どうもです!!みなさんいかがお過ごしですか?
日本もだいぶあったかくなってきた頃ではないでしょうか。
僕らはナミビアのゴバビスという小さな町にいるのですが、南半球なので南下するごとに寒くなっています。
テント泊でなかなか寒いです。
お知らせなんですが、とある縁で去年オーストリアで挙げた僕らの結婚式をゼクシィ様に取り上げていただきました。
素敵に編集してくださったゼクシィ様、本当にありがとうございます!!
ゼクシィ海外ウエディングのmook本ですので、みなさんコンビニや書店で見かけましたら手にとってみてください!
よろしくお願いします!
2017年4月9日(日曜日)
【マラウィ】 カタベイ ~ ンガラ
ラスタマンに挨拶してお世話になったワンラブを出た。
さぁ、今日はどこに行こう。
田舎の、何にもない静かなところに行きたい。
湖沿いの小さな村。
観光客もほとんど来ないような場所のローカルな宿に泊まって、ぼんやりと湖を眺める。
周りにある集落ではアフリカの、マラウィの飾らない素顔が見られ、子供たちが初めて見る外国人に手を振ってくる。
そんな場所を見つけたい。
ただもうずっとネットを繋げていないので、グーグルマップも読み込んでおらず、目星をつけることもできない。
完全なるヤマカンだ。
乗り合いバンで湖沿いを走り、窓の外に良さそうな風景が見えたらそこで止めてもらって降りるというやり方。
そこにホテルがあるかどうかもわからない。
風まかせで行き着くところに流れよう。
きっと、マラウィはそのくらいでちょうどいい。
綺麗なところが見つかったらいいんだけどな。
旅人としての勘がものを言うぞ。腕の見せどころだ。
それにしても体調が死ぬほど終わってる。
ゆうべ寝ていたらいきなり少し漏らしてしまって飛び起きた。
かなりの勢いでお腹を壊している。
昨日まではなんともなかったのになぁ………………
ぐるぐるぐるぐるとお腹が鳴っており、1時間おきくらいにトイレに行っている。
おかげで体がダルくて歩くのもしんどいくらい。
はぁ、何食べたのがいけなかったんだろ…………
朝ごはんにエッグサンドイッチを食べたけど、半分くらい残してしまった。
体力落ちてる。
カタベイから湖沿いに南下するには、まずは町から7~8分離れた大きな幹線道路まで出ないといけない。
そこらへんのバンにジャンクションー、とか南下するーって言ってればすぐ乗せていってくれる。
値段は300クワチャ。45円。
そして幹線道路まで出たら道端に立って乗り合いバンを拾う。
これらのバンはだいたいコタコタという中部の町まで行くので、その道中で綺麗な場所を見つけられたらいいな。
バンは人を乗せ替えながら、走っていく。
小さな集落、村、また集落。
ボロいドアがガラガラとスライドして開き、新しい人が乗り込み、また降りていく。
どの集落もあばら家だらけのボロいもので、人々が暇そうに日陰で座り込んでいる。
雨の名残でできた茶色い水たまりで服を洗う女の人。
ヤギを追う子供。
ピーナッツを並べて売るおばさんたち。
頭に木々を乗せて歩く小学生くらいの女の子。
そんな風景が通り過ぎていく。
心の中をすり抜けていく。
これは新しい風景だ。
俺の人生にとっての新鮮な景色。
でも、このアフリカの風景にすら、やがて慣れてしまう。
知ってしまえば、いつか驚かなくなる。
もう15年も旅をしてきて、どこに行ってもいつもそれなりに新鮮な感動を得ることができてきた。
今でもそう。
でもやっぱり、初めてのころの感動はもっともっと大きかった。
旅に感動しなくなってるわけでない。
ただ、次が楽しみになってきているんだ。
日本に帰ってからのカンちゃんとの新生活。
ずっと旅してきて、知らない場所にドンドン入っていくエキサイティングなことにしか興奮しなくなっていって、周りからお前は一生旅を止められないよなんて言われてきたのに、今はこんなに日本での暮らしが楽しみでしょうがない。
カンちゃんと新居を整え、お店をやるとしてどんな店づくりにするのか、2人の好きなパグを飼って、休みにはパグを連れて釣りに行って、
子供だって楽しみだ。
世界を旅し、カンちゃんを手に入れ、きっと旅に満足し始めてるのかもしれない。
インドだけは別だけど。
あの野郎だけはどうにも一筋縄じゃいかん。
もし旅を終えてもインドだけは絶対に関わっていく。
このアフリカ旅が終わったら、どうなってしまうだろうな。
しばらくして、道路際になにやら大きなロッジの看板が見えた。
あ、ここどうだろう?
