4月27日 日曜日
【オーストラリア】 ブリスベン
寒い夜だった 辛く悲しい
お前のことを忘れはしなかった
北へ向かう夜汽車は
俺の中の心のようにすすり泣いてた
そんな時お前がよこした便り
ただ一言だけ 寂しいって綴ってた
イクゾウ~ クリスマスキャンドルの火は揺れているかい?
by 甲斐バンド
アンナが来るぞおおおおおおおおお!!!!!!!!!
カメラぶら下げてアンナが来るぞおおおおおおおお!!!!!!!!!
やべぇ!!告白されたらどうしよう!!
コンドーム盗まれたからいざという時はサランラップをアンナああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
「フミさんー、朝ごはんの支度できましたよー。」
なんすかこれ?
これが朝ごはん?
こんな朝ごはんゴッドファーザーの映画の中でしか見たことないんですけど。
やべぇ!マークさんがマーロンブランドにしか見えねぇ!!
「パワーブレックファーストって言って英国式の朝ごはんなの。はい、ウィンナー食べてね!」
ニコニコと今日もこの上なく柔らかい空気のA子さん。
ショートカットだし、小柄だし、お母さん思い出すなぁ………
こんな可愛らしい方のところにお世話になってるんだから下ネタとかやめよう。
本当、自分が情けなくなるだけだよ。下ネタなんてゲスなこと英国式の朝ごはんには似合わないよね。
品のある1日を過ごさなきゃ。
さて、朝から肉食べまくったおかげで下半身の英国紳士がビッグベンになりアンナちゃんを迎える準備完了。
あ、シャワー浴びてなかった、てへ。
うふおおおおおあおおおおおおお!!!!!
ヘチマどこだああああああああああああああああ!!!!!!!
路上とかやってる場合じゃないので今日はA子さんのお宅でいろいろたまっていたことを済ますことに。
汚れていた服や寝袋を洗濯させてもらい、日記を書きまくる。
そしてA子さんの提案でとある曲の練習。
それから部屋にこもってアンナちゃんとのキスに備えてハーモニカを親の仇のように練習しまくる。
心なしかベンドがいつもより冴える。
「フミ君、アンナちゃんが駅に着いたみたいだから迎えに行ってくるね。ゆっくりしててね。」
A子さんがニコニコしながら車に乗って駅に向かって言った。
いや、本当はそれほど興奮なんかしてませんよ。ただの1人の女の子です。
全然取り乱したりしてないし、緊張もしていません。
僕も童貞ではありませんし、こんなこと遠藤ミチロウさんの前座やらせてもらった時の緊張に比べたら米粒みたいなもんですよ。
アンナさんてあれですよ、山梨の素朴なブドウ娘です。
ほうとう食べながらほーけーほーけー言ってるような子ですよ。
まぁ僕は包茎の放蕩ですけどねウケる。
あ、A子さん帰ってきた。
もう1人女の子の声が聞こえる。
ハーモニカをそっと椅子に置いた。
さぁ、爽やかに挨拶しようか。
ドガアアン!!
全裸でドアを蹴りやぶる!!!
「オラアアアア!!!!!!!!ナメんなよてめぇコノヤロウ!!!武田信玄がそんなに偉えのかああああんんんんん!!!????」
↑
妄想
「わー!!かネまるさんだー!!はじめましてー!!」
「あ、え、あばば、ぺぽぴ、か、金丸です………石和温泉とか好きっす、入ったことないけど。」
「日本にいる時からブログ見てましたー!すごいー、かネまるさんだー。」
「あ、ぼ、僕もブログ見てます、かネまるって訛りマジかっけーっす。」
はい、超可愛い。
一瞬マジで楊貴妃が入ってきたかと思った。
え?なにこの可愛い子?
「かネまるさんが近くにいるのはわかってたんですけど、まさか会えるとは思いませんでしたー!!」
ブログランキングで常に5位あたりをキープしているアンナちゃんは世界一周を始めて3ヶ月経つみたいだけど、実はまだこのオーストラリアが1ヶ国目。
ホームステイをさせてもらう代わりに庭の草むしりや家の掃除などの軽労働をするというウーフ制度を活用して、このオーストラリアライフを満喫していたらしい………
と言いたいところだけど、これがなかなか運が悪く、変なウーフ先に入ってしまうことが多かったみたいで、朝から晩まで土運びなんて重労働をさせられたり、突き飛ばされたり、爺さんにセクハラされまくったりと、まぁろくなことがなかったんだそう。
全部がそんなヒドいウーフ先ってわけではなかったそうだけど、そんな日常をブログで読んだA子さんがいてもたってもいられずにアンナちゃんに連絡し、アドバイスをあげたりして、そこから今回のお泊まり会に至ったわけだ。
まぁこれだけ可愛いくて笑顔が素敵な子なら男の気持ちもわからんでもないけど堂々としないのは卑怯だよな。
綺麗なお姉さんが来てソワソワしているケン君やアキラ君とゲームをしたりしながらノンビリと過ごし、夕方にみんなで散歩にでかけた。
緑豊かな綺麗な住宅地の中を歩くだけで、とても気持ちがいい。
近くには緩やかな川が流れ、夕日がぼんやりと水面を染めている。
聞きなれない動物の鳴き声が遠くから聞こえては、また静かになる。
本当にオーストラリアは自然の中に拓かれた土地なんだよな。
「今日はちょっと豪華なディナーにしましょう!アンナちゃんのオーストラリア最後の夜だしね!!」
何かお手伝いさせて下さいと言っても大丈夫だから座ってて!!とテキパキ動いているA子さん。
マーロンブランドさんも料理してくださいます。
そして出来上がったディナーが…………
ゴッドファーザーでしか見たことねぇ。
「こ、こ、ここ、これってナイフとフォークを置かれてる外側から使っていくパターンのあれですよね……?い、いやー、やっぱり英国風は違うなぁ。」
「今日は伝統的なオージー料理にしてみたから楽しんでね!!」
「ですよね!!」
「よし、何か音楽が必要だね。何がいい?」
「やっぱりここはAC/DCのヘルズベルあたりから………」
「ビリージョエルでいいんじゃないかしら。」
「それ!!マジ今それ言おうと思ってたとこです。いよっ!さすが川越出身!!」
シャンパンの乾杯から始まり、カボチャのスープ、なんて言うかわからんけどパンにオリーブオイルのサラダが乗ったやつ、大量のステーキ、
なんてこった………
昨日まで公園のベンチでポッサムとか蛇とかを怖がりながら寝てたのに、今はこの夢が覚めてしまうのが怖い!!
