スポンサーリンク 久しぶりにジプシーのアコーディオン弾きとモメる 2017/1/31 2017/01/01~スコットランド, ■彼女と世界二周目■ 2017年1月20日(金曜日)【スコットランド】 アーバイン朝、駐車場の周りを散歩してみた。寝ていた駐車場のまわりは海に繋がる河口になっており、とても汚く、水も少ない。誰にも見られなくなって置いてけぼりにされた看板が虚しく方角を指している。周りは草が生えた荒地で、ボロボロの岸壁ひび割れて錆びついていた。「カンちゃん、朝ごはん何食べようか?」「何しよう?」「昨日歌ってるところにあった人気のパイ屋さんにする?スープオブザデイがあったから、日替わりのスープとか食べてみようよ。」「うん、それにしようそれにしよう!スープ楽しみ!!」小さな丘の上に登って風景を見渡した。だだっ広い駐車場に俺たちの車がポツリと止まっている。天気は悪く、霧雨が若干降っているが、まぁいつものイギリスの天気だ。日本は最近大雪が降っているようだけど、こっちでは実は雪を見ることも珍しい。イギリスってそんなもんだ。曇天の下、カンちゃんと2人タッタッタと走って駆け下りて車に戻った。町にやってきて、昨日見つけていたパイ屋さんにやってきた。今日も昨日と同じくたくさんの人がひっきりなしにやってきている人気店だ。小さな店内で、棚にたくさんのパイが並んでいる。スコットランドといえばパイ。町を見るとみんなが歩き食いしてるようなスナック感覚の食べ物だ。スコットランド人はみんなパイが大好き。まだ全然ちゃんと食べてなかったので、この人気店で試してみよう!!というわけで日替わりスープとミンチのパイをゲット。スープが1.2ポンド。170円。ミンチパイが1.5ポンド。210円。スープには無料でパンもつけてくれるので、これだけで朝ごはんになりそうだ。野菜のスープは安定の優しい味。そしてパイは程よい焼き加減の生地の中にタップリの挽き肉が入っており、ちょっとピリッとくる味付けだ。コショウやら色んな香辛料がきいていて、こりゃ確かに美味しい。気軽に食べられる大衆食って感じ。スコットランドには他にハギスという名物ご飯があるので出るまでに食べないといけないなぁと思ってはいるんだけど、どうもなかなか手が出ない…………なんか羊の内臓系の食べ物みたいで、イギリス人の味覚が信用できないのでチャレンジするのが怖すぎる…………世界で1番ウルトラ臭いとかいわれてる魚を発酵させた食べ物とかあるし、どう考えても信用できない…………何食べても塩味足りないし…………まぁスコットランド出るまでにハギスだけはチャレンジしないとな………………デパートの隅っこにあるゲームする人。なんか懐かしい。大満足の朝昼ご飯を終えてホコ天にやってくると、あー、やっちまった、昨日俺が歌ったポジションで白髪のおじさんがギター弾き語りをやっている。そういえば昨日地元の人が言ってたな。この町にはお爺さんシンガーがいるんだよって。この人がそうか。そんなに上手くはないんだけど、陽気にノリノリでオールディーズを演奏しており、和やかな雰囲気だ。素敵な演奏に道行く人も笑顔になっている。その向こうには昨日もいたアコーディオン弾きの兄ちゃんが定位置で演奏している。相変わらず手癖でランバダ1本をひたすらリピートしている。もっと練習してレパートリー増やせばいいのに、彼らはそれをしないんだよなぁ。町の人たちも、ジプシーの人たちはひたすら1日中同じ曲ばかりやってるから飽きるし聞いててストレスになるのよねぇとよく言っている。彼は顔つきからしてジプシーだろうけど、ジプシーで真面目に音楽やってるやつほとんど見たことない。たまにすごく美しいロマ音楽を奏でている人もいるけど、これはごく稀だ。「ハイ、あのお爺さんはあと1時間くらいでやめるぜ。」ホコ天にすでに2組のパフォーマーがいて、やる場所がなくてどうしようかと思ってるところに新聞売りの兄さんが話しかけてきた。どうやらいつもこれくらいの時間からちょっとだけ演奏してる帰るみたいだ。新聞売りの兄さんも毎日ここに立っているので、みんなの動きを把握してるんだろうな。それにしても同じ路上で稼ぐ俺にいつもはあまり友好的ではない新聞売りの人がこうして協力してくれたことが嬉しかった。「君はいいシンガーだよ。今日も頑張ってな。」素敵な笑顔でも親指を立ててくれた兄さん。ありがとう!!というわけでショッピングセンターの中で少しネット作業をし、1時間くらいしてからホコ天に戻ると兄さんが入っていた通りお爺さんシンガーは撤収していなくなっていた。というわけでお爺さんがいたポジションで早速演奏開始。うん、人々の反応もいいし、やっぱりこの町やりやすいなぁ。と、3曲目が終わったところで誰かが後ろからエクスキューズミーと声をかけてきた。振り向くとそこにはアコーディオン弾きの兄ちゃんがいた。