慌ててストップー!と声を出すと、乗り合いバンは小さな村の入り口で止まった。
荷物を下ろすとバンはすぐにぶーんと走り去って行き、俺たちは2人でポツンと取り残された。
えーっと、ここどこだろ………?
あまりにも外国人が珍しいのか、なんだこの白くて目が細くて髪の毛がサラサラした珍獣は?といった驚愕の表情で俺たちを凝視してくる子供たち。
ていうか子供たちだけじゃなく、大人たちも、ビビった顔で俺たちのことを見ている。
おお、こりゃよほどの田舎だぞ。
ンガラ、という名前の村らしい。
とりあえずお腹が壊れまくっていて一刻も早くトイレに行きたいので、看板に書いてあるロッジを目指してみた。
錆びついたボロい看板だけど、どうやらビーチ沿いのロッジらしく、のんびりできるロケーションっぽいぞ。
ていうかやってるのかな………?
こんなど田舎の、こんなあぜ道の先に本当に宿なんかあんのか?
まぁ今日はそういうところを目指しているわけだけども。
あぜ道の脇にポツポツと散らばる民家から子供たちがこっちを見ている。
その手には空のペットボトルの容器が握られている。
マラウィに来てからそうだけど、子供たちがみんな俺たちの飲み終わったペットボトルを欲しがるのを見てきた。
それくらい何も持っておらず、ペットボトルですら彼らにはいい遊び道具なのかもしれない。
きっとこの子供たちからしたら俺たちが身につけているほとんどのものが珍しいものなんじゃないかな。
綺麗な服、アクセサリー、バッグ、帽子、靴、サンダル、寝袋、
iPhoneなんてとんでもない近未来の代物かもしれない。
充電バッテリーも、ケーブルも、パソコンも、ハードディスクも、カメラも、ギターも、ペンも、ノートもそうだ。
アイロン?髪の毛のコテ?電気の通っていない家に住んでる彼らにはマジで無縁のもののはず。
この現代社会でも、こんな生活を送ってる人たちが世界にはきっと何億人かいる。
世界の基準というものが多数決で決まるのならば、俺たちの基準もそんなに確かなものではないのかもしれないな。
あー、それにしても体がキツい。
お腹がずっとグルグル鳴っている。
早くトイレに行かないと。
子供たち2人が俺たちのところに駆け寄ってきてカンちゃんのキャリーバッグを持って一緒に引いてくれた。
マジでこんなところに宿なんかあるのか?と思いながらあぜ道を歩いて行くと、やがて結構立派な門が見えてきた。
門をくぐると、そこには茅葺の大きなロッジがあった。
おおお………なんだこれ、ちゃんとしたところやん…………
「ハロー、ウェルカム、お泊まりですか?」
こんな僻地に誰か客が来るのか?と不思議になるけども、どうやらちゃんとしたホテルのようだ。
スタッフもきちんと英語が喋れる。
カタヤロッジというホテルみたいだ。
「1番安い部屋でいくらですか?」
「30ドルだよ。」
ぐううう…………高い…………
建物の見た目通り、ここはそこそこお金持ちの人たちが泊まりにくる僻地のプライベートホテルといった場所みたいだ。
カタベイのバタフライロッジでもプライベートで8000クワチャ、1200円だったので3300円はなかなかの値段だ。
建物は思いっきりビーチに面していて、サマーハットのパラソルが砂浜にたっていたりしてすごくいい感じではあるんだけど、1泊3300円はこのマラウィでは高級すぎるなぁ。
うーん、残念だけど高いのでやめときますと、もうひとつあったンガラビーチロッジのほうを見に行ってみることした。
「ンガラビーチロッジに行くのかい?あっちはもっともっともーっと高いからやめといたほうがいいよ。」
えええー…………そうなの…………?
