8月20日 水曜日
【中国】 成都
★九寨溝
中国で1番有名な観光地。透き通ったエメラルドグリーンの水に倒木が沈んでいる光景はこの世のものとは思えない美しさらしい。
でも入場料とても高い。
★黄龍
九寨溝の近くにあるトルコのパムッカレみたいな場所。
石灰の白い段々のプールに青い水が張っておりこの世のものとは思えない美しさだという。
でも入場料とても高い。
★峨眉山
中国の水墨画らしい仙人の住む山で、この世のものとは思えない美しさだという。
でもめんどくさい。
★パンダ動物園
成都はパンダの故郷。パンダがこの世のものとは思えないほど可愛いという。
でも日本でも見られる。
★火鍋、麻婆豆腐、担々麺
いわずと知れた四川料理。この世のものとは思えない辛さだという。
でも下痢でレイジングストームが発動する。
★ゆまちゃん
この世のものとは思えない気持ちよさだという。
でも彼女がいる。
成都は外国人旅行者にとって中国の中国らしさをこれでもかと堪能できる街。
外国人バックパッカーの数もとても多い。
成都に来たなら、中国に来たなら全て堪能すべき場所のオンパレードだけどそんな時間も金もないです。
今日は20日。
香港から台湾へのフライトは26日。
そして所持金9千円。
ひょおおおおおおおおおおお!!!!!!!チベット楽しかったああああああああああああ!!!!!!!!
はい、歌いましょう。
そして歌を聴いてくれた女の子とイチャイチャしましょう。
みなさん、成都は美人の街だと知っていましたか?
やはり辛いものは美肌に関係があるのでしょうか。
歌って可愛い女の子と仲良くなって一緒に火鍋食べて盛り上がったところで麻雀でもやって身ぐるみ剥がされて捨てられるパターンですね。
伊達に坊や哲読んでねぇぞ!!
芸人なら芸人らしく芸で勝負したらどうだい?
はい、歌います。
というわけでまずは成都駅へ向かいました。
成都から香港への直通電車ってあるのかな。めちゃ遠いけど。
多分1万円くらいするんだろなぁ。
多分あるやろと地下鉄に乗って駅に到着。
人でごった返す中、窓口に並んで聞いてみた。
午前9時20分発
料金、硬座が224元。3800円。
移動時間31時間。
即購入。
あさってのやつ買いました。
正式には香港のすぐ隣にある広州という街までの電車です。
広州からなら香港はすぐです。
安いですね。
セルタから成都までのバスの値段とほぼ同じです。
その15倍くらいの距離なのに。
なんか天座っていうシート無しのチケットもあったみたいだけど無難に硬座にしときました。
31時間席無しはさすがに怖いです。
お尻が。
あ、書き忘れたけど今朝、宿でトイレに行く時にトイレのドアを開けた瞬間、僕のお尻のドアも決壊して未曾有の大災害が発生しました。
これでパンツが2枚お陀仏しました。
泣きたいです。
とにかくノーパンだけどチケットもゲットしたので気持ちも少し楽になりました。
観光しちゃおうかなぁ、という余裕も出てきます。
大都会のコンクリートまみれの街を歩いているとところどころに観光地らしきお寺とかがあるんですけど、やっぱりどこも立派で行ってみたくなる。
んー、どうしよう。
成都には杜甫の草庵とかもあります。
詩聖、杜甫です。
やっぱり詩を書く人間として神の足跡に触れてみるべきではないかと思ったんですが、入場料が千円するので財布がトホホになるのでやめました。
杜甫でトホホ。
「オオオオラアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!なに見てんだコノヤラアアアアア!!!!!!見せモンじゃねぇぞああああああんん!?!?」
「な、なんですか、僕あなたのこと見たりしてません!やめてください!!……」
「見てただろうが九州男児なめんなよこの野郎!!ふざけた顔しやがってぶっ殺すぞテメー!!!」
「ちょっと、か、勘弁してください………九州男児なめてすみませんでした………」
「よーし分かった。100元で勘弁してやる。」
「え?そ、そんなお金持ってません………」
「嘘つけこの野郎!!目が泳いでんだよテメー!!」
「ほ、本当もう許してください……ごめんなさい………」
「ダメだ。いくら持ってる?持ってるだけでいいから出せ。飛べ。」
よし、パンダクリアー。
パンダからカツアゲしたお金で麻婆豆腐を食べに行きました。
