2016年3月4日(金曜日)
【インド】 アラコナム
「さぁ!フミセンセイ!!授業を始めましょう!!ミズクダサイ!!生徒たちが楽しみにしてるよ!」
ついに来てしまった……………
金丸先生誕生の日が……………
いや、これでも一応進学校に行き、1年生まではそれなりに勉強してました。
成績もまぁまぁよかったです。
休憩時間には遠藤周作とか読んでた。
でも2年に進級してから音楽ばっかりやるようになって、悪友と遊びほうけたりヒッチハイクで1人で九州中を放浪したりして成績は魚を捕獲するペリカンもビビるくらい急降下。
読む本も筒井康隆へ。
学年でも首位争いをするほどのアホゥになり下がり、深夜徘徊で怒られ、川のごみ拾いとかしてた。ゴミ捨てはやめよう。
つまりおよそ人に何か教えるような立派なことができる身分ではない。
そんな早漏がインドの田舎の純朴な子供たちに何を教えればいいんだろう。
イキそうになったら目を閉じて難しいこと考えればいいんだよとか教えればいいのかな。
サインコサインタンジェント…………
サインコサインタンジェントオオオオオオオ!!!
ていうか女の子どうなんですか?
遅漏と早漏どっちがいいですか?
遅漏は長すぎて後半あんまり気持ちよくなくなってきて大変って言うじゃないですか。
でもそれって早漏に対する優しさなんじゃないですか?傷つけないための。
すみません、努力します。
AV男優の人って、毎日必ず1人でするらしい。
休みの日でも必ず1人でしていないと、撮影の時にすぐイッてしまうからだそう。
1週間に1回エッチするだけだったら、そりゃすぐイキますよね。
まぁ僕早漏じゃないですけどね。いつもこんなこと書いてるけど。
ネタです。ただの。
多分普通だと思います。
終わる時間はオッパイの大きさに比例して短くなります。
大きいと嬉しいからすぐイキます。
サガミオリジナル好きです。
俺は一体ブログに何を書いているんだろう?
というわけで下ネタとか口が裂けても言えないこの品行方正なインドの学校で先生開始です。
朝、職員室で音楽の先生たちと打ち合わせ。
もし音楽の先生たちが気難しい人たちで、俺たちの教え方を変えられるのは気にくわん!!みたいな感じで来られたらどうしようと思っていたけど、その不安はすぐに消えた。
タミルの人たちはマジでビビるくらい優しい人しかいないので、俺みたいなどこの馬の骨とも知れないやつが特別授業をやることを快く受け入れてくれたどころか、むしろ彼ら自身も興味深く感じでくれたようだ。
まずは先生たちに翼をくださいを聞いてもらい、どんな流れで生徒たちに教えていくかを考える。
といってもこの学校の音楽の授業自体、そんなにしっかりしたものではないみたい。
先生が歌って、それを生徒たちが歌詞を見ながら追って歌っていくって感じだ。
教えている曲はタミルの伝統的な歌。
生徒たちはレットイットビーとかカントリーロードも知らない。
俺も音符を見ながらやっていくよりも、パートごとに歌いながら教えていったほうがいいだろうな。
まぁ翼をくださいなんてウルトラシンプルなのですぐにメインパートは覚えてもらえるだろう。
あとはそこからどのようにコーラスパートを加え、グループ分けし、ハーモニーを作り上げていく。
1ヶ月もあればまぁなんとかなるだろう。
というわけで最初の授業に集まってきたのは、女の子ばかり15人。
最初はインド人の先生がタミルの歌をみんなで合唱させた。
日本やウエスタンミュージックとは異なる不思議なメロディーライン。
みんな真剣な顔でピシッと背筋を正して歌っている。
うんうん、こんな難しい歌が歌えるんだから翼をくださいなんて楽勝だろう。
「さぁ、フミの出番だよ!レッツティーチ!!」
カデルに呼ばれ、生徒たちの前に出る。
仕事の早いカデルが英語の訳詞とタミル語の訳詞をプリントアウトして生徒たちに配ってくれている。
ヒソヒソと恥ずかしそうに笑ってる女の子たちが日本の子供と同じに見えてとっても可愛い。
よーしよし、そうやって笑ってられるのも今のうちだぞこのアマ。
今から俺の超スパルタ授業でヒーヒー言わせて、もし音を外しやがったらサモサ一気食いの刑だ!!!
最初が大事だからな!!!なめられないためにまずは一発カマシてやろうか!!!
