こんにちは!神田です。
中国、意外とどんなローカルの宿にもフリーワイファイがあってびびってます。
今やWifiなしの環境で普通なのって先進国じゃ日本くらいじゃないのかなって感じます。
前の旅から帰ってまた新しい携帯がなくてWifiがどこかに飛んでないか探してて、
やっと見つけたスターバックスで繋げようとしたら、繋げるにはまずオンラインで会員登録を。みたいなことが書いてあって思わずつっこみそうになりました。
インターネットが欲しいのにそのためにはまずオンラインで。ておかしすぎるでしょ。
今回日本を離れてる2年の間にそんな日本のWifi環境も変わってるのかなー。
ああ、もうすぐ日本だなぁ。
おわり
2018年2月18日(日曜日)
【中国】 昆明 ~ 大理
いやー、今日はマジで中国の実力を見せてもらったわー…………
何事にも揺るがない中国人独自の不思議な習慣。
もはや何が良くて何がダメで、何が失礼なことなのか全然わからんなる。
周りに気を使いすぎてるこっちがアホらしくなってくるような出来事のオンパレードだ。
中国旅もこっから本格的になってきたっていう今日の日記です。
バスは2時間ほど睡眠休憩を取ってから、朝方にまた走り出し、予定通り朝の8時半に昆明の南駅バスターミナルに到着した。
おおお、すげぇ都会だな…………
バスターミナルの巨大な建物、その横には高架になった線路、整然としたコンクリートの風景は先進国のものだ。
昨日までいた僻地とは当たり前だけど大違い。
昆明は雲南省の省都。人口600万人。
そして中国にはこんな大都会がうなるほど全土に散らばっている。
駅に行くとまぁピカピカの構内。
ガラス張りのエレベーター、エスカレーター、そして分かりやすい券売機。
シンガポールを思い出させる先進さ。
ホームに上がると電車との間に仕切りがあり、ちゃんと二重扉になっている。
電車が静かに滑り込んできて、乗り込むと車両内もピカピカだ。
人々もやはり田舎の人とは違って服装に気を使っているように見える。
ただ流行りとはかけ離れたコーディネートだけど。
80年代みたいな格好の人が多い。
そして中国の女性はあまり普段からお化粧をしないようで、スッピンの人がほとんどだ。
車内アナウンスで中国語の後に英語が流れた。
でも中国に入って3日経つけど、まだイエスノーすら話せる人とも出会っていない。
昆明南駅から昆明のメインステーションまでは25分くらい。
切符代は4元(70円)。
目の前には巨大な昆明駅の裏側が壁のようにそびえている。
この窓の多い無機質な感じ。
そして威風堂々と掲げられた漢字の看板。
うおおおおお、中国だ…………
やっとここにきて、本当に中国に来ているという実感が湧いてきた。
「カンちゃん!!中国だね!!!ここ中国なんだなぁ!!すげー!!」
「ねー!!中国来たって感じだね!!」
歩いてる人たちはもちろん全員中国人。
東南アジアみたいに欧米人の観光客なんか一切いない。
混じりっけなしのスーパー中国。
よく知っている国なのに、この底知れない感じはなんなんだろう。
昆明駅の表に回り、ものすごい数の人でごった返す中、まずは荷物検査ゲート。
空港の荷物検査ゲートみたいに厳重なセキュリティーを越えなければ駅に入ることすらできない。
