2016年4月26日(火曜日)
【インド】 カニャクマリ
部屋が暑い…………
この時期のインドでエアコンなしの部屋に泊まるのとか我慢大会でしかないよ……………
あまりに暑かったようで、カンちゃんが夜中に目を覚ましたら俺が隣にいなくて、え?フミくんどこ!?って焦って探したけどどこにもおらず、ええ!!1人で出かけたの!?って泣きそうになってたら、ベッドの下に隠れて寝ていたらしい。
ストーカー。
どうやらベッドの下の隙間が1番涼しかったらしい。
でもエアコン付きの部屋にすると一気に値段が倍とかに跳ね上がるんだよなぁ。
そういうこと節約するのに、ゆうべのバーでは1500円くらい使ってます。
インドで。
豪遊しすぎ。
これ、ハローワールドのアンナちゃんファッション。
というわけでさらなる我慢選手権大会に出場しましょうか。
次の目的地である西海岸のビーチまで18時間の電車移動ですよ、お母さん。
この時期の南インドで18時間。
松山千春の長い夜のサビ並みに長い。
この前14時間乗って、あまりの灼熱の暑さにグレイトフルデッド使われてないのに初老になってたというのに、さらに18時間ですか。
完全に直触りでズギュンです。
だってスリーパーなら950ルピー、1600円なのに、エアコン3等になった瞬間4300円。
高すぎる。
ここはやはりバッグパッカーとして節約の道を選ぶのが漢というやつ。嘘、超乗りたくない。
「私は全然いいよー。ビーチ行くんだからちょうど痩せるね!!」
カンちゃんいい子だなぁ。
しかしこの地獄の拷問に耐えきった時、たどり着くのはゴカルナビーチだ。
インドの西海岸で有名なビーチリゾートといえばなんといってもゴア。
俺もカンちゃんも行ったことはないけど、欧米人だらけのパーティービーチなのでだいたい想像はつく。
そんなの東南アジアにいくらでもあった。
朝から晩までクラブミュージック垂れ流しで飲んだくれて吸いまくって誰彼構わずチョメチョメしまくるってところだろう。
ゴアテクノっていう音楽のジャンルまであるくらい有名なパーティービーチ。
面白いことは面白いだろうけど、俺もカンちゃんも行きたいのはもっと静かな、観光客とかあんまりいなさそうな秘密のビーチ。
この西海岸にはマジで5キロおきとかにビーチが連なっているので、きっとそんな秘密のビーチがあるはず。
そんなところを探し出してゆっくりしようと話していた。
が、そのビーチ探しをしようと思ったら結構日数がかかるはず。
ムンバイからのフライトもあるので、あんまり時間がない。
なので、ササッと地図を見ながらこのゴカルナビーチを選んだ。
ゴカルナって結構有名な場所だ。
ゴアほどではないにしても、観光客はそこそこ多いはず。
でもゴカルナ自体にもいくつかの小さなビーチがあるみたいなので、そのあたりで探検してみることにした。
18時間の灼熱の釜茹で電車。
でもその先には天国のようなビーチだ。
そう思えば移動も楽しくなる。
電車のブッキングを終えたら土産物通りにあるレストランでご飯を食べる。
メニューはいつものカレー。
カレー地獄。
でもレストランで食べるカレーはカデルの家の料理みたいにヘルシーどストレートみたいなやつではなく、オイリーで味が濃いのですごく美味しい。
もちろんカデルの家のも美味しかったけど、こうした油っぽいものが恋しくてたまらなかったんだよな。
そして2人旅のめっちゃ嬉しいところは、1人ずつ別の料理を頼んで2品を味わえること。
1人だったら絶対できないいちゃつき行為ですね。
これマジでめっちゃ嬉しい。
こっちも気になるけどこっちも食べたい!!って時、選択肢が増える。
それにカンちゃんと味の好みが似てるから喧嘩になることもない。
大満足!!
