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道が閉ざされていく

1月9日 木曜日
【エクアドル】 キト





ベッドの中で眠りながらも晴れてくれ晴れてくれと願い続けていた。

それが気になってあまり眠れないくらい。




そして目を覚ました。

すぐに体をひねって窓を見た。


photo:01




窓の外にあるはずの山は、今日も黒い雲に包まれて姿を隠していた。






ベッドにドサっと顔をうずめる。


も、もう嫌だ………

もう限界だ。

次の街に進みたい。
リマに行けばもしかしたら活路が見出せるかもしれない。

でももし稼げなかったら。


そして今泊まってるキトのヒッピーの溜まり場は宿代わずか3.5ドル。

これが7ドルも8ドルもしたら貯まるもんも貯まらない。



やっぱりキトしかないんだよ。

今、稼げる街で、宿代の安い状況で稼がないでいつ稼ぐ。


まるで営業マンが何度も断られてる取引先にしつこく出向くような、そんな感じでギターを持って宿を出た。





photo:02




濡れながらバス停に走る。

雨は止まない。

歌えない。

でも仕事場に行かないと。


往生際が悪くて結構。
ハナから諦めるよりマシだ。











旧市街のプラサグランデ駅に降りる。

雨は小雨で人は歩いているが、もう少し弱くなってくれないとギターは出せない。

憎たらしい雨雲を睨みつける。

真っ黒な雲がどんよりと街をおおっている。






しかし、しばらくしてからだった。

願いが通じたのか雨がハラハラと弱くなり、ついに止んだ。



今しかねえええあえ!!!!!!

音速でギターを取り出し濡れてるブロックにお構い無しに座って演奏開始!!!


前奏で4弦が切れる!!



オヒョオアオオオオオオオオオオオ!!!!!


昨日の3弦に引き続きまたもや同じパターン!!!

スーパーダッシュで昨日の楽器屋さんに飛び込み、弦を購入!!




スタープラチナ並みの精密で高速な動きで弦を張り替え、演奏再開いいいいいあいいあああああああああ!!!!!!!!

警察に止められるううううううううううう!!!!!!!!





ち、チクショウ、なんなんだよもう…………
どうにかして俺を歌わせないように仕組んでるとしか思えねぇよ………




でも諦めねぇぞ!!せっかくの貴重な雨が止んでいる時間をみすみす無駄にできるか!!

こちとらもう4日分も溜まりに溜まってるんだ!!!






場所を変えて目立たないとこでギターを構える。

弾き始めると隣のお店のおじちゃんが出てきて、いいねー!!と拍手してくれた。


お店の人たちを味方につけたぞ!!

これで無敵いいいいいいい!!!!







はいまた警察。


もう勘弁してくれよおおおおお!!!!!!


「プラサテアトロに行って。そこならやっていいから。」



この言葉、もう何回聞いただろう。

だからテアトロ広場は人があんまりいないからやっても意味がないんだよ………











photo:03




仕方なくやってきたテアトロ広場。

暇そうな人がパラパラいるくらいで稼げる雰囲気はない。

警察もたくさん立っている。



でもここならやっていいんだ。
止められることなく歌えるんなら、もうここでやってしまおう。

広場の1番目立つところで思い切り声を響かせた。





photo:04




人だかりが出来ては散って行き、また人だかりが集まる。

なかなか悪くないぞ。

向こうの方にはスタチューのパフォーマーがいるし、あっちのほうにはコミックなダンスで笑いをとっている兄ちゃん。



警察がここに押し込めるだけあって、この広場の中で複数のパフォーマーがしのぎを削っている。


何より警察に何も言われないことが嬉しくてたまらない。


お巡りさんが巡回してきてもドキドキしてうつむかないでいい。

堂々と歌ってられる。


お金の入りはボチボチだけど、それがたまらない解放感で自然と笑顔になって声もいつもより出る。


お昼のあがりは2時間半ほどやって36ドルになった。
悪くない。

プラサテアトロ、明日はここでガンガンやってやるぞ。











よーし、せっかく雨が止んでるんだ。
今日はまだ終わらんぞ!!とことんいってやる!!


この前、吉崎ふみ君とやってきた大フィーバーの通りロンダストリートに到着。

photo:05




相変わらずいい雰囲気出してるぜー。


photo:06








今夜はまだ木曜日なので人通りはそこまでないが、それでもここで3時間も頑張ったらきっと100ドルくらい行くはず。

photo:07




この前と同じポジションに陣取り早速ギターを構える…………




「ここでやったらダメだよ。」



警察登場。


いやああああ!!!
ちょ!!ちょっと待って!!お願い!!


ロンダストリートまで止められてしまったら、もうチケット代を稼ぐという道が完全に閉ざされてしまう!!

ここだけは簡単に引き下がれない!!


前回やった時は何も言われませんでした!!どうしてダメなんですか!!?とひたすら食い下がる。


しかし単語のつなぎ合わせのスペイン語じゃうまく訴えられないし、警察が何言ってるかもほとんどわからない。

わかることは、とにかく歌ったらダメの一点張りで取りつく島もなし。


なんでだよ!!ただの路上パフォーマンスやんか!!

その様子を見てた向かいのレストランの兄さんが声をかけてきて、うちの前でやればいいよと言ってくれる。

ウチのお店の前なんだからいいだろ?と警察にかけあってくれるが、やはり警察は首を横に振るのみ。



絶望とやりきれない怒りに地団駄を踏む。

ロンダストリートで出来ないとなると、キトで金を貯めるのはもう不可能。

昼間のテアトロ広場で1日40ドル毎日稼いだとして、750ドル作ろうと思ったらものすごい日にちが必要になる。

そんなんしてたらオーストラリアに飛ぶのは5月になってしまうよ………




諦めきれずに、通りから離れた寂しげな場所でギターケースを広げる。

人通りはほとんどない。

でもたまに通る人がポツポツとお金を入れてくれる。

前回の大フィーバーに比べたらあまりにも寂しい。




旧市街は夜になると人がいなくなって治安が悪くなる。

夜中の1人歩きはやっちゃいけない。



誰もいない道に歌を響かせていたが、時間が21時を過ぎてしまった。

まだここからトロリーバスで新市街へ戻り、さらに宿まで歩かないといけない。

これ以上遅くなるとヤバイと判断してギターをしまった。

夜のあがりはたったの27ドル。





たったのって言ってはいけない。
みんなの思いがこもった27ドル。


でもやっぱり、道が閉ざされた絶望感がずっしりと胸にのしかかった。

暗い夜道を足音を響かせながら宿に帰った。

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