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勇気ある人

8月26日 火曜日
【中国】 香港
~ 【台湾】 台北





ついにこの日が来た。

世界イチの親日国、台湾に行く日が。



世界の観光地で路上演奏をしている時、中国人観光客というのはあまりお金を入れてくれない。
ものすごい勢いで写真を撮りまくるだけ撮りまくって何も言わずに去っていく。

そんな中、中国語を喋っているのにやけにフレンドリーでカタコトの日本語を喋ってお金を入れてくれるグループがいたらそれはかなりの高確率で台湾人だった。


これ本当にすごい確率。

みんな異常なほど優しい。

本当びっくりする。



海外に出る前は台湾と香港と中国の違いがよく分かっていなかったくらい地理に疎かったので、なんでこんなに台湾人は日本人のことが好きなんだろう?と最初の頃はすごく戸惑った。

なんでこうも中国人と台湾人で違うんだろうと。同じ言葉を喋るのに。




しかし、ここまで優しくされればそんなことどうでもよく、俺の中で中国と台湾の違いは日本人に優しいかどうか、という国の分け方になっていた。


もしこれで日本人の俺が台湾本国で路上演奏をしたら大変なことが起きるんじゃないだろうか?と期待しながらここまで旅してきた。

この世の楽園なのじゃないだろうかと。




ついにその謎を解く時がやってきた。


うおおおおおお!!!!!

日本人好きな可愛い女の子に告白されまくったらどうしよおおおおおおおおおおおお!!!!!!!













というわけで朝から下痢を漏らしました。


トイレまで行けたんですが、ズボンを下ろすのが間に合わなかったです。

またパンツが1枚死亡しました。

朝から泣きながらトイレの中掃除しました。





告白はされたいです。











朝からシリアスな顔をしてお世話になった日本語教室を出て、ネイザンストリートから空港バスに乗りこむ。
34香港ドルだったかな。500円くらい。

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2階建てのバスは道路にせり出した看板の群れの下すれすれをくぐり抜けながら走り抜け街を出る。

photo:04














島をつなぐ大きな橋を渡ってしばらくすると香港の空港に到着した。


今回はギターの機内持ち込みが難しいかもしれないので預け荷物にしてみることに。
45香港ドル、600円くらい払ってボロギターをケースごと緩衝材でぐるぐる巻きにしてもらった。

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うん、今度からギターケースこれにしようかな。








チェックインカウンターではバッチリ台湾出国のチケットを確認された。
パソコンに予約番号まで打ち込んで本当に航空券を予約しているか確かめる職員さん。


危なかった。もしチケットを持たずに来ていたら間違いなく飛行機に乗せてもらえないところだったはず。

ゆうべのクレジットカードを貸してくれた日本人女性の方に改めて感謝。













さて、台湾に行くにあたって人と会う約束をしている。

3人。





まずは日本人の友達のアイラ。

山口県のライブハウスでイベンターをやっていたアイラとはもう長い付き合いで、いつも色んなライブを組んでもらっていた。

いつも明るくてアクティブなアイラは俺の友達の中でも唯一といっていい海外旅行経験の多いのバッグパッカーで、世界の色んなところを回っているようなやつ。

久しぶりにライブハウスで会うと、この前までキューバ行ってたんじゃーとか言う旅好きな女で、いつも海外の旅の話を聞いていた。


海外のことなんて何も知らなかった当時はアイラの話はそれなりに刺激的だったけど、今では俺も一端の海外旅行者だ。

俺に会いにアイラがわざわざ台湾に来てくれている。
今日、台北で落ち合う予定。









2人目がノリさんというシンガーの方。

ブログを読んで下さっており、いつか自分もバスキングで世界を回りたいので海外での路上の仕方を見させてもらいたいというメールをだいぶ前からいただいていた。

俺が海外にいるうちにどうしてもどこかでお会いしたいということで、いろいろ事情を考慮して台湾に場所を決めた。



こうしたメールはよくいただく。

僕の旅のやり方に付き合わせてしまいますがそれでもよろしければ……と返事するのだが、今回はなかなか事情が特殊だ。


実はこのノリさん。車椅子なのだ。

車椅子でバスキングってのは別によくあることだけど、それを海外でやっていくってのは軽く想像しただけで断崖絶壁をよじ登るような果てしなく険しい道のりだ。

はじめは東南アジアあたりで落ち合いましょうという話だったが、バリアフリーってなんですか?みたいなあれらの国々ではとても車椅子での旅なんて考えられない。

いや、頑張ればできないことはないだろうけど、まだほとんど海外経験のないノリさんなので手始めに先進国である台湾あたりが無難だろうということでここに決めたのが色々な事情ってわけだ。


