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心が踊らない

6月1日 日曜日
【シンガポール】 シンガポール
~ 【マレーシア】 クアラルンプール





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「フミ君、またシンガポールに戻ってきたら連絡してね。私ももっと先に進むよ。」


唐揚げとチャーハンを食べ終わり、腰かけていた階段から立ち上がった。

少し雨が降っている。

周りには頭にスカーフを巻いたイスラムの女の人たちが荷物を抱えて集まっている。






わざわざバスターミナルまで見送りに来てくれたエミさん。


まだ時間は朝の8時半。
それなのに俺のために唐揚げとチャーハンを作ってきてくれたエミさんの優しさが胸を締めつける。



バスに乗り込み、シートに座って窓の外を見る。

寂しそうに横を向いて、またこっちを向いて、手を振るエミさん。

バスはいつもそう。乗り込んでもなかなか発車しない。
そして見送りの人と、少しの別れの時間を作ってくれる。


ずっとは手を振っていられない。
でも目を離すことができない。

ほんの少しの、つかの間の微妙な空気が流れるこの数分間が、たまにその人の今まで見えなかった表情を覗かせてくれたりする。


降りて抱きしめたくなったけど、そんなの俺の自分勝手だからと我慢していたらバスはゆっくりと動き出した。

少しホッとして、そしてすごく寂しくなる、いつものバスの別れ。

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マレーシアのミニお国情報


★首都………クアラルンプール
★人口………3000万人
★宗教………イスラム教、仏教、ヒンドゥー教
★独立………1954年。イギリスから
★言語………マレーシア語
★通貨………リンギット
★レート………1ドル=32リンギット
★世界遺産………文化2件、自然2件




いつも気になるのはなぜこの仏教エリアであるアジアにおいてマレーシアやインドネシアにイスラム教徒が多いかということ。

あのスカーフを巻いている女の人はみんなアラブの顔というイメージだったのに、アジア人の顔でスカーフっていうのがどうもしっくりこない。

それはやはりマレーシアの地理が大きな理由なのかな。

交通の要衝として様々な文化が混ざりあい、アラブ商人との交易の中でイスラム教が流れ込んだんだと思う。

かつてはポルトガルに占領されており、鉄砲が伝来したのも、フランシスコザビエルが日本にやってきたのも、このマレーシア経由だ。

その後はオランダに占領されたりイギリスに占領されたり日本に占領されたりしながら1965年に現在の領土に落ち着いたみたい。




シンガポールの人はマレーシアをバカにするところがあるらしい。

もともとはマレーシアの一部だったシンガポールだけど、戦後にマレーシアから切り離されて孤立してしまい、そこから生き残るために必死に努力し今の超経済大国へと成長を遂げた。
シンガポールの国民の生活水準は世界トップレベルだ。


しかしお隣の母国は未だ貧しいまま。
下に見てしまう気持ちも分かる。
しょうもないことだけど。


ほら、国境のトイレ。

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いや、いいよ、全然いいよ(´Д` )


ピッカピカの大理石とガラスで出来たシンガポールのトイレと、このホースで水を出して手でお尻を洗わないといけないトイレ、どちらが劣ってるかなんて言わないよ(´Д` )

それぞれの文化だもんね。



あー、ウンコ触りたくねぇに決まってんだろこの野郎…………

アラブ圏を思い出す………









国境のイミグレーションは簡単なもので、ろくな荷物チェックもなくあっという間に通り過ぎてバスに戻った。

どこまでも続く熱帯の植物が生い茂る一本道を走っていく。

南米で見慣れた光景に別に写真を撮る気にもならず、日記を書いていたらいつのまにかウトウトと眠りに落ちていた。

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バスは街の中に入り、大きな、近代的なビルの前に止まった。時間は16時になっていた。

