1月30日 木曜日
【エクアドル】 バニョス ~ テナ
「えー、フミ行くのかよー。温泉一緒に行こうぜー。」
「うちで少し働けばいいじゃんかー。」
荷物を持ってロビーに降りると仲良くなったみんなが声をかけてくれる。
なんだかんだ結局1週間くらい滞在していたこのホステル。
個室だしホットシャワーだしWi-Fiあるし、最高に居心地良かったな。
友達もたくさんできたし。
少し寂しい気持ちもありつつ、ロビーでいつも1人でもくもくとiPhoneをいじっている50歳くらいの日本人旅行者のおじさんにも挨拶。
「お気をつけて。」
「…………」
超無視。
こ、この野郎………
今までも毎日挨拶してたのにいつも声すら出したことなかったこのおじさん。
ちょっとムキになって、顔をグイと近づけて、お気をつけて旅されてくださいと大きめの声で言ってみた。
やっぱりスーパー無視。
禅?
それiPhoneいじりながらの禅?
別に日本人同士だから仲良くしようとは言わないけど、挨拶くらいしようぜ…………
iPhoneから1ミリも視線をズラさないおじさんに1人で別れを告げて宿を出発。
さぁ、ジャングルに向かうぞ。
待ち合わせ場所にしていたバスターミナルに行くとヘロニモとマリアンナが笑顔で待っていた。
「フミ、今日は忙しい日になりそうだね!!」
「望むところだー!!」
そして早速道路きわに立ってヒッチハイク開始………
ドギャン!!!
親指立ててマジで1秒くらいでトラックが止まった!!
交渉に走るヘロニモ!!
「ヘイ!!テナまで半分の距離の町まで行ってくれるよ!!バモス!!!」
乗り込んだのはトラックの荷台。
天井のないカゴの中に飛び乗るとトラックは勢いよく走り出した。
ドガン!!
ズゴン!!
地面の凹凸をモロにくらって跳ねまくる荷台。
飛び上がってお尻が打ちつけられて、カーブのたびに転がりそうになってまともに座っていられないほど。
「痛っ!!痛い!!へ、ヘロニモ?!」
そんなものすごい衝撃の中で寝ているヘロニモ。
さ、さすがホーボー。
しかしスヤスヤ寝ているそんなヘロニモに、雨が叩きつけ始めた。
天井のない荷台は容赦なく濡れていく。
しかし止まることなく走り続けるトラック。
「へ、ヘロニモ!!雨だ!!どうしよう!!」
「うわ!!前だ!!前のほうに行けば雨は当たらない!!それにきっとすぐ止むよ!!」
「マジで!!雲真っ黒なんだけど!!ホントに止むの!?」
「多分………」
「寒いよー!!」
濡れた体にガンガン吹きつける風で3人とも凍えること1時間。
アンデスの山を覆い隠していた雨雲は、山を降りた頃にはどこかに行っており、今度はジャングルの熱気が襲いかかってきた。
テナまでの中間地点の町でトラックは止まり、またそこからヒッチハイク再開。
めちゃくちゃ田舎町で車もほとんど通らない。
ただの都農あたりの広域農道みたい。
しかしまたもやすぐにトラックが止まってくれる。
本当にエクアドルの人って優しいんだよなぁ。
そしてヒッチハイクがとても一般的だ。
実際、こんなど田舎の広域農道なのにバッグパッカーの女の子2人がヒッチハイクしていた。
「日本人かい!?珍しいな!!ホラ!!これ食べな!!美味しいぜ!!」
地元のおじちゃんと兄ちゃん。
こんなどこの馬の骨とも知れないアジア人に何かと世話を焼いてくれる。
「日本人って犬は食べるのかい?」
「日本人は食べません。中国では食べるみたいですけど。」
「中国人ってアレだよな。動くものみんな食べるよな。アハハハー。」
イグアナとかネズミみたいな動物を食べる南米人に言われたくないよね(´Д` )
「おじさんの名前トラバハールって言うんですか?」
「そうさ、トラバハールさ。」
「トラバハールってスペイン語で仕事って意味ですよね?」
「そうさ、トラバハールがトラバハール中なのさー。」
そんな楽しい会話をしながらあっという間にトラックはテナの町に到着した。
ジャングルの中の町、テナは完全に日本の夏の気温で汗がダラダラ流れてくる。
さっきまでいたバニョスは冬の気温だったってのに、よっぽど高低差があるんだな。
さぁ、着いた瞬間から早速仕事開始だ。
