。




「フミタケ!!久しぶりー!!」



その時誰かの声がした。


え?誰だ?


振りかえると人ごみの中から見覚えのある顔が歩いてきた。



マヤだ!!


去年、富良野にやってきたその日にユウキと飲みに出て、スナックで知り合い、その晩一緒にラーメン食べた女の子だった。


それからほとんど交流もないまま1年経ち、出発の前日にまた再会するなんてな。


思えば富良野で最初に出来た知り合いだった。







しばらくすると、道路にたくさんの小さな子供たちが出てきた。


まずは子供ヘソ踊りだ。









みんなそれぞれの衣装に小さな身をつつみ、始まりの合図を待ちわびてそわそわしている。


柔らかそうなお腹に描かれたかわいらしい顔の絵。



「イージャナイカー、イージャナイカー、イーイージャナーイカ♪」



「そーれぇぇぇー!!」



「えいやぁぁぁー!!」













ユニークな歌詞の音頭に合わせ、めちゃくちゃだけど、はちきれんばかりに元気に踊る子供たち。


富良野にもこれだけの幼稚園生がいるんだな。


過疎に脅かされる町にとって、子供の元気な姿はなにものにも替えがたい宝だ。













子供ヘソ踊りが終わり、御輿の渡御やなんやかんやをはさんで19時。


いよいよメインの北海ヘソ踊りが始まった。


富良野は北海道の緯度・経度の中心地ということで『ヘソの町』をキャッチコピーとしていて、日本の中心である兵庫県西脇市と姉妹都市を結んでいる。


今年で37回目を迎えるヘソ祭り。

今では北海道屈指の名物お祭りだ。














通りにズラリと並んだ変な人たち。


笠を深くかぶり、腰に浴衣を着て、お腹を顔にみたてている。



お腹に描かれる個性的な表情をした顔の絵のことを図腹と言って、普段はカミさんや子供に虐げられているヒキガエルのようなお腹も、この日だけは汚名返上、膨れていればいるほど立派な図腹となる。







