7月11日 金曜日
【カンボジア】 シェムリアップ
カンボジアのミニお国情報。
★首都………プノンペン
★人口………1500万人
★言語………クメール語
★独立………1953年、フランスから
★通貨………レアル
★レート………4000レアル=1ドル
★世界遺産………文化2件
いわずと知れたアンコールワットの国。
それ以外のイメージはない。
昔内紛が激しかったというのは漠然と知っている。ベトナム戦争の影響で、カンボジアもアメリカからだいぶ空爆をくらったそうだ。
その時に遺跡が消失しなくてよかった。
日本人の中で世界遺産人気ランキングで1位だというアンコールワット。
一体どんな遺跡なんだろう。
早朝5時。
まだ暗いうちから宿に迎えに来てくれたトゥクトゥクに乗り込む。
眠くてたまらん。
3時間くらいしか寝てない………
なのでどうやってアンコールワットにたどり着いたかあんまり記憶がない。
チケット売り場にはこんな早朝だというのにすでにかなりたくさんの人がいた。
どうやらアンコールワットで朝日を見るってのは定番のコースみたい。
20ドル払ってさらにトゥクトゥクで奥へと進んで行く。
このあたりに来ると周りには森が広がるのみで、その中を一本のアスファルトの道が伸びている。
昔日本の映画で、1人の戦場カメラマンの人生を描いたものがあった。
詳しくは忘れたけど、ある戦場カメラマンが当時まだ紛争状態だったカンボジアの森の奥地へと入り込み、さまよい続けた果てにアンコールワットを発見したが、現地のゲリラに殺されてしまうというもの。
ずっとそのイメージが残っていたが、こうして世界屈指の観光地となった今も、やはりアンコール遺跡群は深い森の中にあったんだということを感じることができる。
その時パッと森が開けて視界が広がった。
朝の白んだ空に、テレビや写真で何度も見てきたあのアンコールワットの姿があった。
それはまるで現役の王宮のようであり、または自分が1000年前の当時にタイムスリップしたかのような圧倒的な壮大さを放っていた。
興奮を抑えつつその巨大な建物へと伸びる石畳を歩いていく。
お堀が周囲に巡らされ、大きな塔がそびえたっている。
この荘厳な建物は寺院だというが、とんでもない規模だ。
一体どれほどの信仰の元に作られたんだろう。
どれほどの僧侶たちがここで祈りを捧げていたんだろう。
すでにかなりの観光客たちが敷地内の芝生の上でサンライズを待っていた。
ていうかおりすぎ。
うじゃうじゃ。
俺たちも太陽が昇るのを待とうかと芝生に座った。
座った瞬間、ブレックファーストはいかが?と姉ちゃんがメニューを持って声をかけてきた。
ほぅ、ナイスタイミングですな。
こんなとこでサンライズを眺めながら朝飯ですか。
そりゃいただきましょうか。
メニューを見せてもらう。
サンドイッチ4ドル。
「高いです。いりません。」
「ハウマッチ?」
物を売ろうとしてるのに、こっちにいくら?と聞いてくるあれです。
オノレの商品の値段なんて知らねぇよ。
そんでだいたいの相場の値段を言うと、バカ言ってんじゃねぇよと鼻で笑う。
日本人は見栄があるから遠慮がちな値段しか言わないしな。
「2ドルならいいですよ。」
「OK。コーヒーは?1ドルよ。」
一瞬で半額になった。メニュー表の値段で何も言われなければラッキーくらいのもんなんだろう。
芝生の上でノンビリとサンドイッチをかじってコーヒーを飲む。
カンボジアコーヒー、すっごいマズイ。
サンドイッチは普通に美味しい。
朝の優雅な時間なんだけど、それを邪魔するのが物売り。
スカーフやらズボンやらを持ったおばちゃんがひっきりなしに目の前に立ちはだかって視界を遮ってくる。
しかもノーと言ってもなかなか簡単に引き下がらないのでうっとおしくてしょうがない。
「ズボンズボン、ヤスイヤスイ。ハジメメシテ。ズボン1ドル。」
「はいはい要りませんからそんなアジアンなズボンって1ドル!?えええ?!!」
バンコクで5~6ドルで売ってたアジアンなヒラヒラズボンが驚異の1ドル。
ていうかなんでもかんでも1ドル1ドル言ってくる。
町の中にあったマッサージ屋さんも1ドルだったし、この国は100均か?と思えてくる。
でもとりあえず1ドルって言っとけばいいみたいなところがあるので、屋台のカップラーメンとかでも1ドルって言ってくる。
それは高いよ。50円だよ。
子供の物売りも多い。まだ小学校低学年くらいの子供たちがキーホルダーを持ってやってきて、こう言う。
