今日はあんまり時間がなくて東寺しか行けなかった。
でもここだけでもめっちゃ見所たくさんで時間がかる。
京都の入って最初に度肝を抜かれたのがここの五重塔だった。
車を走らせていると、普通の現代的な町並みの中にいきなりめっちゃ巨大な木造の五重塔が現れる様子は、ここがかつて日本の中心だったということを雄弁に物語っている。
道路脇にこれとか、ホント京都って歴史の深い土地だよなぁ。
中に入るとめちゃくちゃ国宝の仏像があって、めちゃくちゃ迫力がある。
五重塔を下から眺めるとマジで圧倒的。
57mもあって、古い塔では一番の高さなんだって。
ここは行くべき。
マジすごいから。
あとは西本願寺と東本願寺。
西のほうには金閣・銀閣に並ぶ美しい景観の飛雲閣や、石垣島の唐人墓以上かもしれないってくらい美しい彫刻の施された唐門、203畳のどでかい広間をもつ書院は鴻の島の彫刻や襖絵など、すさまじく見事なものばかり。
東の方はどうってことなかったけど、御影堂の建物が木造のものとしては世界一のでかさらしく、迫力があった。
もうなんかすごい建物見すぎてこの巨大さに慣れてしまってるのが怖いわ。
ここから先、他の県の観光地行って感動できるかな。
帰りに少し祇園の中を散策。
祇園いいなぁ。
ここで昔どんな人間模様があったんだろうな。
昔のまんまの風景だろうから、想像しやすい。
この日はこんなもんで将軍塚に戻った。
翌日。
鴨川を眺めながらぷらぷら歩き、醍醐寺を目指した。
地下鉄が2重ドア。
都会すげぇ。
俺の地元、無人駅。
いい天気の中、醍醐寺に到着。
豊臣秀吉がここの花が好きでよく花見をしていたという醍醐寺。
今日はここで太閤花見行列というお祭りが行われるということで、ワクワクしながら12時頃にやってきたんだけどすでに人がいっぱい。
ソフトクリームをなめながら行列がやってくるのを待つ。
「太閤殿下のおなーりーー!!」
しばらくすると、出てきた出てきた。
ゾロリゾロリと江戸時代の装束に身を包んだ人たち。
侍やら何やらかんやら。
もちろん秀吉もいるし、北政所やねねたちもいるし、お化粧したかわいい小学生の女の子たちもいた。
行列は桜の中をゆっくりと進んでいき、醍醐寺の本堂に入る。
門をくぐると金堂の回廊に秀吉を中心に行列の人たちが並んで座っていた。
金堂前には特設ステージが組まれ、そこで雅楽に合わせての舞や狂言が行われる。
いやぁ、風流。
豪華絢爛。
当時の花見もまさにこんなカンジの贅を尽くした一大イベントだったんだろうな。
晴れ渡る空。
暖かい風に桜が舞う。
秀吉は遠い過去の人。
でもそれと同じ景色を眺めてる。
この前の京都御所での雅楽演奏は人だかりでとんでもないことになってたけど、今日はそこまで人がいないので演奏者のすぐ後ろまで回り込んでみた。
頭越しに楽譜が見えたけど、何が何やらわかりゃせん。
小さなノートみたいのに漢文みたいなのがつらつらと書かれている。
あれこそ、日本音楽の楽譜なんだな。
オタマジャクシは西洋の楽譜だ。
そこからさらに行列は奥の弁天堂の池のほとりまで行き、茶の休憩をしてからリターンして最初に出てきた唐門に戻っていった。
所要時間約2時間。
最初は厳しかった警備も最後のほうではかなり適当になり、行列の前から写真撮ったり、横に並んで歩いたりできた。
行列が終わったら宝物殿に行ってみた。
この寺には国宝、重文だけで4万点もの宝が伝わっており、すごく見応えがあった。
ていうか4万点てどういうこと?
そんないっぱいあったら指定の価値下がらん?って思ってしまう。
いやぁ、この寺だけでこの数だよ?
それが京都には無数のお寺があってそれぞれに宝物が眠ってるんだから宝の山だよ京都。
秀吉が設計したという、秀吉大のお気に入りの三宝院庭園も見事だった。
ここはすごくおすすめ。
醍醐寺から少し歩いて、随心院へ。
ここは世界三大美女の1人、小野小町が過ごした地で、彼女がもらった無数のラブレターで作った文塚や、彼女が顔を洗ったりしてた井戸などが残っていた。
深野少将って人が、小野小町をモノにしたがってたら、小町ちゃんが、
「だったら100日間、毎日ここに通って本気度合い見せてよ。」
と、なかなかの上からっぷりを発揮。
深野少将は毎日毎日、健気に小町ちゃんのとこに通ったらしい。
しかし可哀想なことに、99日目の雪の日に力尽きて倒れて死んでしまう。
小野小町は、深野少将がやってくるたびに1日1粒のカヤの実を埋めていたらしく、今でもその一本が大きな木として残っているという悲恋話っていうか深野さんマジ可哀想。
観光を終えたら将軍塚に戻り、気合いを入れて甚平と下駄に着替える。
今日はおそらく最後の花見の夜。
思いっきり路上してやるぞと、ギターを持って山道に突入。
うん、下駄で山道マジ愚か者。
円山公園に着くと、さすがに前回歌ったときのような活気はなかったが、それでもまだなかなか賑わっている。
枝があられになった枝垂れ桜も、朧月に励まされ、最後のひとふんばりと懸命に夜空に花びらを広げる。
そんな中、1時間ほど歌ってると、遠くのほうからヒザくらいまである黒いレザーのトレンチコートに黒いハットをかぶり鼻ひげを生やした、どっからどう見ても怪しいおじさんが一直線に歩いてきた。
俺の歌う『After The Gold rush』を聴き終え、真剣な顔で話しかけてきた。
「君にチャンスをあげよう。さぁついてきなさい。」
ギターケースをガバッと持ち上げて、彼はズンズン人ごみの中に歩いていく。
ちょ、ちょ、ちょ、な、なんだ?
