2月18日 火曜日
【ペルー】 リマ
昼まで寝た。
目が覚めると10人ドミトリーの部屋には誰もいない。
千円も払ってるんだから、インクルーディングの朝飯をしこたま食ってやりたいところだけど、ホステルの朝飯を食べたことってあんまりないんだよな。
朝早くに起きたくない。
とにかく体力は回復した。
歌うぞ。
さて、このリマ。
どうやって稼いでくれよう。
路上をやるか?
でも路上は止められる可能性が高い。
やっぱり固いのはバスバスキング。
新市街のビジネスエリアに狙いを絞ってバスに乗りまくれば、おそらく結構稼げるはず。
ケータ君がこのリマでリコーダーを吹く女の子とバスバスキングをして、1時間ちょっとで30ドル稼いだと言っていた。
この情報からしてリマがパフォーマーに対して暖かい街だと期待が高まる。
バス狙いで行こう。
そしてバスを待っている待ち時間を利用してそこらへんのレストランで歌えば無駄な時間ゼロ。
うっひょおおおううう!!!
効率がいいのって好きいいいい!!!!
もはや我ながらバスカーとして無敵すぎる。
毎日200ドルずつ稼いで、クスコで女子大生をオシャレなレストランに誘って、え?普通だよ?旅中だからって食の質は下げたくないよね。ケチケチしたものばかり食べてると心まで貧しくなってしまうからね、それは嫌なんだ。やっぱり男は心に余裕を持っていないといけないからねところでチューしていい?
という巧みな流れで大人の余裕を醸し出しながらチューに持ち込んで………
「あ、フミ、ゆうべの分と今夜の分の宿代払って。60ソル。」
「今夜必ず払いますのでもう少しだけ待ってください。お願いします。」
というわけでクスコで女子大生のマチュをピチュするためにも、頑張って稼ぐぞ!!!
余計な荷物は全て置いて、ギターを抱えてハーモニカを構え、いざ出発!!!
うん!!ていうかリマの新市街ってどこ!!
えーっと、全然わからないなぁ。
まぁテキトーにバス乗ってたらそのうち着くだろ。
「セニョール!!ドスカンシオネス、ポルファボール!!」
やってきたバスに乗り込んだ。
なんか反応悪い。
レストランでやってもバスでやっても、みんな最初にチラっとこっちを見るだけで笑顔も拍手もなし。
アンコールなんてあるわけない。
お金の入りも信じられないくらい悪い。
なんだか反応が悪すぎて、やめた方がいいかな……みたいに萎縮してしまってそれがお客さんに伝わって余計に空気が悪くなる負の連鎖にはまり込んでしまい、バス1台で1ドルくらいしか入らないという状況に。
演奏を断るレストランが多く、バスもキトみたいに綺麗なものではなく小さな乗り合いバスがバンバン走ってるのでなかなか乗り込めない。
なんとか状況を打破したいと声を張るけど、風邪で喉がやられていて痛い。
マジで、マジでヘコむんだけど、3時間くらいレストランやバスで歌ってひとつも拍手が起きなかった。
パチ、もなかった。
こ、こいつはヘコむよ………
そんなあがりは驚異の33.8ソル。13ドルくらい。
話しにならねぇ。
普通にヘコむ。
時給400円じゃ女子大生のマチュとか言う資格ないし、オシャレなレストランなんて夢のまた夢だ………
バッチリ稼いでからご飯食べようと思ってたんだけど、これじゃ宿代が払えない。
凹んでる場合じゃない。
まだ今日何も食べてないけど歌わないと。
一旦宿に戻り、路上セットに切り替える。
そして海に向かう坂の小道でギターを構える。
海水浴客、景色を楽しむカップル、観光客がたくさん歩くこのノンビリとした遊歩道。
マクラメのアクセサリー売りもいて、とても雰囲気がいい。
ここならイケるはず!!!
腹減った………
喉がガラガラ………
声が岸和田少年愚連隊のカオルちゃんみたいになってる。
それでもまばらに人だかりが出来、ギターケースの中にお金がたまっていく。
旅人、ヒッピー、色んな人が話しかけてくれる。
こんな風に華麗な字体で名前を書いてくれるアーティストのおじさんがやってきて、横で仕事を始めた。
なかなかいいコンビで、俺とおじさんの周りにたくさんの人だかりができた。
坂道の向こうの海が夕焼けに染まり暗くなってきたころ、人通りが少なくなってきたので場所変え。
まだまだ終わらんぞ。こんな中途半端でやめられるか。
街の中の静かな通りを見つけて演奏開始。
もう声が限界を超えてるけど、なんとか根性で歌いまくり、たくさんの人だかりが出来て、喉が完全に崩壊したところでギターを置いた。
ヘトヘトになって今日1食目のご飯を食べに食堂へ。
焼き飯とスープを食べながら夜のあがりを数えると、
2時間ちょっとで108ソルと1ドル。
昼間と合わせてなんとか55ドルまで持っていくことができた。
ああ………
つ、疲れた………
バスバスキングもレストランマリアッチも誰かお金回収の相方がいないとキツイな………
「ハイ……宿代……稼いできました……」
「ちょ、フミその声どうしたの?」
宿に帰ってゴッドファーザーのマーロンブランドみたいな声で宿代を払い、ベッドに倒れた。
汗だくで1日中歌いまくったけどシャワーを浴びる力もなく眠りに落ちた。
明日も頑張ろう。
明後日も、その次の日も。