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長かったつくばでの日々の終わり







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この日もバイトを終えて川崎にダッシュし、光ちゃんの家に着いて機材を積み込み、自由ヶ丘のスタジオノアに到着。


朝から晩まで働いて、そして朝の6時まで徹夜レコーディング。


スタジオ代は1人5千円。


体力よりも財力のほうが痛すぎる…………








今日はまずは新曲「同窓会」のボーカルのダメ部分の録り直し。



「…………はいストップ。そこもう1回。」



「…………はいストップ。ちょっとフラットしたね。」



「…………はいストップ。もうちょっと生々しくいこうや。」



マジで光ちゃんが厳しすぎてテイク何回いったかわからんくらい録り直しの連続。


でもそれもこれも良いものを作るためだ。




夜中の3時にカップラーメンを食べて気合いを入れ直し、根性で歌録りを続ける。


マジで何回も何回も録り直していたら、何が良くて何がダメなのか混乱してくるというラビリンスに突入。


めっちゃ煮詰まってしまって頭を冷やしに外に出る。







外のテーブルでは美香がモクモクとパソコンをいじっている。

美香には今回のアルバムのジャケットデザインを一任している。


その報酬といってはなんだけど、美香が好きな「外灯の下」っていう俺の曲をアルバムに入れることで話はついている。




後半戦ではコーラス部分のことで光ちゃんと意見が噛み合わなくて、あーだこーだ!!言ってるうちに6時が来てタイムアップ。




静まり返った朝の街に這い出した。


冷たい空気が頬をこわばらせる。

うー、都会の冬は寒いなぁ。






30万もする重たいMTRを抱えてファントムに乗り込み、二子玉川にかかる橋を渡っていると、遠くのほうに富士山が見えた。


神奈川のビルの向こう、先っぽの白くなった富士山。


すでに24時間寝てないけど、でも疲れ切った体に力が漲ってくる。



空気が澄み渡り、青空がとても清々しかった。














翌日も三軒茶屋のスタジオに入ったんだけど、そこにビビるゲストが遊びにきた。



「フミちゃん、支配人が見学来たから。」




え………えええ!?!?



「やぁ、この前は来てくれてありがとうね。」



やってきたのは光ちゃんの仕事先のレストラン『ハーデンタイテン』の支配人、大城さん。


南青山に創作中華レストランの看板をかかげる男だ。



光ちゃんから聞いた話では、丸1日寝ないなんて日常茶飯事という多忙な人。


そんな人が俺たちのレコーディング見にくるなんて恐縮すぎる…………








スタジオの片隅に座る大城さんの洗練された佇まい。


きれいに整えた髪に、高級そうなジャケット、キラリと光る革靴と眼光。


日本のまさに中心で成功している男が、わざわざ従業員1人のためにその貴重な睡眠時間を削って、こんな四畳半の狭っ苦しいとこにやってきてくれるなんてめっちゃ怖い。


壁がガラス張りなのがまためっちゃ気まずい。







それでも集中してなんとか今日のパートを録っていく。



「支配人、ちょっと曲かけます。」



ドキドキしながら、真剣に聞いてくれている支配人を横目で見る。



「うん…………熱いね。今時にはない構成で、いい曲だね。」



光栄の至りです!!!!








朝6時。

いつものように疲労困憊で朝の街に這い出す。



「これで何か食べな。」



1万円を俺たちに渡し、コートをひるがえしてさっそうと歩いていった大城さん。


これからお客さんの接待に行き、そのまま夕方にお店に入るという。

こんなに頑張らないと東京でのし上がることは出来ないんだよな。



人に出来て俺たちに出来ないことはない!と、気合を入れなおして光ちゃんの部屋に戻り、ぶっ続けで編集作業をした。


いいアルバムが仕上がりそうだった。

















それから1ヶ月が過ぎた。




目の前にあるのはすっからかんになった美香の部屋。



残りの荷物をファントムに積み込むと、これで完全に引っ越しが終わった。





おとといのつくば大学卒業式。


美香のドレス、きれいだったな。


美香にとっては4年間過ごした、大学と研究所しかない無機質なこの街。


今年も何百人という学生が、全国から親もとを離れてここにやってくるんだな。


美香、大学生活、ホントにお疲れ様。






俺も昨日で仕事が終わり、送別会を開いてもらえ、そこで初めて自分が日本一周をしてる途中だということを暴露した。


バイト代で酒気帯びの借金もなんとか返し終えたし、これで先に進める。



あっという間だったつくばでの4ヶ月の同棲生活。

ほんの少しだけこの町が名残惜しくなるけど、ようやく旅に戻れるぞ。



川崎に向けアクセルを踏む。


バイバイ、つくば。










CDはまだ完成していないが、美香はもう九州に帰るので打ち上げの代わりに今日は光ちゃんと3人で飲みに行くことにした。



「おー、よく来たねー。彼女もいらっしゃい。」



やってきたのはいつものハーデンタイテン。


オールバックでスーツをピシッときめた大城支配人に美香見とれすぎ。


うす暗いシックでお洒落な店内に流れるジャズピアノ。




うまい!うますぎる!

エビチリ、チャーシュー、マーボー豆腐。


感激して言葉もない美香。



卒論とか卒業旅行とか忙しい中でジャケット製作、本当にありがとうな。

まだレコーディング少し残ってるけど、いいアルバムに仕上げるから。



美香は宮崎に帰ったらすぐに就職先での仕事が始まり、もうしばらくは俺に会いに来ることはおろか、ちょっとした遠出をする余裕もなくなるはず。



次に会えるのはいつになるだろう。


俺も頑張って先に進むぞ。





【雪のつくば編】


完!!!!




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