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心斎橋でホストをやってみた







リアルタイムの双子との日常はこちらから







2003年、4月26日(土)               



おばちゃんたちとお酒飲んでチンチン触られる仕事、さてなあああああああああああんだ!





なああんだ、じゃねぇよ。

日記編集しながら自分にムカつくわ。






この前やった引っ越しバイトのお金は京都での観光地巡りで綺麗さっぱりなくなってしまった。


またここらでバイトしないといけない。



求人雑誌を開き、1ヶ月ほどの短期で働けて、なおかつ給料がいいバイトを探すんだけど、ここは大阪。


せっかくだから色んな面白いバイトを経験してみたい。





というわけで、求人雑誌に載っていたホストクラブ「スティンガー」に行ってみることに。


ホストってお金持ちのおばちゃんに体触られて一緒にお酒飲んでご機嫌とっときゃいいんだよな?



年上女性には昔から結構モテてきたので楽勝だ。


なんせ雑誌には、時給6000円~!って書いてある。


いやいや、時給6000円って一体1日いくらもらえるんだよ?



よーし、ここで思いっきり貯蓄するぞ。












車を走らせ大阪の中心地にやってきたんだけど、まああああ、とんでもない。



20時の心斎橋。

すごすぎる。



漫画「ミナミの帝王」で、借金で首の回らなくなった人がよく飛び込み自殺しようとしている橋、ひっかけ橋。

カニ道楽とグリコの看板。


道頓堀に、宗右衛門通り。



巨大なビルが迷路のようにひしめき、その足元を凄まじい数の人がうごめいていて、ビカビカしたネオンの灯りでめまいがしそうだ。


ここが大阪のド真ん中、ミナミか。















車を路駐し、宗右衛門町の中にある飲み屋ビルに到着。


エレベーターで4階に上がり、ドキドキで店のドアを開いた。


ホストクラブなんてもちろん人生初。




薄暗い店内に入ると、裸の人や髪ボサボサの人がうろついていた。


思ってたほど広くない店内は、7つのボックスと7席のカウンターがある。









早速面接を受けると即採用された。


ていうか求人広告に書いていた、


『時給6000円~!キャッチなし!!寮有り!!』


っていう言葉は、まぁ気持ちいいくらいの嘘ですね。




★夜20時から朝7時まで営業。

★日給5000円。ただし2ヶ月目からは日給2000円。
(時給6000円~!っていうのは、頑張ればそのくらいいけますよってことらしい。嘘のレベルがヤバい。)

★キャッチももちろん有り。

★寮ってのは店のソファー。





ひどすぎる…………


何書いてもいいと思ってやがる…………






給料は日給+売り上げのパーセント。

月の売り上げが50万以下だったら45%、100万以下が50%、300万以下が55%。


だからまぁ、10万売り上げたとしたら45000円もらえるってわけだ。








というわけで、わけもわからないまま貸衣装のダボダボのスーツを着させられ、早速仕事が始まった。



先輩たち5人くらいとゾロゾロと心斎橋アーケードにやってきた。


さっきまで全然気づかなかったけど、よく見るとアーケードの至る所に6~7人ずつの黒スーツ集団が立っている。


なるほど、それぞれの店のキャッチ組だ。


店ごとに縄張りがあるみたいで、他の店のエリアでは絶対にキャッチをしてはいけないっていうルールがあるみたいだ。








俺たちのお店の所定の位置につくと、即キャッチスタート。


「センパイたちの見とけよ。」



ミナミの夜。


人通りは凄まじい。


そんな中、女の人1~3人組が通ると、すかさず歩いていき、横について話をする先輩。


たまに立ち止まるけど、ほとんどは無視。


でもいくら無視されようが手当たり次第に声をかけまくっている。





「よし、お前行ってこい!!」




え!?ええええええ!?


い、いきなり!?!?


な、な、なな、な、なんて声かければいいんだ!?!?!?



「ホラ!!あの2人組行け!!」



「は、はい!!…………あ、あの…………こんばんわ。ど、どこ行くんですか?」



「………………………」




こっちを見もしないで、ツン!とスタスタ歩いていく女の人。




怖すぎる!!!!!


大阪の都会の女の人に俺みたいなウルトラ田舎者が声かけるとか恐怖!!!!



