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国境を越えたら砂漠

2月16日 日曜日
【エクアドル】 クエンカ
~ 【ペルー】 ピウラ





夜中のターミナル周辺を歩き回ったり、酔っ払いにからまれてファックを連発したりしながら夜を過ごした。


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深夜のターミナルは、俺と同じように朝を待つ旅行者が何人もおり、みんなテーブルに突っ伏したり、ベンチに横になったりしていた。

でも30分おきくらいにセキュリティの人が巡回してきてこん棒で突つかれて起こされていた。
寝転がるのはダメみたいだ。










photo:02




朝6時をすぎると建物の中が少しずつ騒がしくなってきて、人通りも多くなってきた。


やっと朝か………


一睡もしていない頭はぼんやりと鈍っている。

寝不足だけではなく、昨日から風邪っぽかったのが悪化してきてるみたいだ。

ジャングルから高地のバニョスに移動して一気に寒くなったのでそのせいだと思う。

鼻水とくしゃみが止まらない。



そんな体で重い荷物を担ぎ上げ、いくつもあるバス会社を回っていく。



今日はなんとしてもペルーに入りたい。
大きめの地方都市に行けば、きっと夜行のリマ行きのバスがあるはず。

うまく乗れれば明日の夕方くらいにはリマに到着できるはず。









まずは国境をどう越えるか。

いつもどおり、ここからエクアドル国境までのバスに乗って、そこからペルー側の地方都市へのバスに乗り換える刻みになると思う。

最近ずっとローカルバスの刻みだったのでそれが普通だと思っていたんだけど、




どうやらここクエンカから国境の先の地方都市までの国際バスが運行してるみたいだ。

バスで国境越えってなにげにカナダ~アメリカ以来だな。



狙い所は国境を越えた最初の大きな町、ピウラか、そこから少し南下したところにあるチクラヨという町。

このふたつならどちらからもリマ行きのバスが出てるだろうという予想。





では値段はどうか。



まず、ここからピウラまでが15ドル。
チクラヨまでが25ドル。

移動時間は11~12時間で、どちらも多分そんなに変わらないと思う。


朝7時のバスなので到着は夜か。
なんとかそのまま夜行バスに乗れればいいんだが。




ちなみに国境までの刻みで買えば15ドルが12ドルになる。

でももし時間が合わなかったり乗れなかったりした時のリスクを考えたら、少し高くてもここで全部のチケットを買っといたほうがいいと思う。


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35セントでエンパナダが売っていたのでヘロニモとマリアンナを思い出しながらかじり、ピウラ行きのバスに乗り込んだ。

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そして疲れ切っていた体はあっという間に眠りに落ちた。














汗をかいて目を覚ました。

さっきまであんなに寒かった車内が熱気に満ちていた。




窓の外を見て驚いた。

大きなバナナの木が隙間なくどこまでも生い茂り、その間をのびる未舗装の1本道を走っていた。

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バナナの木以外、視界に入らないほどの広大な農園の中を、バスはガタゴト揺れながら走っていく。

ここで世界中のバナナをまかなえるんじゃないか?ってほどの規模だ。


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どうやらアンデス山脈を降りて海外沿いにやってきたみたい。

乾いた空気に砂ぼこりが舞う。

乗客のほとんどいないバスは、静かに音楽が流れている。









そんな忘れ去られたような光景の中、バスはいくつかの小さな町を通りすぎ、数時間後に少し大きめの町に到着した。

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ボロボロの建物ばかりだが、路上にご飯やフルーツの屋台が並び、商店も多い。

この辺りの中心地みたい。

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ここで次のバスに乗り換え、町を抜けるとすぐに国境のカスタムに到着した。



大きな敷地に無機質なコンクリートの建物。

バスを降りてぞろぞろと歩いていく。

忙しそうな雰囲気はなく、俺たちのバスだけが止まっている。


イミグレーションの中に入ると、エクアドルの出国カウンターとペルーの入国カウンターが隣同士に並んでいた。
仲良いんだね。
おかげでめちゃスムーズ!!

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質問もなければ荷物チェックもなく、2秒でペルーに入国した。


さぁ、ついにあのマチュピチュの国、ペルーに入ったぞ。












国境を越えてから景色が一変した。

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砂漠。

乾いた岩山がいびつにうねり、どこまでも広がるくすんだ空。

エジプトを思い出す。

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荒れ地。
土壁の集落。

廃墟の落書き。

照りつける太陽。

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そんな景色の中を駆け抜け、19時にバスはピウラに着いた。




ほんの小さなバスターミナル。

出来ればこのまま夜行のバスに乗ってリマに行きたい。

ひとつしかないカウンターで聞いてみた。



「リマ行きのバスは明日の4時半よ。」


「あ、じゃあそれまでここで待ちます。」


「4時半って夕方のことよ。PM。」





………なんだとおおお!!!!
夜行どころか明日の夕方までバスがねぇだと!?



