5月21日 水曜日
【シンガポール】 シンガポール
確かアメリカを回っているあたりの頃に1通のメールをもらった。
シンガポールに在住の女性で、もしシンガポールに来た際には連絡を下さいということだった。
こうして顔も何もわからない方とメールのやり取りをすることはよくあるんだけど、アメリカを回っていた頃にアジアのシンガポールのことなんて遥か先のことで何の約束も出来ないままで月日は流れた。
そして先日久しぶりにこのエミさんからメールが来た。
もうそろそろシンガポールですよね?ウチに泊まっていいですよ、との嬉しいお誘いだった。
アメリカから始まったメル友さんと1年越しの出会いなんて面白いものだし、シンガポールはアジアの中でも飛び抜けて物価の高いところなのでホテル代を浮かすことが出来るのはとても有難いことだった。
信頼と実績のイクゾー情報では空港で快適に泊まることができるという話だったが、お宅に泊まれるに越したことはない。
お言葉に甘えますとメールを返し、そして今、エミさんの家で目を覚ました。
「金丸さん、おはようございますー、アンナちゃんもおはようー。」
シンガポールにある日系企業で働いているエミさん。
アンナちゃんも是非泊まってくださいと言ってくださり、ゆうべは朝の4時までコンドミニアムの中庭のプールサイドで飲みながらお話をした。
シンガポールに着いてゆうべからたくさんの方とお会いし、そしてまだたくさんの方とお会いする約束をしている。
全員との約束は果たせないかもしれないが、時間の許す限りお会いし、シンガポールでの生活ってやつを聞かせてもらいたい。
あと、そう、このシンガポールでもう1人、どうしても会いたい人がいる。
どうしてもこの人には会いたい。
その人とのメールのやり取りを一部ご紹介。
「金丸さん、今どこですか?」
「今マリーナベイサンズの屋上のプールだよ。すごいよ。」
「なんすかそれ!!?………その情報ツライっす………」
「そんで知り合いのとこに泊めてもらえることになってるよ。そっちはどこ?」
「チャンギです………」
「ウケる(´Д` )」
さてこのメールの相手は誰でしょう。
僕が最近で1番好きな人です。
あ、チャンギってのはシンガポールの空港の名前です。チャンギ国際空港。
そう、現在、チャンギの主といえばあの男…………
シンガポールといえば真っ先に思い浮かぶのがマーライオン。
そして次が罰金大国ということ。
地面に唾を吐いたらいくら、タバコをポイ捨てしたらいくら、などなど、とてつもなく厳しい規則があるということだが、確かにこの果てしなく整備されつくした近未来都市にはゴミひとつ落ちていないし、ともすれば地べたに座るなんてラフな行為すらはばかられる。
街のあらゆるところに監視カメラが備えつけられているし、もし警察にお世話になるようなことがあったら2度目はない、ということだ。
例えば万引きをして捕まって前科がつけばそれは生涯シンガポールで職に就けないということを意味し、16歳の女の子がマリファナを吸って死刑になったという話もあるそう。
アジアといえば本能と欲望が渦巻くカオスの代名詞。
規則なんてあってないようなもので、その自由なまどろむを空気を求めて世界中のヒッピーたちが集まるバッグパッカーの聖地。
しかしこのシンガポールだけはその自由でルーズなアジア人たちを強靭な規則で縛りつけ、世界トップレベルの経済大国という位置を保たせているようだ。
喋る言葉は英語。
人種の入り混じり方。
ひとつの国にひとつの街しかないという小ささ。
アジアにあってまるでアジアでないその不思議な雰囲気。
謎しかない。
これから12日間でどれだけその謎を解き明かせるか。
しかし…………
俺がその国の懐を覗くための武器であるギター。