今までもバスカーたちと旅を同行したことはあったけど、車椅子の人と一緒ってのは想像しにくい。
俺にちゃんとサポートができるだろうか。


いや、そんな必要ないか。
望んで俺の旅に合流したいとおっしゃっているし、これから世界を旅したいとおっしゃる方だ。
過剰なサポートなんていらない。
いつも通り、僕の旅のやり方に付き合わせてしまいます、というままでいよう。







3人目は台湾在住の日本人女性の方で、台湾人男性と結婚して長年台湾に住んでらっしゃるリーさん。


出会いはもうずっと前の話。

旅の序盤に東ヨーロッパを回っている時、チェコのチェスキークルムロフで台湾からの団体旅行のおばちゃんたちに声をかけてもらった。

思えばここから台湾人の日本人贔屓に気づいたんじゃないかってくらいみなさんにこやかで優しくて、一緒に写真を撮らせていただいた。

その時のメンバーだったのがリーさん。


まだ旅の仕方もよくわからず、東欧の町を野宿しながら駆けずり回っていたあの頃。
美しいチェスキークルムロフの町の風景とともに台湾人のみなさんの笑顔に癒された思い出は今も忘れられない。



あれから2年。
いつか台湾に来てね!とおっしゃってくれていたリーさんの国についにたどり着く。
信じられないけど、本当にここまで来たんだなぁ。

あの日の約束を叶える時が来た。





そしてリーさんには大事なお願いごともしていた。

オーストラリアでお会いした日本人女性のアイさんが結構前に僕に支援品を送りたいとメールを下さっていたんだけど、東南アジアや中国あたりには友達もおらず、わがままを言って2年もお会いしていないリーさんのところに荷物を送らせてもらっていた。
それを受け取らないといけない。


何が入ってるかお楽しみ~♬といたずらっぽく言っていたアイさん。


ブラジャーが入ってたら2秒でオーストラリア行きのチケットを買おう。
お金ないけど。




てなわけで台湾、12日間でどんな濃い物語を作れるかな。














飛行機は海を越えてわずか2時間で降下態勢に入り、沖縄のすぐ横にある九州ほどの大きさである台湾に着陸した。

まずイミグレーションでいきなり驚かされた。



検査官が普通に日本語を喋ってきた。


入国カードに台湾での住所を記入していなかったんだけど、知人の電話番号でもいいですよと流暢に言ってくるので、iPhoneの中からリーさんの電話番号を探していると、検査官は遠慮がちに声をかけてくる。



「あのー、電話番号わかりますか……?」


「あ、はい、もうすぐです。ちょっと待ってください。」


「あ、は、はい、すみません。」



腰低すぎ(´Д` )

今までの高圧的な国境検査官の態度はなんだったんだ(´Д` )


