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沖縄最後の夜







リアルタイムの双子との日常はこちらから







テキトーに定食屋でご飯を食べ、その店に荷物を預かってもらって那覇港まで歩いた。


1時間ほどでやっとたどり着き、サトウキビのバイトのチラシを置かせてもらい、また歩く。


いろんな人に、ブーツで歩くの辛くない?って聞かれるけど、このウェスタンブーツは俺のトレードマークだ。



とはいっても両足に3つずつくらいマメができている。

マメをかばうように変な歩き方してたら筋肉痛になるし。







定食屋さんに戻って荷物を取り、今度は首里城まで歩いた。


これはさすがに遠すぎた…………


ずっと上り坂で、10mほど歩いては休憩して肩を休ませ、また歩き出す。


肩が痛すぎる…………


痛すぎて感覚がなくなってきてる…………



「気合だぞ文武ー。根性だぞー。」



1人でブツブツ言いながら足を動かし続けた。














国宝にも指定されていたのに戦争によってほとんどがぶっ壊されてしまった首里城。


でも昔の写真なんかを元にしてキレイに復旧され、ほとんどの工事が終わってるみたい。


今でも沖縄の観光名所ナンバーワンだ。





真っ赤な漆塗りの建物。

教科書で見たなぁ。






中に入ると、まさにラストエンペラーの世界。

1400年代にはもう建ってたって言うんだからやっぱり文化の違いを感じる。


ほとんど中国だ。





















首里城を後にしてヒッチハイクで読谷村に向かった。


ずっと気になっていた高橋歩のビーチロックハウスに行くためだ。


これまで沖縄の安宿で出会う若い旅人たちから聞いてきた高橋歩っていう名前。


旅人のカリスマというが、一体どんな人なのか会ってみたい。





ていうかなかなかヒッチがつかまらない。


早くしないと深夜になってしまうぞと焦っていると、やっと1台の車が止まった。


乗せてもらった後にその理由に気付いた。


ダンボールに「読谷」と書いたつもりが「続谷」になってた。













読谷のビーチ沿いを走り、いろんな人に場所を聞きまくり、だいたいこの辺りかなってとこまでたどり着いた。


しかしそこからどうしても見つけることができず、住宅地の中を30分ぐらい行ったり来たりを繰り返した。



「あー、あの建物ですよ。」



そこらへんの人に聞くとみんな同じ方向を指差す。



建物の明かりは見えるんだけど行き方がわからないので、仕方なくどっかの敷地の柵を乗り越え、草むらを歩き、やっとビーチロックハウスにたどり着いた。



「こんばんはー。」



「おっきたなっ!や、ギターを持ってるぞー!!」



「ヒッチハイカーかよっ!!」




みんなの視線が一気にこっちに向いた。


イカした店内。


今までの安宿にいたようないかにも旅人って客はおらず、みんなオシャレだ。


軽食のできるカフェバー、カウンターとテーブル、ギター弾いてる人や本読んでる人がいたりして、ガヤガヤと賑やかだった。







タンクトップに髪の毛をオールバックにしたトモさんというスタッフの兄さんがいきなり大声で呼びかけた。



「えーみなさん!今からミニライブですので、良かったら聞いてあげてねー!!」





…………え?






お、俺!?



俺がやるの!?!?




うろたえまくってると、さっきまでギターをポロンポロンやってた兄ちゃんがこっちを見つめながらスタンバってる。


ええいっ、やってやる!!