なんだけど、インド人ってめっちゃ大食いなので量が多くて食べきれない……………
今度から注文するとき気をつけないとな。
ご飯を食べたら渡し舟乗り場に向かった。
まだ昼前でそこまで人は多くなかったんだけど、それでもちょこちょこと人が並んでいる。
渡船賃は34ルピー。60円。
そろそろ沈みます!といったオーラバリバリのズタボロの船が岸壁につけており、その横に救命胴衣が山盛り置いてある。
ソッコー着こんで船に乗り込み、インド人をたくさん乗せて出発。
すぐ目の前にある島なのでわずか5分くらいで到着する。
島には何かの巨大な建物がそびえ立っており、ゾロゾロとインド人に混じって中に入ると、広々とした堂内にポツリと銅像が立っていた。
あ、この人よく見かける人だ。
何か忘れたけど、インドの偉大な人物であることには間違いない。
写真撮影厳禁、と入り口に書いてあったのに耐えきれなくてカメラを構えるインド人たち。
それに対して見張りのおじちゃんがウォラァ!!と叫ぶ。
何度も何度も、写真を撮る人がいるたびにウォラァ!!って叫ぶ。
堂内はビーサイレント、って書いてたけどおじちゃんが1番うるさい。
このおじちゃん、人々のマナーというものを毎日毎日ずーっと見つめながら生きてるんだろうな。
なんかすごい人生だな。
島にはそれの他に小さな祠と小さな土産物屋があるだけで他には何もなかった。
ここもまた、放置されて風化していく時間の流れに満ちていて、遺跡のように寂しげだった。
水平線が広がり、柔らかい風が吹いて、開放感に心が空っぽになっていく。
やっぱり海はいいなぁ。
いい寂しさをくれる。
しばらく海を眺めてから船に戻ったんだけど、どういうシステムかわからないけど、隣にある石像の島には寄らずに陸に戻ってしまった。
なんだよ、あっちに行きたかったのに。
まぁいいか。
あまりの暑さに頭が茹で上がってクラクラしてくる。
マジで足元がふらついて、めまいがする。
売店で水やペプシを買うんだけど、すぐに飲み干すか、お湯になってしまう。
日陰に行っても熱風にさらされるし、よくこんな中で地元の人は生きてるなと不思議に思えてくる。
サリーの薄い布は熱風がとても似合うけれども。
土産物通りから路地裏に入り、ローカルエリアの中を歩いた。
子供たちが遊び、女の人たちが何か手作業をしている。
みんなよほど外国人が珍しいのか、口を半開きにして、目をひんむいて、地球外生命体を見るくらいの感じで俺たちの顔を凝視している。
生活路地を抜けて海辺に行くと、そこはどこにでもある港の光景だ。
使い古された船がいくつも並んでおり、小屋のようなところでは男たちが網を編んでいる。
トランプ遊びをしてる男たちの周りにはたくさんの人々が集まっており、みんな上半身裸でゲームを見守っていた。
見守っているけど、まるで少しも関心がないようにも見えた。
牛も日陰から出たくないほどの暑さでカンちゃんの顔が赤くなってぼーっとしてきていたので、一旦宿に戻って水を浴び、ファンを回して体を冷やした。
部屋の中も暑いけど、水シャワーとファンがあればまぁなんとかなる。
汗をかきながら2人でくっついて横になり少し仮眠をとった。
夜になってギターを持って宿を出た。路上をやろう。
ここは観光地。人通りは申し分ない。
まだカニャクマリはタミルナド州なので、覚えたタミル語の曲を歌うことができる。
それにお金もいい加減ヤバくなってきてる。
俺の残金はあと3万円くらいだ。
カンちゃんもそれくらいしか持ってない。
おそらくムンバイまで行けばそこそこ稼げる。
次のドバイは完全なる未知数。
警備員にソッコー注意されて終わるか、いきなりお金じゃなくて車のキーをもらえるか。
