2016年2月14日(日曜日)
【シンガポール】 シンガポール
朝、ゆうべの酒がまだ残ったままチャンギで目を覚まし、そのままタナメラに向かってエッちゃんのコンドミニアムにやってきた。
シャワーを浴びさせてもらい、ゆっくりとタバコを吸って、エッちゃんと最近の生活について話した。
エッちゃんのコンドミニアムの部屋は最高に素晴らしいラグジュアリーな部屋なんだけど、3人とシェアして生活している。
シンガポールは鬼のように家賃が高い。
1人で1部屋を貸し切るなんて到底無理。
前回来た時はイクゾーたちと泊まらせてもらったんだけど、シェアメイトのフィリピン人の女の人が、知らない人を家に入れないで!とキレ、なんでよ!!とエッちゃんとバトルしてかなり気まずいことになって俺は部屋を出た。
ごめんねぇ、彼女かなり女王様タイプなのよーと言っていたエッちゃん。
エリート気質で、ハンサムな白人としか付き合わないフィリピン人の彼女。
そんな彼女が最近いきなり部屋を出て行ったんだそう。
理由は、もう1人のシェアメイトのフランス人に体臭があり、彼と同じ洗濯機で服を洗いたくないからというもの。
そして立て続けにフランス人の男性も部屋を出て行ってしまい、エッちゃんはこの広いコンドミニアムに1人になってしまった。
これは大変なこと。
1人だったら部屋の家賃を全部払わないといけない。
ちなみにこの部屋には3つの部屋があり、1番奥の洗面所がついてる部屋が1500ドル。
ベッドだけの部屋が1150ドル。
これに光熱費が加わるから、だいたい月15万円だ。
シェアして月15万とか恐ろしすぎる……………
今なんとかシェアメイトを探しているエッちゃん。
しかしみんなマナーのなってないインド人や、値下げ交渉をしてくる人ばかりでなかなか決まらないそう。
さらに不動産屋がいきなりお客さんを連れてやってきて、エッちゃんが部屋の中にいるのにこちらの部屋はどうですかー?とビューイングさせているらしい。
「本当わけわかんないよもー。私ここにまだ住んでるのにさー。」
今日も不動産屋がお客さんを連れてくるし、インド人のシェアメイト募集も来るし、部屋のオーナーもエッちゃんと契約の話をしに来るんだそう。
もし出て行くことになったら引っ越し先は街の中心部であるハーバーフロントになるみたいだ。
俺は俺でゆうべの酒がまだ残っててかなりしんどいんだけど、シンガポール滞在は9日間。
1日も休むわけにはいかない。
今日は場所を変えてみることにしてベドックの駅にやってきた。
タナメラの隣の駅で郊外の住宅エリアなんだけど、シンガポール中に繋がる大きなバスターミナルがあることで人も多く、最近できたショッピングモールのおかげでたくさんの若者が集まってきている。
ショッピングモールを中心に、巨大なホーカーセンター、スーパーマーケット、小さな商店が集まったホコ天のエリア、裏手には大きな図書館もある。
全体がアパートの集合団地になっていて、その足元が全部マーケットプレイスになっているので、かなり下町の雰囲気が漂っていた。
とりあえずホーカーで腹ごしらえ。
ナシなんちゃらっていうやつ。マレーシアご飯になるのかな?
これマジうめぇ!!!!
葉っぱに乗ってくるやつ初めて食べた!!
インドネシアとかでよくあるやつ!!
横の赤いチリソースがすごく揚げ物に会ってて食欲をそそる。
これで300円とかホーカー好き!!