もう俺もマリアンナのレパートリーをバッチリ把握しているので打ち合わせもなしにすぐにレストランに飛び込んだ。
「オラー!!ブエナスタルデス!!お食事中のところですか2曲だけお付き合いください!!アルゼンチンから来ましたヘロニモとマリアンナ、そして素晴らしい歌を歌ってくれますフミは日本から来ました。楽しんでもらえると嬉しいです!!」
ヘロニモの丁寧で流暢な自己紹介からマリアンナのスペイン語の曲、そして俺の歌。
3人のコンビネーションもバッチリで、俺たちの演奏にみんな大きな拍手をくれる。
もう1曲、もう1曲の声にノリノリで応えながらドンドン回っていく。
今度の日曜に近くでイベントがあるからそこで歌ってくれない?とか、うちのお店でやってちょうだい!!とかありがたいお誘いもたくさんもらった。
今エクアドルでなんかの選挙をやってるみたいで、候補議員の選挙事務所で盛り上げてくれないか、なんてオファーまで。
時間があったらやらせていただきますと答えて、どんどんレストランを周り、1時間半ほどで町のレストランを1周し終わった。
いつもの安いピザ屋さんでお疲れ様のご飯を食べながらあがりの精算。
41ドルのあがりに3人でハイタッチ。
1人あたり14ドル。
たいしたもんだぜ。
「よし、それじゃあリーナのとこに行こうか。」
うおお、ついに来たぞこの時が。
ジャングルの奥地に住む、サンペドロをくつくつと煮込むインディアンの女性に会う時が来た!!!
一体どんな神秘的な場所なのか。
一体どんな怪しげな女性なのか。
ギラギラした太陽が照りつける中、やってきた2番バスに乗り込んで町を離れた。
ボロいバスはエンジンをふかしながら坂道を登ったり降りたり。
やがて民家が少なくなってきたころ、バスは脇道に曲がり、未舗装のガタガタ道を進んでいく。
周りはどこまでもジャングル。
南国の植物が生い茂る密林の中の道を砂ぼこりを上げながらゆっくりと走っていく。
そんなジャングルの中にボロボロの廃墟のようなブロックの建物やなんかの歴史のテーマパークか?みたいな茅葺きの家がチラホラ見える。
一応集落にはなってるみたいだ。
そんな集落を過ぎたところでバスは止まった。
「よしフミ、ここからは歩きだよ。」
バスは俺たちを下ろすとブーンと走り去って行った。
えーっと……………
なにこれ?
笑えてくるようなジャングルの中の1本道を3人でトボトボと歩いていく。
日差しが肌に突き刺さり、むわりとした風にむせるよう。
20分ほど歩いて行くと、ヘロニモたちがこっちだよと林の中に入っていく。
獣道みたいな草の上を進んでいくと、広場が現れ、その一角に茅葺きの家があった。
あ!!これだ!!
アンドレアスたちに見せてもらったあのデジカメの写真の風景だった。
向こうから勢いよく犬が走ってきて俺たちにじゃれついてきた。
「リーナー、リーナいるかいー?」
ヘロニモたちが慣れた様子で家の中に入っていく。
入っていくと言ってもドアなんてなく、壁もほとんどないような家。
吹きさらしの台所とリビングには鍋や食器があり、椅子が並んでいる。
ホントにここに人が住んでるんだ。
「フミ、今リーナ出かけてるみたいだ。よし、川で泳ごう。」
そう言って服を脱ぎ始める2人。
俺も服を脱いで一緒に森の方へ歩く。
すると家のすぐ横に綺麗な川が流れていた。
集落の子供たちが元気に水遊びをしていた。
頭上にはリアルスタンドバイミーっていうか映画超えてる雰囲気の使われていない橋がかかっており、周りはどこまでも静寂のジャングルが広がっている。
川のせせらぎのみが聞こえる。
そのまま水に入り、プカプカと浮いてみた。
ものすごくたくさんの見たこともないような動物たちがこの森の中に無数に住んでいるんだろうけど、なぜかそれを感じさせない静寂が漂っている。
俺たち人間が住んでる場所はあんなにうるさいのにな。
ひとしきり泳いでから家に戻ってみるが、まだリーナは帰ってきていなかった。
また夜に戻って来ようと、荷物を置いて町に向かった。
マジの子供がバスを運転している謎。
テナはジャングルの中の小さな町ではあるが、一応ナポという日本でいう県の県庁所在地。
それなりに政治や流通の中心地となっているので、人はたくさん住んでいる。
