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ストーブ火事で死にかけた話。あと高田渡







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2004年 11月7日





チャーラーラーラー 


チャーラーラーラー♫(ロッドのセイリング)




「…………………はっ!!誰だ!?」




電話の着信で飛び起きた。

画面を見ると佐藤さん。



「忙しいんだべか?」




ぬおおおお!!!!


今日はバス作業初日!!!


いや、別に何時からやりますとは言ってなかったんだけど、どうやらすでにヤル気満々で待ち構えてるみたい!!


超スピードで山田親方のとこに飛んでいく。




「おっ!!どうした!?今日休みだぞ!?」



カッちゃんと遊んでた山田親方から電動工具をいろいろ借りてダッシュで佐藤さんのとこへ。


着くと佐藤さんはすでにバスの中の物を片付け始めていた。



ヤバいヤバいと、早速俺も作業に取り掛かった。







まずは物置になってるバス内を空っぽにしないと何もできない。

山のような不用品をひとつひとつ分別しながら片付けていく。


佐藤さんはサンダーでギャリギャリ!!ガガガガ!!と座席をぶった切って、片っ端から外しまくっている。


ステンレスの手すりなんかは良い値段で売れるんだそうだ。




そしてお昼過ぎになったら4トンユニックが3台やってきた。


どうやらこの空き地に積まれている鉄屑は半分くらいは佐藤さんの知り合いの雑品屋の物だったようで、引き上げに来てくれたのだ。










黙々と作業を続けていると、16時くらいに暗くなり始める。

だいぶ陽が短くなってきた。


無理せずこの辺で切り上げたんだけど、佐藤さんの頑張りのおかげで、シングルのシートは全部外れたし不用品も全部ゴミ袋に入った。


ゴミは1度に出すには量が多すぎるので、何度かに分けて捨てなきゃな。




1日でものすごくスッキリしたバス内。


どんどんイメージが湧いてくる。





充実した疲れでお腹が空き、帰りに山部ドライブインってとこで豚丼を食べた。


めっちゃ信じられないくらい美味しかった。
















そんなある日のこと。



「何じゃこりゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」



ユウキの叫び声で目を覚ました。



ハイハイ、もういいって…………


そんなんじゃウケないって……………



眠い眠い……………




「文武えええええええええええええええええ!!!!やべえええええええええええ!!!!」




だからもういいって……………



しつこいわぁ……………




「もう…………なに?…………眠いんやから起こさ、なんじゃこりゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」




いつも2人で雑魚寝しているリビングの横にあるキッチンに入ると、恐怖の光景が広がっていた。





焚いていたストーブの周りのクッションフロアーが真っ黒に焦げてる!!!



丸蛍光灯の傘がチューリップのように反っくり返り、ハンガーは縦長になって服が全部落ちてる!!!



洗剤とか醤油ボトルの蓋が吹き飛んで中身が溢れて焦げているし、冷蔵庫の中の牛乳はホットミルクで飲み頃!!!


ガラスがはまってる窓枠まで歪んでる!!!!




なんじゃこりゃあああああああああああ!!!!!







この山部の家には据え付けのストーブがふたつある。


俺たちはリビングで寝ているから、そこのストーブをつけると暑いので、隣のキッチンにあるストーブをつけ、アコーディオンカーテンで仕切ったらちょうどいい温度になるって具合だ。


前までは「微弱」っていう強さで焚いていたんだけど、「微弱」ばっかりで焚いていると円筒の中の温度が上がらず、空気が外に逃げないという理屈で、不完全燃焼を起こしてススが溜まる。


おかげでこの前、爪の中を真っ黒にしながら円筒の中を掃除をした。


中田さんや山田親方に相談して、それからは「中」で焚いていたんだけど、なんでこんなことになるんだ!!!!




いやいや!!!

どういうことだよこれ!!!


ストーブ火力強すぎだよ!!!


家の中だぞ?


最強にしてても大丈夫なように余裕を持って設置してるもんじゃねぇのかよ普通!!!



「中」で焚いててこれだから、もし「大」で寝てたら間違いなく死んでた……………



ああああ、頭の中を駆け巡る修理代…………


また金がかかる……………



ていうか発火しなくて良かった…………






















とまぁ、かろうじて命拾いした富良野の秋。


仕事とバスと音楽と、毎日忙しく過ぎていたんだけど、そんな中、こんな面白いこともあった。



ユウキと一緒にどっかで美味しいもん食べようぜと、富良野のメインストリート沿いにあるボロボロのカレー屋さん、「独尊」ってとこに行った時のこと。



富良野では結構有名なお店らしく、ボロボロではあるけどお洒落な感じでもある。


町にある地元の人がやってる素朴な食堂とは明らかに違う、敷居の高い雰囲気。



美味しいと評判のカレーだったけど、山部ドライブインのカレーのほうが俺は好きかな。






雑然とした店内。


ふーん、と思いながら見回している時だった。



壁に乱雑に貼ってあるチラシの中にすごい1枚を見つけた。



「高田渡ライブ 芦別」



うおおお!!!!