若かったあの頃なにも怖くなかったただ、あなたの優しさが怖い!!
「それではメインディッシュでス……子羊背肉のリンゴソースかけデス………」
「うわー!!美味そうー!!バクバクバク!!ムシャムシャ!!」
「か、金丸さん、なんかオカシイずら!!食べるのをやめるズラ!!」
「ガマンできねえッ!!ハラがイテーけど食わずにはいられねーっ!!リンゴソースの甘ズッパさと子羊の肉汁がのどを通るタビに幸せを感じるッ!!こんな味がこの世にあったとはァーーーッ幸せだァーーーッ幸せの繰り返しだよぉぉぉぉぉ~~~っンまあ~~~いっ!!」
A子さんの周りにパールジャムが飛びまわっていましたよ。メッシャー!!
骨付きのラム肉なんだけど、日本の羊肉みたいな臭みがほとんどなくて、絶妙なフレイバーと赤肉の旨味が口いっぱいに広がり、さらに骨まわりの脂身の甘さったらない。
オーストラリアに来て本当ロクなもの食べてなかったけど、ようやくこの国の美味しいご飯を食べられて、オージーってやつの生活を垣間見た気がした。
メレンゲに練乳とフルーツが乗った伝統的なオージーデザートまで食べさせていただき、ほろ酔いで最高にお腹いっぱいになった。
「あー……お腹いっぱい……貴族のご飯だね………」
アンナちゃんも大満足だ。
それからはみんなでワイワイとマリオカートをやったり、少しギターを弾いて歌ったりして楽しい食後の時間。
アンナちゃんもウクレレを弾くみたいで、もし時間があったらどこかで一緒にやりたいねということに。
アンナちゃんと言えば、世界カメラ散歩というブログタイトルにもあるように写真をライフワークとしている女の子。
いつもブログで繊細な表現の写真をアップしてるのでその腕前は知っていた。
日本にいる頃は色んなミュージシャンと関わっていたらしく、ライブ写真やアーティスト写真を撮ったりする仕事もしていたんだそうだ。
そんなアンナちゃんが撮ってくれました、僕のこと。
アンナちゃんが俺の写真を撮ったら一体どうなるのか!!!
これ!!!
あ、間違えた。
やべぇ超かっけー。
すげぇわアンナちゃん。
ありがとう、すごい大事にするよこの写真。
ひそかに練習していた甲斐バンドの杏奈を歌ったら、とても喜んでくれた。
アンナちゃんの名前はこの曲からとられたんだそうだ。
遊び疲れて子供たちが眠り、マークもおやすみと寝室に入っていく。
ゆっくりしてね、とA子さんも部屋に入り、静かな家の中でアンナちゃんとワインを飲みながら語り合った。
「なんか私あんまり旅に対して情熱とかってないんですよね。必ず一周してやる!とか、そんな大きな野望とかないんです。旅続けられるかなぁ。」
アンナちゃんは明日、3ヶ月滞在したオーストラリアを離れる。
次の目的地はインドネシアで、それからフィリピンに行って、シンガポール、そしてアジアを回って行く予定だそう。
「そんな感じで今からアジアとか楽しみやねー。きっと旅とはなんぞやみたいなこと語ってくるようなヒゲでバンダナみたいな人がたくさんいるよ、アジアの安宿に行ったら。」
「ああー、なんか怖いなぁ………」
ブログで読む限りどんなお嬢様みたいな人なんだろうと思っていたけど、実際はなかなか砕けた、というかかなり個性的な考えを持つ面白い女の子だ。
なんだかそのサバサバしたところの中に迷いが垣間見えるところが、とても魅力的だなと思った。
美味しすぎるご飯、ノンビリとした1日、優しい人たちと可愛い女の子、
そんな今日のブログ、最後に一言書いて終わりにします。
アンナちゃんのお婆ちゃん、いつかお茶しましょう^_^