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明日、ついに違う国へ

2016年11月30日(水曜日)
【オーストリア】 ウィーン















「はいはいー、中に入ってエレベーターで4階ねー。」



呼び鈴を押すと、インターフォンから日本人男性の声がした。



大きな石造りの建物に入り、手動でドアを開けないといけない前時代的なエレベーターに乗り、4階へと上がる。


ガコンと振動がして止まり、ドアを開けると、大きな扉を開けて日本人の初老の男性が待ってくださっていた。




「おー、入って入って。お話は聞いておりますよ。前に帰国したときにも植松さんにご推薦いただいてましたからね。」



お邪魔させていただいたのはこのウィーンにもう40年以上お住まいになっている斎藤さんのお宅。


中に入ると廊下の両側にドアが並び、まるでホテルの中にいるみたいに大きかった。


リビングの向こうにはさらに広いリビングがあり、ちょっとした短距離走ができそうなくらい。



この斎藤さんは画家さんで、日本でお世話になっているパティスリーフラワーの植松さんにご紹介していただいた方だ。


白い絵を描く人だよと植松さんに教えてもらったんだけど、白い絵と聞いてすぐに自分の売れない絵描きという歌を思い出した。

自分のこだわりを貫き通すことの難しさを歌った曲なんだけど、完全フィクションのつもりが本当にそんな絵を描く人がいたことに驚いた。


植松さん、いつも気にかけていただいて感謝します。






「あらー、いらっしゃいー。ちょっとお仕事がありましてね。バタバタしてますけど、お昼ご飯ご用意してますからね。」



向こうの部屋からやってきたのは斎藤さんの奥さん、エベリンさん。

オーストリア人の奥さんさんだけど、まぁびっくりするくらい日本語がペラペラだ。


聞けば奥さんは日本語通訳や日本のテレビ局なんかのコーディネートをしてらっしゃるかただった。

そりゃペラペラなのもうなづける。




「ゆうべ大島さんと飲んでまして。大島さんがよろしくとおっしゃってました。」



「あー、大島さんね!彼とは前にお仕事をご一緒したことがありました。ささ、どうぞ食べてください。」






テーブルの上に用意されていたのは魚の切り身のカルパッチョだった。

綺麗な彩りで、さすがはウィーンの人。


これだけですごくセンスが溢れている。





こうした共通の友人のご紹介からお邪魔させていただく機会はたまにあるけど、これってかなり緊張する。

どんな話をすればいいだろうって考えてしまうし、植松さんの顔に泥を塗ることだけはやったらいけない。


こんなにも素敵なお昼ご飯をご用意してくださってるのもすごく恐縮だ。


シュピッツから来たので、バッハウ名物のアプリコットのリキュールをお土産に持ってきたけど、喜んでくれるかな。




「チロルは寒かったでしょう?雪はもう降ってた?ウィーンもこの数日はとても寒いですから。」



本当はもっと早くにお会いする予定だったんだけど、季節を考えて約束を延ばしていた。

先にウィーン方面を回っていたらチロルに雪が降り出す可能性があった。


そのことでエベリンさん斎藤さんに約束を変更していただりしたんだけど、お二人とも快くそれを理解してくださった。


そして実際お会いしたお二人はメールの丁寧の文面よりもさらに丁寧で、優しい柔らかい人だった。




「僕がウィーンに来た頃はまだオペラも安くてね、1シリングとかで入れたんですよ。もちろん席は後ろのほうでステージもほとんど見えないんどけど、毎日行ってた。それは暖をとれるためなんです。家にいると暖房をかけないといけないから暖房代を節約するためにオペラに行くんです。出し物関係なく。」



「あとは日本大使館で紅白歌合戦の映写会なんかしてましたね。ウィーンに住んでる日本人が集まってみんなで紅白を見てましたよ。あの頃はまだファックスもなくてテレックスってものでしたねー。」