気弱そうな表情で、自分のポジションに置いてきたアコーディオンを気にしながらこう言ってきた。「あなたの音楽、向こう、聞こえる。リラックスして演奏できない。もっと離れてくれ。」いやいやいや、何言ってるの?つい今まで同じ場所でお爺さんシンガーが演奏してたのに、音が聞こえるから離れてくれってどういうことだ?俺の演奏は特に大きな音は出さない。ギターもかき鳴らさないし歌もがなったりしないし、アンプだってもちろん使っていない。お爺さんシンガーの演奏と同じような音量だ。それに今までの路上の経験上、お互い生音の演奏ならばこれくらいの距離があいていたら充分だ。妨害にはならない。「え?でもさっきまでここで別の男性が歌ってたよね?同じような音量だよ?」「彼はここ、5年やってる。俺リラックスしてできない。」カタコトの英語で話しているところを見るとやっぱりジプシーなんだろう。ていうかこの兄ちゃんがここで何年やってるか知らないけど、自分がリラックスして演奏したいからって周りのやつに文句言うのは違うだろう。ましてやこのすごい密度で路上パフォーマーがシノギを削る激戦区のイギリスで甘えたこと言ってたらいけない。もちろん路上では先客、先人に敬意を払うのは当然のこと。だからお爺さんシンガーがその日のプレイを終えるまで待っといた。おかげでいつもより2時間くらい始めるのが遅くなったけどこれは仕方ない。そしてアコーディオン弾きの兄ちゃんとも充分な距離をとって演奏してるというのに、結局は新入りが自分の前で稼いでるのが気に触るってことなんだろう。路上は誰のものでもない。この町には路上のライセンスもない。お爺さんシンガーは5年ここでやってるからオーケー、なんて理屈は通らんよ。と、言っても、出来るだけ他のパフォーマーとモメたくはないのが心情。強情になってモメてもいいことない。一応形だけ5メートルくらい移動すると彼も気弱そうに親指を立てて戻っていった。するとそこにさっきまで俺の演奏を聴いてくれていた地元のおじさんが声をかけてきた。「気にすることはないよ。充分離れているじゃないか。いつもここにお爺さんシンガーがいて、向こうにアコーディオンの彼がいる。いつもの形なんだから。それにライセンスもないんだから文句言われることはないよ。ささ、歌って歌って。」うん、気を取り直して歌おう。この町に来て思ったのは本当に人がどんどん話しかけてくること。面白いくらい話しかけてくる。カンちゃんもパソコン作業をしていたら、いきなりおばさんが、あら何してるのー?と笑顔で隣に座ってきて、後で時間があったらうちにコーヒーでも飲みに来てねーと言われたそうだ。みんなすごく人懐こくて優しい雰囲気がある。すぐに先日お邪魔したチエさんのお話を思い出した。エジンバラとグラスゴーは京都と大阪に例えられることが多いそうで、大阪に例えられるグラスゴーの人はみんな明るくてすぐに話しかけてくる性格なんですってチエさんが言っていた。このアーバインでも結構そうなのかもしれないな。おかげでたくさんの人とお話ししながらとても楽しい路上。なのだが、久しぶりにああいったジプシーの兄ちゃんとのやり取りがあって、少し心が乱れている。内陸ヨーロッパにはもっともっとたくさんジプシーがいたので、毎日のように彼らと路上でぶつかっていた。そのたびにイラついていたもんだ。彼らに対しても、何もできない自分に対しても。あの兄ちゃんも、手癖でテキトーにアコーディオンを弾くだけでしかめ面でお金が入るのを待っていたってきっと全然稼げないはず。この厳しいイギリスならばならさら。きっともっとやり方があるはず。金に困ってるならば、もっとアイデア次第で町の人を明るくして、感謝されて稼ぐ方法が必ずあるはず。あー、なんかむしゃくしゃするなぁ。彼らを救いたいなんて身の程知らずなことは思わないけど、同じ路上に生きる者として何かもっとマシな稼ぎ方を示すことはできんかなぁ。歌い始めて結構すぐに太陽が沈んで暗くなり、通りに街灯が灯った。今日はスタートが遅かったもんな。今日はずっと霧雨が降ったり止んだりで、ギターケースがしっとりと濡れてしまっている。ギターも雨粒まみれだ。人通りも少なくなり今日は2時間で終了。あがりは2時間で64ポンド。9100円。路上を終えたら車に戻り、3分運転してテスコエクストラ到着。食材を買い込んでそこから3分運転して海沿いの寝床であり駐車場到着。いやぁ、このくらいの町は小ぢんまりと全部揃ってるから生活基盤がすぐに整って楽でいいわぁ。渋滞もないし、道ももう頭に入ってるし、寝床も広々して快適この上ない。ストレスゼロ。アーバインいいなぁ。でもやっぱり今のところイギリス最高はウィットビーかな。あの町は快適な上に、さらに歴史のわびさびがある。ウィットビー修道院の廃墟は本当に美しかったなぁ。晩ご飯はカンちゃん特製、麻婆茄子。うん、あんまりナスが美味しくない!!でも美味しい!!明日も元気に歌うぞー!!