そのギターは未だ行方不明のまま………
アンナちゃんやエミさんといるのは嬉しいんだけど、ずっと気分が浮かない。
メルボルンの空港職員は今日の便でシンガポールに送るからと言ってはいたけど、本当かなぁ………
「金丸さん、空港に行く前にまず電話して確認しましょう。私に話させてください。こういうのは任せてください。現地の人間の性格は理解していますから。」
エミさんがそう言ってくれる。
日系企業で働いているエミさんはクレーム対応の仕事をする時もあるそう。
欧米人から中国人からインド人まであらゆる人種を相手にしてきてるので、クレームの扱い方もつけ方もプロ中のプロってわけだ。
「ハロー、ロストバゲージでギターがなくなったんですがまだシンガポールには着いていませんか?まだ着いていない?どうなってるんですか?とても大事なものなんです!!早く調べてください!!」
エミさんのツボを突いた的確な訴えで強めの姿勢を見せていく。
相手が言うには情報が入り次第連絡させてもらいます、とのこと。
「お願いしますよ!いつでも、本当に何時でもいいので早く連絡してください!!あともうひとつの預け荷物のバッグも壊れてるんです!!こっちはどうしてくれるんです!!」
エミさんの一歩も引かない話し方に、そ、そこまで言うと向こうも怒っちゃうじゃ………とつい腰が引けてしまう。
「金丸さん、ダメです。この人たちはキッチリ言わないと絶対に調べないです。遠慮したらダメですからね。」
ありがとうございます、エミさん。
しかし、そんなエミさんの健闘も虚しくまだギターは行方がまったくわからないとのこと。
ムクムクと黒い影が心ににじり寄る。
ここに来て初めて、まさか……という最悪のシチュエーションが頭に浮かんできた。
結構楽観視していた。
ちゃんとした航空会社だもん。
荷物がなくなるなんてあり得ない。乗せ忘れてしまうことはあるかもしれないが、所在はキチンと把握されていて、いつ何処に動くかなんて調べればすぐにわかるもんだと………
それが、どこにあるかまったく情報がないなんて………
大丈夫ですよと言ってくれるエミさん。
また夕方に電話してみることにするが、とにかく今日はギターがないので何も出来ないことは確定した。
気を取り直してとある男にメールを送った。
今から落ち合おうと場所を指定し、近くの電車の駅に向かう。
そう、あの男。
今アジアの路上を引っかき回している、世界で1番世界一周できなさそうな旅人…………
「あー、金丸さんー、お久しぶりですー!!」
小林イクゾー、参上。
「うわー、なんかあれから1ヶ月くらいしか経ってないのにめちゃくちゃ色んなことありましたよね。ニュージーランドどうでした?」
「よかったよ。そっちは?チャンギ空港って寝やすいの?」
「チャンギマジ最高っすよ。いつもチャンギの中を歩いたりしてます。チャンギのことなら任せてください。」
オーストラリアのシドニーで初めて会い、毎日一緒にセブンイレブンの1ドルコーヒーを飲んでいた日々が懐かしく思い出される。
なんか心なしかあの頃に比べてイクゾー君が小ざっぱりしている気がする。
髪の毛もサラサラだし顔もキチンとしている。
あの頃はもっとぬか漬けみたいになってたのに。
まぁ、あれから1ヶ月だもんな。
イクゾー君もだいぶ旅慣れしてきて体が馴染んできたのかな。
俺のブログを読んでいるエミさんなのでイクゾー君のことは知ってくれているし、アンナちゃんもランキングに参加しているブロガーだ。
ブログランキングに旋風を巻き起こしたイクゾー君のことはもちろん知っている。
自己紹介にそんなに時間もかからず、みんなでエミさんの家へと向かった。
「ところでどうしてチャンギなの?なんかメールで高級ホテルに泊まってるんですって言ってたじゃん。」
「そうなんですよ。でも1泊だけです。」
