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丹波の山の中にあった奇妙なライブハウス







リアルタイムの双子との日常はこちらから







念仏寺は2つある。


仏野念仏寺は有名だけど、実はもう1つの有名じゃない方の愛宕念仏寺が隠れ名スポットなんだそう。


確かに愛宕念仏寺はガイドブックにも載ってないし、地元の人に聞いても知らなかったりする。



とにかく嵯峨野の奥の奥にあるそのお寺まで行き、近くの空き地に車を止め、門をくぐった。

























もーいるいる。ウジャウジャ。


ズラリと並んだ羅漢さん。


笑ってたり、いじけてたり、ぷくーっとほっぺを膨らませてたり、驚いてたり。
  

とんでもない数の石像がお寺の敷地中にひしめいている。

























木の下や草むらの中、周りを見れば必ずどこかに羅漢さんがいてこっちを見てる。


その数1200体で、1つとして同じ表情がない。


こりゃ面白いわ。

心が楽しくなる。


ココは絶対行ったほうがいい!!















いやぁ、面白かったなぁとお寺を出て町のほうに歩いていくと、お土産物屋さんが並ぶところまで来たあたりで下から登ってきた人たちが「ここまでなんだねー。」と引き返していく。


フフフ…………この先にもっといいとこがあるとも知らずに。












嵯峨嵐山のメインストリートは修学旅行生たちが楽しそうにワイワイ歩いていた。


渡月橋の上から嵐山を眺める。




紅葉の新緑がすごく綺麗で、秋はさぞかし見事なんだろうなぁ。
  










































苔で有名な西芳寺を見学し、それから竹林のトンネルをくぐり、トロッコ列車嵐山駅へに行ってみた。


1時間1本のトロッコ列車のチケット(片道600円)を買い、40分ほど待って乗り込む。


チケットは全席指定で、早く買ったおかげで一番後ろの車両に座れた。


その車両は窓や壁が無く、手すりがついてるだけ、天井もスケスケなので、より自然を体感できる。












動き始めた列車は、保津川沿いに山の中を走っていく。



こりゃ確かに綺麗だなぁと景色を楽しんでいると、しばらくしていきなり列車が止まった。



「立って見てもー座って見てもー、値段は一緒おぉぉぉ。」



ただ走ってるだけじゃなくて、景色のいいところでは止まって撮影タイムを作ってくれたりするサービスの良さ。


そして面白い車掌さんが冗談混じりに色んな説明をしたり、歌ったりしてみんなを楽しませてくれる。


名物車掌さんって感じだ。










ふと下を流れる保津川を見てみると、急流くだりの船がたくさんの人を乗せて川を下っていく。


こっちに手を振る人々。

こちらからも振り返す人々。
























トロトロ20分ぐらい走って、終点の亀岡駅に到着。





「嵐山に戻られるお客さまー、船の保津川下りご利用はお1人様3900円となっておりますー。トロッコ列車はたったの600円!!」



「ワッハッハー!!」



最後まで楽しませてくれる車掌さんだった。



俺はもちろん3900円も払えないので、少し歩いた所にあるJRの駅から190円で嵯峨野へ。


節約節約。









駐車場に戻ってる途中、人力車のお兄さんにつかまる。



「お兄さん!!いい夢見させますよー!!」



うん、いい夢見たいけど1回2000円はイタイので歩いて帰った。

節約節約。








途中、めっちゃ渋い糸屋さんというか紐屋さんというか、なんかよくわからんけど年季入りまくったお店があったので覗いてみた。


お婆ちゃんが1人で昔ながらの道具を使って糸を操っていた。












お婆ちゃん、きっと若いピチピチした頃からこうやって糸を巻いてきたんだろうなぁ。


この技術を持つ人って現代に何人いるんだろ。

この道具の使い方知ってる人って現代に何人いるんだろ。



みんなみんな、お婆ちゃんの人生そのものなんだよね。
















もう何度もお邪魔してるみやげ屋のおばちゃんのところへ行くと、隣の食事処のおばちゃんとお喋りしながらお店をたたんでいるところだった。



「ただいまー!!」



「あらー遅かったじゃないー。お茶入れたげるわ!◯◯さん、あのねぇ、このお兄さん車で寝泊りしながら日本一周してはるんですよ。」



「あらそー!どこから来とるのー?」



「宮崎です。」



「まぁー九州!私福岡の行橋よー!!んー、ちょっと待っときなさい。おにぎり作ってあげるわ!!」



しばらくすると、どでかい炊き込みご飯おにぎりを3つも作ってきてくれた。



「今夜食べるんよ。同じ九州やし、お母さんの味と変わらんはずよ。」

















車に乗り込み、いざ京都市内脱出!


