2016年4月30日(土曜日)
【インド】 ゴカルナ
朝起きてそのまま石段を降りていくと、目の前に広がるひっそりとしたビーチ。
そのビーチ沿いにある南国風のカフェで、海を眺めながら優雅なオムレツのご飯。ワイファイを繋ぎながら。
めっちゃのんびり。めっちゃ。ワイファイは遅いけど。
優雅だなぁ。
このまま何日でもここにいられそうだ。
でも明日には移動してしまわないとな。
今日は最後のゴカルナビーチ。
どこか遊びに行こうと地図を見てみると、このあたりには小さな小さな隠れビーチがいくつも存在しているようだ。
岩場の向こう側、入江の対岸、地図を見る限りかなり小さな秘密のビーチだ。
しかもどれも英語の名前がついている。
ゴールドビーチだとか、ハーフムーンビーチだとか。ミステリーケープビーチなんてそそる名前の場所もある。
しかしそこに繋がる道はなく、磯や森の中を越えていく冒険ルートしかないよう。
それ以外の手段はオムビーチに停泊しているいくつものボートに乗っていくか。
試しに値段を聞いてみた。
「んー、4000ルピーかな。」
高っ!!高すぎる!!6500円て!!
どこのクルーズですか!?
しかも内容は、ここからハーフムーンなんかの小さなビーチを船で巡り、上陸することなく船上から眺めて1時間くらいで帰ってくる、というものらしい。
ちなみに大人数でシェアすれば350ルピー、600円とのことらしいけど、上陸できないんじゃつまらない。
さすがにビーチリゾートなだけあって全ての値段がかなり高めに設定してあるみたいだ。
「よし、のんびり歩いてみようか!冒険気分で!」
「そうしよそうしよー!!」
バッグパッカーの2人は2秒だけ迷って歩いて近くのビーチまで探検しに行くことにした。
オムビーチを端まで歩き、忌まわしきラスタホテルの前を過ぎるとそこから森が始まる。
山の斜面に一応獣道みたいな踏み跡があるんだけど、あまりに鬱蒼としていて、これは確かに冒険気分だ。
たまに蛇が出るから気をつけないといけない。
汗をダラダラかきながら森を抜けていき、パッと視界が開けるとそこは断崖絶壁の上で、眼下に打ち寄せる白波の波濤が見えた。
崖にへばりつくような獣道なので足がすくむ。
しかし吹き上げる海風と水平線はあまりにも爽快で、南国の海に来ている実感が湧く。
そこからも森を突っ切っていくと、やがて小さな小さなビーチに出た。
まったくひと気のないそこはハーフムーンビーチだ。
シーズン中にはカフェかなんかに使われるであろう掘っ建て小屋が放置されており、波の音だけが静かに繰り返していた。
ビーチの奥には一応人の住んでる場所がある。
草と土で出来た弥生時代みたいな小屋がヤシの木の下にいくつか散らばっており、これぞまさに秘密のロッジ。
そこにいた暇そうな兄ちゃんにここはホテル?と聞いてみたら、なんと1泊200ルピーだという。1つの小屋が330円。人数で割ればウルトラ安い。
こんな静寂以外なにもない秘密のビーチで、海と星を眺めながら数日すごすなんてとてもロマンチックだと思えた。
こんな外界から隔絶された小さなビーチがこの辺りにはたくさんあるようだ。
ただやはりここもハイシーズンのみの営業だそう。
そして船でしか来ることはできない。
「もうちょっと先まで行ってみる?」
「んー!行ってみよう!!せっかくだしね!!」
かなり暑くて喉が渇いてしょうがない。
持ってきた水はとっくにお湯になっている。
ハーフムーンビーチを抜け、そこからさらに磯の岩場を飛び越え、崖をよじ登り、木のツタにつかまりながら丘を越えていく。
冒険好きな欧米人にはきっとたまらないルートだろうな。
この先にまた別の美しいビーチがあるのかと思うとつい、もうちょっと行ってみたい………と思ってしまう。
そしてオムビーチを出てから40~50分くらいかな。
また別の小ぢんまりしたビーチが出てきた。
ここはスモールヘルビーチという名前らしい。
こんな英名、誰がつけたんだろうな。
ビーチは静寂に包まれていたんだけど、物好きな3~4人の欧米人がいた。
こんなところまで来るなんてよほど静かなビーチを求めていたんだろう。
ていうかなんかでかい音楽が流れてるなと思ったら、ビーチの真ん中にある岩場のところでテレビクルーがCMかなんかの撮影をやっていた。
俳優さんと女優さんが岩場で綺麗な服を着てダンスを踊っている。さすがインド………
こんな奥地で撮影なんてご苦労様だな。
てかあんな機材どうやってここまで運んだんだろ。