「ニコ、イチドル、サンコ、イチドル、オニイサン、ハンサム。」
これをまだ年端もいかない子供が喋ってくる。
白人のところに行けば、それなりの英語を喋ってるし、おそらく他の国の言葉も知ってるだろう。
4歳くらいの子供でさえ、日本語を喋ってくる。
マジでビビる。
学校なんて行ってないだろう。
彼らにはこの世界中から観光客がやってくるアンコールワットが学校みたいなもんだ。
生きてく術なら、学校なんかよりよほどためになることを学べそうだな。
アンコールワット、アンコールトム、バイヨン、
5ヶ所のポイントを回ったんだけど、どれも本当に素晴らしかった。
保存状態がとてもいいものから、崩れ落ちて巨木の根と同化してしまっている場所など、見応えは充分。
あまりにも細微な彫刻が壁一面にびっしりと残っていたり、至る所に石像が彫り込まれていたりと、とにかく豪壮。
今まで行ったどの文明の遺跡ともテイストが違っており、これぞアジアといった雰囲気だ。
世界旅行で外せない名所トップ10に入ってもいいんじゃないかな。
そしてここにさえ行けば、アジアの他の遺跡はパスしてもいいと思えるほどに期待を裏切らないザ・遺跡だ。
ハンやユアンたちとの会話も楽しかった。
彼らの出身はチェンドゥという町。
読み方じゃ理解できないんだけど、パンダの町ということでそれが成都だとわかった。
成都は今回の中国旅で拠点となる町だと思っていたんだけど、ここで彼らに出会えたのはでかかった。
ハンたちは自慢げに成都について話してくれる。
「チェンドゥは中国の中でも独特な場所でね、北京や上海とは全然違うんだ。とてもゆっくりしていて独特の文化がある。ホットポットって知ってる?」
「ホットポット?……あ、火鍋かな?」
「チェンドゥの人々は3つのことをとても大事にするんだ。ホットポット、麻雀、そしてお喋り。みんなこれを毎日やってる。フミさんはきっとチェンドゥが好きになるよ。」
そんな彼らはこれからインドに飛び、ネパールに入り、そこからバスでチベットを越えて中国に帰るという。
中国人は簡単にチベットに入ることが出来るようだ。
俺たちもチベット行きたいよと言うと、俺たちだってもっと簡単に日本に行きたいよー!とハンがおどける。
中国人が日本のビザを取ろうと思ったら半年くらいかかるそうだ。
感動はすごい。トゥームレイダーの撮影にも使われたほどの遺跡群を探検していると冒険家になったような気分にさせてくれる。
のだが、朝早くから起きてアジアの暑い日差しの下をひたすら歩き回るのはかなり骨が折れる。
5つの寺院を周り終えた頃には全員クタクタになっており、最初は興奮して写真を撮っていたハンも、最後にはカメラすら出していない。
そんな疲れきったところにワラワラと物売りの子供たちが群がってきてサンコイチドル……ヨンコイチドル!!カッテカッテー!!と足にくっついてくる。
買ってもいいけど、そんなマグネットとかいらないもん………
子供たちを振り切ってトゥクトゥクは走る。すぐに背を向けて次の観光客に声をかける子供たち。
きっとたくましく育つだろうな。
これから世界各国の言語をもっと覚え、観光客相手のプロフェッショナルとなり、いかにして観光客から金を落としてもらうか努力していくはず。
彼らが観光大国カンボジアの将来を担っている。
頼むから詐欺や強盗の道には入らないでもらいたいな。
トゥクトゥクで町に戻ってきたのは14時半。
インドに向けて最終準備をするため、まずは換金。
残りのオーストラリアドル、日本円をアメリカドルに替えると手持ちのお金は100ドルになった。
あとは中国のお金と韓国のお金と台湾ドルがちょろちょろあるが、金額が小さすぎて替えられず。
パスポートケースの中に入れている虎の子の6千円。
日本から持って来た6千円のうちの3千円はロシアで換金して、あとの3千円はずっとパスポートケースの中に入れていた。
その後クロアチアのドブロブニクで歌ってる時に日本人の方に5千円をいただいたので、パスポートケースの中のお金を6千円にして、今までどんな時もずっと手をつけずにいた。
こいつは最後まで換金したくなかった………
使わずに日本まで持ち帰りたかった………
でももう背に腹は代えられない。
今こそ使うときだ。
「これ替えてください。」
「お札にシミがついてるわね。替えられないわこんな汚い金。バカじゃないの?」
よし、隠し持ってた意味まったくねぇ。
じ、じゃあこのボスニアヘルツェゴビナのお金はどうですか!?