ここです。
陳麻婆豆腐というお店。超有名店です。
そうです、麻婆豆腐はこのお店が発祥なのです。
陳婆さんという人が作ったらしいです。
下痢でチンが使い物になってないのにチンさんの麻婆豆腐を食べるってわけですね。全然冴えてないです。
おお………なかなか高級そうなお店ですね………
やっぱ観光客とかいっぱい来るだろうしブランド値段になってるのかな…………
とビビっていたら、麻婆豆腐12元でした。
200円。
そこらへんの食堂より安い。
僕は麻婆豆腐が大好きです。
中華料理店に行ったらたいがい麻婆豆腐を注文します。
当たり外れありますが、コクのあるピリ辛の麻婆丼とか最高です。
今までだと青森の竜飛崎のちょい下にある町の国道沿いにあった小さな食堂の麻婆豆腐がウルトラ美味かったの覚えてます。
麻婆豆腐が来ました。
鉄板でグツグツ沸騰していますね。
ま、こういう有名店の名物ってだいたいそんなに大したことないんですよね。
あの竜飛崎の麻婆豆腐の方が100倍美味いよどうせ。
あの大将元気にしてるかなハウアッ!!!
う、う、うますぎる…………
竜飛崎さようなら………
なんだこのコクと旨味………
口に入れた瞬間、肉のエキスと豆腐の口触りが見事に絡み合い、そこからジワジワと辛さがのぼってきて山椒の香りがブワリと鼻を抜ける。
あ!!辛い!!ダメこれ!!
で、でも止まらない!!
止まらないよおおおおお!!!
うますぎるうううう!!!!
この日から2日間、お尻が常軌を逸した状態になったのは言うまでもないです。
でもいいです。マジで感動的に美味かったから。
超自慢したいもん。麻婆豆腐発祥のお店で麻婆豆腐食べたって。
いや、本当うまかったー………
今思い出してもヨダレ出てくるなぁ。
今度行ったらまた食べよう。
その時は山椒抜きにしてくださいって言おう。四川から出て行けって言われるかな。
えーっと、チンタラしてないで歌わないと。
街の賑やかなほうに向かって歩いていくと、ビルの間にかなりデカイ歩行者専用のショッピングストリートを発見。
人で溢れかえっており、ヨーロッパを思い出す綺麗で静かな通りだ。
オシャレな洋服店、ファストフードのお店、レストラン、カフェ、デパート、中央広場、脇道もどこまでもホコ天ストリート。
まさに路上にうってつけ!!
なのだが………
他にバスカーがゼロですね。
露店もいなければ物乞いもいない。
治安維持で規制されてるの丸出し。
えーっと……まぁとりあえず……トライしてみないとわからないよねー………
もしかしたらやらせてもらえるかもしれないし………
よーし、頑張るぞ。
そしてギター取り出してチューニングを始めて2弦目のところで警備員登場。
素晴らしいスピード。
ま、まぁそうですよね、こんなど真ん中のメインストリートはさすがにマズイですよね。
よし、ちょっと中心部を外れた歩道橋でやってみようかな。
タバコに火をつけてギターを取り出してチューニングを始めてタバコを半分吸い終わる前に警備員登場。
マジか………
ていうかよく見たら警備員の数が尋常じゃない。
青いシャツに赤い腕章をした人たちがうじゃうじゃいる。
ど、どこならやっていいんだ………
それからも何ヶ所か試すが、全部1曲目以内に警備員が飛んできてストップ。
人々の反応はすごい。
あっという間に人だかりが出来上がってみんな笑顔で聴いてくれる。
しかしお客さんたちが財布を取り出してそろそろお金が入り始めるというタイミングで警備員がやってきて追い払ってしまう。
マジか………成都厳しすぎるぞ………
公園ならどうだろうと、今度は天府広場という街の中心にある場所へ。
広々とした公園の中にたくさんの人たちがのんびりと歩いており、そこらへんで物売りがオモチャを売っている。
お、こりゃいけるんじゃないか?とすぐに演奏開始。
が、やはり人だかりが出来上がってお金が入るところで警備員登場。
もうどうすりゃいいんだよ………
すると警備員のおじさんが中国語で向こうの方を指差した。
「パンダパンダタンタンメン。」
何やらこの地下にある広場ならやっていいと言ってるみたいだ。
そういうことならと、すぐに階段を下りて公園の地下に入って行くと、そこにはショッピングモールがあり真ん中にとてもいい雰囲気の広場があった。
なにこれ、めちゃ完璧やん。
めちゃ稼げるやん。
え?俺ここで歌っていいの?
