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ハンピってこんなにすごいところだったんだ

2016年5月2日(月曜日)
【インド】 ハンピ






もう部屋が尋常じゃないくらい暑い。


日中の気温、40℃超え。ひどい。




そしてそんな太陽に熱せられているので、コンクリート作りの建物は岩盤浴みたいに熱くなっていて、夜中になっても部屋の中はサウナ状態。



壁を触るとビビるくらい熱い。


ベッドが電気毛布ですかってくらい熱い。





ファンはついてるけど熱風なのでまったく眠れず、夜のうちに5回くらい起きて水シャワーを浴びた。水シャワーといっても、水すら暖かいんだけど。



水シャワーを浴びてから濡れたままファンにあたると、いくらかは身体も冷える。


そうして濡れたままベッドに倒れこんむんだけど、一瞬にして乾いてまた汗が出てきて眠れなくて、また水シャワーの繰り返し。


夜でも33℃とかエグすぎるわ……………
















結局、熱を吸収した建物がゆっくりと冷めていく朝方まで眠ることもできず、ウトウトしているうちに外が明るくなってきてしまった。


カンちゃんも同じく寝ぼけた顔でカエルみたいだ。




「…………カンちゃん、せっかくだからこのまま朝日でも見に行く?」



「そうだね………行こうか…………」



仕方なく寝ぼけ眼のまま宿を出た。

















カンちゃんはハンピは2回目だ。

前回インドに来た時に訪れて、その穏やかな空気と大自然の壮大さに魅せられて大好きになり、日本人バッグパッカーの友達もたくさん出来たらしい。



ハンピは日本人に大人気の場所だ。
この前までゴンザレスさんも滞在していたみたいだし。







あ、そういえば最近カンちゃんとゴンザレスさんがフェイスブックで繋がってよくメールしてる。


とてもいい人みたいで、もしかしたらどっかで会えるかな?と期待していたら、もうちょっとしたら日程がどんぴしゃりでかぶる国がある。


僕がゲロ嫌われてなかったらもしかしら会えるかも。











そんな感じでハンピにはたくさんの日本人バッグパッカーがやってくるんだけど、大体の人が泊まるのがカラヤンゲストハウスという日本人宿。


インド人の旦那さんがやってる宿なんだけど、なんと奥さんが日本人で、それもあって日本人が集まるところになってるみたい。




驚くのは、そのカラヤンゲストハウス。あまりにも日本人に対して優しいらしく、カラヤンに泊まってない人でも宿のテラスに来てワイファイを使わせてもらえるそう。


さらには冷蔵庫も使わせてくれるらしく、もはや誰がカラヤンに泊まってる人かわからないくらい自由に出入りできるみたいだ。

大盤振る舞いだな。












そんなカンちゃんなのですでに町の地形は頭に入っているようで、ボチボチ歩いて朝日が綺麗に見られるポイントまでやってきた。



町から少し坂を登ったところにあるゴツゴツの岩場だ。


少しズレたら押しつぶされそうな巨大な岩の隙間に伸びるあぜ道を歩いて、見晴らしのいい場所を自分たちで探していく。



どうにも探検心をあおる岩場の向こうから真っ赤な太陽が少しずつ登ってきた。



茶色い岩の大地、薄いベールのかかった空が太陽の光で鮮明になっていく。


ハンピライフの始まりだ。






















ハンピは本当に小さな田舎町。

観光地ではあるけど、地元の人たちの家を改造したような商店や宿ばかりなので、1歩あるけばコミュニケーションが生まれる。



チャイでも飲もうかと小さな商店に立ち寄ってイスに座って甘いチャイをすすっていると、地元のオッちゃんオバちゃんがすぐに声をかけてくる。




「ヘイ!俺たちはみんな家族なんだよ!彼が長男で彼が次男で三男で四男!!」




















ほぼ生き写し。





そしてその兄弟たちの奥様たちも一緒なので、かなりの大所帯でみんなでチャイを飲みに来ていた。








さっき道端でカンちゃんにジャスミンの花飾りを買っていたんだけど、私たちがつけてあげるわ!!とバッグからヘアピンを取り出してニコニコしながらカンちゃんの髪につけてくれた。


これもしなさい!!と今度は眉間につけるインド人のシールも取り出してきた。バッグの中から。


大阪のオバちゃんのアメちゃんみたいな感じなのかな( ^ω^ )