急いで荷物をまとめておっさんを追いかけた。
すると、やってきたのは花見会場にある野外居酒屋さん。
公園の花見席一等地に店を構えてるとこで、真っ赤な座敷に上品そうなおじさまおばさまたちが座っている。
その中の1つに連れて行かれた。
「あらー先生!外人さんじゃあらへんやないですのー!!」
「また若いの連れてきはってー。大丈夫なんー?」
「まぁ、歌を聴いてみなさい。ええ声しとるでー。」
おばさん3人が座る席にやってきた。
「あんたなー、普通やったらこの先生、あんたなんか口もきけへん人なんやでー。光栄に思わなあかんでー。」
「まぁ、歌ってみてー。」
「はい!!」
2~3曲歌うと、その先生と呼ばれるおっさんが熱燗とおでんを頼んだ。
「ええ!!気に入った!!今日は死ぬまで飲め!!」
「あんた、どこから来てんの?」
「宮崎です。」
「えー!!おばさんらも宮崎出身よー!!日南!!あたし今日この子のお母ちゃんになるわー!!」
本当のお母さんよりもずっと年上のおばちゃんたちがベタベタ体を触ってきて、ほっぺにキスしまくってくる。
やめてくれよと思ってると先生が立ち上がった。
「よし!!次行くぞ!次!!兄ちゃんも来いやー!!」
夜の祇園をあてもなく歩く。
おばさんに腕を組まれ、やたら巨乳が腕にめり込む。
「ギャーー!!アーーー!!」
とさっきから叫んでる先生はどうやら大阪で3つも病院をやってる大先生らしく、他のおばさんたちも大阪の北新地でスナックをやってるママさんたちらしい。
「◯◯通りの料亭は私の友達の友達でしてね…………」
「あら、ボルサリーノのハットが汚れますわよ、先生。」
なんかもういかにもお金持ちですみたいな会話を聞きながらしばらく歩いていくと、先生はあてもなく一軒の高級そうなお店にドカドカ入っていった。
中にはカウンターと板前さん。
割烹着の女の人が奥の部屋に通してくれる。
部屋に通じる通路の脇には、小さな、だけど立派な玉砂利の庭がある。
茶室のような小さな部屋は壁が一面金色。
四隅には花瓶代わりの竹が立っており、いけられた花が「何だこの変なかっこうしたヤツは?」って目で俺を見ている。
めっちゃ気まずい…………
「ほら、どんどん食べなさい。あたしらはさっきあんたが一生行かれへんような料亭行ってきたんやから。どうせろくなもの食べてないんでしょ。」
イラつきながらもビールを飲み、竹の子の土佐煮ってのを頼む。
出てきたのは小鉢に小さな竹の子が4切れ。
え?これで800円?
さぞかし美味しいんだろうと食べてみると、え?全然大したことない。
これだから高級料亭ってのは…………
これでも各地の美味しいものを食べ歩いてるから、味は多少はわかるつもり。
上品ぶった大人たちってのはこれを食べて「あらおいしゅうございますわね。オホホ」とか「上品なお味で」とか言うんだろうな。
カップヌードルのシーフード食べろボケ!!!
そして料亭の中でも歌わされた。
「よっしゃ、お前大阪来い!!!桑名正博に紹介したる!!俺はあいつと友達なんやー!!ムニャムニャ…………」
泥酔してる先生。
「あんた、大阪のウチの店で週1回くらいでバイトする気あらへん?うちに車止めてもええし。あれやったら泊まってもええで。ほら、これお店の住所と電話番号。大阪来たら電話しなさい。そのかわり、そんなかっこうで来たらアカンで。北新地でそんな格好しとったらどこのはぐれかと思われるで。」
いちいちむかつくな…………
散々飲んでやって店を出た。
「あんたはもう帰んなさい。大阪来たら電話するんよ。」
別れ際にほっぺにまたチュ―されて、4人は遠くの角を曲がるまでこっちに手を振りながら去っていった。
結局、今夜の稼ぎは11000円。
ムカついたけどいい儲けになったなぁ。
深夜の祇園町。
石畳と古い木造の家並み。
提灯と柳。
人はもう全然いない。
ああ、疲れたなぁ。
橋のところに酔っ払った外国人さんがいたから「Have a nice trip」と言ったら、ニタっと笑った。
下駄を響かせ、車に向かって歩いた。
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