5月27日 火曜日
【シンガポール】 シンガポール
小林イクゾー、奇跡の勝負から一夜明けて………
エミさんの部屋で4人で目を覚ました。
うーん………ゆうべ飲みすぎたか………若干気持ち悪い。
フィリピン人の女の子たちがめちゃくちゃエロくて、韓国人の女の子が可愛くて、楽しくって結構飲んでしまった。
相変わらず喉は痛い。少し頭痛もする。
痰がからんでいるので快方に向かってはいるんだろうけどなかなか治ってくれない。
ボーッとベランダでタバコを吸う。
いまだに昨日のあのカジノでの興奮が収まらない。
全財産を2回連続でルーレットにぶち込んだイクゾー君のクソ度胸と決断力、勝負運はどれも俺にはないものだ。
あいつはきっと大物になるだろうな。どんなことでもタダでは転ばない最高に面白い男だ。
「あ、金丸さん、おはようございますー。朝ごはんは何かなー、んー、僕朝はキャビアって決まってるんですよね。」
ムカつく(´Д` )
「今日は何しちゃいます?クルーズですか?それとも整形ですか?うわやば、あと2回勝ったらギブソン買えるな………」
「イクゾー君、もーうやめとこ。」
「そうっすね、僕もそこまでバカじゃないです。」
ゆうべのバーベキューの残りをみんなで料理して朝昼ご飯を食べた。
アンナちゃんは相変わらずテキパキ動いて綺麗にしてくれる。
さすがはオーストラリアのホームステイでハウスキーパーの腕を磨いた女の子。
よし!!後ろからおっぱ……というのは冗談ですよ山梨県のみなさん。マジでごめんなさい。
アンナちゃんとはまったく関係ないんだけど、エミさんの話ではシンガポールの人たちはとにかく金持ちで、そして性に奔放なんだそう。
一夜限りのお持ち帰りなんて当たり前。カップルたちによるスワッピングなんてのもみんなやってるんだそう。
もう金がありすぎて普通のことでは満足いかなくなってしまったんだろうな。
ていうことはエイズが蔓延してるんじゃないか?という心配があるわけだけど、そこはさすがエリート主義国シンガポール。
ビザの更新のたびにエイズの検査があるそうで、もし陽性ならばシンガポールからさようならなんだそうだ。
他にも、例えばシンガポールにあるカジノにシンガポール人が入ろうと思ったら100ドルの入場料がかかる。
でももちろん外国人は無料で入れる。
なのでシンガポール人はあまりカジノには行かない。
つまり破産の元凶であるカジノから大事な国民を遠ざけて外国人からむしり取ろうというわけだ。
今日はそんなシンガポールで、当たり前に、普通に、お買い物とお散歩だ。
エミさん、俺、イクゾー君、アンナちゃんというダブルデートの図が完成。
え……な、なに………このエロいやつ………
アンナちゃんのおっぱい揉みたいんですけど………
よし!!アンナちゃん!!
スワッピングでおっぱいを………!!
