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美香との再会







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福岡空港に変態出現。








恥ずかしすぎる!!!





この前、大分の宇佐神宮でお守りを買わずになぜかゴリラのマスクを買ったんだけど、こんな都会の空港でかぶるとかマジ怖い!!!



ていうかなんで神社にゴリラのマスク売ってるの!?!?


それも怖い!!!!





でもこれで美香を脅かしてやりたかったんだよなぁ…………



意を決して、え?なんかおかしいですか?僕の地元じゃ普通ですよ?みたいな顔して、離れたところから到着ゲートを見張る。




柱の影から到着ゲートをのぞくゴリラ。



マジ恥ずかしい。








あまりにも恥ずかしくなって、限界を超えて、ベンチで頭抱えてうずくまっていたら、いきなり後ろから誰かが抱きついてきた。


顔を上げると美香が大笑いしていた。



「あはははは!!!ほらっ!!行くよ!!」



強引に俺の腕を引っ張る美香。


女の子につかまれて歩くゴリラという意味不明な光景に、空港内の人たちがギョッとした顔で振り返っていた。











久しぶりの美香とイルミネーションが煌めく天神を歩き、一風堂でラーメンを食べ、マリノアシティへ。


世界で2番目にでかいという大観覧車に乗り、大分で作った香水をプレゼントした。





抱き合ってると、本当に観覧車が止まってしまうんじゃないかと思えた。
   








中央埠頭の建物の影に車を止める。


美香の荷物が増えたことで、あんなに広かった車の後ろがただの物置状態だ。


そのすき間に敷いた毛布に2人でもぐりこむ。



美香の頭がオレの手の中にある。

少し力を入れたら壊れてしまいそう。


やわらかい美香の体。


キスもしないで2人眠りについた。

















そして次の日、思いっきり交通事故した。






マジでもう…………


こ、これから美香と楽しい数日を過ごそうと思ってたのに…………





たこ焼きを買ってスーパーの駐車場で食べようとウキウキしながらバックしていたら、後ろにいた白のベンツに思いっきりブチかましてしまった。




死んだあああああああああああああ!!!!!


白のベンツウウウウウウウウウ!!!!!


玄界灘に沈められるうううううううう!!!!




光速で車を降りてアスファルトの上にヘッドスライディング土下座をしたら、なんとベンツ、新車。




玄界灘ああああああああああああ!!!!!