まるで大事なお客様にでもなった気分でスタンプの捺されたパスポートを持って空港ターミナルを出た。








150台湾ドル、450円の空港シャトルバスに乗って台北の街へと向かう。

街路樹の通り沿いには古びたビルが立ち並び、漢字の看板やたくさんの路地が目に飛び込んでくる。

香港に比べてその大きすぎないのんびりとした街並みはどこか日本の田舎の県庁所在地を思い出させるような懐かしい風景。

そしていたるところに日本語が見えることに驚く。


うどん屋、焼肉屋、吉野家、ラーメン屋………


もはやどっからどう見ても日本の街並みと変わらない。

台湾は戦前は日本の統治下に置かれていた場所で、50年間に及んで日本が鉄道や水道などのインフラを整えた歴史があるとのこと。

戦争が終わり、中国寄りの独立国になった今も日本統治下の面影は色濃く残っているようだ。











それなりに大きなビルが林立する台北駅に到着。

ここでアイラ、ノリさんと待ち合わせをしている。

iPhoneを開くといくらでもWi-Fiが飛んでおり、繋ぎたい放題。
Wi-Fiの充実は先進国の証だ。






photo:06




駅の中に入ると、行き交う人混みの中にギターを背中に背負った車椅子の男性がいきなり目に飛び込んだ。

なんつーわかりやすい人だ。



「ノリさーん!!」


「おおおー!!金丸さんー!!はじめましてー!!」



初めてお会いするノリさんは2秒で人をくびり殺せるようなぶっとい腕をした野獣だった。

体でかすぎ。
俺の腕とかデコピンで粉砕骨折されそう。

こ、こりゃ迂闊なことできないな……と若干身構えるが、しかし顔はプーさんみたいに可愛らしい笑顔で、穏やかに話すとても親しみやすい人だった。

photo:07





俺よりも年上で、その大人の空気に一発でリラックスでき、すぐに馴染むことができた。
こりゃいい人だ。

駅のホールの真ん中で落ち合う約束だったアイラがなかなか現れないので、まぁあいつならどうにでもなるだろとほったらかしてとりあえずノリさんとご飯を食べに。










photo:08




駅前の通りは日本の居酒屋通りに本当にうりふたつ。

ていうか実際にワタミや支那そば屋やとんかつ屋さんがあり、表通りには三越がある。

その雑然とした雑居ビルが並ぶ様子はもはや日本でしかない。


「イラッシャイマセー。」


食堂のおばちゃんたちも当たり前に日本語が喋れ、なんの違和感もなくご飯を注文する。

photo:09




肉料理1品、小鉢料理が4品、これで60台湾ドル。180円くらい。

中国のころのようなどぎつい油や香辛料まみれではなく、いたってシンプルな優しい味で日本料理によく似ている。









ノリさんが車椅子に乗っている原因は5年前。
車を運転していたら後ろからトラックに追突され吹き飛ばされて横転。
脊椎を損傷して左半身が動かなくなったんだそう。

しかしそこから必死のリハビリを行い、なんとか手が動くようになりギターを弾くことが出来るまでに回復した。日常生活もある程度こなせるようになっていたんだそうだ。




いつか世界を舞台に歌で勝負してみたい。

ノリさんには子供の頃からの夢があり、車椅子生活になってもそれは消すことはできず、この頃にギターを持って世界を旅する情報を探し、俺のブログに行き着いたんだそうだ。


障害をおったことで逆になんでも挑戦してやるという情熱に火がついたらしく、ギターの練習に励み、様々な場所でライブを行い、着々と準備を整えていた矢先。


不幸すぎることにまた車を運転中に追突事故。
そして同じ場所を損傷。

せっかく治った手が再び動かなくなった。


それでもノリさんの世界一周への決意は揺るがず、痺れた手のままで海外に出てきた。

今回の台湾は予行練習とのこと。

台湾で路上パフォーマンスを体験し感覚をつかみ、来年から本格的に旅に出発するんだそうだ。




イクゾー君にしても、なんでこんなに頭のネジの外れた人ばかり集まるんだろう。

バカで、最高にカッコいい人ばっかりだ。













お腹いっぱいになって表通りを歩いた。
台湾に入ってさらに気温が上がり、熱中症になりそうなほどの灼熱の風が肌を乾かす。

そんな暴力的なほどの気温なので通りには人通りはほとんどない。

ゴーストタウンとまではいかないが、まるで過疎の進んだ街のように静まり返っている。

この時間帯、台湾人たちはどこにいるのかというと、地下だ。

台北駅周辺のアスファルトの下には地下4階までの一大地下街が蟻の巣のように縦横に入り組んでおり、さっき地図を見ただけで確実に迷子になりそうなほど大規模なものだ。

レストランや洋服屋さんなど、この地下にすべてが揃っており、エアコンが効いているので日中の熱い時間はみんな地下で過ごしているみたい。

なので人で溢れる地下通路こそバスキングのホットスポットというわけだ。



「いやー、僕も金丸さんが来る前にいろんな場所で試したんだけど、台北って警備が厳しくてすぐに止められてしまうんよなぁ。」



この台北地下街、それから繁華街である西門など、中心エリアでバスキングを試してきたノリさんだけど、ことごとく警備員によって止められてしまったんだそうだ。

バスキングをやってるパフォーマーたちはそこそこいるみたいなんだけど、それらはみんなライセンスを持った人たちとのこと。





ノリさんは台湾島の南部の方にある高雄、台南という地方都市も回ってきたみたいだけど、そっちでは路上も好きにできて稼ぎも良かったし、何より人の親切さが台北とは比べものにならなかったそうだ。

台北の稼ぎ次第では南下も視野に入れないとな。












「あー!!おったおったー!!文武ー!!なんで約束のとこにおらんのよー!!」


ノリさんとイスに座って話していると、向こうの方からでかい声でワーワー言いながら走ってくる日焼けした女発見。

久しぶりやな、アイラ。

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「もー!!メールしても返事せんしあちこち歩き回っても見つからんし、どうしようかぁ思ったわぁ!!よし!!じゃあ路上のいい場所聞いとるけぇそこ行こう!!」


なにやらアイラが台北の路上ポイントについて友達に聞いて調べてくれていたみたいで、少し遠いがみんなで電車に乗って向かうことに。

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50台湾ドル、170円ほどで郊外の海沿いにある淡水という町にやってきた。


ここは俺のブログの読者さんからもいい場所ですよとメールをいただいていた町だ。



駅を出ると、すぐ向こうの方に海が見えた。
いや、正確には川と海が合流する河口で、穏やかな流れの水面にゆっくりと沈んでいく太陽が赤くうつっていた。

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水辺にはどこまでも遊歩道が伸びておりたくさんの人たちがのんびりと歩き、家族連れの子供が広場で駆け回っている。