風呂を目指して9号線を上る。




そしてたどり着いた湯の花温泉、高すぎ。

入浴のみで千円もする。

アホか!


園部町に行き、古びた商店街の中にある今にも崩れそうな銭湯へ。


350円。

ありがたい。





お風呂でスッキリしたら、コンビニでから揚げを買いおばちゃんにもらったおにぎりを食べた。


食べていくと中からえび天が出てきた。


お母さんの味って言ってたけど、ウチじゃこんな豪華なおにぎり出てきたことないよ。


うますぎる!!!

おばちゃんありがとう!!!







それから寝床を探し回り、観音峠ってとこで寝ようとしていたらパトカーが来て軽く職質された。



「この先にでっかいスーパーあるからそこなら誰もけーへんし、暗いから寝やすいで。」



言われた通り走っていくと、道路沿いに道の駅みたいなだだっ広いスーパーがあった。


確かにここなら落ち着いて寝られそうだ。








みんな優しい。


雅楽の先生も、土産物屋のおばちゃんも、隣の食堂のおばちゃんも、警察も。


引っ越し屋の先輩は…………




うん…………まぁまぁ優しかった…………かな。




ホントみんなありがとう。


あったかい気持ちで布団にくるまった。















翌朝、気持ちよく目を覚ました。


さぁあああああああ!!!!!


長かった京都市内もついに脱出したし、こっから京都府の北側を攻め上がるぞ!!!





途中、道の駅で情報収集しつつ、快調に車を走らせていく。


どうやら京都の北部は日本海岸まで出ないと何もなさそうだ。


でも素通りも嫌だから、ちりめんの産地、加悦町の丹波路に立ち寄ることに。


ちりめんといっても海のちりめんではなく、織り物のちりめんだ。



別に織り物なんてほとんど興味ないし、こんな山の中には名所らしきものもほとんどない。


でもまさかこの夜があんな面白い展開になることなんてこの時は全く想像してなかったな。










加悦町はマジで何もなかった。


ただの寂れた小さな町。



こりゃやっぱこのまま素通りかなぁと、暗い雰囲気の町並みの中をキョロキョロしながら走っていく。



すると、そんな寂しげな町の中に、派手なペイントをされたドラムセットとギターが玄関先に置いてあるお店を見つけた。



お、なんだあれは?



