こんにちは!神田です。
毎日同じ小さな町に通っていると、顔見知りの人が日々増えてって、
通ると手を振ってくれたり、笑顔で寄ってきてくれたりして、すごく嬉しい。
なんだか少し受け入れられた気がして。
毎日忙しく移動してたくさんの場所を訪れるのももちろん素敵だけど、
こうして一箇所にしばらくいて毎日同じ場所に行って現地の人に顔を覚えてもらって
会話をしたり一緒に時間を過ごせるようになれる旅は魅力的だな。と改めて感じてます。
おわり
2017年11月19日(日曜日)
【インド】 チェンナイ
さすがにインドといえど、1年で1番涼しい時期と言われる11月は眠れる。
暑いことは暑いしめちゃくちゃべとつくけど、それでもなんとか朝まで目を覚まさずにいられるのはマジで嬉しい。
去年の2月3月は死ぬほど暑かった。
毎日毎日40℃を超える気温で、むせるほどの熱風が立ち込めていた。
そんで宿にて帰ると、日中の熱をコンクリートの建物が吸収しているので、夜通し石窯の中にいるような感覚。
ファンを回したところでドライヤーを身体中に吹きかけてるみたいで暑くてたまらなくて全然眠れなかった。
本当、今が1番インドで過ごしやすい季節だ。
ただひとつ問題なのはこの時期でも蚊がいること。
夜になったらすぐに刺されてしまうし、ホテルの部屋にも入ってくる。
そこで大活躍しているのが蚊取りスプレー。
小さな携帯用なんだけど、ひと吹きするだけで部屋の蚊が全滅する優れもの。
これマジでマジで必需品。
これなかったらどんだけ眠りの邪魔をされていたことか。
この前パリで会ったAちゃんに日本から買ってきてもらってたのがここでスーパー大活躍だよ。
Aちゃん本当にありがとう!!
おかげでインドでも眠れてるよ!!!
さぁ、そんな感じで今日も宿のベッドで目を覚ます。
時間は7時半。
今日はとうとうシェルターホームに訪問する日。
10時にお伺いしますというアポは昨日取り付けている。
果たして俺たちに何ができるのか。
何をすべきか見つけられるのか。
緊張するな。
とりあえず驚愕的にダサい。
この前インドで買ったシャツ。
胴回りが細くて腕がブカブカという絶妙なシルエットが特徴。
若干インド人に近づいたところで宿を出てすぐに近くのバス停からバスに乗り込み、いつものように目的地からだいぶ離れた変なところで降ろされて、インドのバス世界で1番目的地にたどり着けねぇ…………と凹みつつ、そこらへんで朝ごはん。
インドの朝といえばドーサですね。
パリパリしたクレープ生地みたいな食感で、塩味がきいててすごく香ばしい。
これにカレーやらサンバル、ココナッツのソースをつけて食べるととても美味しい。
インドの食堂では、ドーサ、と注文すると勝手にこのカレーとかのソースがついてきて、ソースがなくなったら何も言わなくても店員さんが注ぎ足しにきてくれるから嬉しい。
これで値段は40ルピー、70円。超安い。
ちなみにさっき乗ってきた市バス、8ルピー。14円。ウケる。
でもインド人の低所得層の月収は6000円~8000円とかだから、14円でもバカにはなんないよな。ウケてる場合じゃない。
でも安いもんは安い。
ご飯を食べたら甘いチャイを飲みながらタバコをふかしてエネルギーチャージ。
インドに来るとこのチャイ&シガレッツがめっちゃ楽しみな時間だ。
いいリフレッシュになる。
よーし、気合い入れていくぞ。
GPSを見ながら歩いていき、しばらくして昨日やってきたチルドレンシェルターSEEDSに到着。
ドキドキしながらゲートを入ると、昨日お話しさせてもらった神父さんがいて、おー!!よく来ましたね!!さぁこっちにどうぞ!!と笑顔で迎えてくれた。
建物の横に回ると鉄格子のついた入り口があり、その隙間から呼び鈴を押す。
すると上からおばさんが降りてきて鍵を開けてくれた。
何人か大人がいるみたいだ。
階段を上がっていくとソファーの置かれた部屋があり、そこには数人のおじさんがいた。
みんな神父さんみたいで、お名前にファーザーをつけて自己紹介していただく。
そこにはすでに子供たちがいた。
小さな子供たちで、着ている服はあまり綺麗とは言えないものだった。
でもすごく人懐こく近寄ってきて、たくさんの子供たちが俺たちの周りを取り囲んだ。
おおお…………すごいな……………
よし、こういう時のための俺の武器。
それがギター。
そしてチェンナイで活動するにあたっての最大の必殺技。
ネンジュックルペイディドゥム!!!!