絶望的にオドオドしてると、また先輩が背中を押してくる。



「ホラ!!次はあれ!!ドンドン行け!!」



「あ、あ、あ、は、はいいいい!!こ、こ、こんばんは!!どこ行くところですか?」



「死ね!!!」




鬼のような顔してスタスタ歩いて行く女の人。




し、死ねて…………


声かけただけで死ねて…………





いや、まぁこうやって見ていると、向こうのほうから女の子が歩いてくるんだけど、10mおきくらいに並んでる各店のホストたちが入れ替わり立ち替わり声をかけまくってて、そりゃ女の人からしたらここを歩くだけでめちゃくちゃ声かけられて鬱陶しいことこの上ないんだろうな…………



ていうかそんな各店のホストたちのキャッチを次から次に切り捨てながらこっちに向かってきた女の子を俺のところで落とせるわけないやん…………








とにかく、ビビりながらも優しいセンパイたちにコツを教えてもらい、声を掛けまくった。


まぁ当然のごとく、店に連れて行くことはおろかケータイ番号も聞き出せない。



そうして朝5時ぐらいになるとキャッチ撤収。




店に戻ると、センパイたちのお客さんで賑わっていた。


薄暗い店内でホストと女の子が酒を飲んでいる。


やっぱりキャバ嬢や風俗関係の女の人がほとんどのようだ。


そこからはそんな先輩たちの席に酒を運んだりグラスを下げたりとウェイターをした。







客が帰り、食器を洗って片付けて、全部終わったのが朝8時半。


外に出るとめちゃくちゃ明るかった。


うおおお、もうこんな朝か…………



飲み屋街の汚い街並みの中を、スーツ姿のサラリーマンたちが出勤していく。


酒は飲んでないけど、夜中立ち続けたおかげで足腰ガクガクだ。


こんなに昼と夜が逆転した仕事なんて初めてだよ。





俺と同じホスト初日だったバイトの関くんと仲良くなり、この日は京都の彼の家に泊まらせてもらった。














2日目も気合いで声かけまくる。





はっきり言って、女好きで、喋りがうまかったら、ホストっていくらでも出世できると思った。


ブサイクとかかっこいいとか全然関係ねぇ。

実際、お店の先輩はほとんどがまぁまぁのブサイク。


それでもお客さんをもってたりする。


もちろん、1日何十万も売り上げるめちゃくちゃ売れてる先輩は相当な男前だけど。





ところで源氏名。

仕事終わりにセンパイと決めたんだけど、俺の名はトムウェイツの曲からとってジョー。


関くんは車が好きみたいでソアラにした。









今日は驚いたことに、ケータイ4件、アドレス1件を聞くことができた。



「おー!お前それ聞きすぎやわ。」



先輩も驚いてる。


でもたくさん番号は聞けたんだけど、大事なのはここからとのこと。



電話して、会って、遊びに行って、仲良くなって、ホレさせる。


そこまできたら、店外で会ってやる回数を徐々に減らしていって、お店に入りびたらせる。


という風に女の人を「教育」していくんだそうだ。



ホストにとっては、客と外で会って食事したり遊びに行くことを「営業」というみたい。


つまり女のおごりで飯を食うのも、仕事の1つというわけだ。



ソアラが、キャッチうまくできないと嘆いていた。



















翌日も京都のソアラの部屋で目を覚ました。



「おい!!行くぞソアラ!!ソアラ!!」



「…………う…………うん…………あー…………頭痛いわー…………」



「え?…………休むか?」



「あ…………あー。」




荷物をまとめて、ゴミだらけのソアラの部屋を出る。


ヤツはもうきっと来ない。





店には新人が次から次へとやってくる。

そしてすぐにやめていく。


みんな楽勝で稼げて、なんならエッチもできるんじゃないかって期待して面接に来るものの、実際は女の人怖いし、そんなに稼げないし、立ちっぱなしで疲れるし、想像と違うじゃねぇかってガッカリするんだろう。


確かに大変だけど、一旦始めたからには最後までやるぞ。







この日も道頓堀アーケードの中で女の人に声をかけまくる。



「あらー!君いいわぁ。ちょっと電話番号教えてーなー。今度お昼誘うわー。」



少しずつキャッチのコツもわかってきたぞ。


早く俺も店内で飲んで売り上げ作らないと。





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