そこでX線の機械に荷物を通し、ボディーチェックを受けて中に入ると、次はそこでチケットを手に入れないといけない。
俺たちの行き先は大理。移動時間は7時間くらい
券売機で見てみると、すでに次の10時25分発の大理行きはほとんどのクラスが売り切れていた。
余ってるのは天座クラスだけ。
中国の電車には様々なクラスがあり、軟臥、硬臥、軟座、硬座なんていう種類がある。
柔らかい寝台、硬い寝台、柔らかい座席、といった感じなんだけど、下のクラスの硬い座席になるとまったくリクライニングしない90°の席に数時間なんてことになるのでなかなかしんどい。
しかしさらにその下がある。
それが天座。
席なし。
電車の連結部分とかに立っとかないといけないという苦行系のやつ。
でもおかげで値段は相当安い。
硬座ですら96元(1570円)なのに、天座ならば65元(1060円)。
軟臥だと何倍もする。
まぁ迷わず購入ですね。
インドに行ったことあるなら天座でヨユーです。
中国だもん。
ドア閉まるし。
走ってる電車から飛び降りたり飛び乗ったりしなくていいし。
連結部分に夜逃げみたいな荷物を積み上げているので根性で山登りみたいに乗り越えていったら、その上で、なにが?みたいな顔して寝てるインド人もいないし。
チケットを買おうとしたら機械では中国人のIDがなければ購入できなくて、奥にある窓口へ。
100パーセント英語が伝わらないはずなので、携帯電話のメモに、今日・大理・天座・二人と書いて見せると、うなづく窓口のお兄さん。
いやー、漢字伝わるから助かるなぁと思っているとすかさず中国語で何か質問してくるお兄さん。
えーっと、中国語喋れないからこうしてメモで見せてるんですけど?
確実に外国人なのに、なんの迷いもなく中国語で質問してくるこの揺るぎのなさ。
さすが中国。
なんとかチケットをゲットしたら次のゲートが待ち構えてる。
まだここは駅構内にすら入ってない。
チケットとIDの確認をされ、そのゲートを越えたらやっとこさ駅の中だ。
中国の公共交通機関はセキュリティが半端じゃない。
でも入ってしまえば後は看板があるので分かりやすく、デカい構内だけど迷うことなく乗り場まで来ることができる。
電車に乗る前に朝ご飯用にカップラーメンを購入。
カップラーメンは5元(83円)とか。
中国はマジで信じられんくらいお茶文化が半端なくて、駅の中、電車の中、ホテルの部屋、どっこにでも公衆のお湯蛇口があるので、カップラーメンさえ持っていれば食べ物には困らない。
チケット取りも買い物もだいぶスムーズにいってくれたおかげで、10時台の電車に乗り込むことができた。
これで暗くなる前に大理に行けるぞ。
さて、ちょっと書き方を変えて………………
電車に乗り込むとそこは魚市場だった。
無数の男たちが威勢のいい競りを繰り広げているではないか。
私は驚愕していた。
なぜならここが電車の中だと勘違いしていたからだ。
男たちが怒号のような声を上げ、まるで今日1番のマグロの取り合いをしているかのようだ。
なんと勇ましい光景だろう。
この怒号の中で7時間か……と少し憂鬱になったのだが、ここが魚市場ならば仕方ない。
我慢するしかない。
え?なに?ただ声がデカイだけ?