去年来た時に覚えたタミル語の曲だ。
タミルの人ならほぼ全員知ってる超有名曲!!!
こいつを歌うと、みんな笑顔になって一緒に歌ってくれた。
いい感じ!!!
弾かせてー!!弾かせてー!!とみんな集まってきて、ギターの奪い合いが始まって、ぶっ壊されそうで怖かったけど1人1人に弦を弾かせてあげた。
まずみんなギターってものがどういうものかも理解しておらず、弦を押さえてフレットごとに音程を変えるという大前提もわかってない。
日本の小学生くらいの子供ならギターがどんな原理の楽器なのか、ある程度は理解している思う。
ここの施設で暮らしてる子供には、ほとんど楽器と触れ合う機会もないんだろうな。
それから今度はカンちゃんがカメラを出してみんなの写真を撮ったりしてたんだけど、みんなカメラに大興奮して、俺も撮ってー!!俺のことも撮ってー!!と大はしゃぎ。
色んなカッコいいポーズを決めてドヤ顔でカンちゃんに写真を撮らせている。
子供たちが今度は自分たちで撮りたい!!と言いだし、カメラを渡すとみんな部屋の中を動き回って楽しそうに、そして真剣に写真を撮っている。
ギターなんかよりよっぽどみんなカメラの扱い方を知っていて、何も言わなくてもフラッシュをたいたりして、物覚えが早い。
ギターを弾く脳と、機械を扱う脳は全然違うんだろうなってインドに来てよく思う。
情操教育があまり浸透してないんだろうな。
でも音楽が嫌いというわけではなく、子供たちが俺たちの前で歌を披露してくれた。
ハリのあるいい声でタミルの伝統的な歌を歌ってくれる小さな男の子。
すると周りの子供たちが小さな太鼓やタンバリン、指先で鳴らす小さなシンバルなんかを持ってきて、一斉に演奏し始めた。
リズムが合わさり、不思議な節回しのインド音楽が部屋の中に充満する。
なんだよ、すげぇじゃん。
めっちゃすごいやん。
神父さんたちに話を聞くと、ここでは21人の男の子たちが共同生活をしているんだそう。
みんな親がいなかったり、虐待を受けたり、ストリートチルドレンだったり、ワーキングチルドレンだったり、それぞれに重い背景を持った子供たちみたい。
ここはそういった子供たちを保護し、更生を支援するショートステイホームらしく、本当は3ヶ月しか滞在することは認められていないみたい。
なのでその3ヶ月までは政府からの援助もあるらしいんだけど、それ以後は何もない。
子供たちのほとんどがここから近所のフリースクールに通っており、そうした生活費や施設の運営費はローカルの人たちからのサポートで成り立っているんだそうだ。
そして、カトリックの団体を通して現在2人のドイツ人の男女がボランティアに来ているようだけど、俺たちみたいに個人で施設にやってくるような人はまずいないみたい。
そりゃこんな小さな施設、発見することも難しい。
インドにはこうした草の根レベルのチルドレンシェルターが無数に存在するんだろうな。
それからしばらく子供たちと遊んでいると、近所のご夫婦が建物にやってきた。
スポンサースポンサー、という言葉が聞こえたのでどういうことか聞いてみると、なにやらこのご夫婦が今日のお昼ご飯を持ってきてくれたみたいだった。
バケツに入った大量の米が運び込まれる。
そうか…………こうした地元の人たちの助けで子供たちはご飯を食べられているんだな…………
お2人もご一緒にどうぞって言われたんだけど、そんな貴重な食事を俺たちが食べるわけにもいかず、外で食べて来ますと一旦建物を出た。
本当は子供たちと一緒に座ってご飯を食べるほうがいいのかな。
同じご飯を食べて同じ目線に立つこともせず、自分たちだけ豪華に外食っていうのも気がひける。
でもスポンサーさんの持ち寄った食事を食べることのほうがよほど気が引けた。
「んー、どんな感じでお話しすればいいんだろうね。」
「ねー、いきなり寄付をしたいから、って切り出すと、なんか物で釣ってるようなヤラシイ感じにならないかな。」
「そうなんだよなぁ。それに何が必要なのかも理解しないといけないしね。」
このSEEDSは、俺の目にはそんなに設備が充実してるようには見えなかった。
今まで何件かフリースクールや孤児院に行ってきたけど、どこも結構寄付や援助でそれなりに物があった。
ここはそういったところに比べるとなかなか質素だなと思う。
でもカンちゃんの目には、充実してるほうに見えたみたい。
テレビもあるし、みんな破れてない服を着てるし学校カバンもある。
スタッフ用の部屋も広々としていた、ということ。
確かにそれはそう。
でも、必ず何か困ってることはあると思う。
人手なり、消耗品なり、あったら助かるというものがあるはず。
よし、戻ったら俺たちに手助けできることはありませんか?何か必要なものはありませんか?って少し突っ込んで話を聞いてみるか。
カリフラワーを揚げたゴビを置いてるボロボロの食堂を見つけたのでそこでお昼を食べ、チャイを飲んで気合いを入れ直し、いざ施設に戻る。
さぁ、もっと色んな話を聞くぞー。
というところだった。
神父さんの1人が言った。
「はい、今日は来てくれてありがとうございました。今から日曜プログラムがありますのでね、はい。」
ん?どういうこと?