神が憑依したくらいの顔をして目を閉じて静かにギターを鳴らして、「今~」って歌い始めた瞬間いきなりオラアアアアアア!!!!!!!ってズボン脱いで俺のいきり立ったタージマハールをマハラジャしてバーモントがジャワ!!!なんてことはせずに、まずはドレミファソラシドから発声練習しましょうね。
「ドレミファソラシド~~。」
「??」
「??」
生徒たちがキョトンとしている。
え?なんで?もう俺のこと嫌いなの?
日本帰った方がいいの?
「フミ、インドではドレミファソラシドじゃなくて、サレガマパダニサって言うんだよ。」
おお、なるほど。
サレガマパダニサ、ね。
「いくよー、サレガマパダニサ~~~。」
「サレガマパダニサ~~~!!!!」
「サレガマパダニサ~~~」
「サレガマパダニサ~~~!!!!」
うん、みんなちゃんと歌えてる。
声も大きくてはつらつとしてていい感じだ。
よーし、それじゃあ実際に翼をくださいをいってみよう。
まず最初にみんなに原曲を聴いてもらい、最初の1行目からゆっくりいこう。
「今~~わたしの~~。はい、ワン、ツー。」
「イマ~~!!ワタシノ~~!!」
みんな音程バラバラ。
うんうん、わかるよ。
そりゃいきなり日本の学校にアフリカ人が来て、部族の誇りみたいなイカつい歌を教えてきても歌えるわけがない。
ゆっくり覚えていくしかないよね。
「今~~、私の~~、はい、ワンツー、」
「イマ~~!!ワタシノ~~!!」
「ノーノーノー、いま~~、はい、ワンツー。」
「イマ~~!!」
「ノーノーノー、い~~、ま~~、」
「イ~~!!マ~~!!」
「ノーノーノー、イ~~~~。」
「イ~~~~!!!!」
「ウオラアアアアアアアアア!!!!だから音が合ってねぇって言ってんだろがコノヤロウどもおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
「キョトン?」
ビビる。
音が合わせられない。
え?なに?これマジなの?
ドレミファのラの音を、俺が目の前で発声しているのに、生徒たちはそのラの音ができない。
ちょ、ちょっと待て。
なにも難しいことは言ってない。
いきなり由紀さおりと安田祥子のトルコ行進曲を完コピしろとか言ってるわけじゃない。
ラの音を単音で発声してもらいたいだけ。
なのにそれができない。
軽くフラットしてるくらいならまだいいけど、ソとかシとかになってる。
俺がそのたびに止めて苦笑いしてると、なにがいけないの?とキョトンとした顔をしてる14歳の女の子たち。
とにかく、一通りの曲の流れを理解してもらうために通しで歌ってみた。
タミル語の歌詞カードもあるのでみんなそれなりに歌えているし、ちゃんとついてきてくれるので、覚えはまぁまぁ早い。
ただ音程がテキトーすぎる。
ハツラツと歌ってれば音程とか別に気にしないって感じだ。
おいおい、先生たちよ。
あんまり言いたくはないけど、どんな教え方してきたんですか?
一旦ストップする。
ど、どうするこれ……………
日本人の子供達ならよほどのよほどの音痴でもドレミファソラシドくらい発声できる。
それが最初のドの音からまず掴むことができない。
こりゃ大変だぞ……………
ここまでとは…………
最終的に混声で3部コーラスとかイメージしてたけど、そんなの小学生にエベレスト攻めてこいって言うようなもんだ。
1ヶ月でキチンと音程を合わせて歌うことができるようになるかすら危うい。
とにかく練習しないと。
全員で歌うと音が混ざって自分の声が聞こえなくなるようなので、15人を3つのグループに分けて5人チームで個別に教えていく。
ギターで音を鳴らしながら、一音一音、ゆっくりと音程を合わせていく。
しかしマジで音が掴めない!!!
ドーって言ってるのに、レーって言ってくる!!!