なんということだ。
目の前にいるというのに100メートル離れた人に叫んでいるとしか思えない声量じゃないか。
聞きそびれのないよう、確実に人に思いを伝えたい。その気持ちがヒシヒシと伝わってくる心温まる光景だ。
そんな怒鳴り合う人たちに畏怖を感じながら、私たちはスペースを確保しようと連結部分を吟味した。
しかしどうしたことだろう。
連結部分が煙まみれではないか。
これはどこか故障をしているのではないか…………
私がそう懸念した瞬間だった。
痰吐き世界選手権、連続3位入賞を誇っていそうな男性がシュボッとタバコに火をつけたではないか。
気づくと連結部分にはそうした男性が密集してタバコをくゆらしている。
狭い連結部分が曇って、まるで夜霧よ今日もありがとうではないか。
タフガイ・裕次郎。目の前の肌の浅黒い男性が不思議とそう見えてきそうで1ミリも見えない。
息苦しいことこの上ないが、これはもう安いチケットなのでしかたあるまい。
他の天座組もこの狭いスペースでなんとかさのごうとしているのだから裕次郎たちと過ごすしかなさそうだ。
私は荷物を置いたら用をたすことにした。
放尿だ。
私はトイレに行ったのだが、使用中らしく鍵がかかっている。
しかたなく表で待つことにした。
するとそこに小さな女の子を連れた父親がやってきたではないか。
女の子にトイレをさせるために来たんだろう。
しかし残念ながら次は私だ。
子供であろうと譲れるほど私も余裕はない。
すると簡単に諦めた父親。
おや?どうやらそこまで急ぎではなかったようだ。
父親と女の子の微笑ましい後ろ姿に家族愛が満ちており、私はとても暖かいものを感じていた。
するとその父親。
女の子を抱え上げると、横の洗面台にまたがらせて女の子に小便をさせた。
小便がチョロチョロと洗面台に落ちているというのに、周りの人たちは平然と茶を飲んでいる。
なんという賢さだろう。
トイレが空いていないのだからさせる場所はそこしかない。
目からウロコとはこのことだ。
美しい家族愛に感動しつつ、私はあの洗面台では何があっても手を洗うまいと心に誓った。
プシュー!!という電車特有のトイレを流す音が聞こえ、ようやくドアが開いた。
中からうら若き女性が出てきて、私は彼女と入れ違いにトイレに入る。
うら若き女性の後にトイレに入るなど紳士として心苦しいものがあるが、ここは男女共用トイレなのでいたしかたない。
女性の後なので使用もきっと綺麗だろう。安心できる。
が、次の瞬間、私は目を疑った。
便器の中に、驚異的なまでの悪魔が入っていた。
信じられないサイズ。
常軌を逸している。
花山のパンチを受けた後のスペック風に言うと、
なんて糞だ、です。
これ以上ないほどの胃腸の強さを感じさせる完璧なフォルム、
尋常ではない太さ、
力強い質感、
私が狭いトイレの中で正気を失うほどのパニックに陥りながら水を流そうとも、1ミリたりとも動かない頑強さ。
これはもはや排泄物ではない。内臓だ。
すぐさまトイレから脱出し、嘔吐しそうになりながら深呼吸をしていると、私の次に待っていた男性がトイレに入る。
私は涙目になりながらも彼の反応を注意深く観察した。
彼があの禍々しいものを目にした時にどれほど恐怖におののくのか、それを確認すれば私はこのパニックを共感とともに少しは落ち着けることができるのではないかと期待した。
しかし男性はまるで山、川、風、クソ、くらい自然の事かのように平然とトイレに入り、何事もなくドアの鍵を閉めた。
涙目から涙が少し溢れた。
向かいのもうひとつのトイレでなんとか用を足すことでき、カンちゃんにこの衝撃を伝えるべく自分たちのスペースに戻ると、目の前に眉毛の繋がった、前髪をパッツンにしたニキビ顔の少年がいた。
低く見積もってもなかなかのアホさだ。
なぜ前髪をパッツンにしているのか。
さらにその少年はスマホでアニメを見ており、ぶふぅ!!おふっふ!!と爆笑しているではないか。眉毛が繋がっているのに。
まぁそれはいい。
その少年、動画を見ながらカップラーメンを食べているのだが、食べるたびにものすごい音を立てる。
にっちゃにっちゃ、くっちゃめっちゃみっちゃ、
口を開けながら食べており、まるで音を出すことがマナーでもあるかのような音量である。
なんとも美味しそうに咀嚼するではないか。
この少年をカップラーメンのCMに起用したいほどである。
嘘である。
とりあえず横に置いてある雑誌を丸めて頭を引っ叩きたくなるが、ここは中国。
インターナショナルなマナーなどここではクソの役にも立たない。
もしやあのトイレの内臓はこの少年のものではあるまいか…………
私たちは心頭滅却をし、耐え抜いた。
それぞ異国。
これほどまでに異国を感じられる国は世界広しといえどそうない。
しかしこの異世界が、世界の人口の4分の1を占めているのかと思うと、これこそが世界のスタンダードなのかもしれない。
窓の外に素朴な田舎の風景が見える。
寂れた村の駅で電車が止まり、駅の看板が目に入る。
私は遠い日本の田舎を思い出していた。
ていうかマジであのウンコすごすぎたわ!!!!
