京都市内にある将軍塚ってところの駐車場にやってきた。
ここ完璧!!!
街から結構離れた山の上の寂れた展望台にある駐車場ななんだけど、もちろんタダな上に、なんとここから気合いで山道を下っていけば東山区の知恩院のすぐ裏に出ることができる。
ここからなら銀閣寺から二条城まで足を伸ばすことができるぞ。
当分はここが拠点だな。
早速将軍塚に車を止め、ちょっとしたハイキングコースみたいになってる山道を降りてみた。
しかしハイキングコースとはいってもほとんど誰もこんなところ歩かないのか、かなり荒れている。
斜面もキツく、滑りそうになりながら降りていく。
10分ほど森の中をズンズン降りていくと、やがて森を抜け、お寺の裏みたいなところに出て、公園になっていた。
すげぇ!!!!
人おりすぎ!!!!
桜すごすぎ!!!!!
かなり広い公園がピンク色の海になっていて、花見客で溢れかえっていた。
とんでもねぇ!!!
こ、これが円山公園ってやつか!!!!
もう昼間っから酒飲んで大騒ぎしてる人ばっかり!!!
さらに公園のど真ん中にはひときわ巨大な桜の木が青空にそびえたってる!!!
なんだこの桜!!!
こんなデカい桜見たことねぇ!!!
立派すぎる!!!!
そんな公園の周りにはいかにも歴史のありそうな巨大なお寺がズゴンズゴンたっている!!!!
京都すげすぎる!!!!
こ、これが日本No. 1の観光地!!!!
うおっしゃあああああああ!!!!早速京都観光だぜえええええええ!!!!
と言いたいところだったんだけど、ちょっとその前に終わらせておきたいことがある。
久しぶりの友達と再会の約束もある。
はやる気持ちを抑えて、とりあえず車に戻ってアクセルをふかした。
「久しぶりやなー!!」
車を走らせて明石まで行き、数ヶ月ぶりに再会したのは沖縄で知り合ったあのベルナルド君こと、タカ君だ。
タカ君はあの安宿で出会った時と変わらずスキンヘッドだった。
大阪から仕事で明石市にやってきており、今日一緒に飲もう!!ということになっていた。
彼の新築のアパートでビールを飲む。
まだ引っ越したばかりで「アリさん引越し」のダンボールが片隅に積まれてあった。
うう…………思い出したくもない引っ越しバイト…………
「ええなー。俺も旅したいわー。」
沖縄の安宿で知り合った頃は、お互い所持金ゼロっていうか、マイナス状態で、ツケ泊まりしていた。
バイトして稼いだなけなしの金でみんなで飲んだあのオリオンビール…………
ほんとに懐かしい。
あの頃に比べたらずいぶん優雅な生活をしているよな。
俺はまだ旅の途中。
ベルナルド君は就職してすでにサラリーマン。
沖縄での日々がもうずっと前のことのように感じられた。
翌朝、ベルナルド君の部屋でマーガリントーストを食べ、朝7時に一緒に家を出た。
「またねー!!無事一周してきてなー!!」
タカ君と別れて向かったのは宝塚。
そう、今日はあのアトムが漫画の中で誕生した遠い未来、その日なのだ!!!
前回行った時に手塚治虫記念館でアトムの誕生まで20日って書かれていたから、きっと何か特別なイベントがあるはずと期待してやってきたわけだ。
緊張しながら手塚治虫記念館に行き、あのアトムが寝ているブースの前にスタンバる。
ついに、ついにアトムが誕生する。
手塚治虫が思い描いた技術の進歩した近未来に、今俺はいる。
アトム誕生の瞬間に立ち会えるなんてすごすぎる!!!!
その時!!!!
横になっていたアトムが動いた!!!!
ぐいーーーーーん
「みんな、はじめまして!!」
……………………
え?
終わり?
えええ?
終わったの?
イベント終わったの?
アトムがただ上半身起こして「みんな、はじめまして!!」ってほざいて終わり?
俺の手には入場の際にもらった安そうなアトムの人形。
ちょっ!!!!!
それでいいの!?!?
アトムの誕生だよ!?!?!?
もっとこう町をあげてイベントしたりしないの!?!?
