2016年3月8日(火曜日)
【インド】 アラコナム
インド人はだいたい鼻ヒゲがはえている。
みんなアゴヒゲは剃って、鼻ヒゲだけを作っている。
これって、ヒゲをちゃんとしてないやつはダメなやつっていう考えがあるからなんだそう。
ヒゲが整っていないと、ヒゲもちゃんと手入れできないルーズで貧しいやつってことになるらしい。
なので町を歩いていると、あちこちで路上ヒゲ剃り屋さんがいて、地面に座ってオッさんがオッさんのヒゲを剃っているのをよく見かける。
マジでボロボロの服を着た、汚れた体の人でも鼻ヒゲだけはしっかり手入れをしてるってのが面白い。
鼻ヒゲ整える前にその半ケツになってるズボンを買い直したほうがいいんじゃないかな……………
海外では色んな常識が日本と違うけど、インドでは本当に毎日のようにそれを目の当たりにする。
いつもカデルに指摘されてばっかりだ。
昨日も、買ってきた誕生日プレゼントを妹のハニーに渡したんだけど、渡し方が悪かったみたいで、みんなにハッとした顔をされてしまった。
え?!なに?!
別にバイブ渡してるわけじゃないし!!??
なにがいけなかったか聞いたら、どうやら左手で渡したのがいけなかったみたい。
人に物を渡す時は右手で渡さないとかなり悪いマナーにあたるんだそうだ……………
気をつけないとなぁ…………
さて、今日も歌の練習。
メンバーはもうだいたい固定されたようで、カトリーンやカニムリ、アイダ、ニラ、ハリブリヤ、モニシャ、タピタなんかが主力メンバー。
でも音は外す。
全体的に歌えてはいるけど、まだまだ完璧ではない。
その度に演奏を止め、外している音をギターで鳴らしながら何度も体で覚えさせる。
みんな真剣な顔でついてきてくれる。
彼女たちは頭のいい秀才揃いだ。
もうすぐここを卒業したら大学へと進学するはず。
そしてこの国の経済を担うエリートへと成長していく。
そんな将来有望な彼女たちにとって、この歌の授業は時間の無駄なんじゃないのか?という疑問が少しある。
歌の練習してるくらいなら数式のひとつでも覚えたほうが彼女たちのキャリアになるはず。
趣味趣向に割く時間よりも、現実的なトレーニングをしたほうがいいのかも。
「サー!!フミは世界のいくつの国に行ったの!?」
「63ヶ国だよ。」
「すごい!!ワー!!」
「俺が世界を一周できたのは音楽があったからなんだ。そして世界中に友達がいる。でも俺はドイツ語もフランス語もアラブ語も喋れない。でも音楽があれば言葉はいらないんだよ。音楽はインターナショナルラングエッジだから。」
「イエスサー!!」
「もしかしたら、歌がみんなの将来の役には立たないかもしれない。でも音楽は感情を豊かにしてくれるものなんだ。様々なことに感動できる心はきっと人生を素敵なものにしてくれるからね。」
「イエスサー!!」
「よし、じゃあ最初からもう一度行ってみよう!!」
ちょんちょん。
ん?
歌おうとしてると、男子の生徒が無邪気に笑いながら俺の背中を叩いて振り向かせた。
どうした?と言うと、いきなりこんなことを言った。
「ワタシハ、猿デスゥ。」
な、なに!?なんでそんな日本語知ってるんだ!?と驚いたら後ろの方でカデルが爆笑してる。
生徒になんて日本語教えてるんだよ(´Д` )
俺も大笑いしたから女の子たちも大笑いして、男の子は面白がって嬉しそうな顔して何度も繰り返す。
「ワタシハ猿デスゥ!!ワタシハ猿デスゥ!!」
大笑いしながらみんなでまた歌った。
自分を信じることが1番大事なことだよ、みんな。
「フミ!今週の土曜日はグランパとグランマの日なんだよ!お年寄りを敬う日なんだ!」
晩ご飯の時にいつものカレーを食べていると、カデルのパパがニコニコしながら言った。
なにやらこの土曜日はインドの敬老の日らしく、学校にお爺ちゃんお婆ちゃんたちが集まってイベントが催されるらしい。
インドの敬老の日なんてどんな感じなんだろ。
とりあえず学校に100人を超える爺ちゃん婆ちゃんが集結して、様々な出し物を披露するらしい。
「フミ!!翼をくださいは土曜日に発表できるほど進んでるかい!?大丈夫!?」
…………え?
えええ!!やるの!?
まだあの状態なのにやるの!?
大丈夫!!お客さんたちはどこが間違ったかなんてわからないから!!とニコニコしてるパパ。
そりゃそうかもしれんけど……………
とにかく…………今週の土曜日が俺たち翼をくださいガールズの初お披露目になりそうだ。
でもこういった目標があったほうか引き締まるよな。
いやー、いつも自分がいい歌を歌えるよう努力することしかしてこなかったから、教えている子供たちにいい歌を歌わせるってのがなんか不思議な感じだ。
いつも自分のことだけだった。
自分のことだけを磨いてきた。
誰かに分けるようになるんだなぁ。
みんな、いい歌うたおうな。