ま、ま、ま、マジか!!!!!


あのフォーク界の生きる伝説のライブが富良野の近くの町で行われるだと!!!!!


行くしかねぇ!!!!!


やべえええええ!!!!










大興奮しながら数日が経ち、そしてとうとうライブ当日がやってきた。



山の中を突っ走り、芦別の町に到着。


富良野よりもさらに寂れた町中を走り、おいしいと評判の中華料理屋『多良腹亭』であんかけ焼きそばを食べる。


うまい。






そしてドキドキでライブ会場に到着。


そこはなんとお寺。


お寺でライブとかさすが伝説は違うなぁと本堂に入ると、畳のお座敷にたくさんの座布団が並べられていた。



金箔の仏具、欄間の仏。


マジのただのお寺。






2500円を払ってチケットを買う。


チラシに書かれてるライブのキャッチコピーは、



「1億円当たったら歌をやめようと思ってます。」



さすがレジェンド。


よくわからない。








まだ数人しかいない堂内で1番前の座布団に座って待っていると、時間が近づくにつれ、ぞろぞろとお客さんが集まってきた。


不思議なことにみんながみんなお酒を持ってきている。


隣に座ったおじさんたちなんて、鞄からウィスキーとつまみを取り出して宴会をおっぱじめた。


まるでそれがこの人のライブのマナーかのよう。



さすがレジェンド。

客も個性的。










照明が消えた。


拍手の中、袖から猿の惑星のコーネリアスみたいな歩き方のお爺ちゃんがとぼとぼ出てきた。


フォーク界の生きる伝説、高田渡だ。


テレビでしか見たことなかったあの人が目の前にいる!!!






ステージに上がり、ゆっくりと楽譜をめくり、横に置かれた『多良川』のボトルをチラと見る。




静まり返る堂内。




神の一挙手一投足に息を飲むお客。




ギターを重たそうに持ち上げるが、ストラップがねじれててうまいこと直らんでまごまごしてる。






…………………







全然ねじれが直らない。







………………………







いや、いつまでねじれなおしてるんだよ!!!!!





あ!!何か喋る!!




「…………昼から…………モゴモゴ…………寺で歌って……………ムニャムニャ…………成仏できゃしねぇ…………」



爆笑の中、演奏が始まった。



もうすごい。



これぞフォーク。



ていうかよくわからん曲ばっかなんだけど、この人がやればそれがフォーク。





マジで曲が短すぎる。


1曲1分くらい。

短いのは10秒で終わる曲もある。


シンプルすぎる。


なんてことない風景を切り取りすぎ。


そこ切り取る!?みたいな何気ないところをテーマにしてる。


もはやテーマっていうのもおかしい。


なんでもないことが良い、くらいの感じ。



「ラブソングなんて…………長くちゃ駄目………モゴモゴ…………さだまさしなんか1曲聴いたら死んじまう…………」



MCがボソボソ喋り過ぎで何言ってるかほとんど聞き取れん!!!



「アイスクリームって歌があります…………僕の恋人はアイスクリームーーーー……………ほっといたらすぐだらしなくなるーーー……………どうもありがとごももも………」



お、終わり!?!?


それだけ!?!?




ギターの弾き方もコード進行もだいたい一緒。


もはや曲という概念の外にいる。




病院を抜け出してパイポ買いに行ったら看護婦さんに怒られた。


とか、そんな何気ない歌の数々。


聞き流せばただの変な歌だが、考えれば考えるほど難解に思えてくる。


果たしてそれを高田さんが狙ってるのか、それとも何も考えんで歌って、それに意味を見出そうとしてる俺たちを見てニヤニヤしてるだけなのか。



「よくライブの中で…………同じ曲やったりします…………モゴモゴ……………別にどれも同じだからいいんだけど…………」





喋りながら動かなくなる高田さん。



全然動かない。





ど、どうしたんだ…………?



な、なんかレジェンドなりの精神統一みたいなやつか…………?






ゆっくりと頭が下がっていく。



ね、寝てやがる!!!!!



しかしこの異常事態に対して何事もないかのように酒を飲み続けているお客さんたち。



こ、これが高田渡のライブ……………






アンコールがかかり、すごくめんどくさそうに歌ってくれたのは「生活の柄」。



ああ、めっちゃ感動した。


これかぁ、これがフォークだよな…………


難しく考えることねぇんだ。


弾き語りの真髄を見た気がした。






そうそう、後から聞いたことだけど、あの横に置いてあった多良川のボトル。


あれは泡盛で、さすが飲んだくれの高田渡と思ったんだけど、実はあの中身はただの水だったみたい。


最近体調が悪くてドクターストップがかかってるらしく、あのボトルはポーズのためにやってるものなんだそう。




ライブができなくなる前に日本のフォークを作ってきた偉人のステージが見られてホントに良かった。


俺も曲作り、頑張らないと。


余計なものは全部削ぎ落とす。


そこに残るものを見つけないと。







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