なにやら路上で歌ってるところで羽振りのいい男性に泊まるところはないのか、と聞かれ、ないと答えたところものすごく豪華なホテルに泊まらせてもらったんだそうだ。
「マジヤバかったんですよ。もう鍵とか普通じゃなくて。ガチャガチャって回すやつじゃなくて鍵がカードなんですよ。かざすとピッてなるんです。ヤバくないですか?」
「う、うん、それ普通だと思うよ……」
相変わらず大笑いさせてくれるイクゾー君。
ギターケースも相変わらずボロくて、オーストラリアでサンシャインコーストへヒッチハイクした時のガムテープを貼ったままのイカした姿。
「あ、そういえばギターの弦は張り替えた?1弦が切れたままだったやん。」
「そうなんですよ、ずっと1弦ないままだったんですけど、最近向上心でてきちゃって張り替えたんです。1ヶ月ぶりに1弦張ったらめっちゃ違和感あるんですよ。あれ?なんかいる……みたいな。」
イクゾー君の話にみんなで大笑い。
エミさん、お仕事が忙しくてあまりお友達と遊ぶ時間も取れないらしく、久しぶりにこんなに大勢で休日を過ごしているのがとても嬉しいと言ってくれる。
「でもマレーシアの弦、マジでクソなんですよ。お店で買うじゃないですか。普通に安くて10ドルとかするんですよ。それで店内で弦を張り替えてたら買ったそばからポキって折れるんです。はぁ?って店員さんに目の前でこれ今買ったよね?って見せたらそんなもんだよみたいなこと言うんですよ。マレーシアに絶対プロいないですよ。」
再会を祝して晩ご飯を作ろうとみんなで買い物に出かけた。
むわりとした熱気が立ち込めるシンガポール。
住宅地の光景はアジアとは思えないほどの落ち着いた雰囲気で、綺麗な一戸建てがスマートに並んでいる。
しかしスーパーマーケットに行ってみると、ここがアジアなんだということを思いさらされる。
表にひしめく屋台街を見たときの感動ったらなかった。
たくさんのテーブルと椅子が隙間なく並べられ、人々が美味しそうな麺料理や炒め物を食べていた。
お店の看板には無数の料理の写真が並んでおり、店内で中国人のおじさんが鍋を振っている。
欧米のオシャレさなんて欠片もないけれど、この大衆的な雑然さがたまらなく懐かしくて、たまらなくワクワクさせてくれる。
値段もどれも4~5シンガポドル。高くて8シンガポドルってとこ。
5シンガポドルで420円くらい。
オーストラリアやニュージーランドから来た身からしたら感激して震えてくる。
ここはシンガポールなのできっとこれでも本場のアジアの屋台に比べたら落ち着いたものなんだろう。
でもこれがアジア初の俺にとっては、なんとも言えないものがこみ上げてくる。
スーパーの中も、当たり前だけど全てアジアの食材だった。
アジア食品店は世界中どこにでもあるけれど、本場となると品揃えも値段も当たり前に素晴らしい。
そして日本の商品もとても多い。
別に日本人相手に売っているものではなく、諸外国にアメリカの製品が売ってあるように、アジアでは日本のものがとてもポピュラーなものとして親しまれているように感じる。
ああ!!
コーラが2リットルで2シンガポドル!!170円!!
きっとこれでも高いんだと思う。イクゾー君の話ではマレーシアに行くとコーラは70円くらいで買えるそうだ。
ああ………最高だ………
アジアに来たんだー………
ビールはそこそこするようで、安くて350mlの缶が170円くらい。
タバコは1000円くらいだ。
物価の高いシンガポールと言われているけど、安く収めようと思えばいくらでも節約出来そう。
ちなみに昨日空港から街の中心部へ電車で行ったんだけど2.5シンガポドルだった。170円。
そう!!これが普通!!オーストラリアとかニュージーランドみたいにバスで1700円とかしない!!
