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雪原に1人







リアルタイムの双子との日常はこちらから






2005年 1月 【富良野新プリバイト】




「金丸、あんた新聞載ってたよ。」



先日、老健施設の慰問ライブに行ったんだけど、そのことが今日の北海道新聞に写真付きで載っていたみたいで、それを見て話しかけてきた恐怖の先輩カオリさん。


完全に虫ケラを見るかのような冷酷な目。


でももうそれにもだいぶ慣れた。



「へー、あんたほんとに歌えたんだねー。ふーん。」



「あ、カオリさん、千石の塩ラーメン食べましたよ。」



「え!?ほんと!?おいしかったでしょー!!私大好きなんだわー!!……………ハッ!!ほ、ほらタクシー着いたよ!!早く行きなさい!!」



怖い人がたまに無邪気な顔になる瞬間がギャップですごく可愛らしい。


冷たい美人って感じだけど笑ったら人懐こい顔になるなぁ。


最初はカオリさんと同じシフトになると恐怖で震えてたけど、今ではなるべく一緒のシフトになりたいくらいだ。








今日は富良野スキー場の花火大会の日。


北の峰から歩いて民家の横の車道を渡っていくと、そこはもうゲレンデになる。


町とスキー場の境目がどこかわからなくなるくらい、すぐそこだ。


たくさんの人が滑っていて、ボードのジャンプのコンテストもやっていた。









ナイターの照明が照らし出すゲレンデをユウキと歩いていると、雪の上にみゆきさんとカオリさんがいるのを見つけた。



「あ、金丸じゃん。ほら、いいものあげる。」



カオリさんが懐から取り出したのはお米の袋。


え?なんですか?


ゴミ捨ててこい小僧、って意味ですか?






「わーーーーーーーー!!」



「ああああああああああ!!!!」



なんてことじゃなく、こいつはお尻の下に敷いて滑ると猛スピードで雪の上を滑降していくことができるっていう、ソリの代わりのアイテムだ。


雪国の人たちならではの遊び。



体中雪まみれになってしまいパンツまでグショグショで震えてる俺の横を、「うひゃーーーー!!」と叫びながら上半身裸のユウキが滑っていって雪の塊に突っ込んだ。


それを見て大笑いしてるカオリさん。


カオリさんがあんなに笑ってるの初めて見た。



寒さに頬が火照って赤くなってるのが可愛かった。




そこにシガちゃんや同僚のケイちんもやってきて、たくさんの知り合いに囲まれて花火を眺めた。


ゲレンデを七色に染め上げる冬の花火がとっても幻想的だった。













その翌日のこと。


朝、家の外に出ると晴れ渡る青空がものすごく綺麗な冬晴れの日だったんだけど、



半端じゃない冷え込み!!!


マジで顔中がヒリヒリして目が開けてられんくらい寒い!!!









太陽が輝き、木という木が樹氷で彫刻のようにきらめき、空気中にはダイヤモンドダストがキラキラと舞っている。


気温もここまで下がると、今まで見たことないまったく違う世界になる。










気持ちのいい青空に爽やかな気分で御陵線をとばしていく。


今日は俺は休みなのでユウキをホテルに送って行って、俺は旭川に買い物に行くかなー。



と思ってたその時だった。






……………………ん?






ふと気づくと車の水温メーターが7分目くらいまで上がっている。


あれ?こんな上がるのなんて見たことないぞ?



「寒いから一時的に上がるんやろ?」



そう言うユウキ。


そうかなぁ…………



不安に思いながらも登り坂を走っていると、どんどんメーターの針が上昇していき、ついに『H』のラインを振り切ってメモリの外までいってしまった。


や、やべぇよこれ!!



ゼッテーやべぇ!!!


その瞬間!!!






ボフッ!!!






爆発音とともにボンネットからものすごい煙が噴き出してきた。


エアコンの吹き出し口からも白い煙が噴き出てきて、車内が真っ白に。



「うわーーーー!!」



「逃げろーーー!!」



車の外に飛び出し、ダッシュで走ってかなり離れたところまで逃げた。


ば、爆発するんじゃねぇか!!!!





