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明日は何を食べよう


9月13日 土曜日
【韓国】 ガンニュン






野宿が快適すぎる。


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橋の下なので雨も夜露も防げるし、朝に太陽で照りつけられることもない。

人通りも少ないので足音にびくついて何度も目を覚まさないですむ。

治安が奇跡的に良いので、イタズラしてくるやつもいないし、ゲイに襲われる心配も皆無だし、一晩中吠えかかってくるような野犬もいない。


ただ結構寒くて寝袋を捨てたことは若干悔やまれるけど、これならまだスキージャケットを体にかければしのげる寒さだ。
うん、喉が少しイガイガする気がする。





ひとつだけ問題なのは、キャリーバッグ。
オーストラリアのヌーサで買ったこの旅5台目のキャリーバッグについに寿命が来たようだ。

どんだけ壊してんだよ?って話だけど、野宿やヒッチハイクで歩く距離が増えればどうしても負担は増える。

きっともっと高いブランドもののやつを買えば長持ちするんだろうけど。



このオーストラリアで4500円で買った巨大バッグ。
なかなかもってくれたと思う。

アジアとインドとチベットの崩壊した地面を耐え抜いてよくここまで生き延びてくれたと褒めてあげないと。





とまぁ、僕ほどのキャリーバッグデストロイヤーともなると、もう壊れ方にパターンを見つけています。


今回の壊れ方はパターンBですね。


タイヤの軸の部分がグラグラと緩んできて車輪が傾いていくやつです。
タイヤがバッグとこすれて常にブレーキがかかったような状態になってしまい、怒り狂えるくらい重たくなります。

こうなると早いです。
もって2日です。

しばらくしたらタイヤが外れるか回らなくなって削れていきます。そしてバッグ本体が削れていって中身がこんにちはするやつです。



ああ、まだ釜山まで下って、そこから宮崎まで帰らないといけないのに………



ちなみにパターンAは、軸は大丈夫だけどタイヤ自体のゴムが擦り切れて剥けてしまうやつです。
なめんなよってやつです。



パターンCはバッグの布が破れて中身がアニョハセヨするやつです。
詰めすぎっていうことですね。





本当キャリーバッグはすぐ壊れます。背中のバッグは何の問題もないのに。

そこで僕の個人的な考えですが、バッグパックとキャリーバッグ、どちらが旅に向いてるかということです。



はい、断然キャリーバッグです。
迷う余地なし。

これ全部背中に担ぐなんて信じられない。



野宿しないんだったらテントもマットもいらないのでだいぶ軽量化できますし、バスキングしなけりゃギターも譜面も譜面台もいらない。

僕日本を出て来た時、40リットルのバッグに半分も物入ってませんでした。
友達の家に泊まりに行くの?みたいな格好でした。

でも野宿をしていくにつれ必要なものが出てきて、いつの間にかキャリーバッグがないと収まらないくらいになりました。
おかげで快適な野宿生活ができています。

まぁイクゾー君は未だに友達の家に行くの?みたいな荷物で野宿してましたけど。
あいつ強すぎ。




つまりこれから世界旅に行こうと思ってる方々にアドバイスさせていただくと、荷物なんて友達の家に遊びに行くレベルでOKということです。

大きめのショルダーバッグくらいでいいです。









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ふおおおおおお……………重すぎる……………



タイヤが壊れてブレーキがかかった状態のキャリーバッグを引いて町へ向かう。

もうただの筋トレ。
練習のあとにグラウンドを整備する鉄のローラーみたいな勢い。

左腕の感覚がなくなっていく。

なんだこの修業は?



ああ、中米思い出すなぁ。









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テキトーに見つけた食堂のご飯はとても美味しかった。

うどんと海苔巻き。

うどんは韓国でも日常的に食べられるものみたい。
海苔巻きも名前はわからないけど、これもまた韓国の伝統料理だ。

たらふく食べて大満足で5500ウォン、550円。
大衆食堂ならこの値段。

値段も味も日本と変わらないな。

そして食堂のおばちゃんは可愛くて優しいってのは世界の共通だ。













いつものカフェでカプチーノを飲みながら一服して、ネット作業。
旅の終わりに向けてキチンとやることやってしまわないとな。

ブログもリアルタイムに近づいてきたし、Googleマップのピン打ちも終わらせた。

いやー、こうして見るとたくさんの場所に行ったもんだ。
最初のころが懐かしいなぁ。

撮りためていた動画もYouTubeにアップロードしたし、これでiPhoneの中の空き容量も日本までなら充分だろう。


ただ、本当いい加減iPhoneのボロさが加速しており、最近ではアメーバのアプリを開くのに20分くらい格闘しないといけないという謎の苦労をしている。

画面を高橋名人並みに連打してバグみたいなことになって、奇跡が起きてからやっと操作できるようになるという、もうキムチ鍋にブチこんでやりたくなるボロさ。


この前来ていたカッピーも、あまりのカメラの起動の遅さに大笑いしていた。

これさえなきゃ作業ももっと早く終わるんだけどなぁ。




まぁひとまずやることはだいぶやった。

今日は土曜日。
たくさんの人が出てきているはず。


冷えたカプチーノを飲み干して、ギターを担いで昨日のショッピングストリートへと向かった。










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通りは若者で溢れかえっていた。

この町の人たちのほとんどが遊びに来るであろうこのオシャレなショッピングストリートには、カフェやレストランの入ったビルが並び、ブランドの洋服屋さん、セレクトショップ、アクセサリー屋さんなどがひしめいており、とにかく賑やかで、それでいて清潔感がある。

