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可哀想なおじちゃんにお金をあげた







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今日はまず昨日の金閣寺近くの平野神社からスタート。





ここも約500本の桜が咲き乱れる桜の名所。


最初は円山公園が一番って思ってたけど、円山公園に負けない桜の名所は他にもいっぱいある。









北野天満宮は天神さんと呼ばれていて、菅原道真を祀る学問の地。


福岡にある大宰府天満宮と同じだ。

やっぱり紋章は同じ梅の花。


宝物殿が公開されており、日本地図鏡や巨大な曳馬図絵馬など、この中のどれか1つでもあれば他の県では代表的な観光地になるだろうってくらい立派なものが勢ぞろい。












北野天満宮の正門の向かいにある湯豆腐屋「とよおけ茶屋」は、毎日行列の絶えない有名店。


京都っていったら湯葉に漬物に八つ橋に湯豆腐ってくらい湯豆腐はメジャーで、どっこにでも湯豆腐屋さんがある。


湯豆腐なんてお腹にたまらなさそうだけど俺も食べてみようと行列に並んでみた。



すると上品ぶったおばさんが歩いてきて、平然と俺の前に割り込んできやがった。


このくそババアと思っていると、



「これこれ、前に並んでらっしゃるやないか。」



ババアの旦那さんが声をかけ、ババアはしぶしぶ俺の後ろにまわった。




ババアの旦那さんと旅話をしていると、店の中から店員さんが出てきた。



「1000円の湯豆腐膳は売り切れましたー!!」



後ろに並んでたやつらがゾロゾロと散っていく。


マジでー!!

意味ねー!!!


ようやく店内に入れたものの、仕方なく違うメニューを注文。


でもまぁ、有名店だけあってどれもなかなか美味しかった。

お通しの寄せ豆腐なんて、ものすごくコクがあって、豆腐とは思えないほど美味しかった。




湯豆腐の写真はないけどなぜか団子の写真。
















それから上七軒と西陣の町並みを見てまわる。



西陣っていうのは言わずと知れた西陣織の地。


旧家の並ぶ石畳の道は、今でもカコンカコンと織機の音が聞こえる。



応仁の乱の際に西軍の総大将がこの地に本拠地を構えたことからその名がつき、ここで作られる織物が西陣織と呼ばれるようになったのだという。


美香にピンク色のあぶらとり紙入れを買い、町並みを歩きながら着物の帯じめや帯屋さんなど、色んなところを見学してまわった。



















夜になると雨が降りだしてしまい、外に出られずにずっと車でヘンプを編んでい。


そしてとうとう腰につけるタバコ&キーケース入れが完成!!


あー長かったー。

思えばこれを編み始めたのが四国の徳島。


面倒でほったらかしにしてた時もありながら、やっと完成だ。


あー疲れた。















さてさて、翌日。


今日は忙しかった。まず寝坊。


寝坊!?




11時から京都御所で雅楽の演奏があるってのに起きたのが10時。


猿のように森の中をダッシュで駆け抜け、汗だくでやっとこさ京都御苑に到着!!!


広すぎ!!


人だかりを見つけ走っていくと、そこは京都御所の入り口。





京都御所とはかつて天皇が住んでいた皇居跡のこと。

つまり現代の御所は東京だ。


その他、上水尾上皇の住居のあった仙洞御所など3つの御所と、それを取り囲む広大な公園を全部合わせて京都御苑という。




普段は御所の中には入れないけど、春と秋だけ一般公開していて、しかも土曜ってんでアホほど人が詰めかけている。


さすがに昔の皇居跡だけあってものすごく豪華。


敷き詰められた玉砂利が規則的に波打つ。


小雨を降らす灰色の空に真っ赤な漆塗りの門が映える。






てゆーか、雅楽の演奏、見えん!!

人だかりできすぎ!!









背の高い人は席替えで後ろの方に行かなきゃいけないって学校で教えてもらったやろ!!!

せめてかがめよ!!!


あと、小雨の中みんな我慢して濡れてるのに、堂々と傘さしてるアホがおるから傘で全然見えん!!!