ヤシの木がちょうどルーフのようになっており、砂浜の手前に日陰の広場を作ってくれている。
そこに座って一息ついていたら、反対側の崖の上からバケツを担いだ現地のインド人が降りてきた。
するとそのインド人は俺たちのところに来て、バケツの中のペットボトルの水を出してきた。
物売り根性半端じゃねぇ(´Д` )
こんな人ほとんどいないところにバケツ担いできて、誰もいなかったらどうするの(´Д` )
「今まさに水欲しかったんですー!!ありがとう!!」
ドヤ顔のおじさんは、そうだろう?と得意げに水を売ってくれた。
ヤシの木の木漏れ日がとても綺麗で、広い空の青が鮮やかに目を洗う。
スモールヘルビーチは、それが名前の由来か知らないけど波がめっちゃ高かった。
余裕でチューブができるほどの波が押し寄せてきて、サーファーだったら大喜びしそうなほどだ。
そんな波にカンちゃんと2人で入っていくと、マジで吹っ飛ばされて揉みくちゃにされて砂浜に打ち上げられる。
あまりにすごい勢いで揉みくちゃにされるので、砂に体が叩きつけられて軽く血が出てしまった。
カンちゃんも水着がとれてヤバいー!!と叫んでる。
小さなビーチで2人、へとへとになるまではしゃぎまわった。
こんなビーチに来られてよかった。
ボートで遊覧よりもよっぽど冒険気分が味わえた。
また磯と森を突っ切ってオムビーチにかえってきたころには、2人ともぐったりと疲れており、宿でシャワーを浴びたら、そのままカフェでビールを飲んだ。
今日がこの楽園での最後の夜。
土曜日ということもあってか、いつもよりお客さんが多くて賑わっていた。
こんなビーチリゾートなので欧米人がほとんどかと思いきや、お客さんのほとんどがインド人だ。
それも若者が多い。
酒なんか飲まず、サリーなんかの伝統衣装を着て肌をなるべく露出せず、いつもシャイなインドの人々だけど、ここにいるのはみんなイケてるインドの若者たちだ。
女の子たちはジーパンにTシャツという格好だし、カップルは手もつないでいる。
酒を飲み、英語で会話し、タトゥーのある人もいる。
彼らはほとんど大学生だろう。今は学校も休み期間に入っているのでクラスメイトとバカンスって感じだ。
この保守的なインドでそんなウェスタンスタイルの人たちを見るのが面白かった。
どこの国でも大学生はオープンな感覚を持っている。
俺たちもそんな若者たちに混じってビールを飲み、いろんな話をした。
今日はいつものキングフィッシャープレミアムが切れていて、アルコール度数の高いストロングのほうしかなかったせいで酔いのまわりも早く、おかげで少しだけぶっちゃけた話もした。
「カンちゃん、ちょっと気になること言っていい?」
「え!?なに!?怖いよー、怖いこと言うの?私の何が気にくわないのー!」
「ああ!俺も言いたくない!全然怒ってはいないからね!全然怒ってないの!」
「怖いよおおおお…………」
ほんの小さなこと。
カンちゃんと俺が話している時、いつももちろん穏やかに話すんだけど、カンちゃんのちょっとした相槌の打ち方に反応してしまう時がある。
俺が、
「今日暑いねー。」
といった時にカンちゃんが、
「暑いよー。」
と言う。
これイントネーションがないとわかりづらいけど、暑いよーと言うと、「そりゃそうだよー」という言葉が連想されてしまう。
俺よりもこの暑いことに対して詳しいというニュアンスがある。
俺はここでは、暑いよねーと言って同調してほしいところなのに、え?なんで?ってなってしまう。
例えばジェフベックってギター上手いよね~って言った時にカンちゃんに、そりゃ上手いよーって言われたら、え?カンちゃん俺よりジェフベックのこと知らないよね?ってなる。
マジで細かいですね。
言っててマジで小さな男やなぁって思うわ。
こんな男と付き合ったらそのうち嫌味な小言に耐えきれなくなって実家に帰らせていただきますパターンですかね。
でもこういう小さな感じ方の違いは必ずお互いにあると思う。
別々の人間なんだから。
それを伝えるもよし、墓場まで抱えて行くもよし。
ただ不満が爆発した時に、だいたいこのことにしてもさー!!とか一気に色んなことをブチまけるのは良くないと思う。
そんな状況で言っても火に油を注ぐだけだ。
こうやって普段から色んなことを言い合える関係でいたいなぁ。
「あーもうー、すっごいことカミングアウトされるのかと思ってドキドキしたしー。」
明日は移動。頑張ろうねカンちゃん。