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止まったのはバスターミナルではなく、ただの路上。

アスファルトに降り立つと、むわりとした熱気と排気ガスの熱風が髪の毛を揺らした。

ひっきりなしに行き交う車、鳴り響くクラクション、交通法規などまるで関係のない路上駐車の列。

割れたアスファルト、汚く濁った水たまり、そびえ立つ巨大なビルディング。

破れたTシャツを着た肌の黒いアジア人たちがギラギラした目でこちらを見て、興味なさそうにまたどこかへ歩いていく。


秩序のないその光景が少し気分を暗くさせた。
これからアジア。ずっとこんなのが続くんだろうな。









きっとものすごい客引きが群がってくるんだろうなと思っていたけど、意外にも誰も声をかけてこない。

大きな荷物を抱えたどこからどう見ても観光客の俺をちらりと見るだけでまた視線をそらすタクシーの運転手たち。
どうせ声かけても乗らないだろ、みたいな諦めが感じられる。

頭にスカーフを巻いたムスリムの女の人たちが行き交う歩道を歩いて、目の前の大きなビルの中に入ってみた。


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ヒンヤリした冷房が効いたそのビル内はシンガポールに劣らない豪華絢爛さで、無数のブランドショップがきらびやかに店を構えている。

シンガポールも人種の入り混じった国だったけど、一気にムスリムとインド系の割り合いが増え、中国人は少数派になっている。



換金所があったのでシンガポールドルを30ドル分だけリンギットに替えた。

地図が欲しくてダメ元でWi-Fiを探してみたら、あっさりとパブリックWi-Fiが見つかった。

さて、どこに行こうか。










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トボトボとテキトーに歩いた。

荒れた道の両脇には潰れた店が並び、工事中なのかどうなのかわからないフェンスが至る所に設置されており道を狭めている。

汚い食堂の店員が店先で鍋を洗っており、その汚水がアスファルトに流され黒くべたついている。

車は我が物顔で道路を走り、道の向こうに渡りたくても減速など一切しないので轢かれないように慎重にならないといけないし、思い切ることができないといつまでたっても渡ることはできない。




少し前にマレーシアに滞在していたイクゾー君の話ではチャイナタウンというところに安宿がかたまっているとのことだった。

チャイナタウンってどこだろう。きっとそんなに遠くはないはず。
ここもそれなりに街の中ではあるし、歩いていけるはずだ。

鍋を洗っていたおじさんに道を尋ねてみた。



「チャイナタウンはどこですか?」


「アー、アー。」



何言ってんだ、みたいに顔をしかめるおじさん。
あ、そうだ、ここはもうシンガポールじゃない。誰でも英語を喋れるわけではないんだ。


「チャイナタウン?チャイナ、タウン。」


「アー、アー。」


しかしいくら丁寧に説明してみても、おじさんはめんどくさそうにハエを追い払うように手を振るだけ。

いや、英語わからなくてもチャイナタウンって単語は分かるんじゃねぇのか……?

もう外国人というだけで完全にシャットアウトされてしまい、おじさんは目の前の俺を無視して鍋を洗っている。



仕方ない。若者だったら少しは英語も分かるかもしれないしきっとフレンドリーなはず。

そして通りかかった10代後半くらいのカップルに尋ねた。


「エクスキューズミー。」


「アー、ノーノー。」


「ちょ、ちょっと待って!!チャイナタウンはどこですか!?」


「アイドントスピークイングリッシュ。ノー。」


そう言ってオシャレな格好をしたカップルはめんどくさそうに顔をしかめて、足を止めることもなく歩いて行った。




なんだこれ…………


シンガポールだったら英語が分かる分からない関係なく、誰もが足を止めて丁寧に道を説明してくれた。

こんなに素っ気なくあしらわれたのいつぶりだろう。


街の雰囲気や淀んだ空気がとてもやるせない気分にさせて急に寂しくなってきた。

もうこうなると次の人に声をかけるのが億劫になってきて1人トボトボと勘にまかせて歩いた。









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しばらくすると何やら大きな交差点に出て、中国人らしき人が増えてきた。
中国人に声をかけると、チャイナタウンはすぐそこだよと笑顔で教えてくれた。

助かったと言われた方に歩いて行く。
ボロボロの建物が軒を連ね、いたるところが工事中で足元がぬかるんでいる。

ものすごくたくさんの人が路上にうじゃうじゃとひしめき、タクシーやバスがそれを押しのけるように走っていく。

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南米でよく見ていた布を地面に広げて物を売る人々や、腕や足のない物乞いの人々が絶望しか感じられない格好でうなだれていた。