落ち着いた20代のカップルが腕を組んで歩き、高校生くらいのグループがワイワイ騒ぎ、中学生くらいのマセた女の子たちがベタベタと厚化粧をしてはしゃぎ回っている。

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見慣れたその光景の中に立っていると、なんだかここが地元のような気さえしてきて安心感が胸を包む。


歌う前に近くの商店でコーヒーを買った。
値段がわからないので財布ごとおばちゃんに渡すと、おばちゃんは財布の中から紙幣を1枚抜き取り、お釣りのコインを入れ、キチンと財布のチャックをしめてニコニコしながら俺に返してきた。


あああ!!おばちゃんの親戚になりてええええ!!!


そんな、ほんの小さな触れ合いのひとつひとつがじんわりと心を満たしていく。












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路上でギターを鳴らすと一瞬にして学生たちで通りが埋め尽くされた。

みんな興味津々でこの外国人を見つめている。
もうちょっとしたお祭り会場みたいだ。

するとさすがに人が増えすぎてしまったようで、目の前のメガネ屋さんのおじさんが出てきてこっちに歩いてきた。

あ、やば止められる………


と思ったら、そのおじさん、椅子はいるかい?お店の使っていいよ?と聞いてきてくれた。
トイレもうちのを使っていいからねと。


もし日向の駅前で韓国人が歌ったら同じようなことになるかな。
まぁまず日向の駅前には人がほぼ歩いてないけど………











日向の寂れっぷりは置いといて、


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そういうことを想像した時に、今ここで俺に向けられているような愛に溢れた笑顔を韓国の人が日本でも見られることを心から願う。

韓国人だからといって、悲しい思いをしないだろうか。

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食堂でお世話好きなおばちゃんに勝手にご飯を大盛りにしてもらえて、尋ねてもないのに困ってる?と声をかけてもらえ、若者たちにカタコトのカムサハムニダを笑顔で言ってもらえる。

日本でそんな待遇を受けてもらいたい。
悲しい言葉や冷ややかな目をされず、偏見や差別なく受け入れられることを心から願う。

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今日、久しぶりにチューニングがうまくいった。

いや、もちろんいつもキチンと合わせるんだけど、チューニングというのは不思議なもので、どうも心の状態に左右されやすいように思える。

俺はチューナーを使わない。
ハーモニカで合わせているので、完全に耳だより。
雑にもなるし、逆にチューナーでは測れない微妙なところまで聞き分けることができる。


気分が揺れ動いてるときやささくれている時ってのはなぜかすぐにペグを回してしまう。

ほんの少しズレているような気がして落ち着かなくなる。

音は合っている。でもなにかしっくりこない。


反対に気分が充実してる時ってのはピタリと音がハマる。

今日はそうだった。
針の穴を通すような完璧なチューニングになった。

全てのコードが綺麗に響き合って重なる。


いい歌が歌えた。







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警察も目の前をニコニコして通り過ぎるようなほのぼのとした路上を4時間。
ヨーロッパを思い出すような田舎の穏やかな空気。
誰もが俺を受け入れてくれ、久しぶりにこんなに充実した路上ができた。

夜になって土曜の町は人通りを増す一方だし、歌えば歌うほど人だかりもできる。
でも心は満足感で満たされていた。

周りのお店にお礼を言いにいきギターを片付けた。

袋に入りきらないほどのものすごい量のお札は187600ウォンあった。18700円。


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なんて笑顔だよ。

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デパートのフードコートで辛くて口がどうにかなりそうなラーメンを食べ、レジでお金を両替してもらった。

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言葉は何も通じない。でもみんな俺が何を求めているのかを的確に理解してくれた。










いつもの寝床近くのコンビニでビールを飲みながら日記を書く。

明日は日曜日。おそらく今日と同じような人出になるだろう。
この町なら歌えば歌うほど稼げるはず。

でも先に進もうと思った。

ヨーロッパの頃はどこに行っても楽しかったし、自分の力で先に進むことに快感にも似た喜びを感じていた。

あの時の感覚に似ている。

先に進むことが嬉しい。

それは日本が近づくからというわけではなく、ただ純粋に旅を楽しめているからだと思った。



また知らない人に会える。

また知らない道を行ける。






明日は何があるだろう。
明日は何を食べようかな。
明日はどんなとこで眠れるだろう。

旅がとても楽しい。


今、すごく楽しい。




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