優しい地元の人たちと朝のチャイのひと時を楽しんでから宿に戻った。


















宿の灼熱の部屋が人間が滞在可能な気温になるのは、朝方から昼前の時間帯だけだ。


夜の間に少しずつ冷めたコンクリートが、太陽で再び熱せられるまでの3~4時間ならかろうじてベッドに横になれる。


というわけで少し睡眠をとってから、昼過ぎから周辺の散策に出かけた。













「カンちゃん、ハンピって何があるの?」



「え?知らなーい。岩があるの。」



「でも、なんか遺跡とかあるんだよね?」



「そうみたいだね!でも知らないの。」



「で、でもカンちゃん前回8泊もしてるんだよね………?」



「うん!なにもしてないの。ハンピはのんびりするところなの。」







というわけで頼りにならないカンちゃんの代わりに調べると、ハンピは1300年代に栄えたヒンドゥー王朝の首都だった場所らしく、南インドの大半を支配した強大な国だったそう。


しかし1500年代にムスリムの国々により攻撃を受け、敗北したことで荒廃し、廃墟と化した。



現在もその頃の遺跡が散在しており、無数の建造物跡を奇石群の中に見ることができるそうだ。






メインの遺跡はいくつかに絞られるが、それ以上にあまりにも多くの廃墟がそこらへんに散らばっている。


バス停からこの村に歩いて来るまでにも、すでにローマ遺跡のような石柱群や建物が人々の生活の一部として溶け込んでいる。


観光客の多くはオートリキシャーやレンタル自転車を借りて回るようだけど、徒歩でしか行けないあぜ道が多いようなので歩いて回ってみよう。


というわけで散策スタート。
















村を出て歩いて行くと、さっそく巨大な岩の隙間を抜けていく道になる。


マジで見渡す限りに岩しかない。

大きいものはひとつの岩でビルくらいのでかさもあるんじゃないか。










そんなこの世の終わりみたいな不思議な光景の中に溶け込むように遺跡が散らばっていた。


崩れ落ち、風にさらされて風化しているが、その石柱や階段後にはヒンドゥーの神の彫刻を見ることができる。


雑草がはえ、崩れ、傾き、完全に放置されている。


よく見ると遺跡の足元にはライトアップ用の照明が設置されているんだけど、その照明すら錆びついてボロボロになって何年も使用されていないようだった。


廃墟が利用され、そしてそれすら廃墟になってるなんて、そんな場所今まで見たこともない。















あたり一面全てが岩で、当時の規模がどれほどのものだったか想像できる。

人の手が加えられず、今この瞬間もただひたすらに風化して自然に還ろうとしている放置された遺跡たちは、物言わず身じろぎもしない。







普通遺跡といったら柵が設けられ、整備され、人が立ち入れないようになっているもんだけど、さすがにインドの遺跡だ。


全部ほったらかしなので、自由に入ることができる。


というか、ずっと前からそこにあるもの、として誰も気にしてすらいないようだ。


その飾り気のなさが遺跡の遺跡らしい悲しみをこれでもかと垂れ流していた。
















まるで三途の川のような川が、岩山の隙間を流れている。


その水面をプカプカと浮いているものが見えた。



それは一寸法師のお椀みたいな面白い形をした船だった。

2人の男が乗っており、櫂で水をかきながらゆっくりと漂っていた。




周りのあまりにもダイナミックな岩山の間を流れていくそのお椀が、まるでおとぎ話の中の光景に見えてくる。



バラナシもこの世のものとは思えない異様なところだったけど、さすがはインドだ。


この国には世界の果てがいくつも存在している。






















それにしても太陽が半端じゃない。

ギラギラと大地を照りつけており、このハンピすべてが焼き石になっておりどこにも逃げ場がない。


足の裏がサンダルを通してでも熱くてたまらない。



汗をダラダラ流して顔も真っ赤になりながら歩いて行くと、しばらくして人がパラパラと集まっている場所があった。


ひときわ大きな遺跡がそこにはあり、どうやらこれがメインのビタラ寺院らしい。


ハンピの遺跡群の中でも最高傑作と呼ばれるもので、素晴らしい彫刻が見られるとのこと。





ここはさすがに有料みたいで、チケット売り場があったのでそこに100ルピーを出した。

村の中心にある大きなシンボルの寺院が数ルピーで入れるとのことだったので、まぁ100ルピーもあれば足りるだろう。



が、しかしそんな俺を見て受付のオバちゃんは鼻で笑った。




「500ルピーだよ。」



「た、高ぇ!!!マジですか!!?」



「いや、2人だったら1000ルピーだよ。」





高すぎる!!!1800円!!