でもなぁ、一応自分たちで確かめに行きたいしなぁ…………
そこから頑張ってビーチ沿いを歩いて隣にあるンガラビーチロッジを目指した。
ビーチとはいっても水草が生えていて、綺麗なリゾート地のビーチとは程遠いロケーションではある。
でもそんな飾らない雰囲気がたまらなく最果て感がある。
地元の人たちが波打ち際で枝をふって釣りをしていたり、裸で泳いだりしている。
広い広いマラウィ湖のほとり、ハァハァと息をついて歩いた。
静寂の中に子供たちの遊ぶ声がやけに近く聞こえる。
みんなこの謎の外国人を物珍しそうに見ている。
すげぇところにいるなぁ俺たち。
10分ほどで隣にあるンガラビーチロッジに着いたんだけど、ここもまた砂浜に開放的なカフェスペースのあるリゾートホテルといった感じだった。
ただ客の気配はまったくない。
忘れ去られた僻地の静かな静かなホテル。
歩いてきたスタッフに値段を聞いてみた。
「1番安い部屋はいくらですか?」
「80ドルだよ。1人。」
撃沈…………
ただの超高級ホテルじゃねえか……………
先進国の値段だよそれ……………
テント泊もオーケーだよとはいうけども、それでも1人10ドル。
ローカルホテルならプライベートで400円で泊まれるマラウィでそんな金払ってテント泊なんかしたくないよ……………
終わった……………
地図もなんにもなしでヤマカンでいいロケーションのホテルを探し出すなんてミッション、さすがに無理があったか……………
こりゃもうこの先にあるコタコタっていうちょっと大きい町に行って普通のローカル宿に泊まるしかないか…………
下痢で死にそうだし、体力的にもこれ以上探し回るのはしんどすぎる。
トイレだけ貸してもらい、トボトボとホテルを後にしようとしていると、ゲートのところで掃除のおじさんがいて声をかけてきた。
「泊まらないのかい?」
「いやー、高すぎますー……………」
「そうかそうか。だったら少し向こうにもうひとつカロンボロッジっていうところがあるからそこに行ってみたらどうだい?」
もうひとつあるのか…………
でもこのふたつのホテルの並びだったらどうせ高いんだろうなぁ。
でもなぁ…………せっかくここにたどり着いたんだから見にいくだけ行ってみようかなぁ。
ああ、お腹しんどい…………
下痢がひどすぎる…………
マジで水しか出ない……………
根性でまたあぜ道を歩いてさっき乗り合いバンを降りた車道まで戻ってきた。
カロンボロッジって名前は聞いたけどそれがどこにあるのかなんてまったくわからない。
こんな超ど田舎の村、体調が良ければ探し回るんだけどなぁ。
あぁ、暑い…………
マラウィは湿度が高いのでじとじとして嫌な汗をかいてしまう。
あー、カロンボロッジってどこだろう……………ていうかカロうどん食べたいなぁ………お腹に優しいとろろ昆布とか食べたいなぁ…………
「ハーイ、何か困ってるのかい?どこに行くんだい?」
するとそこに英語の喋れる現地のおじさんが話しかけてきた。
乗り合いバンの客引きなんだろうけど、俺たちがカロンボロッジってどこですか?と聞くと、ちょっと待ってなと言ってどこかに歩いて行き、すぐに自転車を2台連れて戻ってきた。
どうやらチャリンコタクシーみたいだ。
ボロい自転車だけど荷台にクッションが取り付けてあり、座れるようになっている。
この辺りではこうしたチャリンコタクシーが庶民の足なんだな。
「カロンボロッジはここから自転車で15分くらいだよ。歩きだと遠いからこれで行くといい。値段は1人200クワチャだよ。」
もうどうにでもなれとチャリンコにまたがった。
「気持ちいいねー!!」
「ねー!!」
地元のたくましい青年たちがこぐ自転車の後ろで風にふかれてマラウィの道を進んでいく。
周りに広がるのはどこまでも緑。
俺たちなにしてんだ?
面白い展開ではあるけど、これで高くて泊まれなかったらそれこそ帰りどうしよう?
途方に暮れるしかないぞ?
そんな心配おかまいなしに自転車は車道から草むらに突入。
ええ??!!こんなところ!?
あ!!看板がある!!!
やる気ゼロですか!!ウケる!!