仕事帰りの人たちで活気に満ちた通りを歩き、レストランバスキングの夜の部だ。
しかしお昼よりもお客さんの数が少なく、歌えるお店が限られてしまい一周してみて結局やることができたのは5軒のみ。
朝からヒッチハイクしてさらに川で泳いだ疲れでヘトヘトになり、早めに切り上げることに。
ヘロニモたちがよく行っている食堂で、ポテトとソーセージを持ったサルチパパスというエクアドルではどこでも食べることができる軽食で晩ご飯を済ませた。
1ドル。
夜のあがりは22ドル。
俺の取り分は40パーセント。
もうこの時間になるとバスはジャングルの中まで行ってくれないのでタクシーを捕まえて3ドルでリーナの家に向かう。
タクシーは昼と同じ未舗装のガタガタ道に入っていく。
外灯などひとつもなく、本当に真っ暗闇。
窓の外には密林が広がっているはずだけど、何も見えない。
そしてそんな真っ暗闇の中にポツンとひとつの灯りが見えた。
リーナの家だ。
タクシーを降り、足元見えない草の上を歩いて行く。
ドキドキする。
ついに謎のインディアン女性、リーナと対面だ。
灯りの中に人影が見えた。
か、彼女がそうなのか。
「フミ、あれがリーナよ。リーナー!!元気にしてたー!?」
「わー!!マリアンナー!!会いたかったー!!」
マリアンナと元気に抱き合うリーナ。
え、えー…………
この人がリーナ………?
う、嘘だよね………?
裸電球の灯りが照らし出しているのは、どう見ても10代後半くらいの可愛らしい女の子だった。
たしかに浅黒い肌に黒髪を三つ編みにしたインディアンの顔をしたリーナ。
まさかこんな若い女の子だったとは。
「リーナ、彼はフミ。日本から来てるの。サンペドロを飲みがってるの。」
「あー、ごめんね、今サンペドロきらしてるの!!キャハハ!!」
…………えーっと、サンペドロをきらしてるというショックよりもリーナがこんなキャピキャピの女の子だということにビビりすぎて、もうよくわからないまま椅子に座る。
裸電球の灯りに群がって大きな虫や蛾がテーブルの上を飛んでいる。
みんなスペイン語で楽しそうに話している。
ここが気に入ってリーナに間借りさせてもらっているコロンビア人の男性も混じり、みんなで盛り上がった。
リーナが壊れかけの食器棚からいたずらっぽい笑顔でワイングラスを取り出してきた。
まるで今夜は特別よ、と洒落込んだ様子で。
そして大きなバケツみたいな容器から謎の茶色の液体を注いだ。
「キノコの種類から抽出したアルコールだって。キノコワインってとこかな。」
うん、怪しさしかねぇ(´Д` )
死ぬかな(´Д` )
周りはとにかく静寂で、広大な暗闇の中にポツリとひとつの明かりだけが光っている。
ドアも壁もない、俺たちと自然を隔てるものはどこにもない開放感。
昼間、動物たちが住むジャングルを眺めていたけれど、完全に俺たちもその一員になったように感じた。
動物に近づくかのように煙をくゆらせるみんな。
思考がゆるやかになっていく。
「サンペドロが飲みたかったらここに持ってきて!!サンペドロは高地だったらそこらへんに自生してるから!!持ってきたら私が作ってあげるわ!!キャハハハー!!」
リーナの可愛らしい声を聞きながら、ワイングラスの茶色い液体を飲み干した。
あ、ところでタビジュンさんがブログでひどいこと書いてますね。
僕のことチョメチョメがクソ下手の薄汚い犬野郎とか書かれたらもう泣きそうです(´Д` )
いや、ここまでは書いてませんよ。
きっとアレでしょうね。
金丸は自分勝手な野郎なので自分だけさっさと終わってすぐスピースピー寝るようなひどいチョメチョメをするやつだよきっと、って佐々木舞さんと話してるんだろうな。
あいつは早漏だって。
全然そんなことないんですけどね。
もう本当、余裕で前戯1時間くらいかけた上に、体位も1回のうちに15パターンくらい変えるし、ていうか真珠がもうすごいことになっててアレがもうアダム徳永レベルのアレで真珠が…………あれ?この頬を伝うものはなんだろう。しょっぱいや……へへ…………
実はそんなに早漏だと思っていません。
タビジュンさん、この借りはいつかお返ししますね…………