生演奏のヘソ音頭が富良野の町に鳴り渡ると、威勢のいい掛け声と共に図腹のパレードが商店街を練り歩く。


そのユニークな風体に、歩道につめかけた人たちは笑いながら見入っている。





これで1年を通し、富良野のイベントはすべて見たことになった。


最後にこの遊び心あるお祭りを見て、郷土愛に溢れた富良野の人たちの優しさを感じることができた。



本当に、なんていい町なんだろう。


地元以外でこんなにも暮らしたいと思える場所ができるなんてな。




















お祭りを見終わって中田さんちへ。


ヒロちゃんの髪がほんのり赤くなっているのは、祭りに向けてゆうべおばちゃんにブリーチしてもらったから。



土曜丑の日ということでみんなでウナギを食べ、おじさんと酒を飲む。




これが、今夜が、本当に本当に最後の晩餐。


滞在1年のうちに何日ご飯をご馳走になっただろう。



山田親方のところでお手伝いしていたときは作業服に木屑をつけてやってきて、新プリンスホテルの時はバリバリに固めた七三頭に雪を積もらせて。


帰るときには玄関のドアに氷の結晶が模様を作ってたっけ。



ファントムのフロントガラスが凍りついておばちゃんに手伝ってもらって氷を削り落として、長靴が埋まるくらいの深雪で。


雪が音を吸収するから町全体が静まり返っていて…………




ユウキが帰ってからは1人、北さんの農家に手伝いに行き、帰りにアスパラをもらっては千石食堂で茹でて食べさせてもらって。



濃い1年だったなぁ。


四季がはっきりしすぎているおかげか、どの季節も思い出深くて、まるで3~4年いたかのように感じる。



明日も祭りでよかった。


喧騒に紛れて町を出ることができそうだ。


でなきゃ、また1日、また1日と延ばしてしまいそうな気がする。




明日、出発だ。
















そして出発の日。







朝イチ、川渕さんの家にやってきた。


家にいないので、俺とユウキが住んでいた山部ハウスに行ってみた。


裏の畑で1人作業していたおばちゃん。


今、貸家にはおばちゃんの娘さんが住んでいる。




家の中を見せてもらった。


俺たちが住んでいた時とは大違いで、隅々まできれいに整理整頓されていて、タンスの部屋は寺子屋教室となり、長机が並んでいた。


九州で生まれ育った俺が、北海道の奥地、富良野のはずれの山部って地区のさらに奥まったとこにある民家で10ヵ月も生活するなんてな。


極寒の地での驚きと発見の毎日。


そう考えると、リアル北の国からだったよな。











川渕さんにお礼と別れを告げ、それから歌謡喫茶『チェリー』の島さんのとこへ。



「おー、まだいたのかい。あ、ちょうどよかった。今日祭りで歌っていかないかい?」



もうこうなりゃ何でもやってやる。




夕方から歌う約束をして旅人バスへ向かう。


バスに着くと、佐藤さんが1人で窓に網戸を取り付けていた。



「さっきライダー来てな。今夜泊まっていくって言ってたべ。ドラム缶で風呂でも作ってやらねぇとなぁ。」



バスの壁にはチョコチョコではあるが、泊まっていった旅人たちの旅情報が増えている。


これからもっともっといい情報交換所に成長していって欲しいな。











へそ祭り開場に着いたころには、もうひどいどしゃ降りだった。


おかげでまったく人がいない。


こんな中で歌うのか?と一瞬思ったけど、全力でやらんと島さんに失礼だと気合いを入れてステージに上がって3曲歌った。


目の前のイスの列は雨ざらしなのでもちろん誰もおらず、離れたところの屋根の下からみんな見ている。




そんな中、傘をさして正面まで来てくれ、聴いてくれている人がいた。



山田親方とカッちゃんだ…………


ブラストジェイルの磯江さんも松永さんもいる。



1年前、角にあるデパートの前の路上で歌ったあの時の光景がよみがえる。



あの時はまだ富良野に知り合いはほとんどいなかった。


それが今じゃこんなにも友達がたくさんいる。




ステージを降りるとラジオ富良野のスタッフさんに声をかけられ、スタジオで軽く喋ってから、旭川のボーダフォンショップに直ったケータイを取りに行った。













富良野に戻った頃にはもう空は真っ暗だった。


雨は相変わらず降り続いているが、祭囃子は一層熱を帯びて町に響き渡っている。


びしょ濡れになり踊り狂う人たち。

お腹に描かれた図腹もドロドロに滲んでしまっている。




祭りの喧騒に紛れ、そっと離れようとすると、俺の名前を呼ぶ声。



「ヘイ!!ジョー!!ハウアーユー?」



山部の桜祭りで仲良くなって一緒にジンギスカン食べた英会話教師のポールだった。



「ふみたけー!!」



浴衣姿のみゆきさんもいた。



「金丸さんじゃないっすか!!」



ロックバンド『ケチャップ』のタクヤ君。



みんな、みんな、ほんとに楽しかったよ。

ありがとう。








千石食堂で富良野最後の食事を食べた。


楽しいおじちゃんときびきびしたおばちゃん、そして富良野のマドンナお婆ちゃん。


一瞬で虜になって通いつめた1年。


最後のカツ丼が涙が出るほどうまい。



「ほら、ガソリン代だ。お前にやるんじゃないぞ!!車にやるんだ!!」



「はい金丸君。お菓子食べてね。」



泣きそうになりながら店を出た。


みんな、どうか元気で。





 






最後に中田さんちへ。

何気ない会話をしつつ、ついに出発の時が来た。



「それじゃあ。」



「…………もう、早く行って!!…………う………うう………」






おばちゃんの瞳の中に涙が溢れている。


意外にニコニコしてるヒロちゃんが手紙を渡してくる。



「行ってくるねー!!」



「行ってらっしゃーい!!」



坂を下りながらバックミラーを見ると、ずっと家の前で手を振っているおばちゃんたちが見える。


もう明日から中田さんに会えない。


山田親方にも総島さんにもたくさんの友達にも。






そして中田さんにメールを送った。



『預かってたもの自転車のカゴに入れといたから。』



出会ってすぐ、車が壊れた時にもらったあの5万円と、この前貯金箱ごともらった5万円の合わせて10万。


あれから1円も手をつけずに保管していていた。


さっき出発前にこっそり車庫の自転車のカゴに入れておいた。



アレは使えないよ。


たくさん甘えさせてもらったけど、ここだけは甘えられなかった。


今頃カゴを見ておばちゃん泣いてるだろうな。









通り過ぎる、見慣れた景色に食い止められてなかなかスピードが出せない。


ゆっくりとバックミラーに消えていく町並み。


後ろ髪を引かれすぎて振り返ることすらできない。




富良野、また必ず戻ってくるよ。

それまでみんな元気で。




さぁ!!今日はどこまで走ろうかな!!!

 



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