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チベット人の顔

8月11日 月曜日
【中国】 シャングリラ






さて月曜日。

こんなにシャングリラに長居している理由はただひとつ、ビザの延長。

俺はアライバルビザ、つまり中国に到着した時に申請することができる簡易的なビザしか持っていないので中国に滞在できるのはたったの15日のみ。

なので滞在日数の延長をしないといけない。


これはだいたいどこの町にでもある公安局で申請することができ、バッグパッカーが多く訪れる大理や麗江ではとても簡単に取得することができるので、みんな何も心配することなくアライバルビザで中国にやってくる。



のだが、最近風向きが変わり、この大理や麗江でビザ延長ができなくなってしまったそうなのだ。

理由はわからないが、これまでそれをアテにして来ていたバッグパッカーや長期滞在者たちは困り果てて違う町にはるばる申請に行ったりしているとのこと。

外国人旅行者に対する締めつけは年々厳しくなっていると大理で会った日本人の方が言っていた。



このシャングリラでも出来るかどうかはわからない。
もしかしたらユルいかもしれない、という頼りない情報をアテにしてここまでやってきたが、果たして無事ゲットできるのか。










photo:01




とにかくまずは情報通り宿の人から宿泊の領収書をもらい、人に聞きながら町にある警察署を目指した。


聞いた話では、ビザ延長のためにはまず警察署で外国人宿泊証明書なるものを作成してもらわないといけないそう。そのために宿の人に領収書を書いてもらった。

それからその外国人宿泊証明書を持って公安局へ行ってようやく受け付けてもらえ、早ければ1日、かかって
3日くらいでビザをもらえるとのことだが、これはあくまでスムーズにいった時の話だ。


「あ?シャングリラでは申請できないよ?バカじゃないの?」


とか言われたら、あと2日で香港まで行かないといけないという不法滞在まっしぐらコース。

ドキドキしながら歩く。








photo:02




シャングリラの警察署はまぁ立派なもので、大きな大理石の建物が古い町並みの中にドシリと門を構えていた。

これくらい立派なところならスパパっと手続きしてくれるだろうなと思いながらゲートをくぐると、早速不審に思った警察たちが集まってきて俺を取り囲んだ。


いつものように全員英語は皆無なので、パスポートを見せながら筆談で延長、延長とノートに書く。

するとみんなすぐわかってくれ、この警察署では申請できないから違うところに行かないといけないと言う。

ノートに警察が書いてくれたのは公安局という文字。


ん?外国人宿泊証明書がいるはずなんだけどなぁ。
もしかしたら公安局でまとめてやってくれるのかな。

まぁ警察が言うなら多分正しいだろうと、言われるままにタクシーに乗り込んだ。






photo:03




公安局は結構町から離れた郊外にあり、タクシーで15元、250円だった。
出入境管理なんとかかんとかって書いてある。

ここだな。



「ビザの延長ですか?パスポートを出してください、そこにおかけください。」


おお、さすが外国人を相手にする仕事。みんな英語ペラペラだ。助かった。


「えー、ではまずですね、警察署に行ってアコモデーションレジスターを作ってきてください。それを持ってまたここに来てください。」





ふーん。








……………オラァアアアアァァアアアアァァァァァァ!!!!!!警察コラァアアアアァァァァ!!!!!

こういうのめちゃくちゃ嫌い!!!!!


タクシー代無駄、時間無駄。


役人のたらい回しスーパームカつく!!!!









超イライラしながら小雨が降り出した通りで、どこに止まるかわからんけどやってきたバスに乗り込んで町に戻る。

photo:04





ホラ、まったく同じところにトンボ帰りですよ。


超イライラしながら中に入り、さっさと外国人宿泊証明書を作ってくれとノートを見せる。


すると何か中国語でワーワー言っている警察たち。

だから俺は日本人で中国語がひとつも不理解だからと言ってもまったく同じスピードで話し続けるおっさん。


ノートに書いてくれとペンを渡す。

すると恐るべきことを書いてきた。





「係りの人が不在。不可。」





ふーん。



……………ではいつその係りの人は戻ってきますか?1時間後ですか?2時間ですか?と俺もノートに書く。




「次の月曜日だ。」




え?この人何言ってるの?

頭おかしいのかな?


次の月曜日?次の月曜日ですか?と何度も尋ねる。
そうだ、次の月曜日にお前はビザが取れると自信満々にうなづく警察。



……………え?係りの人が戻ってくるのが7日後ってその人どこ行ってるの?万里の長城でも攻めてるの?

ていうか7日経ったらもうビザが切れて不法滞在になるんですけど。ウケる。






何を言ってもひとつも通じないし、向こうもそれしか方法はないと言う。


あー、中国で不法滞在か………

そうか、もういっそこのまま誰とも音信不通になって雑技団に入ってパンダと遊ぶ芸でも磨いて、体が柔らかい可愛い女の子と結婚して金丸一座を立ち上げて、数十年ののちに日本公演に行ったら親が見にきていて泣く、という流れだけは避けないといけない。



ど、どうしよう………





あ!!カンさん!!
ポケットの中にカンさんの名刺が入ってる!!

大理のカンさんに通訳してもらえば少しは理解できるかも!!


