8月7日 木曜日
【中国】 麗江
チンチンがチンチンの役割を果たしていません。
この棒状のものは一体なんのためについているんだろう。
だって最近はずっとお尻から水を出しているのでオシッコもしていないし、エッチな気分にもならないので使用用途がない。
ただついてるだけ。
ああ、立たなくなったらどうしよう………
今日も朝から下痢を5回くらいして、フラフラになりながらギターを持って宿を出る。
昨日体重を測ったら51kgだった。
痩せすぎ………
古城に向かう道のりもとてもしんどくて、少し歩いたら座ってフゥと休憩して、また少し歩いたら休憩して、ともはや爺ちゃんです。体力なさすぎ。
ちなみにこれ坦々麺。日本の味を想像してたらまったく違う。
下痢を漏らしながら、いい加減オムツ買おうかなってちょっと思いつつ歩いて、やっとこさ古城に到着。
まぁ昼間の古城内もとにかく半端じゃない人通り。
細い路地が蜘蛛の巣のように張り巡らされた迷路のような古い歴史地区の中にうじゃうじゃと人がひしめいている。
かなり広いエリアが世界遺産に登録されたこの古城は、メインの人通りの多い観光通りだけでなく、ひなびた生活路地のような道も残っており、ゆっくり回ろうと思ったら4~5時間はかかりそうだ。
お土産物も結構特色のあるものが多く、これならショッピングも楽しいな。
体がだるくて、まるで登山をしてるみたいにはぁはぁ……と息をつきながら休憩を繰り返し、一通り古城の中を散策し、うなだれながら屋台街でベンチに座る。
はぁ……きつ………
ああ………トイレ行かなきゃ………はうぅっ!!トイレ!!
ダッシュで公衆トイレに行きたいのに人ごみのせいで急ぐことができず、若干漏らしながらトイレに駆け込む。
ううう………もう嫌だ……こんなんで歌えないよ………
適当にそこらへんで食べたご飯が美味しくなくて、しかも高い。
超観光地の麗江古城内なので全てのものが高い。
ローカルエリアなら1食150円くらいで食べられるのにだいたい400円くらいか。
口直しがしたくてカフェに入ってコーヒーを注文すると、粉を溶かしたインスタントのコーヒーが出てくる。
まぁお茶文化の国だから仕方ないかとタバコを吸いながら一息ついてお会計をすると、インスタントのコーヒーが450円。
た、高すぎる………
大理で稼いだお金があるといってもたかがしれている。
今全財産が3万円くらいだ。
着実に減っている。
マジでこんな体調でも歌わないと中国を脱出できない。
しかも香港からの飛行機チケットがあるのでタイムリミット付きだ。
目の前には楽しそうな中国人観光客でこれでもかというほど賑わっている観光地。
バスカーとしてこれ以上ないシチュエーション。
なんとしてもやらないと………
麗江もまた大理と同じで夜にならないと路上ミュージシャンたちは出てこない。
つまり規制されているということ。
何時からOKなんだろうと待ち続けること数時間。
ようやく22時を過ぎて通りの土産物屋さんたちが閉店しだしたころに地元の若者たちが路上に出てギターを弾き始めた。
同時にアクセサリー売りなどの露店も通りに立ち始め、自由な時間に突入したことがわかる。
よし、歌うぞ。なんとしても600元、1万円はとらないと。
バーやレストランからもギターの弾き語りの生ライブの音が通りに流れ出ている。
本当に今の中国はギターの弾き語りが人気なんだな。
人通りは22時を過ぎてピークに達している。
閉まったお店の前に陣取りギターを広げると、すぐに人が足を止め始めて人垣が出来上がった。
根性、根性だぞ。
思いっきり声を振り絞るが体に力が入らずなかなか声が通らない。
そこに追い打ちをかけるように、通りのお店の客引きたちが閉店セールかなにかで大声を張り上げており俺の歌がかき消されてしまう。
さぁ、盛り上がってきた、盛り上がってきたぞ、さぁ今からサビで思いっきりいい声を出して……
「ジャッキーチェン!!ブルースリ~~!!!」
ナイスタイミングで1番の聴かせどころをかき消す客引き。
おかげで人だかりの割りにお金の入りはイマイチ。
それでも頑張った。
喉を全開にして歌った。
人通りは申し分ない。
気合い振り絞れ!!!!
というところで雨が降り出した。
冷たい雨が石畳みを濡らし始め、あっという間に蜘蛛の子を散らすように通りから人通りがなくなってしまった。
な、なんで、なんでこのタイミングで………
雨に濡れながらも歌い続けるが、もはやそんな中で足を止める人はおらず、雨足も強くなって脱力してギターを置いた。
あがりは104.5元。
わずか30分足らずで1800円。
ちくしょう………ちくしょうー………
こんなんよくあることだ。
芸人殺すにゃ刃物はいらぬ、雨の3日も降ればいいという毎日の中でずっとやってきた。
でもこの体調に降りしきる雨は気力を根こそぎ流してしまう冷酷さがある。
なんとかしないと……
大丈夫、なんとかなる。
体もそのうち治ってくれるはず。
しかし、今まで自分の体に対する絶対的な信頼があったけど、雨の中で濡れながら宿に帰る心の中にはその信頼が欠け始めているのも感じていた。