ここまではもう天国でしかないシンガポールだけど、あとは路上でどれだけ稼げるかってとこだな。
イクゾー君の話では、シンガポールでは無数の警察が目を光らせ、さらに人通りの多い場所には必ずライセンス持ちのバスカーが陣取っており、強引に演奏しようものなら俺たちのシマを荒らすな!!とケンカ腰で追っ払ってきたりと、毎日のように熾烈な争いが繰り広げられるそう。
パスポートをチェックされるたびに場所を変えなければいけないし、あがりも30~40シンガポドルってところ。
2500円くらいだ。そいつはキツい。
もっとも最近では場所選びも上手くなってきたらしく、150シンガポドルほど稼ぐ日もあるというイクゾー君。
ちなみにバスキングライセンスは観光ビザでは取ることが出来ないみたい。
完全にシンガポール人のみが対象とのこと。
しかしシンガポールには地元民バスカーがたくさんいるが、それと同じくらい外国人バスカーもいるそう。
みんな目立たないように細々とやっているんだろうな。
実際にやってきたイクゾー君が言うには、警察よりも地元民バスカーとのシマ争いのほうが厳しいらしく、彼らが警察に通報して注意されるというパターンがほとんどだそう。
地元民バスカーには障害者が多いらしく、彼らの生活支援の一環ということもあるだろう。
なんにせよ、彼らに敬意は払わないといけない。
10日間、邪魔にならないところでひっそりとやらせてもらおう。
エミさんの家に戻ると夕方になっていたので、もう1度空港に電話をかけることに。
そう、今はなによりもギター。
流暢な英語で強気に攻めてくれるエミさん。
空港職員は中国英語なので俺は何言ってるかちんぷんかんぷんだけど、シンガポールに2年住んでいるエミさんはもちろん全て理解できる。
エミさんがいてくれて本当に助かった。
のだが、やはりギターの消息は不明のままだった。
力なく電話を切るエミさん。
嘘だろ………
頼む、嘘であってくれ………
アジアが最後のステージなんだよ。
今までずっと一緒にやってきた相棒とここでお別れなんて考えたくない。
たったの5千円で買ったギターだけど、俺にとっては金では買えないギターなんだよ。
頼むよ…………
今一体どこにあるんだよ…………
キッチンではアンナちゃんとイクゾー君が楽しそうにご飯を作っている。
俺のチャーハンマジでヤバイですからとか言いながらイクゾー君が玉ねぎを切っている。
俺も混ざりたいけど、とてもそんな気になれなくて部屋にこもっていた。
ギターどうしよう。
買う金はある。
3万円くらいで買うことは出来るはず。
あとアジアだけだ。別に10万のギターを買わなくてもなんとかなるはず。
でも、最後まであいつと行きたかったのに………
30分くらいしてエミさんがまた空港に電話をしてくれた。
昨日乗ってきたメルボルンからの同じ時間の飛行機が到着しているはずだと問い詰める。
しかしその飛行機は到着が遅れているのでまだシンガポールに来ていないとのこと。
体が脱力してベッドに倒れる。
頭が混乱して、どうすればいいかわからない。
ギターどうしよう。
するとエミさんがiPhoneで何かを調べている。
シンガポールの空港ホームページに入り、飛行機の発着状況を調べているようだ。
そんなこと出来るんだな。
「………あ!メルボルンからの飛行機、もうチャンギ空港に着いてる!もう一回電話するわ!!」
ホームページサイトには確かにメルボルン発の飛行機がシンガポールに到着していると表示されていた。
すぐに電話をかけてくれるエミさん。
「メルボルンからの飛行機、もう着いてるじゃないの!!どういうこと!!すぐに確認して!!」
「あー、はいー……………………あ、ギターありますねー、取りに来られますか?配達しますか?」
……………ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお前侘びとしてフカヒレとか持ってこいやコラアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!
俺の太極拳で内臓えぐり出すぞこの4千年の歴史め!!!!!
なめんじゃねぇぞ!!今すぐ持ってこい!!!
リムジンで持ってこい!!
「あ、あの………大変申し上げにくいのですが……お伝えしなければいけないことがあります………」
なんだ!!言ってみろこの野郎!!
北京ダックも持ってこいやあああんんん!!???
