6月15日 日曜日
【タイ】 ピピ島
朝8時、カンちゃんと2人で町のカフェにいた。
コーヒーを飲みながらのそわそわそわそわ。
その理由はもちろん、
ワールドカップ、日本代表初試合。
相手はコートジボワール。
そんなに詳しくはないけど小中学時代にサッカーをやっていたのでやっぱりワールドカップともなると応援せずにはいられない。
前回のワールドカップはどこで見たっけ。
大活躍して日本中が湧いたのをはっきり覚えている。
確かあの頃にはもう世界一周に行く決意は固まっていたと思う。
どこの国で次のワールドカップを見ることになるかなとまでは考えてなかったけど、マジで完璧なシチュエーションだと思う。
ここはタイのピピ島。
美しいビーチとパーティーの島。
きっと他の世界一周旅行中の人たちも思い思いに万全の態勢で観戦に臨んでいるだろうな。
ブラジルの会場の客席でドキドキしてる人たちもたくさんいるはず。
時差はあるけど、みんな朝や昼や夜や夜中に同じ時間を共有している。
ワールドカップすごいな。
地球がひとつになる瞬間だ。
キックオフ。
日本頑張れ!!!!
2時間後にスーパー落ち込みながら宿に帰る。
負けた…………
せっかく本田が1点入れたのにー………
でもパスも繋がらないし動きも冴えなくてボロボロだったもんな。
2対1で済んで良かったくらいだな。
落ち込んでいるとプーケットにいるイクゾー君からメールが来た。
「朝から憂鬱です………歌いに行ってきます………」
俺がピピ島に来てから1人で毎日歌いに行ってるイクゾー君。
俺が最後の日に見つけた郊外のショッピングモールでやってるみたいだけど、これが大当たりで連日2000バーツ近く稼いでるみたい。
俺がやった時はエントランスの前だっんだけど、イクゾー君はモールの横の歩道橋の上で歌ってるよう。
タイの若者の日給が2千円ほどらしいので、7千円はすごい数字だ。
バンコクでゴーゴーバーに行くという野望のために気合い入りまくってるな。
俺も明日、離島巡りツアーをやって明後日にプーケットに戻って、その次の日にバンコクへのバスに乗るぞ。
カンちゃんもミャンマービザをバンコクで申請しているので戻らないといけないのでバンコクまでは3人での移動になりそうだ。
ディカプリオの映画、ザ・ビーチは、1人のバッグパッカーがカオサンロードの安宿で出会ったヒッピーから秘密の島の地図を譲り受けるところから始まる。
その秘密の島にはこの世のものとは思えないような美しいビーチがあるということを聞き、ディカプリオは島を探してタイを彷徨う。
そしてやっとのことで見つけ出し、島に渡ると、そこには楽園を求めてやってきたヒッピーたちのコミュニティがあり、文明とかけ離れた日々が待っていた。
というような内容の映画なんだけど、その舞台がこのピピ島。
正確に言ったらピピ島から海を挟んですぐそこに見えるもうひとつの島がそうなんだけど、行くためには船をチャーターしないといけない。
そして映画でイメージするような誰も知らないフリーダムなヒッピーコミュニティ、なんてものはもちろんなく、映画のおかげで世界的に有名になったのでヒッピー風のやつだけではなくただのお金持ち観光客や結構年配の人もたくさん訪れるようなポピュラーな場所になってるみたいだ。
ピピ島にはそんなザ・ビーチへ向かうボートツアーを催行しているツアー会社が腐る程あるし、毎日ものすごい数の船が隣の島を行き来している。
超有名観光地ではあるけど、やっぱりボートで向かうという冒険心をくすぐるシチュエーションはとてもドキドキさせてくれる。
海もビーチもめちゃくちゃ綺麗みたいだし、シュノーケリングも出来るみたい。
しかも値段が安い!!
相場で550バーツ。
ザ・ビーチの島、さらに周辺の無人島をいくつも巡り、シュノーケリングは道具貸し出し、朝飯・昼飯つきで1800円というビビる安さ。
楽しみすぎる!!!
でも大事なのは天気。
せっかく透き通った美しい海に行くんだからどんよりした曇り空ではたまらない。
太陽が輝き、海底まで照らすような中でシュノーケリング出来たら最高なんだけど今のタイは雨季ということで毎日天気が悪い。
こんなんじゃもったいない。
ここ数日ずっとそんな天気だったのでブッキングするのをためらっていたんだけど、さすがに何日も滞在するわけにはいかない。
そろそろ決めちまうかーというところで………
この快晴。
久しぶりに晴れた!!!