ちょ!!この先!?
およそ宿泊施設があるとは到底思えないハードこの上ないあぜ道を突き進む自転車。
足元はぐちょぐちょにぬかるんでおり、そんな道をタイヤを取られることなく器用に自転車をこぐ若者たち。
重い荷物を持った俺たちを乗せて、これで1台200クワチャって、30円だぞ?
でもこれが彼らの立派な収入なんだよな。
サツキとメイが行方不明になった田舎の5倍くらい半端ないあぜ道を、猫バスならぬチャリタクで突き進んでいると、今度はこれもん。
どんなホテルなんだよ………これ越えていかないと行けないなんて…………
完全に侵入者拒んでるやん…………
靴を脱ぎ、ズボンをまくりあげて茶色い水にジャバジャバ入り、アドベンチャー気分でさらに田んぼの中を進んでいくこと5分。
向こうに砂浜が見えてきた。
そしてその砂浜に4つのほったて小屋が見える。
え?まさかあれ?!
マジでウケる!!
ちょんちょん、と砂浜に建物が並んでおり、どうやらこれがカロンボロッジみたいだ。
すげぇ…………なんつーところにあるホテルなんだよ…………
「ハーイ、ウェルカム、えーっと……泊まり?」
オーナーのおじさんが出迎えてくれたんだけど、おいおい、マジかよ客来たしヤベェ、みたいな感じで俺たちよりもオーナーのおじさんが1番ビビってる。
今まで客来たことあんのかな…………
砂浜の上を建物まで荷物を運んでくれたチャリタクの兄さんたちにお金を払い、それから値段交渉。
どうやらおじさんが1人でやってる宿らしく、3年前からぼちぼちとここを作り始めてまだ値段設定もできてないみたい。
もしかしたら俺たちが初めての客なのかも。
「個室だといくらですか?」
「えーっと、20000クワチャ?かな?」
高え…………
それだったら30ドルって言ってた最初のカタヤロッジと変わらんやん…………
こんな作ってる途中の施設の充実してない場所でその値段はちょっと言い過ぎだよ。
「テントだとどうですか?」
「1人5ドルかな。どこに張ってもいいよ。」
うーん、5ドルか…………
正直、ロケーションは抜群っていうか理想通り。
あのハードなあぜ道を越えてきただけあって周りにはひたすら何もなく、砂浜とマラウィ湖をひとりじめ、完全にプライベートビーチって感じだ。
めっちゃいい場所。
「個室、15000クワチャでどうだい?」
「うーん、10000クワチャでどうですか?そのかわり2泊はします。」
「オッケー!それでいいよ!!さ、部屋を案内するね。」
1500円でも高いかなと思ったんだけど、部屋を見せてもらってめっちゃテンション上がった。
ビーチにポツンとたつ三角屋根の麦わら小屋。
入り口の横に椅子が置いてあり、目の前はビーチとマラウィ湖。
静寂、小鳥のさえずり、波の音、
なんだこれ!!最高じゃんか!!!!
こんなところに来たいと思っていたまんまっていうか理想を超えてくる場所を見つけちまった!!!
すっげぇ!!!
こりゃヤベェ!!!