警備員がそう言ったもんな。
よーし、やらせてもらいますよ。
ギターを鳴らして演奏を開始すると2秒ですごい人だかりが出来上がった。
1曲目が終わると拍手が起こり、すでに足元のギターケースには100元近いお金が。
1曲で1500円て。
成都やばいくらい稼げるし。
うおおお!!!こりゃ3万くらいいっちまうぞ!!
はい警備員登場。
うん、わかります。
すぐに消えますね。
はぁ………マジで歌うところないよ………
するとそこに1人の小柄なおじさんが話しかけてきた。
「あ、日本人ですか?もし良かったらこのショッピングモールの中にステージがあるんですけどそこで歌ってもらってもいいですよ。」
日本語ペラペラのおじさん。
なにやらこのモールの職員さんらしく、是非ともステージで歌ってくれとのこと。
それは願ったり叶ったり。
やらせてください!とおじさんに着いてモールの奥へと歩いていく。
すると人通りがほとんどない裏手のスペースにポツンと簡易的なステージがあった。
「若い才能のある人たちを応援するためのステージです。中国の色んなミュージシャンがここで演奏しています。ここで歌ってください。お金はプレゼントを販売してください。」
プレゼント?
なんのことだろ?と思ったらおじさんはオフィスから大きな袋を持ってきた。
袋の中には子供向けのキャラクターがデザインされた定期券入れと馬のぬいぐるみが入っていた。
どうやらお金を直接得るのはまずいみたいで、こうした小物を買ってもらって応援してもらうという形をとらないといけないみたい。
なるほど。
というわけでセッティング。
えーっと、マイク無しですか。
館内放送で音楽がなかなかの音量で流れていて混ざり合って全然聞こえない。
そしてバックヤードみたいな閑散としたスペースなので人が通らない。
さらに警備員さんたちがわらわらとポールを持ってきてステージの周りを囲んでお客さんをステージから遠ざけてしまう。
ただでさえ音が小さいのに。
極めつけはプレゼントたち。
俺の前に並べられた謎の定期入れと馬のぬいぐるみ。
この世界一周をしている日本人はこの謎の定期入れと馬のぬいぐるみを売りながら58ヶ国も旅してきてのかすげぇ………って逆にそんな風になってる。
いや、ここはせめて馬じゃなくてパンダにしてくれ!!
そういうことじゃねぇか。
とにかく職員のおじさんは俺のために最善を尽くそうとしてくれている。その気持ちはとても嬉しい。
やれるだけやってみようと思いっきり声を上げた。
人はポツポツ足を止めてくれるが歌を聴いて写真を撮って去って行くだけ。
誰も馬を買ってくれない。
俺も声を張りすぎて喉が枯れてきた。
そんな状況を見かねたおじさんがマイクを持ってきてくれたり水を持ってきてくれたりするが、状況はそこまで変わらない。
俺が中国語を喋れたら、謎の定期入れと馬の真意を観客に伝えることもできるがそうもいかず、お客さんたちは誰も馬を手にとらない。
しまいにはもういいですと結局ギターケースを観客の前に置いてバスキング形式になり、入れてくれた人に定期入れをあげるという形に。
そ、それならもうさっきの広場でやらせてもらえないですか……?