警察にカンさんの名刺を渡して電話をかけてもらった。



「…………ニーハオ。」


「あ!カンさん!!フミです!!」


「あー!フミさん、どうしましたか?何か困ってますか?」


「カンさんー!!助けてくださいー!!」



それから電話先のカンさんに間に入ってもらい警察と話を進めた。
これ以上時間がなくて早く取らないといけないことを伝えていく。

そして同じ中国人であるカンさんの通訳のおかげで、とにかくもう一度公安局に行ってみろという流れに。



「外国人宿泊証明書がなくてももしかしたら受け付けてくれるかもしれないデス。行ってみてください。」


「カンさんありがとうございますー!!」



というわけでまたタクシーで250円払って郊外の公安局へ向かった。

するとすでに警察から電話がいっていたみたいで、手続きを進めてくれることに。

よっしゃ!!!





photo:05




申請書類に簡単な情報を記入し、写真を貼り付け、パスポートと一緒に提出。

ドキドキしながら待っていると係りの兄さんが言った。


「明日の午後14時半にまた来てください。」



よし、よし!!

受け付けてもらえた。明日にはビザゲットで明後日には出発できるぞ!!

ここから先、東チベットの深い山の中をバスとバンで繋いでいき成都に抜ける。
これで1週間はかかってしまうはず。

そうなったら香港のフライトまで残り6日くらいしかない。


マジで何もする時間ねぇ(´Д` )

歌う時間もほぼねぇ(´Д` )


かっ飛ばして電車で香港までたどり着いたらすぐにフライトで台湾だ。

香港までの移動費、足りるかな………






なんにしてもカンさんのおかげで助かった。
またカンさんに恩が出来てしまった。

なんとしても無事中国を脱出して台湾から手紙を書くぞ。










トイレに行きまくりながら古城に戻り、いつものチベタンのおばちゃんのところでヨーグルトを食べる。

photo:06




このヨーグルト、マジで美味い。


酸っぱいヨーグルトにこれでもかってくらい山盛りで砂糖をかけ、ガリガリ噛みながら食べると、お腹も良くなりそうな気がしてくる。


チベットでは牛の乳は生活に欠かせないエネルギー源みたいで、町の中には色んな乳製品が売っている。

有名なとこではバター茶ってのがある。
乳から作ったバターをお茶に溶かして飲むものらしいんだけど、どんな味がするんだろうな。

チベットにいる間に味わってみたいな。










photo:07




今日も昨日の場所で階段に座って路上開始。

目の前にある宿のお兄さんが昨日笑顔でお金を入れてくれたのを覚えていたので、トイレを貸してもらえた。

1時間おきには下痢が襲ってくるので近場にトイレを確保しないと路上はできない。

ヨーグルト効果で治ってくれないかなぁ。







photo:08




体がダルくて稼ぎも良くなかったんだけど、今日はたくさんの人に声をかけてもらえた。

まずは日本人バッグパッカーの女の人。カオリさん。


ええ!!中国のしかもこんな僻地の町に日本人!?ってめちゃ驚いたんだけど、このカオリさん、


俺が中国に入る前から中国のことについて色々メールで教えてくれた方で、お会いできるといいですねと返事を返していたんだけど、中国に入ってからはネットが使えなかったのでお互いどこにいるか全くわからない状況での奇跡の出会い。

俺の体調を心配して風邪薬を差し入れしてくれるというとても優しい方。


カオリさんも世界一周中で、これからチベットに行き、ネパール、インドと濃いところを攻めていくとのこと。

いやー、日本人バッグパッカーってやっぱり気合い入ってる人が多いなぁ。







次に地元のお兄さん。

何やら1週間後にバーをオープンするらしく、そこで歌ってくれないかと誘っていただいた。
ホテルも併設してる場所で、1泊1万2千円もするような高級なホテル。


今まで中国の観光地を回ってきて、ホテルもカフェもレストランも高いところはとことん高いしとてもセンスがいいんだよなぁ。

是非とも、と言いたいところだけど、そんなことしてたら香港にたどり着けなくなるので残念だがパス。









「ハーイ、いい歌ね!終わったら後でウチのカフェに寄って。ご馳走させてもらうわ。」


今度は流暢な英語を喋る女の人が声をかけてくれ、そろそろ終わろうと思っていたのでお言葉に甘えてお邪魔させてもらうことに。


カオリさんも一緒にメインストリートの角にお店を構えるナマステカフェというお店で暖かいレモンティーを飲ませていただいた。

ここもまたとてもセンスのいい落ち着いた雰囲気のお店。





photo:09




店主のガンさんはシャングリラから北に行ったさらにチベット文化の濃いガンゼという町の出身の方だった。


「僕の育った村は本当に何もなくてね、草原があるだけのとても美しいところだよ。チベットのことでわからないことがあったら何でも聞いてね。」



暖かいレモンティーで気持ちがとても和む。
みんなとても優しく、色んなことを話した。


俺はよくチベットやネパールの人?って聞かれる。顔の雰囲気が似ているらしいんだけど、今まではピンときていかった。

しかし目の前のガンさんの顔を見ていると、なるほどと思う。


チベットの人の顔は中国の漢民族とはまた全然違っていて、頬骨が出て、優しそうなタレ目で、しっかりとした眉毛、そしてよく日焼けしている。

彫りが深くワイルドな印象だ。


チベットは国ではないが、完全に独立した民族性と文化を持っている。

きっとウイグルエリアもまったく違った顔を持ってるんだろうな。

ひとつの民族の活動圏てのは限界があるもんだろうな。

中国でかすぎるよ。




今日のあがりは233元。4千円てとこ。

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