ボスニアヘルツェゴビナってとってもいいところなんですよ!?チェバブっていうお肉のサンドイッチがマジで美味くてサラエボ紛争の地で未だにビルに銃弾でできた穴がたくさんあいててまるでお姉さんのそのアバタみたいなんですよ!!はい?早漏は死ねとおっしゃる?
世の中の早漏に謝れ!!
みんな努力してんだ!!
早漏がいいっていう女の子だっているんだ!!
はい?それは女の子が早漏を傷つけないために優しさで言ってるだけだとおっしゃる?
ふーん。
ところでバンコクまで10ドルで行ってくれるんですね。チケットください。
「遅漏より早漏のほうがええで。大事なのは気持ちやで。」
カンちゃんに慰められながら隣の写真屋さんで泣きながらビザ用の写真を撮り、突然降り出した大雨の中びしょ濡れで宿に戻った。
そしてシャワーを浴びてすぐにベッドに倒れた。
2時間の仮眠でだいぶ体力が回復した。
アンコールワット、かなり疲れたな。
雨はまだ降っている。でもやるぞ。
残金は8500円。インドのビザ代が6千円なのでこのままだとインド到着時の所持金が2500円になってしまうゲロ吐きそう。
今日と明日がマジで勝負。
気合い入れて宿を出て、そこらへんの屋台で焼きうどんに目玉焼き乗っけたやつをマジやべぇって言いながら食べて、ナイトマーケットへ。
19時前の通りにはまだそんなに人は出ておらず、お店も開店準備を始めているところ。
夜はこれからみたいだ。
ナイトマーケットのど真ん中でギターを構える。
お店とお店の間の通路に思いっきり陣取っており完璧邪魔になっているが、周りのお店の人たちも興味津々で眺めている。
地元の人はほんの少しで、中国人と欧米人ばかり。
カンボジア最初の路上ではあるけど、これだけの観光地だともはや国なんて関係ねぇな。
気合い入れろ。
お金の入りは悪い。
人だかりはできるが写真撮って終わりのパターン。
このやかましい通りのど真ん中だと、歌を聴いてもらう環境ではない。
それでも根性で歌う。
ズボンが1ドルの国だからやっぱり入る金額も低い。
ボロボロのレアル紙幣が入っていくがドルに換算したら本当に小額。
ちなみにカンボジアの通貨はレアルというもの。4000レアルで1ドル。
ずっと聞いてくれていた人がお金を置いてくれたと思っても1000レアルとか。25円。
そんな中、たまに1ドル紙幣が入るとでかい。
結局4時間近くやった。
弦を10回くらいぶち切りながら、喉が枯れるまで歌い、汗だくでギターを置いた。
あがりは、
16ドル
43600レアル 11ドル
20香港ドル 2.6ドル
計30ドルってとこか。
100均の国のカンボジアではかなりの金額だと思う。
しかし少ないなぁ………
まぁ良しとするか。
カンちゃんと2人で近くの屋台でご飯を食べた。
ビールで乾杯して、焼きそばを2人で分ける。
ご飯の好みも合うしお酒も好きなカンちゃんとは本当に同じタイミングで同じご飯をシェアできた。
すぐお腹すいたーって言うのがすごく可愛かったなぁ。
そんなカンちゃんとも今夜が最後の夜。
気がつけば今までで1番長く一緒に行動した女の子だったな。
思えばマレーシアで焼き鳥食べてるところに声をかけてきてくれたのが始まりだったな。
人の繋がりってのはどう展開していくかわかんないもんだ。
これでもうしばらく会えないのかと思うとかなり寂しい。
寝相が悪いのも、歩き方が変なのも全部可愛かったなぁ。
いつも夜中にいきなり起き上がって寝言を喋りだすのめちゃくちゃ怖かったよマジで。
今までもたくさんの人と旅をともにしてきたけど、みんな素敵な人だった。
1人でいるときも誰かといるときも、どちらも楽しかった。
いつも美味いビールが飲めた。
次はどんな人と乾杯できるかな。
カンちゃん、わがままな俺に長いこと付き合ってくれて本当ありがとう。