…………結局4曲やった。



カウンター、テーブル、2階の席から見てるみんな。


クラプトンの『Wonderfull Tonight』を終え、トモさんが持ってきたショットグラスのウォッカをキュッと飲み、一息つく。



ああ、緊張したああああ…………








無一文、未経験、コネなしの20歳でバーを開き、そのバーを東京で4店舗にまで広げ、自伝を出すため出版社を起こし、本がベストセラーになり、全てを人に譲り、愛する奥さんと世界一周の旅に出る。


そして日本に帰ってきて沖縄の離島にパラダイスを作るため、ここ読谷にビーチロックハウスを作ったのが高橋歩という人だ。



影響力のある人みたいで、変に洗脳されて、会いたい会いたいとやってくる旅人が後を絶たないらしい。


俺も会いたくてきたんだけど、実際会うのはちょっと怖い。


中途半端な自分が見透かされそうでちょっと怖い。












さっき俺の歌にギターをつけてくれた聡一朗くんと話していると、店内に流れていたBGMで聞き覚えのある曲が流れ始めた。


前奏で身構える聡一朗くん。


尾崎豊の15の夜だ。


ギターを弾きながら歌い始める俺たち。


すると周りの人たちもどんどん歌い始める。


カウンターの中にいたスタッフ達も飛んでくる。




「盗んだバイクで走り出すー!!行く先もわからないまま~!!」



全員で手拍子しながら大合唱。





「尾崎知らねーで、ケミストリーだの、浜崎だの言ってる奴ってバカだよ。」



トモさんも混じり、聡一朗くんと、聡一朗くんの彼女の4人で熱く語り合った。



話は尾崎から人間の生き方について変わっていく。



これぞ幸せっていうものを感じたことも無く、これぞ愛っていう感情も抱いたことも無く、感動して涙を流したこともない俺。


いつも何かを考え続け、暇な時間ができれば少しでも知識や技術を身につけようと焦っている。


気の休まる時間なんて無く、常に自分にプラスになる道はどれだろう、とウジウジ悩んでいる。


五体満足で家族も、友人も、彼女もいる自分にとって、本当の幸せって何なんだろうと考えたり、美香の喜ぶ声を聞いてやさしい気持ちになれても、本当の愛ってこんなものじゃないんじゃないかと考えたり…………




と、今俺が考えていることを正直に喋った。


こんなに腹の中を人に喋ったのは初めてかもしれない。



「オレも生きてる価値なんてないんじゃないかと思って、富士の樹海に入ったことがあったよ。」



「オレは心臓病で、今まで生きてるのが奇跡だって…………」



みんなも自分の話をしてくれた。


結局、今俺が悩んでるようなことはみんな経験してるみたいで、俺1人いろんなことを言われた。



「マサミチ(なぜかオレはこう呼ばれた)はそのままでいいんだって。」



「落ちてる100円拾った時でもすごい幸せだぜ!!」




いろんなことを言ってもらった中で、心に残った言葉があった。色んな意味で。




「今を満足できない奴は、次を満足することはできない。」



今の俺に、今の俺を満足することなど到底できない。


満足って、諦めなんじゃないかとも思える。


次に進むなんて50年早えーな。



















翌日、ヒッチハイクして本部に向かった。


つい2日前に世界最大の水族館がオープンしたということで行ってみたんだけど、とてつもない大行列でもうこの時点でテンションが下がる。


中に入っても水槽の前で大行列。


全然前に進めなくてイラつく。




















  
マンタとかジンベイザメとか見ることはできたけど、この前のダイビングがすごすぎたのであんまり感動はしなかった。


外でやってたイルカショーは面白かった。


あとジュゴン丸すぎ。












今夜もビーチロックハウスに泊まろうと店に戻ると、



「おー、マサミチも一緒に行くかー。読谷祭り。」



とお祭りに誘われた。



トモさんとスタッフの女の子と、あと東京から来てる青ガク君と4人で読谷祭りへ行った。



昨夜からなぜか俺の名前はマサミチ。


実は「青ガク」くんの本名がマサミチ。



「まぁいいじゃん!!」



トモさんが言うと、別に嫌じゃない。



お祭りでヒージャー汁ってのを食べたけど美味しくなかった。













祭から戻り、青ガク君と話し込んだ。


今まで俺のしてきたことなんかを話すと、彼は急に腰が低くなった。



「すごいね…………何か俺のことなんか見透かされてそう…………」



人よりもちょっと歌がうまくて、人よりもちょっと音楽に詳しくて、人よりもちょっと旅が好きで、人よりもちょっと映画をたくさん見てて…………


青ガク君にとっては、この「ちょっと」がすごく大きなものに見えたのかもしれない。



しばらく話して彼はもう寝るね、とテントの方に歩いていった。


残って1人で日記を書いてると、すぐに青ガク君が戻ってきた。



「何でもいい、何か一言オレに言ってくれない?」




な、なにそれ?