え?
「えっと………僕らもう帰らないといけないということでしょうか?」
「そうですね。これから日曜プログラムがありますもので。」
あ、はい、お忙しいところありがとうございます、今日はお邪魔させていただきありがとうございましたー。
で、建物を出た。
あれ?
終わり?
え?俺たち何しに来たの?
ポカンと立ち尽くす。
え?
なにこれ?ただの旅行者がちょろっと見学に来て子供たちとたわむれて社会勉強しましたっていう感じでしかないやん?
あれ?
まだ何も話聞けてないよ?
なにが必要なのかとか、ストリートチルドレンの現状とか。
なんか神父さんたちも俺たちも腹の探り合いみたいな雰囲気で全然切り込んだことが聞けんかった。
どこまで聞いていいもんか、失礼にならないかとか、そんなこと考えて全然リラックスできてなかったよ?
え?なにこれ?
ずーん…………と落ち込んでとぼとぼ歩いた。
なんてこった…………なにあのお客様見学コーナー…………
彼らのために何かしたくて訪問したのに、施設の大人たちは俺たちと距離を置いて接していた。
なにか、俺たちにはなにも期待していません、っていう冷めた感じだった。
そりゃそうです。
俺たちに期待されてもデカイことなんかなんもできません。
ちっぽけな人間です。
でも小さなことでも俺たちは子供たちのために何かしたいです。
歌がうまい子がいた。
ダンスが上手い子がいた。
カメラの仕組みをすぐに理解する器用な子がいた。
無限の可能性を持った彼らに何か手助けしたい。
なのになんもできんかった……………
いや、別に初日にすることはない。
これから何度でも通えばいいこと。
でも、またいつでも来てください、みたいなウェルカム感が全然感じられなかったよなぁ……………
それなのにノコノコ行くのもなぁ………
前回のインドでもこんな感じだったよな。
俺がしようとしてることは、寄付は本当に必要とされているのか?
ストリートチルドレンやワーキングチルドレンの問題はきっと無限に存在するはずなのに、そこにたどり着けない。
雲をつかむような手ごたえのなさ。
カンちゃんも、どうしたらいいんだろう………って肩を落としてる。
俺たちが望むのは、子供たちが笑顔で楽しく充実した設備の中で生活していること。
それがベスト。
子供たちが凄惨なストリートでの生活から抜け出し、安全な場所で暮らすことができていることが1番大事。
でもすでに充実していると何かを寄付するってことが出来づらい。
どうせ寄付したり、子供たちと音楽を通してコミュニケーションを取るんだったら、本当にそれを必要としている施設や団体にしたい。
前回はカデルの学校にもリコーダーを寄付させてもらったけど、今回はもっとターゲットを絞っていこうと思ってる。
そうなると、俺たちは出来るだけ設備の充実していない場所を探さないといけない。
そしてふと思う。
俺たちは今回インドに来た目的を達成するために、心のどこかで貧しい施設があってくれと望んでるみたいではないか?
なんてアホらしいことだ。
なんて傲慢な考え方だ。
葬儀屋は人が死なないと金が儲からない。
でも人が死ぬことを望んだりなんか、あってはいけないことだ。
人の不幸を求めたりなんかしてはいけない。
インドには本当に援助を必要としてる施設が無数にあるはず。
もっともっと足を使おう。
もっともっと施設や子供たちと接しよう。
前にどこかで、途上国の人たちにむやみに寄付をするともらい癖がつくから良くない、なんて話を聞いたことがある。
失せろボケだ。
野良犬に餌やるみたいな言い方しやがって。
俺はもっと人間を信じよう。
でも…………はぁ…………凹むわ…………
なんとかバスに乗って宿の近くまでやってきて、ぼちぼち歩いて晩ご飯を買った。
行き交うトゥクトゥクとバイクのクラクション。
夜遅くまで開いているお店。
インドの夜はたぎっている。