何度も何度も繰り返しひとつの音をみんなで合わせる。
俺が苦戦しているのを見てカデルが言ってくる。
「グループじゃなくて1人1人やったらどうだい?」
いや、それはわかる。
わかるんだけど、それをやったら出来ない子が恥ずかしい思いをするんじゃないか。
みんなの前で恥をかかせたりしたら可哀想に思えて、5人グループで練習する。
その様子を後ろからずっと見てくるインド人の音楽の先生たち。
日本人のミュージシャンがどうやって音楽を教えるのか興味深そうに見ている。
さすがに先生たちは音感もよく、綺麗に音程を発声することができるようだ。
彼らはトランペットとかキーボードとかギターとか、西洋の楽器も演奏できる。
ただいつも日本でバリバリのミュージシャンたちと共演してる俺からしたら、みんなそこまでしっかりとした技術を持ってる様子ではない。
俺が一音一音にこだわってまったく先に進まず、しつこく出だしのラを繰り返し発声させているのを見て腑に落ちない表情をしてる。
うーん、俺って厳しすぎるのかな……………
たかが学校の音楽の授業で。
レコーディングしてCDを作るようなクオリティーにしないといけないわけでもないのに。
いや、でもやっぱりここは妥協したらダメだ。
こんなの基本中の基本だ。
出だしから音が外れてたら話にならない。
俺がここに来たのは音楽を教えるため。
キチンと正確に音を捉えて歌うこと。
それがこのエリート生徒たちにとって将来どれほどの価値があることかなんてわからない。
冷静に考えれば必要のないことかもしれない。
でも、音楽は必ず人生を豊かにする。
お金をもらうような責任さえ伴わなければ、歌うということは最高に楽しいものだ。
ストレスを発散し、楽しさを共有し、様々な心の感情を波立たせてくれる。
音楽が人間に意味のないものならとっくの昔に学校の教科からはずされているはずだ。
歌うことの楽しさ、素晴らしさは必ずみんなに伝わるはず。
そのためにも妥協せずに音を掴むことを教えないと。
「オーケー!!ワンモアタイム!!アーユーレディー!?」
「イエース!!」
熱い風が吹き込む教室の中、汗をかきながらみんなで歌った。
音楽の先生といっても、1日中、全クラスに教えるわけではなく、選ばれたメンバーに教えるって感じみたいで、授業は午前だけ。
あとは学校の中をプラプラしたりカデルと散歩したりして過ごす。
すでに学校の生徒たちみんなが俺の名前を覚えてくれていて、俺のことを見かけるとフミー!!と駆け寄ってきてワラワラと引き連れて歩く。
子供たちはみんなとても懐こくて、それに英語も喋れるのでコミュニケーションも楽だ。
日本から来たミュージシャンとして、みんなの中では有名人みたいな感じなのかな。
サインをして!と言ってくる子もいる。
「フミ、最初の授業はどうだった?」
「いやー、子供に音楽教えたことなんてないからどうやって教えていったらいいかわかんないよ。」
「もっと厳しくやっていいんだよ?フミは優しすぎる。」
「いや、あれでも充分厳しいって思われたんじゃない?」
「そんなことないよ。まるでテディベアみたいに優しいよ。普段もっと厳しく教えるものなんだから遠慮しないでやればいいよ。」
うーん、先生なんて初めてだもんなぁ。
世の中の先生の気持ちがほんの少しだけわかった気がするよ。
その上で思うけど生徒指導の体罰先生ってよくあんな乱暴なことを子供にできるよな。
俺にはとても無理だ。
男前やな!!
昼ごはんもやっぱりカレー。
午後にはなにやらインドの空軍の人たちが学校に来て、子供たちにスピーチをしてた。
本当、カデルの学校はアトラクションが多くて楽しそうだ。
夕方前に生徒たちが下校すると、学校は一気に静かになる。
いつものように先生たちの宿舎に遊びに行くと、仲のいいみんなが、フミー!今日はどうだった!?と笑顔で聞いてくる。
これだけいたら半分くらいは気の合わないやつがいてもおかしくないのに、マジで本当に南インドの人たちって奇跡的にいい人ばっかりで、すでに全員もれなく仲良しだ。
「イエーイ!みんなで町に行こうぜ!!」
先生たちとみんなで学校を出て、夜の田舎道を歩いて町に向かった。
未舗装の暗い夜道をワイワイ喋りながら歩き、20分ほどするとクラクションが鳴り響くメイン道路に出てくる。
アラコナムは小さな町だ。
でもそれでも中心部はそれなりに雑踏があり、賑やかな活気がある。
屋台で揚げ物を買って食べ歩きし、あーだこーだ言いながら歩く。
「フミ、何か飲む?」
「あ、コーラ飲みたいな。」
「コーラ!!そんなポイズン飲むのか!?フミはもうすぐ死ぬぞー!」
「イエー!コーラとハンバーガー食べたいよー!!」
「アハハハー!!」
大笑いしながらみんなでクラクションの中を歩いた。
みんな先生だけど、俺も先生の1人になっていた。
南インドの夜空の星が、とても綺麗だった。