とりあえず中に入ってみる。


小ぢんまりしているが、どうやら楽器屋さんみたい。



「今日ライブやるんだよ。すぐ近くのライブハウスで。500円。フォークライブだよ。」



「行きます!!」



おお、マジか。


運がいいー。

こんな小さな町で行われるレアなライブに行けるなんて。


ライブは19時30分からとのこと。


その間どっか行っとこうと、ポールニューマン似のマスターから町の観光地を聞き、ちりめん歴史館ってとこに向かった。









ここはもともと、2~3年前まで野ざらしになっていたちりめん織物の大工場。


その工場を改装して歴史館にし、一般公開している。


昔ほどの需要がないので、それほど大規模にはしてないが、それでも多少は昔の機械を使い、今もちりめんを生産しているそうだ。





ここらの40歳以上のおばちゃんたちは、ほとんどがこの工場で働くため、学校にも行かず、いろんな土地からこの加悦にやってきて、宿舎に住んでいたんだそう。


野麦峠に象徴される過酷な女工の歴史がここにもあったんだな。




今では廃墟みたいになってる建物。


着物を着る文化じゃなくなったんだもんなぁ。


時の流れは無常だ。








そしてもう1つマスターが教えてくれた場所を目指す。


176号線を下って、福知山に入ったあたりの峠をおりたところにある喫茶店『六甲プレイランド』。



山に囲まれた、ポツリポツリとしか民家のないさびしい村の道路沿いに、突然ど派手なゴチャゴチャした店が現れるからすぐわかる。




星条旗をペイントしたバイクのタンク、メット、レトロなゲーム台やツタンカーメンの置物やら。


とりとめのない建物で、入り口のドアがどれなのかさえもわかりずらい。








恐る恐る中に入ると、綺麗なおばさんとウェスタンファッションの色黒のおじさんがいた。


店内にはインベーダーゲームや、ピンボール、ジュークボックスなんかが所狭しと並べられていて、プラモデルやら着古した服とかまでぐじゃぐじゃ。


でも寄せ集めみたいな感じではあるが、なぜかとても落ちつく。






「あの、町のお店で聞いて来たんですけど。」



「あー、そうでございますか。ありがとうございます。せっかく来てもらいましたし、何か演りましょうか?」



いきなり色黒のマスターがステージに上がる。


店の3分の1を陣取ってるステージ。

ドラムセットの前にはバリバリのハーレーが停めてあり、ものすごく狭そう。




店の中にもう1人いた、これまた絶対バイク乗りって感じのお兄さんが、そこらにあったギターをとって、エコーがききまくったマイクで歌う。


マスターがドラムに入り、そのまま2曲オリジナルを歌ってくれた。







「この店はねぇ、神戸の六甲でやってたゲームセンターの残骸なんです。震災で潰れてしもうてね。たくさんの人が死にました。死んだ子供たちを抱えて、近くの体育館に運んでいくと、ものすごいぎょうさん死体が並んでるんですよ。僕はねぇ、その生き残りなんですよ。もう今53です。この場所に土地を買って、ノコギリとスコップとツルハシの3つだけで、木を切って整地して、1人で4年かけてこの店を作りました。人間50だろうが80だろうが、生きている人間はみんなこれからの人間なんです。」



凄まじい話を聞かせてくれるマスター。



この店でも今夜20時からライブをやるとのことで、必ず来ますとマスターに言いさっきの店に戻った。










車を走らせ、古い民家の並ぶ細い路地にあるライブハウス『ホワイトルーム』に到着。


このあたりのおじさんたちは、みんなこの店で若いころフォークを歌ってたらしい。


時が経ち、潰れて長いこと経っていたこの店をもう一度復活させようと、当時の人たちがお金を出しあい、こうしてまたライブが出来るようになったんだそうだ。



中に入ると椅子がきれいに並べられていて、キャパは立ち見を合わせて50~60人といったところ。


500円のチケットでワンドリンク付き。



カウンターでビールを頼むと缶ビールが出てきた。


他のメニューはどれもペットボトルのお茶や缶コーヒー。


本当に地元の人たちの手作りのお店って感じだ。



「みんなみんな!このお兄さん日本一周してるんやて!」



お昼の楽器屋のマスターが俺のことを紹介してくれた。


こんな田舎にもたくさんの音楽好きがいる。

そんな人たちの輪に入れたことがすごく嬉しい。








さぁ始まったフォークライブ。


店の中が暗くなる。


ステージ照明は小さなランプを強弱させるのみという質素さ。





1組目は地元高校生の2人組。

ゆずっ子。

甚平と雪駄姿でタンバリンとギターをジャカジャカ。

近くに街がないので彼らは土日の昼、道の駅の駐車場で観光客狙いで歌ってるらしい。






2組目はご夫婦のコンビで中島みゆき。

声そっくり。





3組目、Y’sというお兄さん2人組。

憂歌団やウルフルズなんかをやってた。




町民が集まって土曜の夜に音楽を楽しむ。

日本中にこういうライブハウスが無数にあって、今この瞬間も無数の音楽好きたちが腕を披露してるんだろうな。


テレビに出てるミュージシャンだけがミュージシャンじゃない。


みんな音楽が好きなんだから、それでいいよ。











ほのぼのとしたライブが終わったのは22時。


ダッシュで六甲プレイランドへ向かった。


今日は特別霧が深かったらしく、前がまったく見えねぇ。

橋渡ってる時なんてまるで雲の上にいるようだ。





慎重に走り、やっとこさ到着すると店の前に車がいっぱい停まってる。


中に入ると、やってるやってる。



『スモーク オン ザ ウォーター』



みんなめっちゃうまい!!