はい、アンナちゃんは明後日からミャンマー行くらしいです。
ミャンマーって何があるんですかね。なんか孤児院かなんかに行くみたいです。
ボランティア好きですね。
「イクゾー君はボランティアとかしないの?」
「え?ないっす。金丸さんはしないんすか?」
「しないかな。なんかボランティアって響きが嫌なんだよね。」
いや、もちろん素晴らしいことですよ、という言い訳を入れといて、
ボランティアってなんかこう、上手く言えないけど俺の中で、してあげる的なイメージから抜け出ないところがあって、もっと普通に、自然に関わって、ボランティアなんて名前のつかないものでありたいな。
もちろん素晴らしいことだけどね。
というそんな4人でやってきたのはエミさんがよく来るという郊外のショッピングモール。
郊外といってもシンガポールは狭い国なので山手線みたいな駅が全体をカバーしていて、どこの駅もたくさんの人がいる。
ここタンピネスの駅にもうじゃうじゃと人がひしめいていて、通路ごとにバスカーがパフォーマンスを繰り広げている。
そしてなんつってもこのショッピングモール。
ビビるほど日本のお店が入っている。
マジでここ日本?って錯覚する。
ラーメン屋さん、回転寿司屋さん、無印良品、ダイソー、
別にこのタンピネスが日本人街っていうわけではない。
シンガポールでこれが当たり前なのだ。
日本企業が多く支店を置き、日本のものが溢れ、日本のブランドが重宝されているこのシンガポールにいると、これからのアジアにおける日本の立ち位置ってやつがすごく興味深いな。
「さてと、金丸さん、何買い物するんですか?」
「え、うーん、とりあえずエミさんがダイソー行きたいみたいだから行ってみようか。」
「ほっ!ダイソウ……ですか。あれ?ていうかダイソーってなんですか?僕とか高島屋でしか買い物したことないんで。なんかすんません。チュっす。」
ムカつくわー!!と大笑いしながらデパートの5階に上ると、まさに日本とおんなじ100円均一のダイソーがあった。
店員さんがいらっしゃいませーって言うし、店内に流れている音楽もミスチルとかだし、もちろん並んでる商品はほぼ日本のもの。
お菓子とかインスタント食品とか、全部日本のもの!!
ただ値段は2ドル均一だけど、円に換算したら165円くらいなのでやっぱりめちゃくちゃ安い。
「ここに来たら本当になんでも揃うから外国にいる感覚がしないですよねー。」
と言いながら本だしを買っているエミさん。
確かにこりゃ日本とほぼ変わんないな。
「金丸さん、次はどこに行きます?」
「んー、無印でちょっと服を見てみようかな。」
「むーじるし!!?むじるしってなんですか!?それってアルマーニとどっちが高いですか?いやー、なんかピンクドンペリが飲みたい気分だな。」
調子乗りすぎ(´Д` )
無印とか懐かしい。
あー、よく宮崎で彼女と家具を買いに来てたなぁ。
MRTミックの中の無印で買い物して、爛漫行ってチキン南蛮食べてドライブして………って、マジでここ日本だな。
てなわけで久しぶりに服買っちゃった。
ズボンとシャツと帽子。
しめて135シンガポールドル。1万1千円くらい。
うひょう!!シンガポール満喫してる!!
「ちょっとお腹空いたんで何か食べませんか?」
「えー、何食べる?屋台とかこのへんあるかな。」
「屋台!?金丸さん屋台でご飯食べちゃったりするんですか!?シースーにしましょうか。シースー。」
ここの回転寿司、安くてそれなりに美味しいのでいつも混み合う時間帯には大行列ができるんだそうだ。
1.5ドルで2カンなら確かに安いよな。
イクゾー君、10皿食べてる。
顔がいらつく(´Д` )
それからもアジア用のコンセントアダプターや変圧器を買ったり、色々とウィンドウショッピングをして、久しぶりに物欲を発散。
シンガポールは観光はマーライオンくらいで、あとはお買い物をするための国だな。
「さて、買い物もだいたい終わったし、今から何しようか。」
「そうだねー、イクゾー君すごいことするんじゃないの?」
「あ、やっちゃいます?レジェンドいっちゃいましょうか?」
「そうだなー、ギャンブルで勝った金を切り崩しながら旅するのってダメやろ?」
「あーもうそれ、1番ダメなやつです。ダサいっす。」
「じゃあなにする?」