なんかめっちゃ肩すかしだわ…………
一応撮影会やってました。
今日は驚くことに宝塚ファミリーランドの閉園日でもあった。
80年以上にわたって人々を楽しませてきたこの遊園地がなくなるとあって、そりゃもうお客さん多すぎ。
民間の駐車場や空き地までが特設パーキングに早変わりしており、どこもかしこも満車。
道路には車があふれている。
アトムの誕生日とかマジで誰も無視。
道端でパーキングと描いたうちわを振りまくっていたお婆ちゃんに話しかけてみた。
「私らの小さい頃はまだファミリーランドもそりゃ小さい、ほったて小屋のようなもんでしたー。ああ、あの時大火事がありましてなぁ。歌劇場にも火が行きましてねー。」
懐かしそうに話すお婆ちゃんは92歳。
「お婆ちゃんたちの頃で歌劇団の大スターって誰だったの?」
「そりゃーもう、天津乙女(あまつおとめ)でっしゃろなぁ。あーあの人に踊り踊らせたらもう天下一品でしたわぁ。みんな、あの人に憧れて踊りの練習したもんですわ。」
アトムの誕生日に遊園地が閉園って、なんか夢があるような無いような話だな。
アトムにガッカリしながらも車を飛ばし、夜の京都に入って将軍塚に到着後した。
すぐにギターを持って山道に突入。
もちろん外灯なんかあるわけないただの真っ暗な山道をコケそうになりながら降りていく。
なかなかの斜面で、ここをギターを持って下って行くのはかなり危ない。
そうしてしばらく降りていくと、やがて木々の向こうに灯りが見えてきて、酔っ払いの声も聞こえてきた。
ドキドキしながら慌てて森を飛び出し、公園に行ってみると、そこにはとんでもない光景が広がっていた。
すげぇ!!
なんだこれ!!!
公園の中は酔っ払いたちの笑い声と一気呑みの掛け声がこだましており、所狭しと足の踏み場もないほどに敷き詰められたブルーシートとゴミの山とそこら中に寝転がった泥酔者たち。
ほとんどカオス!!!!
宮崎では見たこともないような大混雑のお花見会場。
お祭りでもこんなに人いないぞ、とふと前を見ると、昼間に見たあの巨大な桜の木がライトアップされて浮かび上がっていた。
ライトアップされ、まるで絵のようにくっきりと真っ白くそびえ立っている。
ヤバすぎる…………
神々しさすら感じる…………
周りに群がる人、人、人。
昼間よりもさらに人出が凄まじく、ろくに歩くこともできないほどに人間が密集し、外国人だらけでそこだけ多国籍な空間になっている。
周りを見回せばあたり一面夜桜の海。
すげぇ、桜の期間中、毎晩のようにこんな宴が繰り広げられてるのか。
京都すごすぎる。
こんなことやってたのかよ、俺が宮崎にずっといた間。
俺の知らないところでこんなすごいことやってたなんて知らなかったのがもったいなさすぎる。
そんな巨大な枝垂れ桜の前にあるベンチに腰掛け、歌いまくった。
たくさんの人が話しかけてきて「泣ける曲をお願いします」と言ってきた女の人に、俺の『桜の季節』って曲をを歌ったら号泣してた。
24時をまわるともうだいぶ人も少なくなり、それでも酔っ払いたちの宴はとどまることを知らない。
「ヒャーーーーーハッ!!」
「ウヒョー!!ガハハーー!!」
向こうの方でジャンベを叩きながら6~7人で踊り狂ってる連中がいる。
髪を振り乱しながら女も男も気がふれた様に体を動かしている。
酒の力ってすごい…………
そんな狂乱の花見会場を後にし、公園の奥の暗がりに歩いていき、真っ暗な山道に入る。
気合いで斜面を登り、やっとこさ将軍塚まで戻ってきた頃には汗だく。
寝る前にこんな汗かきたくないけど無料のパーキングのためだから仕方ない。
一応ここも観光地なので駐車場の端っこにたこ焼き屋台が出ており、そこで寝る前の腹ごしらえ。
「えっ!あの山道登ってきたの?!いやー野良犬に気をつけなあかんでー。」
野犬なんか出るのかよ。
まぁ、なんとかなるか。
それにしても花見での路上楽しかったな。
当分は昼に寺巡り、夜は花見で歌。
こんな感じでいこう。
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