クアラルンプールは夕方になるといつもスコールのような夕立がザバッと降るということは聞いていたが、確かに街は泥水があちこちにたまって不快な活気に満ちていた。

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大丈夫、いつものこと。

こんなのアラブ圏でも中南米でもたくさん見てきた。

いつものことだ………











チャイナタウンの入り口はすぐに分かった。

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ゴミゴミとした陰湿な街の中にドーンと巨大な中国風の鳥居がそびえ、けばけばした朱色の飾り付けがそこだけを派手に浮かび上がらせていた。

鳥居をくぐってアーケードの中に入ると、そこはまぁ想像通りのパチモノ土産街で、ルイヴィトンやプラダなどの有名ブランドの偽物がこれでもかというくらい通りにぶら下げられている。

ジッポーやライター、キーホルダー、iPhoneのケースなんていう定番の小物から、電子機器や衣類までなんでもある。

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広いアーケードなのにあまりにも露店がひしめいており、大きなバッグを持ってはとてもじゃないが入っていけないほど狭い小道しかない。

頭上には無数の中国風の提灯がぶら下がり、周りの建物は何十年前のものだろうというボロボロのもの。

甘栗を煎る機械がグルグルと回りながら湯気を立ち登らせ、熱気と甘い匂いでむせるようだ。


「ハイ!!トモダチ!!チョットマッテ!!」


「ナンチャッテルイヴィトン!!ヤスイヤスイ!!」



土産物屋の客引きたちが日本語で声をかけてくる。
今までのこんな客引きだったら、

ホアチャー!!
アチョー!!
チョンチューチー!!
ジャッキーチェン!!

とか言ってバカにしてきてイライラさせられてきたものたけど、ここではみんな間違いなく日本語で話しかけてくる。
アチョー!!なんて言ってくるアホは1人もいない。当たり前だ。ここはアジアだもんな。

そして彼らはみんな確実に中国人と韓国人と日本人を見分けられるようだった。








息が詰まり、アーケードから抜け出すと、そこにはゴチャゴチャとした屋台街が広がっていた。

道路の両側にずらりと並んだ屋台ではどこも美味しそうな料理を食べる人たちで溢れており、欧米人なんかの観光客の姿も見られた。

きっとこの辺に安宿がかたまってるのかなと思い、テキトーにそこらへんにある宿に飛び込んで値段を聞いて回った。


それによるとだいたいドミトリー25リンギット、750円というのが相場みたい。

イクゾー君の話では15リンギット、450円という宿があるという話だったがなかなか見つからない。

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不思議に思ったのは、宿の名前の多くが~~酒店というものだということ。

酒屋がホテルも兼業してるのか?と思うが、どうやら酒屋らしき店舗はない。

ホテルなのに酒店という看板ってどういうことなんだろうと思っていたら、ふとタバコを吸いたくなった。


そこらへんにある小さな商店に入ってタバコを買った。
シンガポールでは千円していたタバコが330円ほど。
やっとタバコを気兼ねなく吸える国までやってきた。

そして驚いたのが、買ってその場で封を切り、お店の中でタバコに火をつけていいということ。


これまで世界を回ってきて、建物の中でタバコを吸っていい国があったかな。

日本ではレストランの中でも居酒屋でもバーでも、店内でタバコを吸っていい。

でも外国ではほとんどの国が室内での喫煙は法律で禁止されているので、わざわざ外に出て吸わないといけない。
シンガポールにおいては指定場所じゃないと吸ってはいけないという厳しいもの。

2年近くそんな習慣に従ってきたので、今こうして店の中でタバコに火をつけることにとても違和感を感じた。

そんなラフさが、この街の秩序のなさを如実に表していた。







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商店のおばちゃんに聞くと、そこの通りに安い宿があるわよと教えてくれた。

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どこか懐かしい雰囲気の漂う小さな通りに入ると、オアシスという看板を見つけた。

あ、そういえばイクゾー君が言ってた安宿ってそんな名前だったな………






ドアを開けて、薄暗い階段をバッグを抱えて登って行くと、そこにはさらに薄暗いレセプションがあった。

まるで監獄みたいな怪しさ満点のこの雰囲気。
久しぶりだな。

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受け付けの兄ちゃんがギターをポロポロと弾いていたが、その曲はお決まりのボブマーリー。


