1月21日 火曜日
【エクアドル】 キト
同じ部屋のビッチが宿を出て行った。
そしてそのビッチが宿を散らかしまくっていただらしないヒッピー連中を引き連れてゾロゾロと出て行ってくれた。
古くからの顔なじみのメンバーが残り、宿が一気に綺麗になり、雰囲気が良くなった。
「はーい、フミ、今日も仕事かい?」
「そうだぜー、みんなは?」
「もちろん行くぜー。向こうで会おうなー。」
バトンやお手玉、ポイのパフォーマンスをしている宿のみんなの仕事場所は新市街の少し北の場所にある大きな交差点のあたり。
彼らのパフォーマンスは、信号待ちをしている車の前に出てドライバーさんにジャグリングの芸を見せ、お金を集めるというもの。
車の交通量が多く、信号もたくさんある場所にはたいてい彼らのようなヒッピーの芸人がいる。
これもまた中南米の稼ぎ方のひとつだ。
今日もケータ君とバスに乗って歌っていると、通り過ぎる道の途中で宿の連中が一生懸命パフォーマンスしているのが見える。
みんなヒッピー。
楽して楽しく生きていこうというやつら。
でもその芸はなかなか簡単なものではない。
坊や哲の房州さんの言葉が浮かぶ。
怠惰を求めて勤勉に至るってわけだ。
毎日毎日バスに乗り、たくさんの人たちに会う。
通勤の人、遊びに行く人、買い物に行く人、学校帰りの学生、
たくさんの人たちがいる。
むすっとした顔、ニコニコとした笑顔、子供の無垢な眼差し、色っぽい女の人の魅惑的な瞳、
拍手が起こり、もう1曲!!もう1曲!!という歓声の中、みんなに手を振ってバスを降りる。
そしてまた次のバスに乗り込む。
バスの中には、ここに生きる人たちの日常がある。
ここで生まれ、暮らし、染みついた臭いがある。
窓から吹きこむ風や、読書をしているおじさんのメガネに、ツギハギだらけの営みがある。
昼下がりの太陽を受けた南米の浅黒い肌の女の子の瞳がとても美しく見えた。
その時、なんだかふと俺もラテンアメリカの生活の臭いを吸い込んだ気がした。
おばさんの太っちょな身体や、おじさんのヒゲや、子供の無邪気さがとても愛おしく感じる。
スーツを着たビジネスマンに知的さを感じ、授業のテキストを睨みつけてる学生に頼もしさを感じたり、インディアンのおばちゃんの三つ編みに儚さを感じたり。
何気ない日常が胸に迫る。
みんな生きている。
ここも誰かのホームタウン
忘れてしまいたいことや
思い出せないことも
ごちゃ混ぜにして
生まれて来なければ
生きてこなければ
どこにもなかったのに
ホームタウン
今日のあがり、驚異の163ドル。
「あぴょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
「どうします!!何食べます!?何食べたいですか!!??ピンサロですか?!やっべええええ!!!!」
「ゴメン、俺風俗好きじゃない。」
「うん、僕も好きじゃないです。」
というわけでこの前見つけた路地裏のインドカレー屋さんへ。
マサラカレーが5ドル。
これマジ激美味い!!
ていうか晩飯5ドルとか贅沢しすぎ!!
「金丸さん、スウェーデンのお金、買いましょうか?」
「え!?マジで!?買ってくれるの?!」
「どうせ南米の後アフリカで、それからヨーロッパに行きますから。最悪スウェーデンまで行かなかったとしてもヨーロッパならほとんど値段変わらず換金できるでしょ。」
「ケータ…………帰ったら女の子紹介する!!」
こ、こ、こ、これで!!!
今日のあがりとユーロを売ったお金とスウェーデンクローナを130ドルで買ってもらったら、
つ、つ、ついに!!!!
1100ドルに到達!!!!
やったあああああああああ!!!!!!!
俺がんばったよおおおおおおおおおおお!!!!!!
毎日毎日歌ってキツかったよおおおおおお!!!!!!
ナオちゃん、ケータ君ありがとう!!
これで明日、ついにチケットが買える。
南米から脱出するためのチケット。
キト長かったあああああ…………
キトってそんなに長居する街じゃないからね…………
つーかチケット、値上がりしてなきゃいいけどな…………
もしこれで明日、「あー、割引きが終わってるねー、あと200ドル足りないねヨロシク」とか言われたらマジで旅行代理店の中でレイジングストーム繰り出すかもしれん。
明日、マジで勝負。
南米の命運が決まる。