わーいわーい
多分これなら明日も晴れるはず。
今しかないと、目をつけていたツアー会社に申し込みに行った。
明日の10時半集合だ。
値段は550バーツ。1800円。
離島には入島料として100バーツの税金を払わないといけないみたいだけど、それも込みでこの値段だ。
もちろんハイクラスなシャワー付きとかのクルーズ船で行くならそれなりに高くなる。
でもやっぱりここは漁船みたいなボロ船で冒険気分を味わいながら行きたいところ。
あ、あれ、俺漁船にはもう乗らないと固く誓ったカリブ海の悪夢を忘れちまってるかな…………
明日の予約もしたことだし、今日は島の中の探検をしてゆっくりすることに。
カンちゃんのリクエストで島の展望台へ向かった。
途中の現地の人たちの食堂で美味しいタイご飯。
ココナツミルクのスープ美味え。
それから集落の奥へと進んで行くと、家々の隙間にのびる急な階段があった。
ボロボロで草が生えた、あまり整備もされていない階段を息をつきながら登っていく。
山の斜面には見晴らしのよさそうなコテージなんかがあるが、お客さんはほとんどいなさそうで廃墟も目立つ。
久しぶりの快晴で身体中から汗が噴き出してくる。
どこか懐かしい展望台への道。
汗を流しながら展望台にたどり着き、岩場の上に立って島を見下ろした。
両側をビーチに挟まれてキュッとくびれた部分にたくさんの建物が密集している。
遠浅になっている部分がエメラルドグリーンに輝き、その向こうに真っ青な海が広がっている。
たくさんの船が音もなくゆっくりと動いており、広大な海に白い跡をつけている。
心の中を静かに横切っていく。
ここから眺めている俺の人生、あの船を操縦している人の人生、
どんな笑顔をするんだろうな。
綺麗だな。
展望台を降りて、今度はマッサージに行くことに。
まだタイマッサージをしたことがないというカンちゃん。
俺この前行ったんだよ!!って自慢げに説明したいけどできねえええええええ(´Д` )!!!
あれタイマッサージじゃねええええええええ(´Д` )!!!!
ていうかお店の入り口に足のツボの図とか人体の筋肉の解説図とかそれっぽい看板出してプロフェッショナルですみたいな感じだけど、あの女の人たちぜってーツボとか知らねぇ。マッサージ?なにそれ?くらいの勢いだよ多分。
もちろんマッサージ一筋50年ですみたいなおばちゃんたちがほとんどだけどね。
ていうかカンちゃんと一緒に2人であのマッサージ屋の前を通ると、店先に座ってる女の人が俺のことニヤニヤしながら見てくる。
おい!!!ニヤニヤしながら見ないでくれ!!(´Д` )
まぁ別にカンちゃんを落とそうとしてるわけでもないので正直に話したけどね。
へー、そんな値段でやってくれるんだーってニコニコしてるカンちゃん。
や、やめて!!そんな穢れのない目で見られたら塩かけられたナメクジみたいに消えてしまいそうだ!!
まぁもちろん全部がヌキの店じゃないです。
ちゃんとマッサージしてくれるとこもあります。
ベテランっぽいおばちゃんにやってもらいたいねーと町の中を歩き、タイマッサージで子供3人育てましたといった雰囲気のおばちゃんのお店を見つけた。
オイルマッサージ1時間で250バーツ。800円!!安ぃ!!
日本だったら5千円はするよ。
店内に入り、カーテンで仕切られたマットにパンツ1枚で横になる。
「ニホンジン、タクサンクル。ニホンジンイタイイタイ、ダカラヨワクマッサージスル。」
「僕強くしてください。」
「ツヨク?ホントネー。イクヨー。フンッ!!!」
上半身羽交い締めにされて背骨折り殺されそうになった。
「ぎゃああああああ!!!!」
「ガマンガマン!!ヒャホオオオオウウウ!!」
そんな陽気なおばちゃんのマッサージ、マジで気持ちよかった。
足の指から手の先まで、背面、前面をくまなくマッサージしてくれ、これで終わりかなと思ったら今度はおばちゃんの膝に頭を乗せて、頭皮と顔面マッサージまでやってくれるという、あと体で触ってないとこマジでチンチンしかないくらい本気の全身マッサージ。
スーパー気持ち良くてこれでたったの800円て!!
