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外灯の下

6月27日 金曜日
【タイ】 チェンマイ






ゆうべのあがりは200バーツほどだった。700円。

最近全然ダメだ。まったく稼げていない。
こんな調子じゃインドどころか東南アジアを脱出することすら不可能だよ………







朝、インターネットで航空券を調べてみた。

インドにはどうしても行きたい。

しかしそのためにはインドへの飛行機、そしてインドから中国への飛行機を買わないといけない。

ネパールあたりからどうにかしてチベットを抜けて中国の山を彷徨う、なんて想像をしていたけど、1日も無駄にできない今そんな時間はない。



この飛行機代、1番安いもので、


バンコク → コルカタ 1万5千円

ニューデリー → 成都 2万5千円



といったところ。荷物代も合わせてたぶん5万円。
さらにインドのアライバルビザ代も入れておそらく6万あればなんとかなる。

そして現在の手持ちは6万5千円。




はは!!ははは!!
人間がゴミのようだ!!




というわけで金はマジで稼がないと本気でヤバイ。
無駄遣いはもうできない。
象は無駄遣いではない。断じて、



金はおそらくなんとかなる。
根性出せばなんとかなる。

でも問題は時間なんだよな………


もうすでに彼女との約束の2年には間に合わない。

それでも、頑張ればあと1ヶ月ちょい、8月の頭くらいには帰れるかなと思っていた。


しかし金を失った。

金にものを言わせてかっ飛ばすことができなくなった。

おそらく立ち往生してしまうことが出てくるはず。

そのことを恐る恐る彼女にメールしてみた。



「それはフミ君のミスだよ。8月頭に帰ってこなかったらもう本気で知りません。」



iPhoneを放り投げ、ベッドに倒れて天井を見上げる。

はぁ………ちっくしょー………

インドに行けば金もなくなるし、最低でも2週間はかかる。インドを2週間なんて足りないにも程があるんだろうけど、今はとれてもそれが限界だろう。


しかしインドに行かずにこのままベトナムから中国に入ればとてつもなく楽に日本に向かえる。
6万もの金を使わずに楽に移動し、台湾にさえ入ってしまえばおそらくスーパー稼げるだろう。

日数も大幅に削減できるので楽しみにしていた中国に充てる時間も増える。





しかしだ、インドに行かない世界一周なんてものが許されるのか?

もちろん許される。
世界一周に定義なんてない。

ただ俺の中の世界一周像ではインドに行かない世界一周なんてあり得ない。

インドインドって、ただの汚くてカオスで平気で人を騙してくる人々だらけのカレーの国、なにをそんなにこだわることがある?


いや、インドは今まで訪れたどんな国とも違う異質なオーラを発している。
文化も宗教も歴史も、あらゆる面で32年培った常識が通用しないだろう。

きっと何か面白いものを見つけられるはず。


そしてなによりインドに1番行きたい理由はブッダガヤ。
仏陀が悟りをひらいた仏教発祥の地。

仏教徒としてこれは必ず見ておきたい。
インド人の詐欺師たちに吠え面かかせてやりたい。
カレーも食べたい。

そして俺の中の凝り固まった人間の像を破壊してもらいたい。

インドには行きたい。

でも彼女が待ってる。









どうすべきだろう。

行きたいのを我慢して後悔をかかえて日本に帰るか。

強引にインドに行き、8月頭に帰れなくなろうが後悔のないように回るか。


昔の俺なら迷うことなく後者を選んだ。
待っている人のことなど顧みずにどこまでも突き進んだ。たった1度の人生、やり切らないでどうする、と思っていた。




今は少し違うような気がする。

というか違う考えが頭の中に浮かんでいる自分に驚く。

インドには行かずに中国に抜け、8月頭までに日本に帰るべきではないかという考え。

もうこれ以上旅で、俺のわがままで、何かを傷つけ失うのは愚かなことではないのかと思える。

きっとそう。とても愚かなこと。


だとしたらここでインドを切り捨てることこそ、旅を終えた成長した姿ではないだろうか。


がむしゃらに決めたことを最後までやり切る。ずっとそう信じて努力してきた。

でももうそろそろ違うやり方を見つけてもいいのかなと思えた。










その時、部屋の中でバッグを触っていたカンちゃんがぼそりと言った。


「あ、あれ………カードがあらへんかも………」


バッグの中を調べているカンちゃん。



「よう覚えてへんけど、ここに入れてた気がするんやけどな………」


「でもカンちゃんクレジットカードはいつも小さなバッグに入れて持ち歩いてたやん。」


「いや、無くした時のために予備のカードをバッグに入れとったんやわ。2枚なくなってる気がする。ここに入れとった日本円の1万もなくなってる気がする。記憶が確かやないからわかれへんけど。」





少し嫌な予感がした。

もしかしたら俺の現金が盗られたあの宿でカンちゃんのバッグもまたあさられていたんじゃないのか?