通りにはズラリと隙間なくお店が並び、レストランやバー、カフェに混じって射的や輪投げなどの日本のお祭りにあるレトロな遊技場が人を集めていた。金魚すくいまである。

台湾名物のタピオカティーを飲みながら夕日を眺めてタバコをふかすと川から吹く風がとても心地よく髪を揺らした。

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お祭りみたいに賑やかな場所だけど、とてもゆったりとした空気が流れ、気持ちよかった。

ああ、いい場所だなここ。

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夕暮れのトワイライトを背に路上を開始すると、すぐにたくさんの人だかりができて100台湾ドルの札がバンバン入った。1枚300円だ。

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汗をかきながら40分ほど熱唱して休憩すると、すでに3000台湾ドルほどがギターケースにたまっていた。


1万円近い。



す、すげぇ………




「いやー、すごいです……悔しいし、嬉しいです。金丸さんの路上見られて。僕もうすぐ台湾に来て1ヶ月ですけど、最高記録が2700台湾ドルでした。1日歌ってそれなのに、金丸さんは1時間経たずにそれ以上稼いでる。勉強になります………」



悔しがってるノリさん。
そりゃ経験が違うんだからそう簡単には負けられない。

路上に大事なのは第一に場所取り。次にアイデア、その次に実力だ。

頭が固くてはなかなか路上では稼げない。

きっとこれから世界中の路上でもまれてもまれて、路上カルチャーを学んでいく。
路上の楽しさも。









僕も向こうでやります!!と言うノリさんの路上を拝見させてもらった。

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車椅子に座った状態でヤマハのギターを抱えるノリさん。

こんな野獣みたいなルックスで一体どんな曲をやるんだろう。
個人的にはBBキングみたいな野太いブルースなんか似合いそうだけど。




「詫びながら~ 手酌酒~ 演歌を聞きながら~」




吉幾三(´Д` )

な、なんて日本文化を愛する男(´Д` )




「いやー、できるなら日本の日本らしい歌でやっていきたいんですよねー。難しいですかね?」



いや、まぁ演歌は日本版ブルースだし、吉幾三も和製BBキングと言えなくも……ないか?




演歌でバスキング世界一周。

これってすごいいいアイデアだと思う。
ただやっぱり演歌ってやつは魅せてナンボなとこもあると思うので、やるなら衣装もこだわるともっと目を引くし、歌も聞いてもらいやすくなる。

それはこれからノリさん自身がやり方を見つけて行くだろうな。


歌は申し分なし。声量もあるし音程もバッチリだ。
ただギターはまだ左手の痺れが残っているので綺麗に音を出せていない。

それを差し引いても演歌バスキング世界一周の可能性をおおいに感じる歌唱力だと思った。


聞けばこれまで日本では老人ホームなどでの慰問ライブを行ってきたとのこと。
体が不自由でもやりたいことを諦めない。その姿勢は年代を問わずきっと多くの人に勇気を与えるだろう。
まして世界一周なんてことに挑戦しようとするノリさんは身体障害者界の星だよ。








「文武、ライブしてるね。こうやってずっと世界を回ってきたんやね………文武の路上を海外で聞ける日が来るなんてなー。」


いつもライブハウスでイベントを組んでくれていたアイラは俺の歌をもう何度も聞いてくれている。
いつも正直な意見をくれるアイラに演奏を見てもらうのはなかなか緊張したけど、俺に出来るのはいつも通り全力で歌うことのみだ。

世界中でずっとそうしてきたように。









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20時を過ぎて人がはけてきたので路上を切り上げ、テキトーに屋台で食べ物を買ってきて淡水の駅前の広場でビールで乾杯した。

夜になって少しは涼しくなったものの、それでも30℃以上ある熱帯夜だ。
冷たいビールが喉にしみわたる。


今日のあがりは3860台湾ドル。ドル換算で110ドル。

もっといけると思ったが意外に人が引けるのが早くて後半が伸びなかった。
時間を間違わなければおそらく2万はいくし、きっとここ以外でもいい路上場所があるはず。

どこでも歌ってやるぞ。




「ノリさん、今日は野宿でいいですか?たくさん汗かいたのに申し訳ないんですが。」


「もちろんです。今回は金丸さんの旅を体験するために来たんです。全部合わせます。旅とバスキングの勉強をさせてもらいます。僕こそ足手まといになりますけど大丈夫ですか?」


「大丈夫です。僕にとっても新しい経験なので。アイラは野宿大丈夫だよな。」


「もち。」



アイラは明後日に日本に帰るが、ノリさんとは1週間ほど行動をともにすることになりそうだ。

おそらく、この長かった旅の最後の相方になるであろう人が、世界一周を目指す車椅子バスカーだなんてな。
俺にできることはなんでもしよう。

俺がこの旅の中で学んだことをできる限り渡そう。

自ら険しい道を選ぶ勇気ある人のために。








久しぶりの野宿で地面に寝転がると体が夜に溶けた。


台湾編スタートだ。

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