「ギターを確認いたしましたところ、ギターケースが大破しておりまして、使用不可能の状態になってしまいました………」
うん、それ元から。
それずっと使用しております。
とにかく持ってこいや!!と伝えたものの、待っている間ギター自体にダメージがないかが心配で気が気じゃない。
うんこ漏れそうになりながら待っていると、30分くらいして玄関のベルが鳴った。
ペグが折れ曲がっちょりやる。
「大変申し訳ありません。ギターケースが深刻なダメージを受けてしまいました。こちらはカバー代金として受け取ってください。」
ペグじゃなくてそっちですか。
うん、ケースは元からっていうか、俺これでいつも街を歩いてるんですけど(´Д` )
そして50シンガポドルを出してくる配達人。
ギターケースは元からボロボロではあったけどペグが折れ曲がってるのと1日ギター触れなかったのとでもらっておくことに。
もうバッグの修理もこれで勘弁してやるか。
とにかく…………
「やったあああああああああ!!!!!ギター返ってきたああああああああああ!!!!!」
「金丸さんやりましたね!!もう飲みましょう!!」
「フミ君、よかったね。これで路上できるね。」
「よし!!金丸さん!!もう風俗行きましょう!!」
「それは嫌。」
ドサクサに紛れてアンナちゃんのおっぱい触ろうとしたけど殴られそうなのでやっぱりやめといてイクゾー君が作った晩ご飯を持ってみんなで中庭のプールサイドへ。
「お、美味しいやん!イクゾー君、料理できるんや!!」
「任してください!何でもできる男、ウィルスイクゾーですから。」
ギターも戻ってきてやっと落ち着いた。
ずっと一緒にいたギターが手元にないだけでたまらなく不安だった。
生ぬるい夜風の中でゆっくりとビールをあおる。
「俺シンガポール出る前にマリーナベイサンズに1泊してやろうと思うんですよ。一生懸命歌って稼いでその有り金はたいてマリーナベイサンズに泊まってやるんですよ。1泊だけ。俺みたいな奴でも頑張れば泊まれる、って夢ありませんか!?」
相変わらず破天荒なことを言うイクゾー君。
オーストラリアで会った頃はまだ戸惑ってばかりで1日を生き抜くのに必死になっていたというのに、こんなにたくましくなっていることがこれまでのイクゾー君の旅の過酷さを物語っていた。
「せっかく旅するんだからまだ誰もやったことないことやりたいっすよ。例えばそうっすね、自分でロケット作って宇宙行ったら初ですよね。よし、今から工具買ってきますとか言って。」
イクゾー君の旅は今まで会ってきた旅人のものとは根本が違う。
多くの旅人が賢く未来のことを見据え、冒険をしているとはいえどこか旅ってやつを通過点としてしか捉えていない。
なので、旅をやり切ることにそこまで疑問を抱かない。
イクゾー君の旅は別に世界一周にこだわらない模索する旅だから、今のこのある程度稼げて安定してきた旅に疑問を抱き始めているようだった。
とんでもないことに飛び込んだ。しかし旅はやれる、ということがわかった。
それが物足りなくなっているようだった。
「えー、俺次なにしよっかなー。」
笑いながら空を見上げてるイクゾーがめちゃカッコ良く見えた。
そうなんだよな。俺たちなんでも出来るんだよ。
イクゾー君を見てるといかに自分や周りの旅人が見えない枠に縛られてるかを感じずにはいられないよ。
自由な男だ。
「よし、もういっそのことニューハーフになればいいじゃん。」
「なるほど、そうっすね顔面にタトゥー入れて攻めるニューハーフに……ってなんですかそれ、やっばいですよ。」
「うん、それでさらにムスリムになったらいいんだよ。そしたらサウジアラビアとか行けるよ。」
「なんすかそれ、それモハメドいく子じゃないですか。やっばいですよ。もうバスキングとかどこ行ったんだって話ですよ。」
「ムスリムになったらお祈りしなきゃいけないよ。1日5回。」
「1日5回とかせっかくブログやめたのにブログより不自由じゃないですか。ていうかなんで笑いながら言うんですか。全然真剣じゃねぇこの人。」
アンナちゃんとエミさんもイクゾー君の話に大笑い。
コンドミニアムの警備員さんにもう少し声量をおとしてねと言われてしまった。
あー、なんて面白い男だ。
「ていうかそう言う金丸さんはどうやってアジア回って行くんですか?」
「え?俺?俺は普通に回るよ。」
「うわ!!最低だ!!この人最低だ!!」
きっと普通じゃ回れない。
アジア、面白そうな幕開け。