6月21日 土曜日
【タイ】 バンコク
インドに行く旅人たちはみんなこのバンコクでインドビザを取得するらしい。
そう、インドは久しぶりにビザを取得しないと入れない国なのだ。
手順としてはまずインターネットのインドビザのサイトでオンライン申請をする。
これがなかなかの難関で、4ページ分くらいの質問の嵐を全て入力し、それらをプリントアウトしなければいけない。
これだけで一苦労。
さらにパスポートのコピー2枚。
写真を2枚。
インドへの航空券。
インド出国のチケット。
宿泊先のホテルの予約表。
そして900バーツだったかな。3千円。
カオサンから結構離れた場所にあるインドビザ申請所にこれらを持って行き、受け付けしてもらってから10日後くらいにビザが発行されるというひちめんどくさい流れ。
カオスの象徴みたいな国のくせにこういうとこハイパーしっかりしてる。
ていうか簡略化できそうなとこを面倒くさくしてしまうのがカオスの象徴たる所以かもしれんが。
ビザの種類は4つかな。
シングル。
ダブル。
マルチ。
そしてアライバル。
旅仲間からの口コミ情報なので正確じゃないかもしれんけどだいたいこの4つ。
シングルは一度出国すると外で2ヶ月経過しないと戻ってこれないやつとのこと。
ダブルは2回まで出たり入ったりしていい。インドの途中でネパールを往復するのが王道コースみたいなのでたいがいの人はこれを取るみたい。
マルチは何回でも出入りしていいとのこと。
詳しい日数はわからんけど、まぁ1ヶ月か3ヶ月だろな。うん曖昧すぎ。
そしてアライバルってのはインドに飛んで、到着した空港で取得できる1番簡易的なビザ。
ただし日数が2週間くらいとの噂で、もちろん一度出たら戻ることはできないみたい。
どうしよう………
インドは確実に行くがネパールも行っときたい。
しかしもはやこれ以上あちこち行くような時間は残されていないというか6月中に帰るという彼女との2年約束、あと10日しかないんですけどね。
おひょおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
時が経つのウルトラ早ええええええええええええ!!!!!!
もうちょっとだけええええええええええええええええ!!!!!!!!!!
でこの前彼女からメールが来た。
「オノレはいつ帰って来るっちゃろかいのぉ?まだタイか?ゴーゴーバーか?べらくりじゃのぉ?」
と日南弁でメールが来て、マジやべぇと思ってあとほんの少しなのでござりまする……と返事をしたら、私だってモテないわけじゃないんだからね!!というプチ脅しメールが来ました。
ああ、たしか6月30日に実家を出発したから今月で2年。
2年も経つ。
ロシアに着いた頃は果てし無く遠い道のりだったけど、あれから少しづつでも進み続けなんとかここアジアまでやってきた。
あと本当に少し。
2年で帰るという約束、果たせそうにない。
ごめん………
そしたらまた彼女からメールが来た。
「早く帰ってきてよー。でも中途半端で帰ってきてまた行きたいとか言い出すのも困るから、とにかく悔いのないように帰ってきて。」
もうすぐ2年。
俺からしたらあっという間だったけど、彼女からしたらとてつもなく長かったよね………
急いで進むよ。
ありがとうね。
というわけでインドの前に立ちはだかっているミャンマー。
空路でしか行けない国という定説だったが最近陸路が開けたそうでそれならば、と思っていたがミャンマーはインドと同じくビザが必要な国なのでもうパス。
そしてその横にあるバングラデシュもパス。
インドに一発で飛んで、ネパールもパスで中国にフライト。
そして台湾まで駆け抜けて韓国でフィニッシュ。
これをなんとか2ヶ月で。
なんとか2ヶ月で!!!!!!
なんとかあああああああああ!!!!
なるかな…………
いやしねぇと!!!
そのためにこれからタイを北上してラオス、ベトナム、カンボジアをぶっ飛ばして回らないといけない。そしてバンコクからインドにフライトだ。
アジア通の人たちからしたら犯罪的なルートだろうけどもうこればっかりは仕方ない。
それに東南アジアなんてええええええええ
全然面白くうううううううううう
全然面白くないもんねええええええええ
嘘面白ええええええええええええええ!!!!!!!!!
時間かかるううううううううううう!!!!!!!!
彼女のために急ぎます。
はい、昨日散々な目に遭ったバンコク路上初日だったけど、今日こそ大フィーバーしてやるぞ!!と意気込んで向かったのは、チャトチャックというエリア。
なにやらここではバンコク名物のウィークエンドマーケットなるものがひらかれてるそう。
人で溢れてえらいことになってるはず!!
ここならもう鬼のように稼げてローカルの人たちと鬼のように仲良くなれて旅行に来てる日本人のOLさんに鬼のような俺の息子をあれしてもうなんか何言いたいのかよくわからん。
よっしゃチョウ人いるしいいいいいいいいいい!!!!!!!!!
