2005年 2月14日 【富良野新プリバイト】
2月14日。
そう、今日はバレンタインデー。
1発目は予想だにしていなかった人からだった。
「金丸!!ホラ!!」
振り返ると、かわいらしい袋を差し出してるカオリさん。
おおお、マジか………!!
「ありがとうございます。」
「フンッ!!」
キレてんのか?って感じでスタスタ歩いていくカオリさん。
実は照れてるくせに。
可愛いなぁ。
それからみゆきさん、カミデさんにもチョコをもらった。
事務所の中はみんながもらったチョコの山ができている。
「何個もらった?」
みんなホントは興味津々で絶対聞きたいくせに、不自然なほど「バ」の字も出てこない。
ふん!俺はそんなもん興味ないね!!みたいな顔して仕事している。
いや、みんな絶対ソワソワしてるくせに!!!
ていうか今まで女の人がいる職場とかほとんどなかったから、この感じがめっちゃ新鮮だ。
学生時代みたい。
女性職員さんたちはみんな相当な数のチョコをばら撒いてる。
仕事場でバレンタインデーなんて面倒くさい行事だろうけど、タネをたくさん蒔いておけば1ヶ月後には色んなもんが帰ってくるんだもんな。
俺もお返し考えないと。
するとクロークにルームメイキングのカナちゃんがやってきた。
「ねぇ、仕事終わったら会える?」
「え?なんで?」
「ん、別に、いや、ご飯でも…………」
うん、絶対チョコだよな。
仕事を終えてからロッカーで服を着替え、ちょっとドキドキしながら駐車場に行くと、そこにカナちゃんが待っててくれていた。
照明が夜に光り、ハラハラと音もなく雪が降ってくる。
カナちゃんがモジモジしながら可愛い紙袋を出してきた。
なんか小っ恥ずかしくなりながらそれを受け取る。
カナちゃんはそれを渡したら車に乗って雪を踏みながら走っていった。
俺も車に乗って紙袋を開けてみると、手作りのチョコが入っている。
雑な見た目ではあったけど、食べてみると味は美味しかった。
そういえば最近美香とあんまり電話してないなと思った。
仕事はいつも忙しいみたいで、毎日ヘトヘトになってるってメールで言ってた。
美香も職場で男の人にチョコを配ったりしたのかな。
「おーい、文武どこや?飲もうぜー。」
ユウキから電話が入り、サンビルの中にあるダーツバーに行くとカミデさんやミユキさんたちがいて、みんなで朝4時くらいまで飲んだ。
数日後。
スノーボードをやってたユウキが、コケて靭帯を伸ばしてしまい、俺は休みだったんだけどユウキを病院に連れて行き、それからホテルに送っていく。
車が1台しかないもんだから、お互いシフトがバラバラの時は送り迎えをしないといけない。
くそ、せっかく休みなのに午前が終わってしまった。
「金丸、アクアやってくんない?ボランティアだけど。」
ユウキを送ってさっさと旅人バスの作業に行こうとしていたらカオリさんに呼び止められた。
屋内プールで子供たちの水泳教室の先生もやっているカオリさん。
俺はいつも監視員でそれを眺めてるだけだったんだけど、最近では俺もそのお手伝いをやってる。
プールの中で小さな子供たちにバタ脚を教えたり、ビート板持たせたりするくらいのもんなので頼まれたら全然手伝ってる。
それにカオリさんの水着姿を見られるのも嬉しい。
美人な上にスタイル良いのでついジーーっと見てしまいそうになるのを我慢してチラチラ見ている。
いつもは鬼のように怖いけど、子供たちと一緒にいるとすごく柔らかい優しい顔をしてて、カオリさんあんな顔できるんだなーって思える。
「ちょっとアンタ、何見てんのよ。」
「あ、いや、別に。」
「フンッ!!!……………手伝ってくれてありがとね。」
カオリ先生ありがとーーー!!って帰っていく子供たちを見送り、俺も服を着替えてすぐにホテルを出て旅人バスへ向かった。
早くバスの中のベンチを作っていかないとな。
そうそう、北海道新聞の記者さんからバスの取材をしたいっていう連絡をもらっている。
なんとか雪が溶けるまでに内装を仕上げてしまわないと。
暗くなるまでバスの中で丸ノコを振り回して、木屑にまみれて作業した。
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