2005年 6月 【富良野旅人バス】
コンコンコン……………
コンコンコンコン………………
窓を叩く音で目を覚ますと、外に佐藤さんの姿があった。
隣には知らないおじさんがいる。
ここは太陽の里の駐車場。
「今からトラック借りてくるから、雑品やっちゃうか。1時間くらい待っときな。」
おおおお、マジか!!!
雑品屋さんがいつ来られるかわからなくて、佐藤さんを急かすこともできなくて、このままだとまだしばらく待たないといけないと思っていたんだけど、まさかこのタイミングで作業にとりかかれるなんて!!!
太陽の里で寝ててよかった!!!
そして1時間して佐藤さんが戻ってきた。
「んー、やっぱトラック借りれんかったわ。雑品屋も閉まってるしなぁ。」
「おう、俺の知り合いの、ホラ、工藤さんとこ。あそこなら俺の顔で大丈夫だぁ。」
「え!!それじゃあ僕今からソッコーで親方にダンプ借りてきますよ!!」
山田親方に電話すると快くOK。
すぐに取りに行って運転して戻ってくると、早速佐藤さんたちがユンボに乗って作業をしていた。
ハウスの鉄骨、鉄板、とにかく色んな鉄屑をダンプに積みまくり、山部にある工藤さんって人がやってる鉄屑屋さんに運んで行く。
工藤さん自身は外出してていなかったんだけど、手伝ってくれている坂本さんというおじさんの顔で持ち込むことができ、ダンプ3往復でかなり片付けることができた。
ガゴガゴガゴー!!と大がかりな作業をしてるもんだから近隣の人たちが何事だ?と立ち止まり、話しかけてくる。
「佐藤さん、片付いたねえー。兄ちゃんたち頑張ってるべや。」
笑顔で話しかけてくれる近所の人たち。
こうして近所の人たちから友好的に思ってもらえてることはかなりありがたかった。
少しずつわかってきたことだけど、佐藤さんはこのあたりではちょっと変わった人、みたいな感じで思われていた。
確かにあんまり人付き合いはしないし、少し難しいところはある。
でも俺からしたら色々と気にかけてくれる優しいおじさんだ。
変わっているかもしれないけど、正面からぶつかって、ちゃんと向き合えばその人の良いところは必ず見えてくる。
色眼鏡で見ることなく、俺は俺の目線で佐藤さんと付き合っていこう。
朝から17時までみっちりやって今日のところは終了。
明日にバスの移動までやってしまうぞと、佐藤さんも気合い充分だ。
ありがたい。
このまま一気に仕上げてしまうぞ。
そして翌日。
今日も最高の天気で、バスの周辺は遅咲きの桜が咲き乱れている。
早速、山田親方から借りてきたダンプで、バスの周りにある残りの雑品を運ぶ作業。
坂本のおじちゃんに手伝ってもらって、山部の町にある雑品屋さんに運んでいく。
そうして午前中で大物の片付けは完了。
しかし、地面にはまだまだすさまじい量のプラスチック片や紙やビニールが落ちている。
これで地面をならしたらゴミを埋めてると勘違いされて警察が飛んできてしまう。
というわけで神経質なほどにゴミを拾いまくる。
さぁ!!!!
きれいに片付いたところで、ついに、ついにこのバス作業のメインだったバスの移動だ!!!
タイヤが沈んでガクンと斜めに傾いていたバスに、佐藤さんが運転するユンボのワイヤーをつなぐ。
俺はバスに乗ってクソ重いハンドルを回して向きを調整する担当だ。
そして佐藤さんがユンボのバケットを持ち上げ、思い切り引っ張った。
グンッ!!とのびきるワイヤー。
ミシミシと音を立てるバス。
頼む!!動いてくれ!!!
これで動かなかったらバスは傾いたままだ!!!
ゴゴゴゴゴー!!
ガリガリガリガリー!!
こんな巨大なバスがユンボのワイヤーで動くのかハラハラしながらハンドルを回していると、ものすごい音を立てながらバスの頭が浮き上がった。
うおおおおおおお!!!!
動いた!!!!
動いたやん!!!!
頭を浮かしたところで無理矢理45°くらい回しながら引っ張る!!!
俺も油圧のきかないクソ重いハンドルを回す!!!
そしてなんとか道路と並行の位置までもっていくことができたところでバスをズシンと地面に下ろした。
やったああああああ!!!!
やったぞ!!!!
バス動いたあああああああ!!!
「いやー、動いたなぁ。よかったよかった。」
佐藤さんもうれしそうだ。
やったぜ。
さぁ、ついに終わりが見えてきたぞ。
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