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ミックジャガーに会えた日







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今日も路駐でおねんして10時にリッツカールトンにやってきた。





すでに何人かストーンズファンが集まってる。

話しかけると、ゆうべからずっとロビーにいた人もいるらしい。


今日、ストーンズは大阪から離れる。

追っかけラストチャンスだ。






そんな中、伊藤さんっていう千葉からやってきた人と仲良くなった。


前回のストーンズ来日の時も追っかけをやってたという相当なマニアだ。



「まず、ここでメンバーが出てくるのを見てから、メンバーの車の後ろにタクシーをつけるんです。そして高速に乗ったらビュンビュン飛ばしてもらって、空港に先回りしてそこで前回サインもらったよ。ミック以外の全員分のサイン持ってるよ。ミックテイラーのも。えっ?お兄さん車なんですか?それじゃあ高速代出すから乗せてってもらえませんか?…………運転は自信あります?」



伊藤さんと話していると、しばらくしてやっぱり始まった。

昨日と同様、ホテルの人たちによるファンの締め出し。




ソワソワしながら表の出口で待っていると、キースの奥さんと2人の子どもが出てきた。


それからまた何時間か経つと、『ギミーシェルター』でミックと一緒に歌うリサが出てきて、バックバンドを乗せたバスがゆっくり走ってきた。


他のファンが目もくれない中、美香と俺だけ走っていき、ベロマークカーテンを広げて思いっきり手を振った。


バスの中のみんな、笑って手を振ってくれ、俺たちの写真を撮ってる人もいた。


リサ、カッコいい!!!






やったね、リサフィッシャー見たねーと美香と喜びながら元の場所に戻っていくと、またファンたちが忽然と消えていた。



「やばいっ、また昨日みたいにかわされてしまう!!」



もう同じ手は食わんぞ!!!


ホテル周辺を急いで周ると、裏口の地下駐車場出口のあたりに、30~40人ぐらいの人だかり!!!


まちがいねぇ!!!


ここから出てくる!!!!



しかしここでは他のファンに紛れてしまうので、キョロキョロ周りを見回して、確実にこのルートを通って外の大通りに出るであろう離れた道のところにスタンバイ。



ベロマークのカーテンを広げて今や遅しと待つ。


このカーテンは先日、美香と神戸の高架下商店街で購入した白い布に俺がペンキで思いっきりベロマークを描いたもの。


これは間違いなく超目立つ。




「絶対に飛び出したり走ったりしないでください!!本当に危ないですから!!!」



警備員というより、もうプロのセキュリティーの怖い人たちがファンの前に立ちふさがる。




そのとき、ファンの叫び声が響いた!!!



見ると、真っ黒いリムジンが駐車場から出てくる!!




うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!


来たああああああああああああああああ!!!!!




出入り口のとこのファンの群れを通り過ぎると、予想通りリムジンは俺たちのほうに近づいてきた!!!



俺たちの周りには誰もいない!!!!



カーテンを広げて手を振りまくる!!!!!





リムジンの一番後ろの窓が開いてる!!!





「きゃーーーーー!!!」



「ミックーーー!!!!!」




窓の中にはミックジャガーがいた。



ミックが窓を半分くらい開け、こっちに手を振ってる。


ミックとの距離、1m。


手を伸ばせば届く距離で、ミックがあの笑顔で俺たちだけに手を振ってくれた。



「サンキュー!!サンキュー!!!」



興奮して叫ぶ俺たちの後ろをファンたちが走り抜け、さらに前をセキュリティーたちが走りぬけ、車を追って曲がり角の向こうへ消えていった。



「よし!!いくぞ!!」



急いでファントムに戻り、伊藤さんを探しに戻る!!!


こっから関空まで先回りだ!!!!



がしかし、伊藤さんがいない!!!


どこにもいない!!!


くそ!!どこだよー!!!とか言ってると、さっきの地下駐車場から今度は1台のバンが出てきた。


スモークで中は見えないけど、セキュリティーが周りを取り囲むように走ってついて行ってる。



「メンバーの誰かだ!!」



ソッコーでファントムをバンの後ろにつけ、後を追いかけた!!!