ていうかやれそうな場所があんのかも全然わからない。
物価が相当高いはずなので、もし稼げなかったらかなりヤバイことになる。
ドバイの次がトルコのイスタンブール。
ここまで行けば大丈夫。
タクシム通りは路上天国だ。
なんとかイスタンブールまで食いつながないといけない。
そのためにも頑張って歌うぞ。
ていうか僕がなんの情報もないままカニャクマリって名前を聞いただけでこの場所に来たかった理由があるんです。
勘のいいかたならお分かりですね。
最初インド人に言われたときビビったもん。
「フミは金子マリには行かないの?」
「か、金子マリ!?なんでそんなの知ってるの!!??」
この鼻ヒゲのインド人、そんなにロックが好きなのか!?ってマジビビりましたよね。
金子マリ知ってるインド人いたらウケるわ。
いや、めっちゃ有名な人やけども。
さぁ、下北沢のジャニスの匂いしかしないこの町で俺なりのロックをしよう。
夜の賑やかになったメインの土産物屋通りでギターを取り出すと、なんだなんだ?とすぐに人だかりが出来る。
その真ん中で思いっきりギターを鳴らして歌うと、自分の声の出なさ加減にびびった。
おお………やば、なんだこれ…………
最近ずっと路上してないってのもあるけど、こんなに声が出なくなってるなんて。
ここ最近ずっと思ってるけど、昔に比べて年々声が出なくなっていってる。
中音域が安定していい声が出るようにはなっていってるけど、高音の伸び、高音からの声質の変化がほとんどない。
昔は高音の抜けが自慢だったのに。
出せば出すほどいい高音が出せていた。
路上は大きい声が必要不可欠だ。
俺は路上ではアンプは使わないのでなおさらデカい声を出さないといけない。
そういえば16歳の高校生のときに路上を始めてからもう18年も経つんだな。
ずっと喉を酷使して、消耗し続けて、どんどん喉の寿命が減っていってるみたいに感じる。
この喉で歌える時間はあとどれくらい残ってるだろう。
歌う人生はいつまで続けられるんだろう。
「ジャパニー!!タミルの歌はできないのかいー!!」
「いやー、そんなのできないですよー。…………と見せかけて1曲聴いてください!ネンジュックルペイディドゥム!!」
カデルのところで覚えたタミル語の甘いラブソングを歌うと、一瞬にしてすごい人だかりが出来て合唱になった。
そしてやはりすごい勢いでチップが舞う。
やっぱり路上ではその国の有名な曲をひとつでも入れておくことが大事なんだよな。
俺が歌ってるなんて、未だに信じられない。
あまりの暑さにバケツの水かぶったみたいにびしょ濡れになりながら45分ほど。
頭がクラクラしてきて切り上げた。
あがりは650ルピー。1100円。
もっとやりたいところだけど倒れるわ……………
それから昨日も行ったバーへ駆け込んだ。
この町で唯一エアコンにあたれる場所だ。
火照った体にエアコンがウルトラ気持ちよくて、そこにコルトビールを流し込むと気絶するほど美味い。
さらにこれ。
昨日も食べて悶絶したガーリックカレー。
もう、マジでカニャクマリに行った人にこのロックスポットっていうバーのガーリックカレーを是非食べてもらいたい。
バーを飛び出してコモリン岬まで行って全裸でモッコリンありがとうおおおおおおおお!!!!!って叫びたくなるくらい美味しい。
いやー、観光して、路上して、美味しいもの食べて、
それをカンちゃんと出来てることがたまらなく嬉しい。
誰の目も気にせず、この時間を、この人生を、たくさんの大好きな人に囲まれながら過ごせたら。
どうしようもない悲しみは消えないけれど、それすら楽しむことができたら。
明日は移動だ。
新しい場所に行こう。
金子マリさん大好き!!