ツインの部屋に泊まっていたので鍵はもちろんかけていた。
しかし俺のお金は見事に盗まれ、部屋は荒らされた形跡もなく鍵もかけられており、まったく気づくことはなかった。見事にしてやられた。

そんなプロの仕業。
もしかしたら。



いや、そんなことはないだろう。
ただカンちゃんが入れ忘れていたか、違うところに紛れ込んでるだけだ。

しかし不安になったカンちゃんが日本に電話をかけた。

そしてカンちゃんの口から信じられない言葉が出た。






「26万使われとる………」


体温がブワッっと上がった。

シャレにならねぇ。

俺の9万ならまだ天領うどん200杯食えたとか冗談に出来た。
しかし26万はシャレにならねぇ。

すぐにカード会社に連絡してカードを止めてもらう。
26万使われたほうのカードは、カード会社が不審に思いセキュリティでストップをかけたそう。

もしかけてなかったらどこまで使われていたことか………



慌てながらも気丈に各種のやるべきことをこなしていくカンちゃん。
いつもフワフワマイペースなカンちゃんだけど、こうした時はとてもしっかりしている。


カード会社は今回の26万円がカンちゃんによるものではなく、盗んだ犯人が使った不正使用であるものかどうかを審査し、不正使用が認めららればカンちゃんがお金を負担することはなくなるという。

しかしもし認められなければおっかぶらないといけない。

そうなった場合、カンちゃんは海外保険に入ってるのでそちらに対処してもらうというが、そうなるとまたバンコクに戻り、ポリスレポートをもらわないといけない。
さらにクレジットカードの不正使用まで海外保険が適用されるのかは怪しいところ。