木刀かと思ったわ!!バカ!!自分でなんとかしろ!!!
あー!!中国楽しい!!!
大理までの途中に大きな街があったようで、そこで乗客の半分くらいが電車を降りると、車掌さんが俺たちのことを呼んで空いた席に座らせてくれた。
優しい。
1人のオッちゃんが笑顔で話しかけてくれ、タバコをくれたりして、色々戸惑うことはあるけど中国の人も同じ人間だ。
色々慣れていかないと。
そのオッちゃんはまぁいつものように英語1ミリもダメなんだけど、スマホのメモに手書きで漢字を書いてくれたりして、コミュニケーションをとってくれる。
日本のどこから来た?聞かれたので、オオサカと答える。
名詞はほとんどの場合、世界共通語だ。
しかし中国人は他の国の地名ですら中国語で覚えているので、オオサカ、が通じない。
大阪のゲストハウスで働いていたカンちゃんが、ターパンですと言うと、あー!!ターパンかいー!!と理解してくれるオッちゃん。
まぁウィーンのことはドイツ語でウィーン、英語ではビエナ、メキシコは英語でメキシコ、スペイン語ではメヒコって言ったりするのでそれと同じか。
でもやっぱり中国人は海外に行く時、ガイドさんのいるツアーじゃないとキツイだろうなぁ。
7時間ほどの移動で電車は大理に到着。
スーツケースを転がした中国人観光客の大群に混ざって駅を出ると、そこは普通の現代的な町並みだ。
大理といえば中国らしい歴史的な町並みが残る古城地区が有名だけど、古城は大理の新市街から結構離れたところにある。
確かこの辺だったよなーと駅前のロータリーのほうに歩いて行くと、そこに古城と書かれた市バスが止まっていた。
順調順調。
大量の観光客に混じってバスに乗り込んだ。
バスの値段は2元(35円)。
現代的な町の中を抜けて郊外へと走って行くバス。
するとしばらくして町並みに変化が現れる。
民家がどれも白壁に灰色の瓦屋屋根というものに統一されており、いかにも中国といった風情。
屋根の端が反って上に向いている様子は、奈良のお寺を思い出させる。
向こうのほうに大きな湖が見える。
こんな遠かったかな?って思うくらい距離があって、荷物を抱えたまま1時間ほど経ってもまだ着かない。
チャイニーズニューイヤーの影響か、古城に近づくにつれて渋滞がひどくなってきて、まったく進まない。
痺れを切らした乗客たちが、もう歩いたほうが早いわと、渋滞の中でドアを開けてもらって降りていく。
俺たちもそれに着いてバスを降りた。
そうしてしばらく歩き、ついに古城に到着した。
おおお…………大理だ…………
山の稜線に沈む夕日が燃えるように赤く空を染め、その空に立派な門がそびえている。
ふー、3年半ぶりか。
ここで俺はある中国人に命を救われた。
命を救われたってのは大げさかな。
でもそれほどの出会いだった。
3年半前、ラオスでかかった赤痢が治らないままインドに飛び、ガリガリに痩せこけながらもあの異次元のインドを旅した。
寝てる時にベッドから落ちて、ベッドに這い上がることもできないくらい体力が落ち込んでいたけど、マジで死に物狂いで路上で歌って旅費を稼ぎ、中国への航空券を買った。
インド終盤で電車の中で財布を盗まれ、結果中国にたどり着いた時にはスズメの涙ほどの金しかなく、俺は昆明空港からすぐに大理に移動した。
大理は観光地というのは知っていたので、きっと稼げるとふんでいたから。
大理にたどり着き、まずは宿を探して回った。
野宿してもよかったけど、死にそうな体調だったので宿で寝たかった。
数軒の宿を回り、英語がまったく通じない宿のスタッフさんたちに疲れながらも、安い宿を探した。
しかし中国がこれほどまでに物価が高いとはまだ全然知らなかった俺。
どの宿も3000円、4000円という、1泊で所持金がなくなるようなところばかり。
それでもなんとか安い宿を求めて路地裏をさまよった。
そうして一軒の宿で値段をたずねた。
宿の若いオーナーである背の高い、精悍な、ハンサムなお兄さんが少し英語が喋れたんだけど、やはり値段は高い。
そうですかー、サンキュー…………とまたトボトボと歩いた。
すると100メートルくらい歩いたところで、背後から声をかけられた。
スミマセン、ニホンジンデスカ?