下痢で何度もステージとトイレを不自然な動きで往復しながら歌っていく。
ようやく気の利いた女の子が、これらのプレゼントの売り上げは旅の資金になります、という旨の文章を紙に書いて置いてくれ、その途端みんな馬を買ってくれ始めた。
馬の代金の他にこれはチップよ、と20元紙幣を置いてくれたりと、ようやくお客さんたちもバスキングを理解してくれたところでワイヤレスマイクのバッテリーが切れてライブ終了。
バタバタだったけど、最後で結構定期入れが売れて100元ほどになった。
警備員に怒られて歌えないよりかははるかにマシだ。
職員のおじさんはもっと稼がせてあげられなかったことに申し訳なさそうにしていたが、充分だ。
俺の力不足が1番の理由です。
おじさん、ありがとうございました。
こんな場所で歌う機会を与えてくれて、そのお気持ちがとても嬉しかったです。
天府広場に上るとすっかり夜になっており、さっきまでの高層ビルがピカピカと光り輝いていた。
人々はみんな楽しそうに歩いている。
このままじゃ帰らんぞ。
さっきのショッピングストリートに行くと、たくさんの人で埋め尽くされて夜の賑わいに溢れていた。
綺麗な都会の洗練された街並みに心が落ち着く。
とりあえず晩飯食べて気合い入れようかな。
やっぱり四川だから四川料理だよね!!!
というわけでイトーヨーカ堂があったのでフードコートでトンカツ見つけてウオラァ!!トンカツがあるぞこの野郎!!ってなったけど千円もするので泣きながら隣のラーメン屋さんでラーメン餃子セットを食べました。
450円。
旨すぎる。
味が優しすぎる。
やっぱり日本の食べ物が体に馴染む。
あれだけ警備員に注意されてどうしてまだ路上を諦めていないかというと、昼に怒られた時に警備員にどこでなら歌えますかと尋ねると、彼は22時以降ならやってもいいよと教えてくれたから。
大理や麗江のように、やはり中国の路上は警備員が仕事を終えて帰った後の夜が勝負ってわけだ。
ならば1番いい場所でかましてやろうじゃねぇかとショッピングストリートのど真ん中の広場で22時を待つ。
人通りは増す一方。
早く22時になれ。
が、22時を過ぎても警備員たちは俄然やる気マンマンでトランシーバーを持って巡回を続けている。
22時半になっても帰る気配はなく、23時を過ぎてショップが閉まって人通りが減ってきてもまだグルグル見回りをしている。
だ、ダメじゃねぇか………
全然ガセネタだよ………
結局あちこち歩き回ってみたが警備員だらけ。
たまにバスキングを敢行してるやつを見かけたが、一瞬で警備員に止められていた。
こりゃダメだ。
ここまで厳しい街初めてかもしれない。
いい意味でめちゃくちゃ治安維持が徹底されてるな。
綺麗だけど面白みに欠ける街だよ。
今日はここまでにしとくか。
不完全燃焼でモヤモヤしていたけど、帰りにセブンイレブンを見つけて一気にテンションが上がった。
いや、セブンイレブンなら今までも外国にはたまにあった。
でもこの中国のセブンイレブンはクオリティが違った。
まず店内に入るとブワッとおでんの匂いがした。
もう一瞬で日本のコンビニを思い出した。
お弁当あるわオニギリあるわ日本のカップラーメンあるわ。
日本食に飢えまくっていたところにこれは天国でしかない!!!
大喜びでおでんとチーズケーキと500mlのアサヒスーパードライを買った。
25元。たったの400円。
そして宿で晩餐。贅沢すぎる晩餐。
おでんのダイコンがあまりに美味くて泣きそうになった。
なんだかこの高いビルばっかりで、堅苦しくて、なんでも揃ってる快適な街が日本のように思える。
きんちゃくを食べてスーパードライをあおると、もう日本はすぐそこなんだなとギクリとした。
ここから香港、台湾、韓国と近づけばさらに日本になっていくんだろうな。
昨日も日記で書いた国境付近での文化の混ざり合い。
こうして母国のそれを外国から感じると、なんとも不思議な気分だ。
日本ってどんな国なんだろうな。
今初めて日本をひとつの国として見られるようになったのかな。
明日も頑張ろう。
今日のあがりは210元。3500円。