御苑を出てから行列のできてた敦盛そばを食べて、すぐに嵯峨野へ。


結構遠くまで乗るんだけどやっぱり市バスはどこでも220円。



嵯峨野の清涼寺にやってきて、寺の隣にある有名な豆腐屋「森嘉」へ。


厚揚げと豆腐を買って、外の椅子に座って厚揚げをそのまま食べる。


さすが有名店。

すごいコクだ。

マジで美味しかった。












14時30分頃から境内にある舞台で狂言を見た。




坊さんが女を寺に連れこんだらそこに参拝客がやってきてしまい慌てた坊さんたちは本尊を祀る戸の中に女を隠し、何とか参拝客を帰そうとするも、直に本尊さんを拝みたい、ご開帳してくれと参拝客に言われ…………


とまぁ、こんなストーリーだったんだけど、これを娯楽として楽しむには俺はまだ若すぎるなぁ。


途中眠くなったもん。






宝物殿にはたくさんの国宝が納められており、その中に本尊である釈迦如来の胎内から出てきた絹製の五臓の模型も展示されていた。


中国でこのご本尊が作られた時に入れたものらしいが、つまり、1000年も昔に中国では人体の構造がわかっていたらしい。









まだ時間があったので、あだし野念仏寺へ向かった。





奥嵯峨の町並みはすごくいい。

山に囲まれた小さな集落で、石畳の道の両側に茶屋や土産物屋が並ぶ。


清水や金閣・銀閣みたいに混雑してなく、静かですごく落ち着ける。









「お兄ちゃん、お茶飲んでいきんさーい。あ!もう時間あらへんなぁ。はようお寺行ってきなさい。帰りに寄ってなぁー。」



茶屋のおばさんに声をかけられながらあだし野念仏寺へ。

このあたりが一番奥の方みたいだ。この先は土産屋も全然ない。
 






竹林の道が綺麗な念仏寺をちょろりと見てからさっきの茶屋に戻る。



「おかえりー。あのね、本当はあの先にもっとええとこがあったんよー。でももう時間なかったから教えへんやったの。また次来たらええわー。それでな、あの道はな…………」



おしゃべり好きなおばさんからいろんな嵯峨情報を入手。


タダで試食の生八つ橋を食いまくり、試飲の梅コブ茶をいっぱい飲ませてもらい、おばさんとおしゃべりして別れた。


おばちゃんありがとう。









もう日も暮れたけどまだ行くところはある。


次はライトアップの二条城!!


家康が築いたお城で、御所の守護や将軍の上京時の居城など、重要な役割を担っていたようだ。



ここすごい。



円山公園のライトアップより、断然こっちのほうが良かった。











さてそろそろ車に戻るかなと堀川御池から歩いて将軍塚までテクテク歩く。


1日中歩き回って足が痛いけど、夜の京都も味があって楽しい。



すると、いきなり後ろから声をかけられた。




「あのー、すんません、実は私、今日滋賀の大津からここまで歩いてきてるんですけど、今から三田まで行かなあきまへんねん。電車で行こうにも1円もお金持ってなくて。1450円貸してもらえんですかねぇ。もうさっきからずっと断られてて…………ほんまお願いします。」



手提げかばんにスラックス、ポロシャツのおっさん。


聞けば、母親が死んで、入院費でお金が一切なくなり、昔のコネを使って兵庫県の三田市に働き口を見つけ、そこに向かう途中だったらしいが、大津から歩いてきてさすがにここにきて歩き疲れたのだという。


ここから三田なんか歩けるわけねぇ。







目の前にはおじさんの疲れきった顔。



哀れそうな表情で、懇願している。



…………あぁ、俺も沖縄に渡って死にかけてたとき、こんな顔をしてたのかなって思った。





あの日々が頭に浮かぶ。


沖縄で金がなくなり、3日間ろくに飯も食わず、台風の中びしょ濡れで夜を過ごしたあの日。


安宿にフラフラと入っていき、チャーリーさんと出会い、照りつける太陽の下でぬるいビールを飲ませてもらった。


疲れきった俺に、彼は汚れたポシェットの中からクシャクシャの千円札を2枚取り出してこう言った。



「この金は俺には返さなくていい。そのかわり次お前が困っている人に出会ったらその人に返してやるんだ。ユイマールの輪を広げていこうや!!」



涙をこらえながらぬるいオリオンビールを流し込んだあの屋上での出来事。







「おじさん、俺沖縄でこうこうこういうことがあったんです。だから次はおじさんの番だよ。忘れちゃダメだよ!!」



「はい!!必ずそうします!!ありがとうございます!!ありがとうございます!!」




1500円を渡し、おっちゃんと別れた。


振り返ると、おっちゃんは夜の光の中で何度もこっちに頭を下げていた。


あの金、おっちゃんが本当に電車代に使うかなんて、そんなことはどうでもいい。


あの時のチャーリーさんと同じことができたことがすごく嬉しかった。











四条通りは人でごった返していた。


実際はそうでない人もいるんだろうけど、人々の顔は楽しそうに見える。




橋を渡り、円山公園に入ると、最後の花見の夜ということでかなりの人が集まっている。


でも俺の心はどうしても浮かない。


人ごみにまぎれてしまう自分が悔しくてすぐに外に出たくなってしまう。


この引き癖はいつからついてしまったんだろう。




人ごみから、土曜の夜から、音楽から、逃げるように暗闇の坂道を登った。










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