旅に出て4県目で早くも人生終わるとか日本一周マジツライって思ってたら、運良く相手のおじさんはヤクザさんではなく、玄界灘には沈めないとのこと。


しっかりと話し合い、保険屋さんに連絡するととりあえずお金は手出しせずに済みそうなことがわかって一安心。




おじさんと別れ、車に戻る。



「と………とりあえず………たこ焼き食べようか………」



「あ、う………うん………おいしいね………」



「ていうか味わかんねぇ。」



人生初の事故が新車のベンツとかマジで血の気引いたわ………


さっきまでの楽しい気分が一瞬で消し飛んでしまった。


もうため息しか出なかった。







なんとか気を取り直して、その後2人で湯の華温泉というところに行き、温まった。


冷たい海の水じゃなくてよかった。













寝る場所を探して走り、どうせなら起きた時に景色のいい場所にしようと、若杉山の頂上にやってきた。


そこにはもう言葉にならない光景が広がっていた。





すごすぎる。


九州一という噂を聞いていたこの若杉山展望台。



ガラスについた蒸気の水滴のような光の粒たちが、都会のスモッグを赤く染め上げている。


フロントガラスが映画のスクリーンみたいで、美香と2人、寒さに白い息を吐きながらその夜景を見つめた。



「帰れない二人」のように、街の明かりがぱっと消えないかなぁ。
















翌日、ベンツのおじさんの家に謝罪しに行った。


保険屋さんが全部やってくれるというので別に行く必要もないんどけど、やっぱりそこはちゃんと謝っておきたい。


しかし夜までに3度おじさんの家に行ってみたけど、結局ずっと外出してて会うことはできなかった。


明日また行くことにしよう。


美香と一緒にいる間にやりたいこと、行きたいとこをいろいろ考えていたのに、それが昨日の事故によって狂ってしまい、本当に美香に申し訳ない。

















長浜の屋台でラーメンを食べ、親や友達に送るための写真を現像し、封筒に入れる。


港に止めた車の中で年賀状作りをしていると、突然むなしくなってきてしまった。


ため息が出て、何も喋れない。


今日1日、何もしてない。


そのことが一層その気持ちを引き立てている。



人って孤独だね、なんて言ってると、美香の目からポロポロと涙が流れた。



「あれ、あれ、どうしたんだろう。」



拭いても拭いても出てくる涙。


どうしたんだよ、と声をかけていると、どんどん美香の呼吸が荒くなり始めた。



「ヒューッ、ヒューッ、ほ、発作が、ヒューッ!!」



マジかよと思いながら、背中をこすってると、しばらくしてやっと落ちついてきた。




過呼吸症候群という発作が秋ぐらいからたまに出るようになったというのだが、俺はなんてダメなやつだ。


孤独はどうしようもないけど、女に不安を与えてしまうなんて。


体の弱い女なら、なおさら優しく扱わないと。






それにしても、彼女の横にいるのにあんなにも孤独な気持ちになったのは初めてだった。

1人だから、取り残されてしまったから孤独じゃないんだ。

誰もが孤独なんだ。


それに気付かないように気付かないように、わずらわしさに身を任せるんだ。


わずらわしさがない今、直に孤独が染みてくる。






美香が発作を起こしたことで更に悲しくなった。


石垣島のキビ狩り仲間宛に、


「マージャンの借り、入れておきます」


と書き、封筒に千円を入れた。















翌日、ようやくベンツのおじさんにお会いすることができ、菓子折りを持って謝罪することができた。


新車のベンツを傷つけてしまい本当に申し訳なかった。




おじさんへの謝罪が済んだら、これで博多でやるべきことは終了だ。


というわけで午後に少し車を走らせて大宰府天満宮にやってきた。





大宰府は言わずと知れた学問の神様。


平日だというのに制服姿の学生がいっぱいいる。


庭を歩くと、至る所に梅の木が植えられており、春先はさぞかし綺麗なんだろうなぁと想像できた。


冬に身を寄せ合って歩くのもいいけど、春に梅の花びらを浴びながら歩くのも素敵だな。




























博多に戻り、バイトでお世話になったハゲおじちゃんのところに少しだけ挨拶に行き、専門学校時代の友達にも少しだけ再会。







夜になってイルミネーションがすごいと聞いていたキャナルシティにやってきた。


テクテク歩き、広場に抜けた瞬間、ものすごい明かりと巨大なクリスマスツリーが現れた。











    

趣向を凝らしたデザイン、サンタや教会、ツリーなどに群がり、恋人達や家族連れが笑顔で写真やビデオを撮っている。


走り回る子ども達、身を寄せ合う恋人達。


俺たちにそれに混じって写真を撮った。


















          











キャナルのラーメンスタジアムでラーメンを食べ、福岡の街を抜け出して志賀島というところに向け走った。


さっき寄ったバイトのハゲおじちゃんが、志賀島からの夜景は最高だよと言っていた。



海の中道やマリンワールドを突っ切り、暴走族がいっぱい出るという、広い直線の道をアクセルを踏む。






しばらく行くと、道路脇にやたらたくさんの車が止まっているのを見つけた。


あ、あれが志賀島名物の金印ドッグだ。


車売りのホットドッグ屋さん。







噂は聞いていたので、2人でひとつを食べようと車を止め、注文する。



「11番の番号呼びましたら来てください。」



どっからどう見てもヤンキーの兄ちゃんが無愛想にそう言う。


出来上がるのを車で待つ。


すぐ横の浜から聞こえるさざ波の音が心地いい。










出来上がったホットドッグを受け取り、美味しいねと2人でかじり、それから寝床を探して真夜中の海岸線を走った。


海沿いの道に、ふと沖縄を思い出す。



ついこの前のことなのに、あの暑かった日々がもうずっと前のことのように思える。



きっと今日のこの風景も、すぐに遠い昔の日々になる。








展望台に車を止めると、時計が24時を回った。



「誕生日おめでとう。」



美香と一緒に毛布にくるまって、俺は21歳になった。






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