「それしかないんですか?他のバス会社とか……」


「ないわ。」


愛想の悪いおばちゃんが面倒くさそうに答える。


外に出てみるとタクシーの運ちゃんが群がってきてスペイン語でまくしたててくる。

会話にならない。

ターミナルの人に聞いても同じ。

みんな早口で何言ってるかまったくわからない。


かろうじて分かりやすく喋ってくれるおじさんがいたので、その人に色々教えてもらった。




まず、ここからリマへのバスはない。
明日じゃないとないそう。

チクラヨという南の町に行けば今日バスはあるそう。


「じゃあどうやってチクラヨまで行けばいいですか?」


「タクシータクシー。」


さ、行こうか!みたいな顔をしてるタクシーの運ちゃん。
3時間の距離をタクシーで行こうと言う。
なかなか大きく出ますね!!



そんなお金ないですと言うと、なんとかアベニューっていうバス通りまで言って、そこからバスに乗ればチクラヨに行けるそう。


「そのなんとかアベニューまではタクシーでいくらですか?」


「5ソルでいいよ。2ドル。」




うーん、結局チクラヨに行ったって今夜乗れるかわからないし、まずチクラヨまで10ドルくらいかかる。

そんな賭けに出るくらいなら、ここで明日の昼間レストランバスキングしてペルーのソルを稼いでから夕方のバスに乗ろうかな。




うん………こんなわけの分からない地方都市だけど、多分稼げるだろう。




とりあえずお腹すいた………
朝のエンパナダしか食べていない………





お金をペルーソルに換金しよう。

隣同士の国だし、南米でドルは強いのでどこでも換金できるだろうと思っていたら、予想通り普通のオッさんが換金してくれた。

ドルとのレートは1ドルが2.7ソル。

オッさんレートは2.6ソル。

でも俺はコインを換金したかったので2.5ソル。


悪くない。
コインで換金出来るってだけありがたい。
南米は本当に融通がきく。



とりあえず40ドル分換金しておいた。
100ソル。


そしてチケットカウンターへ。
愛想の悪いおばちゃんにたずねる。


「明日の夕方のリマ行きのチケットを下さい。いくらですか?」


「100ソルだー。」


オッさんが横から口を挟んでくる。

お!!換金した分全部むしり取ろうって腹ですか!!
なかなか大きく出ますね!!

リマまで40ドルもするわけねぇ。




「リマまでいくらですか?」


「70ソルよ。」



一瞬で10ドル以上安くなったので購入。
大きなお札なのでお釣りがないというおばちゃん。

お腹もすいたので、ご飯食べてお金くずしてきますね、と荷物を預かってもらって外に出た。

photo:19










そして30秒歩いて角をひとつ曲がったらバス会社が集まる通りを発見。


えーっと、なんとかアベニューってやつですね。

タクシーの運ちゃん、歩いて30秒のところまで乗せるのに2ドル取ろうとしていたんですね。

こっちが何も知らないからってよくそんな大胆な嘘がつけるもんだな。


ダメもとでひとつのバス会社に入ってみた。


「あのー、リマ行きのバスってありますか?」


「あるよー、1時間後。70ソルねー。」




ドギャン!!!



猛ダッシュでさっきのターミナルに走り荷物かついで戻ってきた。


いやー、ペルーって観光国だね………
こんな目と鼻の先の情報も教えてくれないなんて。

これから交渉とかしていきたくないなぁ………

エクアドルの人たち、みんな正直だったからなぁ。





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てなわけで無事、計画通りにリマ行きの夜行バスをゲット。70ソル。26ドル。



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そこらへんのボロい食堂で腹ごしらえ。

すっごいボロくて、バケツの中の水でザバッとお皿を洗うだけの衛星レベルだけど、ジャングルで生活してきた俺にはこれくらいなんてことない。

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ていうかこれマジでビビるくらい美味かった。
これで5ソル。180円。
エクアドルよりさらに安くなった。


飯の美味い国はそれだけで得した気分になる。
どうせ旅するなら美味しいものを毎日食べたい。

ペルー、いきなり胃袋つかんできた。







そして21時半。
やってきたバスに乗り込む。

足がまったく伸ばせないような狭いシートが敷き詰められた車内は満席で、熱気がこもっている。

こっからまた15時間か………



体きつい。

寝不足と風邪で頭がぼーっとする。


それでももうすぐリマだ。


リマに着いたら思いっきりぐーたら………も出来んな。
マチュピチュ代を稼がないといけない。
ていうかマチュピチュまでの足代を稼がないといけない。


ていうか飯代も………






はぁ、寝よ寝よ。


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