なんて言えばいいんだよ…………


真剣な顔で言葉を待ってる青ガク君。




「うーーーん…………自分に自信を持って生きていこう。」



「ありがとう!!おやすみ。」



うわぁ、俺何言ってんだろ。


俺こそこの言葉が似合うよ。


















次の日、テントの中の荷物をまとめてビーチロックを後にした。


トモさんが最後に、



「マサミチはそのままでいいんだよ!!」



って言ってくれた。


はい、俺は俺の思うように、これからもウジウジ悩みながら生きていきます。



今日、奄美大島行きのフェリーに乗り込む。


とうとう沖縄最後の日だ。
















本部港に着いたのは22時頃。





真っ暗な夜の中、寂しい外灯に照らされたターミナルがポツンと浮かび上がってた。



「ここまで送ったんだから歌って。」



ヒッチハイクで乗せてくれた女の子3人組を目の前に2曲歌った。


風のビュウビュウ吹きすさぶ港に歌が響く。









彼女達が走り去ると、あまりのひと気の無さにちょっと怖くなった。


風の吹きこまなそうな窪みに入り、ギターの上に横たわる。


実家から送ってもらった冬用のコートのモコモコが鼻をくすぐる。








2ヶ月、あっという間だった。


最初の県で、旅のつらさ、面白さ、生き方、少しずつわかってきた。


おそらくあと4年は続くこの旅。


どんな出会い、どんな経験、どんな困難が待ち受けているだろう。


考えただけでウキウキしてくる。






そうそう、後日わかったことなんだけど、石垣島で別れたショータ君はあれから本当に西表島を一周しに行ったみたい。


舗装道路の終わりから森に入り、蛇やらサソリやらがいるジャングルの中を突き進み、崖をいくつも越えて島の反対側くらいまで行ったあたりで、人に遭遇したらしい。



社会から離れ、文明から離れ、外界との接触を避けながら自分であばら家を作って暮らしていたその仙人と仲良くなったショータ君。


1週間くらいそこで仙人と一緒に魚を釣ったりして過ごしていたみたいで、その後また歩き続けてなんとか反対側の舗装道路まで出てきた。



無事、西表島の一周を達成したらしい。


しかし地元民に上空を飛ぶヘリコプターを指差され、あれ君を探してるんだよと言われ、どうやらあまりにも帰ってこないから捜索願が出され、大騒動になり、警察に保護され千葉に強制送還されたらしい。


あまりの話に大笑いしてしまった。


いや、救助隊や親やら色んな人に迷惑をかけてとんでもない話ではあるんだけど、西表を一周できて仙人とすごい経験ができたようだし、正直ちょっと嫉妬した。



みんなこの南の島に来て、若さと冒険心に任せて武勇伝を作って帰っていく。


多少人に迷惑かけたって、馬鹿な情熱を消してしまうなんてもったいない。




俺がこの本部港に降り立ったのは2ヶ月前。


俺はどんな武勇伝を作れたかな。






明日は鹿児島県、奄美大島。

元ちとせの出身地。


島の人はみんな「ワダツミの木」を聴いてるのかな。




うー寒い…………


とうとう明日で沖縄にお別れか…………


来た時はあんなに暑かったのに、もうこんなに寒くてたまらない。


北海道なんてきっと死ぬほど寒いんだろうな。


どんなとこなんだろうな。



この日本、全部行ってやるぞ。



ギターケースの上にゴロンと横になり、目を閉じた。




【南国沖縄編】


完!!




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