電気はソーラー発電、水はよく断水するので裏の井戸から汲んでくる、さらにトイレが目隠しなしというラブホテルを軽く超えてくる作りだけど、ここならまぁアリだ。
電気がないのでiPhoneの充電もそのうち切れるだろうけど、この世間から完璧に隔絶されたロケーションこそマラウィで求めていた場所だ。
とんでもないとこ見つけちまったぞ。
とりあえずソッコーでトイレに座って水を出し、荷物を置いたらご飯を食べにさっきのンガラの村に出かけた。
あぜ道を歩き、靴を脱いで沢をジャバジャバ渡り、車道に出てのんびり歩いた。
周りにはどこまでもライステラスとキャッサバ畑が広がっている。
お腹が鳴り出したら草むらに入ってしゃがみ、またお腹が鳴ったら草むらに入り、そうこうして40分ほどで村にたどり着いた。
ンガラの村はそれはそれは田舎で、ほったて小屋が30メートルくらい並んで終わりというもの。
マーケットも本当に小さく、わずかな野菜くらいしか売ってない。
全ての建物がボロボロで、あちこちに泥水の水たまりがあり、ヤギがメーメーいっている。
女の人の髪型すごい。
俺たちが村にやってくると、よほど珍しいのか村の全ての人たちが凝縮してきて、好奇心旺盛な子供たちがどこからともなくワラワラと集まってきて俺たちの後をついてきた。
するとそんな子供たちがサッと俺たちの手を握ってきて、一緒に歩き出す。
カンちゃんと俺、子供たちと手をつないでまるでなんかのパレードみたいだ。
元気いっぱいで人懐こくて、都会の子供だとこうはいかないはず。
あー、やっぱり田舎に来てよかった。
子供たちの柔らかい手のぬくもりに心があったかくなる。
しかしンガラの村にはご飯を食べる食堂がなかった。
1ヶ所だけ、崩壊して数年経ちましたけどなにか?みたいなレストランに連れて行ってもらったけど、もう食べ物が切れたみたいでどこにも食べ物がない。
いや、あることはある。
道端でめっちゃ黒ずんだズタボロの鉄板の上でバナナかなんかを揚げているんだけど、今のお腹の状態であんな汚れた油を使ったもの食べたら2秒だ。
どうしようかなーと困っていたら、そういえばバッグの中に鍋を入れてることを思い出した。
そうだそうだ、こういう時のための鍋だよ。
ケニアで買っといたのがここで役に立つとは。
食材を買って帰って砂浜で火をおこしてなんか作ろう。
しかしまぁこんな村なので食材すらほとんど売っておらず、トマトしか買うことができんかった。
まぁパスタの残りがバッグに入ってるし、これでテキトーなもん作るしかないか。
明日、もう少し遠くにある大きな町まで買い出しに行こうかな。
この村では下痢の薬も手に入らない。
さっき乗ってけてくれたチャリタクの青年を見つけて、ワンモアー!と言うと、青年は太陽みたいな笑顔でレッツゴー!!と笑った。
ふくらはぎと腕の筋肉の隆起がとても頼もしかった。
カロンボロッジに戻ったころには夜になっており、そこらへんで木を拾ってきて砂浜の上で火を起こした。
しかしゆうべの雨で全部湿っており、なかなか火がつかない。
手こずっていると、そこにオーナーのオッちゃんが何かを持ってやってきた。
オッちゃんはなにかジェルみたいなものを持っており、それを火にくべると一瞬で火が燃え上がった。
着火剤だ。
しかもわざわざ乾いた木を持ってきてくれ、あっという間に火をつけてくれた。
うおー、さすがは毎日ガスじゃなくて木で火をおこしてる現地の人だ。
手慣れかたが半端じゃない。
「お腹を壊してるのかい?そうかそれは大変だね。何か変なもの食べた?」
「んー、なんだろう。カンちゃんが食べてなくて、俺しか食べてないものっていったら………」
「あ、キャッサバのシマじゃない?ラスタマンのところで食べたやつ。私あれ苦手だから食べなかったし。」
「キャッサバシマ!?オーウ、間違いない、それだ。あれは壊しやすいんだよ。私もあれを食べると下痢になるんだよ。カタベイの食べ物だよね。」
マジか…………
地元の人がこれほどすぐにそう言うってことは間違いないんだろう…………
やっちまった…………
「キャッサバシマはキツイからなぁ。たくさん水を飲んで水分を取るんだよ。水に砂糖と塩を溶かして飲むと直接体に吸収されて即効性のエネルギーになるよ。」
オーナーのおじさんは英語が堪能で、お話も上手で、とても知的で素敵なかただ。
しかもすごく優しくて、何かと気にかけてくれる。
俺たちが珍しい客だからなのかもわからんけど、とにかく一生懸命もてなしてくれた。
「明日はもし起きれたら朝日を見るといい。5時半にのぼってくるんだけど、ちょうど目の前の湖からのぼってきてすごく美しいよ。」
月がこうこうと夜空で光っている。
雲がかかって、その間から月光が筋となって湖にさし、ところどころが輝いている。
夜風が気持ちいい。
潮騒がざざーん、ざざーん、と優しく記憶をなでる。
砂浜に素足をつけるとひんやりとした。
パスタは美味しくなかった。
でもすごくいい夜だ。
あぁ、天国にたどり着けた。