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まだ心は風の中

8月1日 金曜日
【中国】 大理





真夜中、身体中が痛くて目を覚ました。

ベッドの上、四方から両手両足を引っ張られて引きちぎられそうになってるような痛みでベッドの上でのたうちまわった。

思わずうめき声が漏れてしまう。



そして同時にお腹が痛くてトイレに向かう。
ひどい下痢で、水だけが出てきた。
またかよ………せっかく治ったと思ったのに………


フラフラと倒れそうになりながらまたドミトリーの部屋に戻りベッドに横になるが、まるで万力で締めつけられてるみたいに全身に鈍い痛みが走り続ける。

どうしようもなくてただひたすら悶えていると、また下痢が出そうになってトイレに向かう。

トイレは部屋の外にあるので、寝静まった宿の中庭を何度も何度も行き来する。


なんでだ…………もう勘弁してくれ………

もうこんな体調いやだ…………











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ろくに眠れないまま朝になり、ドミトリーの他の中国人たちが荷物をまとめて出て行ったのをぼんやりした意識で見送った。

起き上がることもできず、薄れる意識の中で早く宿を出なければと思った。


昨日のあの信じられないような中国初日の夜。
たくさんの中国人たちに迎えられみんなで語り、歌い、飲んだ。

そしてカンさんが、明日ウチのホテルに必ず来てくださいと言ってくれた。

ここまで言われて行かなかったら逆に失礼だ。

大盛り上がりで仲良くなったみんなも、待ってるからね!!と言ってくれた。

なんとしても行かないと。









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10時になってなんとか体を起こし、ふぅとひと息をついて立ち上がる。

トイレでまた水を出してから荷物をまとめてバッグをかつぐと、ズシリと重量がのしかかった。

うおお………バッグだけで足腰が砕けそうだ………
かなり弱ってるな………



レセプションでお金を払い外に出るとタイミング悪く雨が降り出し、その下を濡れながら歩いた。

キャリーバッグを引く手に力が入らない。
やばい、倒れそうだ………

下痢が漏れそうになって肛門に力を入れる。
カンさんのホテルはすぐそこなのに、とても遠く感じた。











路地裏に入ってなんとか宿に着くと、カンさんや可愛い18歳の女の子のワンちゃん、何かと気のつく働き者のスタッフのチャンさんが、中庭のソファーでくつろいでいた。

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「おー!!フミさん、よく来てくれました!!」


「ハーイフミ!!グッドモーニング!!」


「ニーハオ!!」


みんなの昔からの友達を迎えるかのような笑顔にホッとした。どうやら夢ではなかったみたいだ。

ドサリとソファーに座るとチャンさんがお茶はどれがいい?とたくさんの種類のお茶が入った箱を持ってきてくれた。

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なんだか珍しいお花とかが入ってるやつを選んで飲んでみた。
温かいお茶が優しく体に染みる。

ああ、やっぱお茶の文化っていいなぁ。

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ちなみにこの子はカンさんの子供ではないです。









「え?風邪ひいてますか?大丈夫ですか?ゆっくりしててください。今から食べ物作ってあげますから。」


料理上手のチャンさんがパパッとうどんを作ってくれ、みんなで台所でテーブルを囲む。

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トマトが入った優しい味のうどん。

その家庭的な味が嬉しくて箸を進めるのだが、あまり食欲が湧いてこず半分も食べる事が出来なかった。



「チャンさん、カンさん、ごめんなさい、本当に美味しいんですけど、どうしてもこれ以上食べられないです。」


「大丈夫です。無理はしないでください。風邪をひいていたらそんなに食べられないですから。」


そしてワンちゃんが奥の部屋に入っていき、何かを持って戻ってきた。



「フミさん、これ薬です。こっちを3錠、こっちを1錠飲んでください。」



も、もう…………なんでこんななにからなにまで………
やっぱり中国人優しすぎる。

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それから部屋に連れていってもらった。
カンさんからあてがってもらった部屋は、信じられないほど綺麗なダブルベッドの部屋だった。

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全ての家具が新しくピカピカで、液晶テレビがあり、ゴージャスなカーテンがかかっている。

洗面台もシミひとつなく、シャワーヘッドには炭のフィルターなんてオシャレなものがついているし、シャンプーもボディソープも備え付けてある。

もうただの高級ホテル。

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インドの宿はなんだったんだ。
あれ人間の寝る部屋じゃねぇよ。