片言の日本語で声をかけてくれたのはさっきの宿の兄さん。
日本語を少し勉強していた時期があったらしかった。
キョウ、ウチデバーベキューヲシマスカラ、タベニキテクダサイ、とお兄さんはまぶしい笑顔で言った。
骨太な、モンゴル系のその太陽みたいな笑顔の後ろには草原が広がっていた。
彼は俺のことを連れて一緒に安宿を探してくれ、そうして安いドミトリーを確保することができた。
歩いてる道中にタバコを買ってくれたり、とても親切にしてくれ、さらに夜に彼の宿に行くと、中庭でバーベキューをしており、新しい友達に乾杯!!と俺のことをこれでもかともてなしてくれた。
なんでこんなにしてくれるんですか?今会ったばかりなのに、と尋ねると、彼はキョトンとした顔で言った。
え?困ってる人を助けるのは当然のことですよ?さ、乾杯!!
病気におかされて弱っていたこともあって、本当に泣きそうだった。
彼は、私たちはもう友達です、だから明日からウチに泊まってください。そして体を治してくださいと言った。
それから1週間、彼の立派な宿に泊めてもらった。
アメニティーにキールズを置くという立派な宿なのに、無料で。
しかも毎食みんなで一緒にご飯を食べさせてくれ、ビタミンを摂ってくださいと果物をくれ、さらに薬もくれた。
最初の2日くらいは歩くのもしんどいくらいで、トイレから離れられなかったけど、そんな彼らの献身的な介護で、俺は少しずつ回復していった。
そうして3日目くらいにようやく路上に出た。
ルールを知らずにメインストリートのど真ん中でやってて警察に捕まり、人民路というところならやっていいけど他のところでまたやってるのを見つけたらギター没収だからなと言われた。
言われた通り古城の真ん中にある人民路という通りに行ってみると、そこだけ他と様子が違い、たくさんの若者たちが路上でアクセサリーやらの手作り小物を売っていたりして、自由な空気が漂っていた。
そこで警察を気にせず思いっきり歌い、疲れ切って宿に戻って稼いだお金を彼に見せると、良かったですねーー!!と自分のことのように喜んでくれた。
そして1週間が経ち、彼のおかげでほとんど出費することなくお金を貯めることができ、大理を出発することに。
彼は次の町に行くバスまで手配してくれ、最後の最後まで俺のことを助けてくれた。
晴れ渡る空の下、バスの中から何度も手を振った。
あの人がいなかったら、俺はそからへんでのたれ死んでいたかもしれない。
なんで、ただ宿の値段を聞きに来ただけの日本人にあんなにまでしてくれたのか。
あの日、助けてくれたあの人に心からお礼を言いたい。
カンさん。
俺また大理に戻ってきたよ。
今度は奥さんと一緒なんだよ。
カンさんに元気な俺を見せられる。
あの太陽と草原を感じさせる笑顔をもう一度見られる。
そう思うと胸が苦しくなるほど嬉しかった。
古城の中は相変わらずの賑わいだった。
いや、3年半前より賑わってないか?