宿代が2人で3泊して900ルピーなのに!!



どうやらこのビタラ寺院、それに他にもある3つの大きな遺跡の共通券らしいんだけど、それにしても高え…………





カンちゃんと顔を見合わせる。


カンちゃんは前回8泊もしているのに遺跡巡りをしなかったほどなので、そんなに興味はないみたい。





「フミ君が入りたいなら入ろうー。フミ君遺跡好きだもんね。」



「でも………1000ルピーは高いね…………」



「う、うん…………かなり痛いね………でもフミ君が入りたかったら入ろう!!」





カンちゃんいい子だなぁ。

ありがとうね。











今回はパスすることにした。


今現在、手持ちがなかなかヤバいことになってきてる。


ハンピのあとはムンバイに行く予定なんだけど、このムンバイ行きの交通手段が結構高くて、1人2000円する。


さらに大都市であるムンバイはインドの他の町みたいに安宿がないことで有名なので、これもまたヤバい。



ドバイにまで行ってなんとか稼いで…………と言いたいところだけど、ドバイで路上が稼げるかは完全なる未知数。

路上やったやつの話を聞いたことがない。



今はできる限り節約したいたころ。





正直、ここまで歩いてくる途中のあの不思議の国に迷い込んだような光景で結構満足してるところがあった。

また今度の機会にとっておこうかな。ちょこっと気になるけど。






























太陽に焼き殺されそうになりながら石の迷路の中を歩き、巨石の積み重なりの隙間にある洞窟を探検したりしながら村に戻った。


とにかく熱くて死にそうで、服を脱ぎ捨ててすぐにシャワーを浴びるとジューっと音を立てそうなくらい頭が茹だってる。




少し休憩し、夕方になって太陽が和らいできたら宿を出て、カンちゃんお気に入りのイダレストランへ。


ここの飲み物、マジで極冷え。

多分インドで1番冷えてる。


一気に飲むと頭キーンってなるくらい冷たくて美味しい。














体を思いっきり冷やしたら、もう一度岩場に出発だ。


ハンピの大きな見どころのひとつ、夕日展望台へ向かう。












村はずれにある遺跡跡の隙間を抜けていくと細いあぜ道があり、その先に崩れた石段がある。


かなり古いものだけど人の歩いている踏み跡があり、その石段は岩山の頂上へと続いていた。






巨石を昇り降りし、ゼーハーゼーハー息を吐きながら進んでいく。

岩を直接削って足の踏み場を作ってるような簡易的な道のりだ。


断崖絶壁の岩の端っこを、手すりもない状態で恐る恐る登っていかないといけなく、かなり股間がスースーする。


まぁ俺1人だったらまだいいんだけど、カンちゃんがいるかと思うと気が気じゃない。


もしカンちゃんが滑り落ちたら、と想像してしまって何度も何度も振り向きながら登った。




























頂上にはシヴァの寺院の廃墟があった。






こんな山の上にまで遺跡が残されていることに驚くが、もちろんそれよりもその絶景にため息が出た。






360°、どこまでも広がるゴツゴツとした岩の大地。

その中に散らばる遺跡は、ここから見ると美しく配置されており、王都の栄華が時止めてそこに取り残されていた。


反対側にはジャングルが広がっており、巨大なヒンドゥーの塔がニョキっと頭をのぞかせている。




目の前の光景が信じられないくらいのファンタジーの世界。

その幻想を、沈んでいく太陽が赤く霞ませていた。



















頂上には何人かの観光客がいたけど、インド人以外はみんな日本人だった。


みんなその美しい自然の営みにカメラを向けている。





今日は朝に太陽が空に現れてくるのを見て、沈んでいくのも見たことになる。


日中のあの殺人的な陽射しも、この太陽がやったものだ。



こうやって太陽は昇ってきて空をまたいで反対側に沈んでいく。

そして光がなくなって夜になって、また地球の反対側から登ってくる。








そう考えると、ふと1日ってあまりにも早いなと思った。


この1日の間に何が出来ただろうな。


世界中で、この1日をみんなどんな風に使っただろう。

仕事したり、結婚したり、子供ができたり、戦争したり、自殺したり、みんなそれぞれの1日を過ごしてきたはず。


自然に沿って人は生きている。




ハンピ、いい町だ。















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