離れたところからしばらくファントムをながめ、5分くらいしてから恐る恐る近づくと、ボンネットやらドアのとこやら、あらゆる隙間からボタボタと謎の赤い液体が流て落ちていた。


まるで血が噴き出てるみたいだ。



か、勘弁してくれよ…………


なんなんだよこれ…………




すぐに総島さんに電話したんだけど、待ってた15分の長かったこと…………


極寒で体の芯まで震えた。



「おう!!大丈夫か!!俺の車乗ってろ!!寒かったろう!!」



飛んできてくれた総島さん。

ファントムはレッカーで運んでもらい、そのまま総島自動車へ運ばれた。




「お前ら、朝出る前にちゃんと暖気かけたか?」



「車に乗り込んでからかけてます。」



「だからだぁ!!今日−25℃だぞ!!山部はもちっと寒いから−27℃はあったべ。そんでラジエーターの水が凍ったんだぁ。こんだけ冷えこんだ時は普通、出発の10分前くらいから暖気かけといてゆっくり暖めねぇと駄目なんだぁ。それをお前いきなりウイィィィン!!ってやったもんだから水が回らなかったんだぁ。富良野なめてっからダァ!!ガッハッハッハ!!」



もしかしたらエンジンがいかれてるかもしれんという。


ま、また金が…………


春になったら北海道ちゃんと出発できるのかな…………










金はいつでもヤバいんだけど、代車を借りて旭川に行って来週のヒロちゃんの誕生日のために楽器屋でギターのエフェクターをプレゼントに買った。


これ喜ぶだろうな。


金ヤバいついでにヤケになってCD屋さんで佐野元春の『バックトゥザストリート』を買った。


佐野元春のノリノリのビートをかけて車を走らせていたら金なんかなんとかなるかって思えた。












そんなある日のこと。


バイトも休みで、用事を済ませて1人で車を走らせていた時、なんとも言えない気持ちが胸に湧いてきた。



なんかしたい。

どっか行きたい。


なんでもないのに、意味のわからん焦りが胸に滲んでくる。


やることはいっぱいあるのに、それが正しいのかどうか不安になるし、それが意味のあることなのかどうかも、ふと怪しく思えてくる。




なんのための自分なのか。

なんのために生きているのか。



みんな優しいのに。








遠くへ行きたくて、なんとなく麓郷に向かった。



深い雪に埋もれ、ほとんど除雪されていない道を進み、道のどん詰まりにあるジャム園にやってきた。



車を降りて展望台に向かって歩く。


森の中だ。

もちろん除雪はされていない。









Tシャツにジャンパーという軽装で、雪に埋もれた木々の間をくぐっていく。


1歩ごとに足の付け根までズボッと雪に埋まる。








30分ほどかけてやっと坂を登りきり、森を抜けた途端、目の前に雪原が広がった。



まっさらな白い平面。


静寂だけが漂っている。



そこにポツンと佇む1本の木。


凍てつく風が火照った体を撫で、木々をざわめかせ、さらさらと雪の上を流れて遠い空に還っていく。





誰もいない。

何もない。



人間がここにいることが不自然なほどの自然。



木々の思考が森の中に充満している。



俺なんかよりよっぽど思慮深い生き物だと思えた。







しばらく雪原に佇んでいたんだけど、このままだと凍死してしまいそうなので戻ることに。


履いてる長靴の中に雪が入りまくって指の感覚がなくなっていく。


こりゃマジでやばいぞと薄暗くなった森の中、何度も倒れこみながら急いで車に戻った。






すでにカチコチの氷になってしまってる靴下を脱ぎ捨てて、アクセルを踏むがまったく感覚がない。


エアコンをガンガンにかけてなんとか血の気を取り戻したが、あやうく指を切断するところだった。




でもいい気分転換になったかな。



また、どこかひと気のない自然の中で1人になりに行こう。








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