ものすごい人の数。
でもこれはチャイニーズニューイヤーの影響かもしれないな。
大理の古城はかなりの広範囲に広がっており、ちょうど正方形のエリアに碁盤状に道が走っている。
すべてのエリアが古めかしい昔ながらの建物を残しており、城門や楼閣など時代劇の中に迷い込んだような風景が広がっている。
本当にリアルな時代劇のセットみたいだ。京都に少し似ている。
ただまぁウルトラ観光地なので、すべての通りに土産物屋さんがうなるほど軒を連ねており、京都なんか比じゃないほどの大混雑。
今日もとてつもないほどの人がうごめいており、大きなバッグを持っていると人波に飲み込まれそうになってしまう。
ああああ!!!人多すぎる!!!!
歩きにくい!!!!
とにかくまずはまずは宿を探して裏通りを歩いた。
カンさんのところに行ってもいいんだけど、あのお人好しのカンさんのことだから、また俺たちからお金を受け取ってくれない可能性がある。
まずは他のところに何泊かとって、それから会いに行こう。
しかしまぁどこも高い!!
さすが超絶観光地、大理!!
宿は死ぬほどたくさんあるんだけど、どこも300元(5000円)くらいする!!
安いところで200元(3300円)とか!!!
しかも99.9パーセントが中国人向けの宿で、誰も英語が喋れないのでコミュニケーションがめっちゃ難しい!!!
そんな宿に当たり前にガンガン泊まっている中国人の国内旅行者たち。
みんなお金持ってるよなぁ。
中国人は本当に旅行が大好き。
ってまぁ、世界の人口の4分の1が中国人なんだから、そりゃこんだけ中国人まみれだわな。
こうなったらドミトリーしかないかぁ。
ドミトリー嫌なんだけどしかたないかぁ。
大理の有名な安宿といえば春夏秋冬。
古城のど真ん中にあってめっちゃいい立地で、ドミトリーなんかがあることで外国人バッグパッカーがよく泊まるところだ。
味のある外観の春夏秋冬に到着して値段を聞いてみると、ミックスドミトリーで1人45元(740円)。
うん、ドミトリーは嫌だけどこの値段ならしょうがないか。
ていうか中国に入って3日目の晩にして、ようやく英語を喋る中国人に出会ったわ…………
まぁここのスタッフも1人しか喋れんけど…………
そんで案内されたのがこちらになります。
ひどすぎる…………
なにこのスラム感…………
なに?中でチャイニーズマフィアがコカインでも作ってるの?
室内もまぁ落書きひどすぎるやろ…………
しかも公衆便所レベルの頭の悪そうな落書きばっかり。
ま、まぁ久しぶりの旅感ってことかな…………
呆然としていると、中国人の子供づれのオッさんとおばさんが大ゲンカしながら部屋に入ってきた。
ものすごい勢いで怒鳴りあっている。
あ、普通の会話でした、すんません。
するとオッさんオバさんたち、平然とドミトリーの中でタバコを吸い出した。
えええ!?タバコ!?ちょっと待って!!!
いや、でも中国って宿の部屋の中に普通に灰皿とかあるし、別にいつものことなのか?
いやいや!!!でもここはドミトリー!!個室ならまだしも、色んな人がいるドミトリーでタバコはいかんやろ!!!
しかも子供の目の前だよ!?!?
子供を顔の前に抱っこしながら!!!
ああああ!!!灰を床に落とすな!!!!なに考えてんだ!!!!!
喫煙者の俺はまだしも、部屋の中でタバコとか耐えられないカンちゃんが絶望している。
服も、バスタオルも、シャンプーした髪にもタバコの臭いがついてしまう。
でもこれが中国では当たり前のことかもしれないし、注意していいか分からない!!!
一応壁に禁煙マークのステッカーらしきものは貼ってあるけど、落書きまみれのスラム部屋なので遊びで貼ったものかもしれない!!!