お二人のお話がとても面白くてご飯をいただきながらたくさん話した。


ご飯は前菜のカルパッチョのあとにカボチャのスープ、それから色んな野菜をビーフで巻いたメインディッシュというとても豪華なものだった。








日本食がいいか迷ったけど、せっかくということで伝統的なオーストリアの家庭料理にしてくれたんだそう。


すごく美味しかったんだけど量がかなりのもので、最後のほうが苦しくなってきた。



「あらあら、多かったら残してね。うっかりしてたわ、オーストリアの若者のつもりで盛ったから日本人には多いわよね。」



申し訳ありませんと少し残させてもらったんだけど、食後にはアイスクリームにラズベリーが乗せられたデザートまで出してくださった。




テーブルを挟んで、優しいお二人の笑顔を見ていると、なんだかとても和んだ。


昼下がりの部屋の中、スプーンを動かすカチカチという音が耳に心地良かった。

















「それじゃあ、今度はもっとゆっくり遊びに来てくださいね。いつでもお待ちしてますから。」



斎藤さん、エベリンさんにお礼を言い、部屋を後にした。


あっという間だったのに、いつの間にか3時間以上経っており、外はすでに暗くなり始めていた。



また素敵な人たちにお会いできたことがとても嬉しい。

ただ、売れない絵描きは斎藤さんの前じゃ歌えないよなぁ……………


いや、斎藤さんが売れてないってわけじゃなくて、売れない絵描きって言葉自体が怖すぎる。


とにかく、斎藤さん、エベリンさん、そして紹介してくださった植松さんに感謝。

またウィーンで再会したい人ができた。













車に戻る前に最後の観光に出かけた。

この3ヶ月で、ウィーンにはすでに何度か来ているが、まだゆっくりと町歩きもしていないし、観光地にも全然行っていない。


これが長かったオーストリア、締めくくりの町歩きだ。





























クリスマスマーケットを抜け、石造りの建物が密集する街の中心地に入っていき、やがてホコ天の賑やかな通りに出る。


いくつもの脇道がアミダのようにのびているんだけど、そのすべての通りがクリスマスイルミネーションでデコレーションされており、キラキラとまたたいていた。


観光客の数もすごく、みんなでカメラを片手に記念写真を撮っており、街の全てが賑やかな平和に満ちていた。























この街にも、4年前に来ている。

デカい荷物をかついでメインストリートをゴロゴロと歩き、人々の間を縫って眠れる場所を探していた。


そんな日々の中、このメインストリートの端っこにあるケバブの屋台で、店員のオッさんにぞんざいに扱われて腹を立てたことをよく覚えている。


アジア人観光客だからかわからんけど、はいはいケバブねー!っと勝手にドネルを作られ、なめてんのかこいつ?とそれを受け取らずにドゥルム作って、と言った。

そのアラブ系のオッさんはちょっとびっくりしてドゥルムを作りなおし、丁寧にそれを渡してきた。




まだ旅の序盤の頃。

旅慣れしてないくせに舐められたくない気持ちはいっぱいで、一生懸命、虚勢を張っていたのかもしれない。



今はケバブくらい普通に買えるようになった。























これ以上ないほどに華やかで洗練されたショッピングストリートを人ごみに紛れながら歩き、その中心にそびえる風格あるシュテファン大聖堂を見て、これで満足した。


オーストリアはこれでおしまい。

まだ行けてない町はあるし、美しいと言われる観光地も行けてないところがある。

3ヶ月かけてもまだまだ完全攻略というわけにはいかなったな。


でもこれでいい。


人との出会いも美しい景色との出会いも縁。



俺たちは俺たちにしかできないオーストリアの旅ができたはずだ。

ああすればよかった、なんて気持ちは1ミリもない。

最高の3ヶ月だった。

しかも旅中に結婚するという一生に一度のイベントもやることができた。

オーストリアはもはや迷う余地もなく第二の故郷だ。

















車に戻り、立体駐車場から出発してゆっくりと空港へとアクセルを踏んだ。


ウィーンの市街地を抜け、郊外を駆け抜けていく。


途中にあった中華料理屋さんで晩ご飯を食べ、空港の近くまで来たところでテキトーに空き地に車を止めた。



空港の周辺なので、だだっ広い空き地ばかりがあるのみで、後ろの方にある大きな倉庫会社がポツンと寂しげに光っていた。




寝床を作り、エンジンを切ると、びゅーびゅーと吹き荒れる風の音が聞こえる。


かなりの暴風が吹いており、車が揺れるほどだ。

こりゃ明日飛行機が欠航になったりしなきゃいいけど……………






オシッコをしようと車の外に降りたら、ものすごい風でよろめいた。


しかも何か白いものが舞っているなと思ったらそれは大きい雪で、オシッコをする間に頭や服に雪がこびりついてしまった。


おお、こりゃ寒いわけだわ。







急いで車に戻り、布団をかぶる。

甘えん坊のカンちゃんがもぞもぞとくっついてくる。


生活するための荷物がなくなった車の中はとても広く感じる。

いつものキャリーバッグ、リュック、そしてギター。


旅立ちの準備は整っているぞ。








窓の外、暗闇の空に飛行機の光が飛び立つのが見えた。

よかった、これくらいならフライトできるんだな。


俺たちも違う国に行くんだ。



明日、とうとうイギリスだ。

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