「ブランド物買う?ボロボロの格好してるくせにそれだけすごいみたいな。ていうか財布買いなよ。お金何に入れてるの?」
「スーパーのレジ袋です。」
「あ、じゃあマネークリップなんかどう?ヴィトンのマネークリップ。」
「ヴィトンのマネークリップでマレーシアの金挟んでもしょうがなくないですか?」
「じゃあネイルサロンで爪を綺麗にしてもらうってのは。スワロフスキー散りばめちゃおうよ。」
「そんなやつがギター弾いてて誰がお金入れてくれるんですか。」
「星に名前つけられるらしいよ。」
「ほ、星に!?」
「よし!!もうチンチンに真珠入れちゃおう!!」
「入れて誰ともやれずに日本に帰ったらギャグじゃないですよ。」
そんなしょうもない話をしながらひとまず電車に乗る。
ひとまずどっか面白いところに行こう。
「えー、じゃあ何がいいの?普通なことしてもしょうがないやろ。もう犬飼えばいいんじゃない?」
「あ、いいっすね。じゃあもういっそアジアに向けて狂犬病の犬を飼うってどうですか?」
大笑いしながらやってきたのはここ。
シンガポールで1番のブランド街、オーチャード。
「え……ちょ…な、なんでこんなとこ来たのか意味がわか」
「さ、小林君、行こうか。」
「え!?ちょ、ちょ……まっ!!」
世界で1番ルイヴィトンに無縁な旅人、小林イクゾー、入店。
「え、ちょ……なんすかこれ……なんでサングラス並べるのにこんなにスペース使っちゃうんすか……意味わか、」
「あれ?小林君、ビビってるの?さっきまであんなに大きなこと言ってたのに。」
「ぜ、全然ビビってないですよ。ただこの机がいい木材使ってるジャンって思、高っ!!なにこれ高っ!!べ、ベルトが8万円!!マレーシアだったら300円ですよ!!?無理っす!!ここ無理っす!!いたらダメっす!!」
「そっか、なら隣のお店に行こうか。」
そして隣のショップのドアを押す。
「何当たり前のようにプラダに入店しちゃってるんですか……俺たちバスカーですよ……やっていいことと悪いことがありますよ……この人わかんねぇ……」
「これなんかどう?この靴。ホラ、クールでポップだよ。」
「あー、なんかわかりま、高っ!!高い!!なんでこんな生地全然使ってない靴が12万もするんですか!!おかしくないですか!?俺ちょっと店員殴ってきます!!」
「わかった、わかったよ。わがままだなぁ。あそこ行こう。あそこならいいやろ。」
ドルチェ&ガッバーナへ。
「な、なにディージー入っちゃってるんすか………ディージーっすよここ……ダンディーの人たちのとこですよ……」
「あ、すみません、マネークリップありますか?」
「こちらになります。」
「お!!小林君、300ドルだって!!ピタリじゃん!!」
「何がピタリかひとつもわかんないっす。ディージーのマネークリップにリンギ挟みたくないっす。」
一生縁のなさそうなブランド店を一通り回って外に出てきたあとのイクゾー君。
「ダメっすね……意味わかんないっすもん……値段……俺やっぱあれっす、アディダスあたりが限界っす………」
「そうだよね……あんなの買っちゃダメだよ………」
「ていうか昼の寿司に17ドル払った自分殺したいっす。オーストラリアの頃の俺が言ってるっす。お前何ヴィトン入ってんだって………」
「やっぱりコツコツがいいんだよ。地道に行こう。」
「そうっすね……やっぱり初心を忘れたらダメっすよね……あー、星に名前つけなくてよかったー。俺明日からまた頑張ろ。」
なんだか優しい気持ちになり、それからみんなで有名な屋台村のニュートンホーカーへ行き汗をかきながらご飯を食べてビールを飲み、最高の夜を過ごした。
たくさん笑ってたくさん話した。
みんなとてもいい笑顔だった。
イクゾー君、俺たちこれからもっと頑張ろうぜ。
今は俺たちまだ何も持っていないけど、きっと何か掴み取れるはずだよ。
いつかきっとヴィトンのバッグよりも価値のあるものを見つけようぜ。
「俺マジでこの旅の中で絶対にやりたいことがあるんです。だから絶対立ち止まれないんです。行くとこまで行っちゃいますよ。」
自信に満ちた顔で夢を語るこの男。
イクゾー、いい顔してるぜ。
そう言って最高の笑顔を残してイクゾー君はシンガポールの一大風俗街、ゲイランのピンクネオンの中に消えていきました。
グッドラック、イクゾー。
さ、帰ろ。