そうこうしてる間にも今度はオッさんがゴツい水タバコに火をつけた!!!!
ゴボゴボ、って音を立てながら水タバコを吸って煙を吐いてる!!!!!
ゴボゴボじゃねぇ!!!
窓を閉め切っていて換気する気ゼロ!!!!
中国人すげすぎる!!!!!
我慢の限界に達したカンちゃんがレセプションに走って行った。
追いかけると、ドミトリーでタバコってオーケーなんですか?禁止なんですか?どっちですか!?って受付の女の子に質問してるカンちゃん。
しかしさっきの英語が喋れるスタッフさんとシフトチェンジしており、ほとんど英語がわからない女の子しかいない。
ドミトリーが禁煙なのかも聞くことができない。
ああああああ!!もう!!!!
もどかしい!!!!
俺たちが直接さっきのオッさんたちに言ったところで英語皆無だし、知るかそんなので終わり。
ちゃんとスタッフさんに言ってもらいたいのに!!!!!
「うわぁ…………明日どうしようかなぁ…………ドミトリーでタバコとかあり得んわー…………」
めっちゃ凹んでるカンちゃん。
本当色んな人がいるドミトリーでタバコて…………
中国人すごすぎるわ…………
そりゃ東南アジアのホテルの部屋に、中国語で室内禁煙って書いてるわ。
当たり前のことだと思ってるもんなぁ。
とりあえずスタッフさんがなんとか理解してくれて注意してくれたのか、オッさんオバさんは外でタバコを吸ってくれるようになった。
まぁ、気を取り直してカンさんに会いに行こう!!!
宿を出て、活気で溢れかえる古城の中を歩いていく。
焼き鳥なんかのストリートフードを片手に歩く人たち、刀とかオモチャを買ってもらった子供たち、セルカ棒片手に自撮りする若いカップルたち、
ここら辺の主要民族である白族の伝統衣装を着た人たちもたくさんいる。
3年半前にきた時は数軒しかなかった生ライブのバーが死ぬほど増えており、もう生ライブやってないとダメ決まりでもあるのかってくらいそこら中から音楽が流れ出ている。
そして同じく数軒しかなかったジャンベ屋さんもとんでもなくたくさんある。
カンさんが宿の他にジャンベ屋さんを経営しており、店先で女の子にジャンベを叩かせるパフォーマンスで営業していたんだけど、それと全く同じスタイルのお店がそこら中にあって、あちこちから太鼓の音が聞こえてくる。
ド派手なドラゴンのオブジェが店の入り口で飛んでいるお店とか、巨大モニターが設置されたフードコートとか、なんかこの3年半でだいぶ大理の雰囲気が変わってる気がする。
ちょっとチャラい方向に進んでいってるような。
伝統的な家屋の町並みが、ただのテーマパークみたいになりかけているなぁ。
ともかく、そんな話もカンさんとゆっくりしたい!!
早くカンさんと会いたいんだけどドキドキするなぁ。
あの恩人と再会して、どんな顔すればいいだろ。
あの頃のままだったらいいけど。
緊張しながら南門を抜け、ローカルな食堂が並ぶ通りを歩いていく。
そうして見覚えのある角を曲がると、細い小道の先にあの宿があった。
角落客桟。
あそこだ。
うわー、緊張する。
高鳴る胸を深呼吸して落ち着かせ、ゆっくりと近づいていき、レセプションに入った。
そこには知らないおばちゃんがいた。
まぁそりゃそうか。3年半前と同じスタッフなわけないよな。
「え、えーっと、カンさん、ザイナリ?」
カンさんはいますか?とたどたどしい中国語で尋ねる。
「あー!!メイヨー!!ジンティエンメイヨー!!」
うわっ!!と思った。
今日はいない、と言っているよう。
嫌な予感はしてたんだよなぁ。
今はチャイニーズニューイヤー。
もしかしたらカンさんが里帰りしているんじゃないか?ってカンちゃんと話していたんだよ。
「ミンティエン?」
「あーあー!!ミンティエンミンティエン!!ミンティエンヨー!!」
お!!でも明日はいるみたいだ!!
