2016年4月22日(金曜日)
【インド】 アラコナム
今日の気温、44℃。
マジで死ぬ。
本当に頭が茹で上がる。
でもカデルの部屋は19°C。
あまりの快適さに死んだように眠った。
いつもなら俺より早く起きるカンちゃんもピクリとも動かずに寝ている。
昨日の灼熱の移動で、限界まで体力を奪われているんだろうな。
でも快適なエアコンのおかげで生き返ることができた。
体重は減ってたけど。
今56キロ。
インドに到着した2ヶ月前は63キロだった。
いやぁー………インド、タフだわ…………
ところでみなさん、歯磨きしてる時にオエエエ!!ってなりませんか?
僕はなります。マジで吐きそうになります。
ていうかたまに本当に吐きます。
「オエッ!!オエエエ!!ウェッ!!ウボオオ!!」
マジで尋常じゃないくらい洗面所で叫ぶんですけど、別に体はなんともないんです。
むしろこれがないと歯磨きした気にならないくらいです。
スッキリします。
いつも歯磨きのたびに死にそうな声を出すので、最初カンちゃんがめっちゃ心配してくれてたんだけど、最近では笑ってくれます。
それでカデルの家でも最初オエエエッ!!ってやったので、ママが超心配してしまって、フミにドクターが必要だわ………って言っていたらしい。
ママ、いつも優しくしてくれて本当にありがとうございました。
「フミ!明日からフミはこの辺りの有名人になるよ!!」
カデルがニコニコしながら言ってくるのでどういうことか聞いた。
この前までカデルが学校で色んな撮影をしていた映像。あれってどうやら学校のテレビCM用のビデオ制作だったみたいだ。
ドローンや大きなプロ並みのカメラで撮影した映像をカデルが編集し、さらにそこにナレーションもつけ、めちゃくちゃ立派なCMビデオが完成しているんだけど、その中のワンショットに俺がギターを教えている様子が入っていた。
このベロール管内のテレビで流されるらしく、外国人すら珍しい中でアジア顔の先生が映っていたらそりゃあ目立つだろうな。
マジで、これからこの辺りでは迂闊な行動はできなさそう。
と言っても、もうすぐこの場所ともお別れなんだけど。
学校の中を歩き回った。
ビシャカパトナムに行っている間に通常の授業はもう終わっていて夏休み期間に入っているんだけど、一部の子供たちはまだ特別授業があるみたいで、それぞれのクラスで生徒たちが勉強をしていた。
カトリーンや翼をくださいガールズたちの顔がクラスの中に見えると、みんなこっそり手を振ってきた。
「フミーーー!!!こっちきてよーー!!」
「一緒に遊ぼうよーーー!!!」
校庭に行き、休憩時間の子供たちとボールを蹴ったり、輪っかを投げてキャッチする遊びに混じった。
もう2ヶ月だもんな。
最初はどうなることかと思ったけど、今じゃもう子供たちとのコミュニケーションの仕方も分かってる。
何も気負うことなく、みんなと遊び、喋って、ハイタッチする。
みんな本当に素直で、元気があって、礼儀があって、心地よい時間だった。
このアプリめっちゃ使える。
顔入れ替わるやつ。
これがあったらめっちゃ子供たちと盛り上がれる。
夕方になると、バレーボールの時間だ。
久しぶりのバレーに仲のいい先生たちが全員集まってきた。
いつも忙しくて全員は揃わないのに、バラムルガン、ムトゥ、サラバナン、マドバン、ラジニー、マニガンダル、みんな勢ぞろいだ。
優しいバラムルガン、いつもミスを俺のせいにするマニガンダル、明るいムトゥはミスが続くとムキになってプレイが投げやりになる。
そんなムトゥに対してみんな気を使いながらボールを打つんだけど、その気遣いが心地よかった。
なんでそんなムキになんだよ!馬鹿じゃねぇのか!?なんてことは誰も言わない。
相手がミスが続いたら、誰も何も言わずともわざとゆるいボールを打ってあげたりする。
ハイタッチをして、ナイストラーイ!!と声をかけ、いつものように日が沈んでボールが見えなくなるまでバレーボールは続いた。
夜になり、晩ご飯を食べてから、次の目的地であるカニャクマリの宿の予約をした。
カンちゃんのクレジットカードがあるのでこうして事前に宿の予約ができるんだけど、改めてクレジットカードがない旅って馬鹿みたいに非効率的だと思った。
知らない町に飛び込んで、重い荷物を担いで一軒一軒値段を聞いて回るあの時間と労力が全部省ける上に、ネット予約したほうが値段が安かったりする。
宿だけじゃなく、バスも電車も飛行機もネット予約すれば値段が安い。
わざわざ町の中でトラベルエージェンシーを探し出して手数料を払ってチケットを買っていた前回の旅は、それはそれでやり甲斐はあったけど、この手軽さを知ってしまったら比べるまでもない。
現金をたくさん持ち歩いて泥棒にビビることもない。
本当に、現代の旅はやり方さえ知ってしまえばとことん簡単に出来てしまう。
寝る前に、ベッドの上でラグマンの音楽を聞いた。
ラグマンってのはチェンナイ出身のミュージシャンで、現代のインドで最も偉大なアーティストの1人だ。
ピアノの名手で、ギターも弾き、ボーカリストとしても一流。そして作曲家としても素晴らしい。
西洋の音楽とインドの音楽をミックスさせた新しい曲でバンバンヒットを飛ばしており、スラムドッグミリオネアなんかの有名な映画の音楽も担当しており、オスカーを2度も受賞している。
新しい音楽だけじゃなく伝統的なインド音楽も作り、さらに人柄も素晴らしいという。
カデルが前に一度ラグマンに会ったことがあるらしいんだけど、どこにでもいる普通のおじさんみたいに喋ってくれ、偉ぶるところなんて一切なかったらしい。
ラグマンはチェンナイに音楽学校を作っており、後進の指導にも力を入れているそうだ。
そんなラグマンの数ある代表曲の中に、大好きな曲がある。
この曲は映画の中で使われて大ヒットした曲らしいんだけど、その映画のストーリーがとてもいい。
1人のエリートインド人が、アメリカのNASAで働いていた。
綺麗な服、大きな家、充分な給料。
何不自由ない成功者としての暮らし。
しかし彼はそんな毎日の中でふと故郷のことを思い出す。
朝起きて、川で足を洗う人々。
砂煙に吹かれながら歩く人々。
太陽の下、乾いた大地に寄り添う人々。
風に揺れるサリー、満員の汚い電車、土の家。
それらのすべてが胸にちらつき、NASAでの仕事が手につかなくなっていく。
これでいいんだろうか、と自問自答を繰り返す日々。
俺はインド人であって、祖国で生きるべきではないんだろうか。
あの優しい人たちの中にいるのが本当の俺なんじゃないだろうか。
人々のかけ声、伝統楽器のラッパの音がどこからか聞こえてくる。
その呼びかけのような音がリフレインする中、ラグマンの歌が伸びやかに乗ってくる。
音の向こうに乾いた風が吹いている。
インドの大地が静かに鼓動をうって、人々がさりげなく暮らしている。
その、人間の生活のささやかさとか、罪深さとか、切なさとか、すべてのものをそっぽを向きなが内包している。
ラグマンの音楽はとても優しい。
このビデオを見るとインドを、タミルナドを本当に愛しく思える。
そして、インドのイメージを大きく変えてくれる。
こんなに人間らしくて、暖かくて、平和な人たちの国なんだよな。
この風の向こうに、たくさんの人々の笑顔と涙がある。
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