うひょおおい、とはしゃぎたいところだけど体がそれどころじゃない。

せっかくのこんなゴージャスな個室だからゆまちゃんを……と言いたいところだけどやっぱり体がそれどころじゃない。

少し休みますとカンさんに言ってベッドに潜り込んだ。

清潔なシーツの肌触りがとても心地よかった。







体がおかしい。
ここ最近の下痢と体のダルさはどう考えても異常だ。

キチンと治る前に体を酷使するのでいつまで経っても治らないでいるだけなのか。
それだったらいいんだけど、ここまでひどいと他の可能性まで考えてしまう。

ガンジス川に足首だけでも入ったのがいけなかったのかな………

インドの不衛生極まりない屋台で飯を食べたのがいけなかったってのは当然なんだけど、それにしても俺の体弱いなぁ。

なんとか中国のご飯で減った体重を取り戻したいな。













夕方に目を覚まして、トイレに行き、それから中庭に降りると、雨の中でカンさんが今日もバーベキューの火を起こしていた。


「昨日たくさん作りましたから材料が余ってますからね。全部食べてくだサイ!」


「ハーイフミ!体調はどう?良くなった?」


「フミさん、バイクでツーリングに行ってきたけど雨で結構大変だっよ!!」


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みんなの輪の中に入り、彼らの嘘のない笑顔に触れると少し元気が出てきた。
薬もきいてるようだ。

みんな俺を気遣ってくれ、果物をくれたり、生姜湯を作ってくれたりする。
生姜が体を温めてくれる。

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例によって次々とタバコが差し出される。
あ、いいよいいよ!って遠慮しても、際限なく差し出される。

自分が何かを楽しむ時は周りに勧める。中国人たちの大事なマナー。











今日も美味しいバーベキューのお肉を食べ、お茶を飲みながらみんなと笑った。

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俺が中国ではFacebookとかGmailが使えないねと話すと、ウィチャットとかQQという中国国内でも使えるSNSを教えてくれた。

これならばメールのやり取りが出来る。

しかしこうしたSNSのアカウントを取る際、まず自分の電話番号にアカウントを送信してもらわないといけない。
俺のiPhoneには電話番号がない。

だから無理なんだよと話すと、そんなの簡単だよ!!と大学生のチェン君が自分の電話番号を入力してそこに登録ナンバーを送信してもらい、俺に教えてくれ、見事あっという間にQQに俺のアカウントが出来上がった。

すげー!と喜ぶ俺のiPhoneをみんながそれぞれ回して、そこにいるみんなが俺のQQフレンドになってくれた。


そして彼らから最初のメールが送られてきた。


「歓迎光臨中国!」


中国にようこそ!!という意味だった。










バーベキューもひと段落して、ソファーでくつろいでいると、お肉係りをやっていたカンさんが隣に座った。

カンさんの出身は北京の北西部、モンゴルとの国境にほど近い小さな町だそう。

何もない寂しい田舎で、冬になるとマイナス50℃近くまで冷え込むような僻地。


この辺りのことを内モンゴルと言い、現在のモンゴルのことを中国人たちは外モンゴルと呼び、毛嫌いしているんだという。
同じ民族なのに不思議ですと笑うカンさん。



「モンゴル人は昔からケンカが好きです。今も彼らは人と出会うとまず相撲をしてどちらが強いかを決めたがる。大理も昔はタイの国土の半分くらいを支配していた強い国でしたがチンギスハンに負けてなくなってしまいました。」


カンさんの故郷を地図で見せてもらうと、本当に周りに何もない取り残されたような小さな町だった。

こんな場所で、厳しい気候の中、カンさんは育ったんだな。



「中国にはふたつの有名な草原があります。そのひとつが私のふるさとです。どこまでもずーっと何もなくて草原だけです。何もないから、風が強いです。そして狼がいるからとても危ないです。でもいいところですよ。夜になると星がとても近いです。」



想像するだけで胸を締めつけるようなノスタルジックな風景が浮かぶ。


暗く立ち込めた空の下、緑の海が揺れ、風が形を表す。

寂しく、虚無で、気高い風景。


たまらなくロマンがある。
そういう寂しい孤独を見つけることこそ夢に描いてきた旅。

そんな名もなき小さな町にたどり着いたら、一体どんな気持ちが吹き抜けるだろう。






ふと行きたいという衝動に胸が震える。
この震えに従いたい。
どこまでも遠くに行ってみたい。


しかし、あまりに行き先が反対すぎる。
目指さなければいけないのは香港。
真逆だ。北を目指せば時間が足りなくなる。




今まで、この時間の制約でどれだけの場所に行くとこができなかったか。
しかしだからこそ俺はここにいて、たくさんの笑顔に囲まれている。

それでいい。選択に間違いはなかった。



でもやっぱり思う。


もうすぐ旅は終わる。

遠く見果てぬ場所を目指してどこまでも進んできた。


俺はまだ、もっと遠くへ行けるはず。

まだ、きっとこの世界のどこかに会うべき人がいる。

まだ心を日本に向けるのは早いよな。


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