とにかく大変なことになってしまった。




「シット!!!シットシット!!!」


宿のママが怒り狂っている。

俺は椅子に座って凹む以外にやることもなく。

自分が一緒にいながらこんなことになってしまったことが不甲斐なくて情けなくてたまらない。
真っ先に盗まれてる俺が言えることじゃねぇけど。





クレジットカードが使われていたのは24日。

俺たちが宿を出てチェンマイ行きのバスに乗った日だ。

出来すぎている。

やったのはまず間違いなく宿の人間。俺の金を盗んだやつと同一人物だろう。

俺たちがバンコクを離れたのを見計らって一気に買い物をしたってところ。





怒りがこみ上げる。

タイ人の1年分近くの給料を手に入れたあの宿の男はこれからもやってくる旅人たちを狙うだろう。

そして俺たちみたいに遠く離れた場所で盗難に気づいたら、多くの旅行者は日程を優先して泣き寝入りするだろう。

それこそがタイの盗みの手口。
笑いが止まらないだろうな。




俺の9万はいい。いや、いいことないよ。そのおかげで俺はインドに行けるかの瀬戸際にいるし、彼女に怒られてる。

でもどうにか道は見つけられる。違う道を選ぶことができる。



でも俺みたいに稼ぐことができないカンちゃんは貯金がなくなった時が帰国の時。

まだ10月まで旅を続ける予定だったというのに、26万もなくなれば大打撃だ。

大幅に帰国が早まる。
行きたかった場所もほとんど削らないといけなくなるだろう。



カード会社の審査がどういうものかはわからん。
でもいわれのない金を払わないといけないなんて日本ではないと信じたい。


きっと戻ってくる。

本人のカンちゃんも、ショックを隠しながらやられちゃったねーと力のない笑顔を作って俺に心配をかけないようにしている。


でも盗んだやつへの怒りと、自分の情けなさと、彼女に見放されそうだということが混ざり合ってずっと椅子でうなだれていた。
頭が混乱して何も考えられなかった。













とにかく、今は少しでも稼がないと。
インドに行くにしても、どうするにしても、金は全然ない。

カンちゃんの件は月曜日以降にカード会社の審査結果が出るということなので、それ待ちだ。

行きたいところがあるならママが送っていってあげると言ってくれたので、お言葉に甘えて郊外にあるテスコというショッピングセンターまで乗せて行ってもらうことに。

ママの運転するバイクの横の荷台にギターを持って乗りこんだ。








photo:01




今日は最低でも1000バーツは稼ごうと思ってる。たったの3千円を目標にするなんて弱気だけど、バンコクからの数日、いつもいつも上手くいかず、場所も見つけられず、まったく稼げていない。
タイのせいにはしたくないけど、もはやこの国で稼げるイメージはほとんどなくなっている。

だから今日も1000バーツいけばいいところ。

photo:02








なのだが…………






セキュリティに止められてしまった。
わずか数曲。まだ150バーツくらいしか入っていない。
500円。



いや、まだ、まだ諦めたらいかん。
まだ他のショッピングセンターがある。

photo:03




すぐに乗り合いバスをつかまえて100バーツ払ってマクロという大きなモールへ。

たくさんの車が止まっており、ひっきりなしにお客さんがエントランスを出入りしている。

photo:04






稼げる!!




しかしエントランスの周りには屋台も何も出ていない。

もうわかってきた。
タイではほんの小さなスペースでも、隙間があれば屋台が出る。
どんな場所でも人がいる場所なら屋台がやってくる。

それなのにこのモールのエントランス広場には何も出ておらず綺麗に整っている。

もうこの時点でわかる。歌ったらいけない。
俺がここで稼げばほかの屋台の人たちが大挙してしまう。

でも一応警備員さんに聞いてみる。



そして笑顔でダメだよと言われた。

コップンカーップと言い歩いた。















どこか歌えるところはないだろうか。



どうしよう。


今のこの状況でインドに行く。
とてもエキサイティングなこと。
飯が食えない状況はきっとこの旅を面白いものにしてくれる。

インドではまず稼げないだろう。
そんなギリギリの中での戦いこそ望むところだと言える。


でももし本当にお金が底をついたら。

動けなくなって途方に暮れるしかない。


きっとなんとかなる。
今までもそうしてきた。

這いつくばってでも生き抜いてみせる自信はある。

でもそうなったら時間は確実にかかってしまう。
ただでさえ日数のない中、これ以上足止めをくったら日本で待ってる彼女に愛想を尽かされる可能性は高くなるだけ。

日数の制限さえなければどれほど楽なことか。
でも前も書いたけど、俺と社会をつなぎ合わせてくれているのは彼女との約束。
そのか細い糸が切れたら、大事なものが飛んで行ってしまう。





例えばシンガポールに行くのはどうだろう。おそらく2万円もあればバンコクから飛行機で往復できるだろう。
シンガポールなら1日で3千円なんてしみったれたこと言わずに2万円は稼げる。10日もいれば余裕で盗まれた分を取り戻すことはできる。

しかしそんなことできない。
後戻りなんてダサいこと絶対にしたくない。

一筆書きで常に前を向いて進むこと。
つまらんこだわりかもしれんけど、自分のやり方を曲げることはできる限りしたくない。








外灯の下をトボトボと歩く。

張りつめた静寂の向こうから聞こえる、あの懐かしいメロディがそっと胸を打つ。


ちくしょう。
いろんなことがあったけど、今までで1番のピンチかもしれないな。

photo:05










~~~~~~~~~~~


現在地、カンボジアのシェムリアップです。

アンコールワットのあるところです。

明日アンコールワット行ってきます。



ところでみなさん、ボスニアヘルツェゴビナという世にも素晴らしい国の存在をご存知でしょうか?

それはそれは桃源郷のような場所で、ビルの壁に弾痕が残っていたりします。

すみません、桃源郷は言い過ぎました。

ボスニアヘルツェゴビナは本当に素晴らしいです。飯がスーパー美味いです。



あともうひとつ、ブルガリアというバラの国を知ってますか?最高のケバブが食べられるんです。


何が言いたいかお分かりでしょうか。






明日シェムリアップのナイトマーケットで路上します。

もし!!もし!!これからバルカン半島を回るという方でお金を替えてもいいという方がいらっしゃいましたら、スーパー割引きして換金いたしますので、お声をおかけください。

結構マジです。



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