昼間はゆっくりと場所の下見をし、細々したものの買い物をしたりして歩き回った。
サンダルもゲット。
革靴だけでこんなクソ暑い中を歩き回るもんじゃねぇわ。
「私、歌ってるとこ見てていい?邪魔はしたくないから端っこで見てるからさ。」
エッちゃんがそんな遠慮がちなことを言ってくる。
「いやいや、もちろんいいし、できたら目の前で立ち止まって聞いててくれると嬉しいな。シンガポリアンってシャイだから1人立ち止まってるとドンドン立ち止まるんだよね。」
というわけで、今日は初めての町、ベドック。
おそらく稼げるけど、場所選びはとても大事。
そしてなるべく攻める場所からいって、注意されながら1番のスポットを探していくとしよう。
最初の場所はここ。
駅の地下通路。
ここはさすがに無理かなぁ。でもここで出来たら1番いい。
雨も、灼熱の太陽も気にせずにやれるのはストリートミュージシャンにとってめちゃくちゃ嬉しい。
人通りは最高。
ちょっと多すぎるくらいだけど、歌い始めるとすぐにお金が入り始める。
よし、いい調子だぞー、というところで警備員さん登場。
ここでやったらダメだよーと注意された。
わかりましたとすぐに荷物をまとめる。
ルールの厳しいシンガポールだけど、基本みんないい人だし、外国人ということもいきなり罰金だなんてそこまで非情なことはされることはない。
ただ注意されたことに腹が立って名前を聞かれても本名を言わず、パスポートの提示も拒否したりしてると国を強制退去になってしまいます。
そう…………あの人のように………………
ゾロさん、あれは面白かったです( ^ω^ )
警備員さんに、あそこなんてどうかしら?とオススメの場所を教えてもらって、ありがとうございますーと言って移動。
次に目星をつけていた、ショッピングモールの横の通路ですぐに開始。
ここでもたくさんの人が足を止めて歌を聞いてくれ、お金が入っていく。
老若男女、みんな笑顔で、一言二言の会話を交わし、子供の頭をなでなでし、学生風の若いカップルに飲み物の差し入れをもらい、気難しそうなオジさんがお金を入れてくれた瞬間、ニコリと笑う。
日本みたいにすぐ人のやってることを否定してくる大人なんてここにはほとんどいない。
日本の飲み屋街での路上は説教のオンパレードだ。
なので海外での路上はほとんどストレスがない。
みんなが心を開いてくれ、すぐに仲良くなれる。
「いやー、すごいよー…………初めて金丸さんの路上聞いたけど、めちゃくちゃいいよー………なんか私すっごい感動したよ。歌でみんなを笑顔にしてるんだもん。いやー、こんなにいいもんなんだねー…………」
そういえばエッちゃんに路上を見てもらうのは初めてだったな。
いいよね、路上。
音楽って偉大だよな。
そろそろ部屋のオーナーが来るからということで帰って行ったエッちゃんを見送った。
それからしばらくして2ヶ所目でも注意されてしまい、最後に目星をつけていた場所にやってきた。
団地の中に伸びるショッピング広場だ。
夕方になり、太陽が沈んだトワイライトタイムに人々はラフな格好をしてゆったりと歩いている。
家族連れの子供がかけまわり、爺さん婆さんがベンチに座って夕涼みをしている。
周りのアパートの部屋を見るとどこも窓が開いており、中を人の歩くのが見えた。
気温も落ち着き、柔らかい夜風が肌をなでていく。
あぁ、綺麗だな。
ビューティフルナイトだな。
キーを落としてゆっくりと広場に音を滑らせた。
こんなところで?と住民の人たちは驚いた顔でこっちを見ている。
みんな手にスーパーマーケットのお買い物の袋を提げている。
アパートの部屋の窓からもこっちを覗き込んでいるお婆さんがいる。
どこだっていい。
路上はどこでだってできる。
夕暮れの広場に拍手が響き渡って、アパートの窓をチラッと見ると、お婆さんはプイッと部屋に戻って行った。
外灯がつき、中国系のお兄さんがフォーユアサパー!と言って手に持っていたお弁当を置いてくれた。
カントリーミュージックが大好きというおじさんが、ノリノリでホテルカリフォルニアをリクエストしてきた。
タトゥーだらけの悪そうなカップルがワンダフルトゥナイトで抱き合いながら体を揺らしていた。
歌い終え、このままこの夜の空気に包まれていたくて、ベンチに座ってさっきもらったお弁当を取り出した。
どんなのが入ってるかなー。
別に謎の料理でもいいけど、できたら美味しそうなお肉料理がいいなぁ。
ワクワクしながらフタを開けてみた。
そして1人でワオ!って声を出してしまった。
手を合わせ、ゆっくりと口に運ぶとじんわりと嬉しかった。
また旅に戻ってきた。
今日のあがりは194ドル。