6月17日 火曜日
【タイ】 ピピ島 ~ プーケット
朝の桟橋はすでに活気に満ちていた。
たくさんのバッグパッカーたちが大きな荷物を抱えて船へと乗り込んでいく。
俺もそんなバッグパッカーたちに混じってタラップに足をかける。
ピピ島への往復チケットはプーケットから買ったのだが、これはオープンチケットと呼ばれるもので、帰りの日にちが指定されていないもの。
帰りたい時に桟橋に行って乗せてくれーと言えばいいだけ。
カンちゃんもまたオープンチケットを持っていたのだが、船会社が違い、別々のフェリーに乗り込んだ。
時間は朝の8時。
次の便は14時で、1日にこの2便しか運行していない。
プーケットに戻る。
戻ったらすぐに歌いに行こう。
ピピ島では歌う場所が限られすぎていて最初の2日しか路上はやらなかったが、あれもかなり強引なものだった。
稼がなければいけない。これ以上シンガポールドルを切り崩したくはない。
ピピ島の海と毎晩のお祭り騒ぎがあまりにも現実離れしすぎていたせいで、これから帰るプーケットが週末明けの出勤のように日常に引き戻されるようだ。
同じ旅中だというのに不思議なもんだ。
それくらいピピ島には完成されたリゾートとしての実力があった。
タイにはピピ島だけでなく、いくつもの美しい島があり、それぞれに個性ある魅力を持っているとのこと。
そして世界にはもっともっと、夢のような島が存在することだろうな。
地球上に存在する星の数ほどある島の中から、もしひとつでも最高だと思える島にクジ引きで引き当てるように巡り会えたのならば、きっとラッキーな人生だと思える。
場所との出会いもまた、人との出会い並みに奇跡的なものだろうな。
約束の地。この人生でどれだけの場所にたどり着けるかな。
そして旅の終わりに向けて前に進み続けないと。
ゲロ祭りの船で俺も若干気持ち悪くなりながら2時間耐え、プーケットの港に戻って来た。
俺のチケットはこの港からタウンの中のホステルまでの送迎も含まれている。
しかしカンちゃんはバスチケットはないので仕方なく買うことに。
この港からタウンまでの値段、100バーツ。300円。
めちゃくちゃ高え。
ピピ島までの船って正規値段が片道250バーツ。往復で500バーツ。
俺がツアー会社で買った値段は550バーツ。
でもこれはホステルまでの送迎がついている。バス代が片道100バーツとするとなるとかなりお得だな。
タウンの中のホステル、プーケットバッグパッカーに戻ると、2階のドミトリーの中でイクゾー君が寝ていた。
「おーい、久しぶり。」
「あ、ああ………おかえりなさい………」
「どう?この数日で結構稼げた?」
「あ、はい、毎日1800バーツとか稼いでます。おとといは2400バーツでした。もうバンコクでゴーゴーバーに行く準備は完璧に整っています。」
マジか!!すげぇ!!
2400バーツって8千円だぞ?
このタイで8千円ってかなりの好記録だよ。
話では俺が最後の日に見つけた郊外のショッピングモールのビルを繋げている歩道橋の上でやってるそうだけど、ハンパなく稼げるんだそうだ。
俺はショッピングモールの入り口でやって1000バーツってところだった。
イクゾー君、どんどん路上の嗅覚が磨かれていってるなぁ。
「ところでドレッドにはしないの?」
「いやー、悩んだんですよ。金丸さん帰って来た時にドレッドになってたらウケるだろうなぁと思って。」
「イクゾー君、ドレッドにするん?」
「いやー、そうなんですよ。ドレッドにして女の子にモテようかなと思ってるんですよ。その髪型カッコいいですね!え?そうかな、5歳の頃からこれだからわかんないなーとか言って。ていうか金丸さんカンちゃんめちゃ可愛いじゃないですか!!エロ!!」
やっぱりイクゾー君は面白いなぁ。
いつも笑わせてくれるので一緒に動くのが楽しくてしょうがないよ。
レアキャラ。
旅のレアキャラ。
メタルスライムみたいな。
エンカウント率めちゃ低いけど世界のどっかにいるので、会いたい人は探してみてください。
主な出没地は歩道橋かカジノか公園のベンチです。
連日の路上で喉がボロボロなので今日は路上は休むというイクゾー君。
なら俺がショッピングモールでやらせてもらうことに。
明日みんなでバンコクに向かうことになり、イクゾー君が1人バスターミナルにチケットを買いに行ってくれた。
ありがとう、イクゾー君。
俺とカンちゃんは汗だくになりながら30分歩いてショッピングモール、セントラルフェスティバルへ。
全身ビショビショで歩道橋に立ち、ギターを構える。
歌を歌うたびに頭がクラクラしてくる。
連日余裕で30℃超え、さらにまとわりつくようなねっとりした湿度のせいで汗が滴り落ちる。
気合いだぞー………気合いだー………
下の道路からの騒音がうるさくて声を張り上げないといけなくてすぐに枯れてしまう。
まだだー………
まだギリギリまでいくぞー………
チケットを買い終えたイクゾー君がモールにやってきて、カンちゃんと遊びに行ってる間も根性で歌い続け、19時になったころに限界がきてギターを置いた。
東南アジアの路上きつい。
でも路上をせずにただ観光するだけなんて全然面白くない。
この自由なアジア。
とことんどこでも歌いまくってやるぞ。
あがりは1870バーツ。6千円。
宿に戻り、みんなで近くのレストランに行き、外のテーブルで美味しいご飯で乾杯した。
全身の水分が出切ってしまったような体にビールはもはやドラックの域だ。
あー、歌って、稼いで、美味すぎる飯を食べて、人々の微笑みに安らぐ。
タイ、たまらんなぁ。
毎日最高だー!!って叫んでるなぁ。
ボーナスステージにもほどがあるよ。
あと何日いることになるかわからないけど、早く進まないといけないことには変わらない。
そんな最高なタイで今のところ1番したいこと。
これやらないとタイ絶対に出られん。
ゴーゴーバーとかレディーボーイとかどうでもいい。
ムエタイも首なが族もどうでもいい。
絶対にクリアーしないといけないミッション。
そう、
今日の日記、簡単だけどこれで締めます。
象さんに乗る。