信号や渋滞で止まる前のバンの周りを、道路の真ん中だというのにセキュリティーたちが取り囲んでいる!!!



「やっべー絶対メンバーの誰かだ!!」



焦っていると、バンの周りをウロチョロしてる不審者発見!!!!


伊藤さんウケる!!!



「伊藤さーん!!こっちこっち!!」



ダッシュして乗り込んできた伊藤さんと、バン追跡開始!



「あれロニーだよ!!助手席に乗ってたのロニーのセキュリティーだよ!!他のメンバーはもう先に行ってる!!」



メンバーのセキュリティの顔まで知ってるとか伊藤さん変態!!!!



バンを追いかけ高速に乗り、120Kmでバンを追い越す!!!!



そして関空に先回り到着!!!



入り口に他のバンが止まって、キースが降りてるのが見える!!!



うおおおおおおおおおお!!!


キースだあああああああああああああああああ!!!!




「早く!!早く!!」



「あああ!!やっちまった!!!」



間違ってタクシー乗り場に入ってしまい、無理やり中央分離帯のバス乗り場に車を乗り入れ、反対側の一般車線に飛び出し、車を横付けした。



「よし!!行きましょう!!!」



「あー!!やばい!!見つかったぁぁぁ…………」



はっ?と思い顔をあげると、ピー!ピッピー!!と笛を吹きながら鬼のような顔して婦人警官2人が全力でこっちに走ってきた。



「アカンやろー!!何してんのアンタ!!!ほら、免許証見せてー!!!」



後から駆けつけた2人の警官と合わせて4人に囲まれ怒鳴られまくってる向こうで、メンバーが空港内に入っていくのが見える!!!



「誰かの見送りかなんかなん?」



「あ、あの!!あそこ!!ローリングストーンズの見送りなんです!!あ、あそこにいるんです!!」



「あ!!?あーそうか、ほな、はよ行け!!でも誰か1人は犠牲にならなあかんで。」



「美香行け!!早く!!がんばれよー!!」



「うんっ!!!」



駐車場に止めてきなさいと警官に言われ、猛ダッシュでかなり離れた駐車場にドリフトで車を止め、サル並みのスピードで階段を駆け上がりロビーにヘッドスライディング!!!


広すぎる!!!


人多すぎる!!!


どこだ!?






「文武!!」



声のする方を振り返ると、伊藤さんと美香が立っていた。



「どうだった?」



「全然だめだった…………警備すごすぎて…………デジカメもセキュリティーに手でふさがれてはじかれるし。でもね、ロニー見れたの!!!めちゃくちゃかっこよかった!!」



「ほんと警備すごかったんですよ。しつこい奴とか警備員に外出すぞ!!とか言われてたし。近づくこともできなかったよ。」



心臓どうにかなるんじゃないかってくらい息切れしながらその報告を聞き、思いっきり脱力。


すぐ目の前でピンクの電話のミヤちゃんが群集に写真とってください、なんて言われてる。



「くそぉぉぉデブが…………ハァ!!ハァ!!…………ハァ…………」



しばらく呆然として動けなかった。



「ほんとすいません…………なんか警察とか変なことになっちゃって。ロニーのサインもらえたらあげるつもりだったんですけど…………でももし良かったら前回の来日の時のロニーのサインあげましょうか?」



申し訳なさそうに言う伊藤さん。

ありがたくいただきます、と住所を教えると彼は高速代3000円を俺に渡し、そのまま飛行機で千葉に帰っていった。




終わってしまった…………


3日間にわたるストーンズ追っかけ…………


成果は、1mの距離で笑顔のミックと目が合ったのと、美香が撮ったセキュリティーに叩かれて画面真っ黒なデジカメの動画。


あと、伊藤さんがくれるというロニーのサイン。




ああああああ…………間近でメンバー見たかった。


見たかったよーーー!!