すげぇ。人の数半端じゃねぇ。
そしてマーケットもめちゃ巨大。
真ん中にどでかいバラックの建物がありその中に凄まじい数の店が入っており、アリの巣みたいに通路が入り組む迷路になっている。
マジで迷宮。
そしてその建物の周りをぐるりと様々なお店が隙間なく囲んでおり、ここだけでどれほどの店舗があるんだという勢いだ。
さらにはマーケットからはみ出した周辺の道路脇にも所狭しと屋台が並べられ、それが最寄り駅までズラリと続いている。
マジで隙間ゼロ。
人多すぎてまともに歩けない。
そうです。
歌うスペース、1ミリもないという驚愕の事実。
なんとか歌えそうなスペースはないかと周辺をさまよってみる。
どうやらここは観光客向けのマーケットみたいで、この敷地にいるのは8割りが外国人のよう。
売っているのも日用品や食材とかではなくほとんどが土産物だ。
もっとローカルな雰囲気をイメージしていたんだが、まぁそれでも人がすごいことには変わりない。多分稼げる。
汗だくでアホみたいな顔して歩き回っていると、敷地の横に広い公園を発見。
綺麗に整備された芝生の公園で、最寄り駅からこの公園の中の通路を通ってマーケットに行く人たちの列ができていた。
ここしかねぇ。
ソッコー路上開始。
ソッコーお金入る。
ソッコー警備員登場。
ソッコーウンコ漏れる。
バ、バンコク…………
この観光地化されたマーケットは警備員が鬼のように見回りしており、まず歌えないので、離れた場所にいいところはないか探してみた。
するとマーケットの裏手にごちゃごちゃした古びたお店が並ぶ通りを見つけた。
お、ローカル臭が漂ってるぞ。
なにやら水槽とかポンプとかをたくさん売ってるお店ばかりだなと思ったら、金魚や鯉、熱帯魚などの魚の販売店が水族館並みにズラリと並んでいた。
ビニール袋に入れて路上に綺麗に置かれている。
それがもうすごい規模で、ひたすらどこまでも観賞魚屋さん。
タイって魚を飼うのが人気なんだな。
そんなローカル市場の入り込んだところにショッピングモールの裏の入り口があった。
正面入り口は屋台と騒音でとても歌える状況じゃなかったけど、ここならいけそうだ。
完全に地元の人しかいないショッピングモール前の角、こんなとこで歌うやつなんで誰もいねぇ。
後ろで巨大な亀がゲージの中からこっちを見ている中、気合いを入れて歌った。
観光エリアではすぐに警察が来てしまうが、やっぱりこうしたローカルの場所では警察に止められることはない。
むしろウェルカム。
たくさんの人が足を止めてくれ歌を聴いてくれる。
周りのお店の人たちも水槽の向こうからこちらを見て、わざわざ出てきてお金を入れてくれる。
裕福なエリアではないので単価は低いがそんなこと関係ない。
コインだろうが入れてくれたその気持ちに元気が出る。
しばらくするといきなり大雨が降りだし、滝のようなどしゃ降りになりショッピングモールの中に逃げ込んだ。
まだ諦めんぞとフードコートで軽く飯を食い、雨が小降りになったのを見計らってまた歌える場所探し。
周辺の駅、公園の端、頭を回転させながらめぼしい場所を歩き回る。
夕方になると人出はさらに増し、マーケット周辺はものすごい混雑になっている。
なんとか歩道橋を狙ってみるが一瞬で警備員が来る。
多少強引にバス停でかましてみるが、反応なし。
うーん……こりゃダメだ………
今日も1日動き回って歌いまくって汗ドロドロで疲労困憊。
もう無理、とギターを置いた。
今日のあがりは890バーツ。3千円てとこか。
疲れ果ててカオサンに戻りマクドナルドにいたカンちゃんに会い、宿に帰ろうと歩いていたら、夕方の人混みの中になにやら見覚えのある顔が。
ん……………
ん?
「あああああ!!!!かネまるさんだー!!」
「えええ!?なにしてんの!?ミャンマーじゃなかったの!?ていうかやっぱりなまりが!!」
「今日着いたのー!!すごいー!!」
まさかの森あんな。
旅人の交差点、カオサン通り。
「すごいー!!シンガポールぶりですね!!」
「今イクゾー君もいるよ!連れてくるからみんなでご飯食べよう。」
あんなちゃんたちに屋台で待っててもらい、宿に戻ってイクゾー君に今どこ?とメールしようとWi-Fiに繋ぐ。
あ、イクゾー君からメール来てる。
「金丸さーん、僕今からプーケット戻ります。それじゃまたー。」
へー!そうかプーケット戻るんだ!!
じゃあまたあそこのショッピングモールで歌えるねってえええええええあええええええええええええ!!!!!??????
プーケット、えええええええええええ?????!!!!!
メールが来てたのは1時間前。
すでにチェックアウトしていた。
てことはもうバスターミナルかバスに乗ってるか。
プーケットかー。海綺麗だったなぁ。
ってええええええええええええええええええ!!!???
この前プーケットから来たばっかやん!!??
てか急!!
何も言わずに行ってしまった。
自由人、小林イクゾー。
そっかー、行っちまったか。
バンコクで稼げなさそうだったからもう少しプーケットでガッツリ貯金するためなのか、ピピ島に行きたくなったのか、プーケットで仲良くなった人から連絡でも来たのか。
いきなりすぎて寂しい。
ちょっと寂しいけどお互い気を使いすぎず、縛り合うこともなく自由に好きなところに行くこの距離感が心地いい。
俺もイクゾー君を置いてピピ島に行ってたし、イクゾー君も好きな時に別の道に行くのが自然なこと。
相手に合わせる必要なんて全然ない。お互い一人旅なんだから。
さすがはイクゾー君だ。
余計好きになるわ。
「ごめーん、イクゾー君消えてた。プーケット行くって。」
「えええ!?もう行っちゃったの!?」
「急すぎじゃない!!?」
「いやー、やっぱあいつ最高やね。ところでアンナちゃん、いいものがあるんやけど食べる?」
「え?なになに?」
ちょ、真顔^_^
バイバイ、イクゾー君。
次どこで会えるか楽しみだ。