あー!!もうタイ天国でしかない。
お前もそう思うよね。
気持ち良すぎて腑抜けになり、フラフラ歩いて晩ご飯へ。
この前見つけた海沿いの小さなレストランで、いつもたくさんのお客さんで賑わってるとこだ。
「トムヤムクンまだ食べてへんなら食べたほうがええよ。私トムヤムクンばっかり食べてるでー。めちゃくちゃ美味しいで!!」
カンちゃんオススメのトムヤムクン。
トムヤムクンってどんなんだろ?
日本にいるころにたまに友達に誘われてタイ料理屋さんとか行ってた。
グリーンカレーやらなんとかやら、アジア大好きでアジアばっかり何度も回ってます!!みたいなオーガニックなターバン巻いてる人がやってたりするお店。
なんか香草の臭いとか味自体も独特なのでどうしても苦手で、タイ料理大好きなんだよねーとか言うオシャレ女子とか見ると本気で言ってんのか?っていつも思ってた。
トムヤムクンねぇ、まぁせっかくタイに来たことだし話のネタで1回くらい食べてやってもいいかな。
うーん、俺ほど舌が肥えてるとよほどのものじゃないと美味しいって感じないっていうかさ、グルメ?なんか見た目とか雰囲気とかで誤魔化されたりしないんだよね。
だいたいトムヤムクンって名前がふざけてるよね。タカフミクンだったら友達にいるけどねうめええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!
トムヤムクン美味えええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!
ほ、ほへ………
なにこれ!!超絶美味くてスプーンが止まらないんですけど!!
独特の香草の香りとか酸味の効いた味わいは確かに苦手だったザ・タイ料理って味だけど、苦手だったのが吹っ飛ぶくらいパーフェクトに美味え!!!
こりゃ美味えわ。
よし!!日本に帰ったらターバン巻いてオーガニックなタイ料理屋さんやろう!!嘘!!
あ!!辛い!!なんだこれ!!
ガリってなった。
「ショウガとか色々食べられないのが入ってるから気をつけてなー。」
なるほど、それらと一緒に作ってるからこんな独特な味わいがあるんだろうな。
もうひとつ注文したパッタイは平べったい麺で作った焼きそばみたいなもので、タイの国民食としてどっこででも食べることができる。
これにトウガラシを漬けたナンプラーを少しかけて食べると、マジでご飯何杯でもいける。
カンちゃんとうまーい!!うまーい!!と連呼しながらパクパク食べ、そしてビールを飲む。
ああ、なんだこの贅沢すぎる1日は。
こんな王様しかできないような1日なのに、たったの2500円くらいしか使ってないという奇跡。
マジ奇跡。
ある程度お金を持ってやってきて、心置き無く楽しむ。
観光も飯も人との触れ合いも、すべてが心をリラックスさせてくれる。
タイでわざわざハードな旅をやるのってめちゃナンセンスに思える。
「よし!!ビーチのクラブに行こう!!」
「え?どんなとこ?」
「行けばわかる!」
上半身裸になり、そのまま酔った勢いでいつもお祭り騒ぎをしているクラブビーチへ。
若者たちでごった返すクラブ通りを抜けて歩いて行くと、爆音で半端なく盛り上がってるクラブビーチに出た。
相変わらずそこでは夜の波打ち際でイカれたパーティーが繰り広げられていた。
ビーチにズラリと並んだクラブが大音量で四つ打ちを轟かせ、火のついた縄跳びや火のついたリンボー、燃えさかる輪っかをジャンプしてくぐったりと、ド派手なファイヤーパフォーマンスが繰り広げられている。
タイスタイルのバケツ酒を飲みながらみんな叫び声をあげて踊り狂い、炎の熱気に興奮がえらいことになっている。
たくましい現地のタイ人の引き締まった体、白人の軽薄なノリ、アジア人も数人だけどいた。
人混みの中になにやら看板を掲げている人がいたのでよく見てみるとこう書かれていた。
★レディース ノーブラ ワンバケツフリー
★ガイズ ネイキッド ワンバケツフリー
おいおいマジかよと思ったらいきなりモデル並みにウルトラ綺麗なブロンド美女が水着のブラを外して投げた。
大歓声の中、そのスーパー美人でありえないくらい巨乳の女の人は現地人の男の腰に足を絡みつけ駅弁の体勢になり、上体をのけぞらせてブリッジの格好でリンボーをくぐった。
男たち狂喜。
男も負けじと全裸になって突入していく。
ナイスビール!!
否が応でも盛り上がってきて俺もカンちゃんも裸にはならないがその炎に飛び込み歓声を浴びた。
おかげですね毛が消えたけど(´Д` )
炎に浮かび上がるイカれたパーティーはいつまでも続いた。