ガックリしながらフェリー乗り場まで車を走らせた。


美香は今日帰る。


無言の車内。



燃え尽きたように2人とも押し黙る。



「…………美香…………今日帰るの?」



「……………………」



まだ時間があったから、少しドライブした。

高くてクソまずいうどんを食べると、むなしくなってしまった。



「美香、今日本当に帰ると?」



結局、明日まで美香は残ることになった。

ストーンズ追っかけでろくに観光してなかったからな…………



明日は2人でゆっくりたこ焼きでも食べに行こう。


 
















今日はコンビニで美味しいたこ焼き屋を調べて、美香と2人、最後の大阪を周った。


最初にやってきたのは玉出の会津屋。
  












たこ焼きはこの店で最初に作られたらしく、まさに元祖。


調味料を何もつけず、裸のままで食べるんだけど、すごくうまい。

ダシがめっちゃ効いててマヨネーズ大好き人間の俺だけど、そのままで全然おいしかった。




次は山王寺駅裏のやまちゃん。

やっぱりここも行列。




10個300円+50円でネギぶっかけ。


ここもソースとか何もつけないのが一番うまいって張り紙がしてある。


何種類もの野菜や果物を煮込んでかつおや昆布のダシをとりまくった生地は、やっぱり本場ならではなのかな。


すっごくおいしかった。








写真を現像して美香に渡し、堺市あたりにあった喫茶店「ぴゅあ」でコーヒーを飲んだ。


化粧のケバい、人の良さそうなママが話しかけてくる。



「ケーキ、食べない?」



「あっ?え?はい!!いただきます!!」



「あら、お姉さんに言ったんやけど。お兄さんも食べる?甘いもの好きなん?」



「え…………あ、はい!!大好きです!!」



手作りのチョコレートケーキを食べながら、ママにフェリー乗り場までの道を聞いた。



「2人遠距離なん?」



「はい、そうなんです。」



「あらまー!!大変ねぇ、ほんまにねぇ。でもいい子見つけたねぇお兄さん。」



美香はほんっと、他人ウケがいい。

一緒にいるとみんな美香のことを褒める。



周りにいた他のお客さんのおばちゃんも混じり、いろんな話をした。



「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥やさかいな。」
















泉大津のフェリー乗り場に到着し、乗り込んでいく美香を眺めた。


こうやってフェリーで見送るのは初めてだった。


少しずつ岸壁から離れる、すごくでかい新小倉行きのフェリー。




ターミナルから船が見えなくなり、すぐに車に戻り、岸壁沿いにフェリーと並走しながら端っこまで走り続けた。


米粒ぐらいになりながらも、甲板から大きく手を振ってる美香。


俺も広がる限りに手を広げ、振りまくった。



次に会えるのは早くて4ヵ月後の夏か。


早く茨城に行くぞ。













国道1号線に乗り、一気に京都市内にやってきた。


コンビニに寄って京都市の地図を見ると、確かに小学校で習った通りに碁盤の目だ。


道が全部、直角並行。


十条通りとか七条通りとか、わかりやすいんだか、ややこしいんだか…………









とりあえず駅に行ったけど、くそでかい。


建物凝りすぎ。


変な吹き抜けとか、鉄パイプの張り巡らされた天井とか。


そこら辺のビルよりも全然高くて、カップルだらけの屋上からは京都の夜景を見渡すことができた。








堀川通りってとこに行ってみると、人でごった返す路上ですごくカッコいいストリートミュージシャンを見つけ、色々情報を聞いた。





「京都は路駐はあかんよ。路上で歌うんやったら、ここらか駅やなぁ。」



大阪みたいにはいかないみたいだ。

安全に車を止められる場所を探さないとな。








そこから寝床を探して走り回ったんだけど、全然いいポイントが見つけられない。


路駐はヤバいってさっきのお兄さんが言ってたし、どこもかしこも建物まみれだし、とても眠れそうなスペースがない。



もーいやだ…………もーいやだ…………




探し回ること3時間。



市内を出て、どこまでも走り、疲れ果てたころにあの有名な比叡山の近くまでやってきた。


やっと京都に入ったけど、寝る場所探しで3時間もかかり、すでに夜中の3時をまわっているとかホント勘弁してほしい。





やっとこさ山道で駐車場を見つけ、車をとめることができた時には疲れ果ててグッタリ。



やっぱ都会は疲れるわ。


美香との日々でお金もほとんどなくなってしまったし、またそろそろ仕事しないと。


いいの見つかるかなぁ。






【兵庫、大阪ストーンズ編】

完!!






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