「ヘイヘイ、ワッツアップメーン。クールなギターだなメーン。」


丸メガネにヒゲを生やしてタンクトップを着た怪しさしかない兄ちゃんが軽いノリで話しかけてくれる。

決して悪い気はしない。
むしろ懐かしくて俺も軽く返事を返した。

旅行者に無関心な国の中でこんなフレンドリーなヒッピーの笑顔がとても心地よかった。







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ドミトリーはもちろん監獄で、エアコンなどないので居るだけで汗が流れてくるアジア感満載の雰囲気。

共同スペースでぶらぶらしてるのはドレッドの欧米人や、もはや鳥と会話できそうな仙人みたいな爺さんヒッピー。

ここに泊まってきたヒッピーたちが捨てていった時間が埃をかぶって隅に溜まっており、その上を香ばしい葉っぱの匂いが漂っている。

おお………これぞヒッピーの流刑地、アジアの安宿………


まぁ値段450円でWi-Fiがあればなんの文句もないけど。




しかし久しぶりのこのヒッピーまみれの宿。
まだ風邪の調子も完全に良くなっていないのに、どうせ彼らのことだから夜中まで大騒ぎするだろうしドミトリーで寝るのがふと嫌になった。

個室に泊まろうかな。たったの750円だし。









これまた監獄というか懲罰房みたいなベッドがひとつあるだけのシングルに入り、一応お金だけは持って宿を出た。

お腹が空いたので何を食べようかなと思いながら屋台街を歩いてみた。

酒屋さんを覗いてビールを買ったが、他のものの物価に比べてビールの値段は高い。
そう、ここはムスリムの国。お酒を飲まない国民の国だ。

少数派や外国人向けのアルコールはそれなり高くて、350mlの缶ビールがだいたい230円くらい。

2本飲んだら宿代と一緒だ。


このカエルさんをどうするかは内緒です。

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ビールを買って歩いていると、ひときわ煙を上げている屋台を見つけた。
ムスリムの女の子がスカーフを巻いてサテーを焼いていた姿が可愛らしくて、その店の椅子に座った。

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サテーってのは焼き鳥みたいなもん。

1本0.8リンギット。25円くらい。



「チキンを2、ビーフを2、プリーズ。」


「ミニマム5。」



素っ気なくそう言われた。
最低5本からだという。
このあたりの屋台は外国人がよく来るのでそれなりにみんな英語を喋れるみたいだけど、必要最低限の英語しか喋れないのでそれ以上何か話そうとすると、そこでシャットアウトされてしまう。

人との関わりがどこまでも薄くて、とても冷たく感じてしまう。







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やってきたサテーを食べ、ビールを飲んでタバコを吸う。

熱い夜風に汗が流れる。

夜はこうこうと賑やかなのに、どうしてこんなに心が盛り上がらないんだろう。

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まるでずっとここに住んでいたかのように、新鮮な感覚や、新しいものへの興奮というものがまったく感じられない。

なんなんだろうな。

屋台のテーブルで1人、ボンヤリとムスリムの姉さんが焼き鳥の煙にまみれているのを見ていた。











「金丸さんですか?」


その時ふと声をかけられて驚いて振り返った。誰だ?こんなゴチャゴチャした街の中で。

そこには可愛らしい日本人の女の子が立っていた。


「わー!私少し前にシンガポールの空港で会いましょうってブログにコメントしたんです。会えないままマレーシアに来たのに偶然会えるなんて!!」


そういえばそんなコメントがあったけど、結局会えないままでその後連絡もしなかったけれど、まさかこんな屋台街で出会うなんて。


「とりあえずご飯食べましょう、ビール飲みます?」


ということで寂しい1人酒が突如こんな可愛いリスみたいな女の子とのデートに昇格。

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この大阪っ子のカンちゃんもアジアの1人旅の途中で、これからタイのほうにのぼっていくそう。

チャイナタウンの宿に泊まってるみたいなので時間を気にせず2人で飲んだ。





こうやってふと路上で日本人のバッグパッカーと出会えてしまう。それがアジアなのかなと思った。

楽しくて寂しさは紛れた。
でもそれが次のさらに大きな寂しさにならないか、少し心配でもあった。

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