ワクワクしながらテーブルに座りカレーを注文。


すると、ドラムを叩きながらシャウトしてたマスターが、曲が終わるなりこっちにやってきた。



「今のギターが和菓子屋の店長。左手の指を4本とも機械でグチャッとやったのに復活しはった人。入院中も折れた指にボトルネックはめて弾きまくってた人です。ベースの人が運送会社の社長さん。あの人若いころワイルドラビッツゆーて、ハーレーのチーム組んでたんやけど、それ今度僕たちで復活させたるんですわ。みんな車庫につっこんでたハーレーを車検に出して、5月中に必ずツーリングいったるんです。まだ53ですからね、一発かましたるんですわ!」




そこにさっきのライブハウスの人たちも駆けつけてきた。


こうなったらもちろん俺も歌うことに。


歌い始めると店の中にいた人たちがドヤドヤとバンドに入ってくれて、結局10曲以上歌った。








「兄ちゃん次!次何や!」



「もう金丸君、どこにも行かんとうちのバンド入りやー。」



「7ヶ月も旅しててなんでそんな爽やかなん?わしらもう身も心もドロドロやで。」












時間を忘れてセッションしまくっていると、いつの間にか夜中の3時になっていた。


じゃあなー!!と帰っていくみんなを見送る。


みんな明日仕事だってのに、ほんと楽しいんだろうなぁ。



「金丸君、今日泊まっていったらええで。コーヒーだすからちょっと話そうか。」



マスターが淹れてくれたコーヒーを飲む。


ドラムやアンプが、夜中のお店の中で黙りこくっている。


灯を消した、静まったライブハウスってすごく寂しくなるのはなんでだろう。



「今来てたみんな、一番近い人でここから30Km離れてます。それでもみんないつも来てくれます。ギターの山尾さんなんてこの8ヶ月間、来なかった日は4日しかないです。100Km離れた京都市内から、コーヒー飲みにハーレー飛ばして来てくれる人もいます。ハッキリ言ってこの店、今営業できてるのがおかしいくらい赤字赤字なんですよ。それをみんな知っててくれて、わざわざ昼飯食うのにそんな遠くから来てくれはるんです。本当涙が出てきますよ。」



フォーク、ベトナム戦争、ヒッピー、ドラッグ、バイク。


そのど真ん中を駆け抜けてきたマスター。


マスターの話にやさしい微笑であいづちを打つ奥さん。



「こいつには本当迷惑かけとります。パートなんか行ってもらっとるんですわ。この店もほんまもうあかんのです。でもまだまだこれからなんです。こんなじゃ終われません。余力があるのに諦めるなんて、出来るわけありません。」



「僕の夢は手作りのログハウスで、ライブの出来るバーを開くことなんです。そしてライブのあと、散らかった店内で奥さんと2人いい感じのBGMをかけながらコーヒーを飲む。まさに今の2人みたいな感じですよ。」



「ハハハ…………そーやなー。この店にあるもん、なんかごちゃごちゃしとりますけど、私の人生そのものですもんな。ハーレー、べスパ、音楽、若いころ思い描いた理想の中に今いますわ。せやけどこんなもんで立ち止まれませんわ。もっと燃えカスになるまでやらなあきまへん。よっしゃ!歌お!」



ギターを持ってきてジャーーーン!!!と鳴らすマスター。


まだそんな元気あったの?ってくらい腹から大声を出して歌いだした。






お店のガラスは、震災のときに崩れたコンビニやビルのガラスの破片を使って作ったもの。


その窓の外が青白く染まるまで、奥さん1人を観客にマスターと2人で歌い続けた。



ずっと笑顔で、マスターを見守り続ける奥さんの手拍子が胸に響いた。




人生ってすげぇ。






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