よかった、里帰りだとしたらカンさんは内モンゴルの出身なのでもしかしたらしばらく帰ってこないんじゃないかって心配してたけど、明日にはいるということを聞けてホッとした。
それにしても懐かしいな。
ここでみんなでご飯食べて、ビール飲んで。
タバコを吸うたびにみんな周りの人たちにタバコを配ってたよな。自分だけ吸うのは良くないって言って。
死にそうになりながらあそこのトイレに何度も何度も入っていた。
もし宿が潰れていたら、なんて悪いイメージもチラッと頭をかすめたけど、ちゃんと今日もたくさんお客さんが入ってるみたいだった。
さすがやり手のカンさん。
きっと他のビジネスも上手くいってるんだろうな。
宿のスタッフさんに、明日また来ますのでカンさんには内緒にしててください、と中国語翻訳アプリを使って伝えた。
あんまり理解していなさそうな雰囲気だったけど、ということはカンさんにも説明できないだろ。
結果、明日でよかったかな。
長距離移動の連続でヒゲも剃ってないし、服もヨレヨレのままだ。
明日ちゃんと身だしなみを整えてからカンさんに会いにこよう。
カンさん、再会を喜んでくれたらいいな。
宿に戻りながらテキトーにそこらへんの食堂でご飯を食べた。
オッチャンが店先で麺をのばしているお店だったんだけど、テキトーに頼んだやつがめっちゃ美味しかった。
麺が最高で、手打ちのコシがあって、味付けもバッチリで、めっちゃ美味しい。
いやー、初日から良いとこみつけたわ。
ていうかスープデカすぎじゃない……?
中国って1品がすっごいデカいから注意して頼まないと絶対残してしまう。
お腹満タンになってなんとか全部食べきった。
お会計はふたつで38元(640円)。
21時を過ぎても大理の古城は活気に満ち溢れている。
夜になってさらに人の数が増えており、まるで洪水みたいだ。
土産物屋や軽食屋、家族向けのオモチャ、大理特産の銀細工屋、
どのお店もお客を引こうとあの手この手でパフォーマンスをしている。
お金を使わせるためのテーマパークみたい。
溢れかえるバーの生ライブ音。
ジャンベの音。
歓声。
中国人のデカい声。
ふと気になったのは、前回来たときみたいに人民路にアクセサリー売りの若者たちがまったくいないこと。
あのころは道の真ん中にずらっと小さなお店が並んで、フリーマーケットみたいな楽しいストリートだった。
それらが今夜はまったく出ておらず、両側の店がケバケバしく光っているのみ。
もしかして…………規制されたのか…………
いや、どうだろう。
今がチャイニーズニューイヤー期間中で人が多いから、この間だけ禁止させてるだけなのかもしれない。
もし大理で歌えなかったらシャレにならない。
バンコクで使いまくったおかげで手持ちはかなりヤバイことになってきている。
このままでは確実に中国を抜けられない。
この大理でなんとしても稼がないと。
ビュウと風が吹く。
ここまで内陸に入ってきたことで完全に空気が変わって、冬の冷たい風が町を吹き抜けていく。
標高も相当上がった。
油断してシャツ1枚で出てきたけど、震えてくるほど寒い。
カンさんと別れた日は、暖かい春の風が吹いていたよな。
雲南の風が、色んな思い出を連れてくる。
明日、早起きして会いに行こう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
タイのホテルをアゴダでとってくださったかたがいました!!
バンコクまた遊びに行きたい!!!!
東南アジアはそこまで僕は惹かれないですが、シンガポールとバンコクはマジで大好きです。
めっちゃ楽しい。そして居心地がいい。
どうもありがとうございますー!!