12月1日 日曜日
【コスタリカ】 マナグア ~ シクサオーラ
朝イチ、ベッドの上で目を覚ました。
まだ時間は6時半。
やっぱりシャワー浴びてから寝ればよかった。
気持ち悪い。
さてー、中米最後の国境越えは国際バスにすることに決めたので、もうはっきり言って余裕ですね。
余裕すぎてヘソで茶がわきます。
なんせあとはティカバスのオフィスに行って往復チケット買うだけですからね。
お昼の便で出発して、夜を通して走って明日の朝にはパナマシティー。
ヨユーすぎるううううううう!!!!!!
あまりにも余裕だし、久しぶりのWi-Fiもあるのでここは一発ゆまちゃんに降臨してもらおうかなと思ったけど、佐山愛も捨てがたいな、いやここはイマジネーションオンリーで………
さて、行動開始は7時。
俺もやればできる。
ホステルの無料朝ごはんは8時からなので、ちょちょいとチケットを取ってから宿に戻って、お腹が爆発するまで詰め込んでシャワーを浴びてスッキリしてからバスに乗ろう。
ゆまちゃんは時間があったら降臨してもらおうかな。
街歩きもかねて、30分くらい歩いたところにあるティカバスのオフィスを目指す。
うん、表通りはとても綺麗で立派なビルも多いが、裏通りはいつもの中米の雰囲気だ。
ボロい建物が多く、ゴミだらけだけど、この時間からいたるところにお巡りさんが立っており睨みをきかせている。
治安維持に力を入れてるんだろうな。
こんないつもの中米の街だけど、やっぱり物価は高い。
ご飯食べようと思ったら最低で5ドルはする。
我慢我慢。
ホステルの無料朝ごはんが待っている。
中華街はどこにでもある。
しばらく歩いて裏通りにティカバスのターミナルを発見。
このサンホセには全てのバスが集合しているような複合のターミナルがなく、それぞれの会社がそれぞれのターミナルを持ってるって具合。
うんうん、綺麗なターミナルだね。
さすがは中米移動のメインの足、ティカバスさんだね。
さて、僕もとうとうティカさんに乗せていただきましょうか。
「え?パナマから出る航空券を持ってない?あー、ダメだね。航空券がないと入れてくれないよ。」
………………………………………
「で、でもバスで往復のチケットを買えばいいんじゃないですか?」
「ダメなんだ。航空券じゃないと受け付けてくれないんだよ。残念ながら。」
「わ、わかりました、なら今から航空券とります!!」
「うん、でもバスは今日も明日も満席だよ。バイバイ、早漏。」
こっ………!!!
えーっとわかった、別のバス会社に行ってみようか。
ティカさんは大手だからね。真面目だから強引な手は使わないんだろうね。
きっともっとラフに越えられるはずだよ。
そうだそうだ。
20分ほど急ぎ足で歩いて別の会社にやってきた。
「パナマシティーに行きたいんですけど席の空きはありますか?」
「あるわよー、アミーゴー。今日の便でいいわね?ニコニコ。」
「ああ、よかった。僕航空券持ってないので往復のチケットを下さい。」
「帰りやがれ。」
こっ………!!!
そこにいた英語の堪能な人におしえてもらったが、どうやってもパナマには出国の航空券を持っていないと入れないらしい。
う、嘘だろ……ちょっと待ってくれよ。だったらもう航空券買うしかねぇじゃねぇか。でもクレジットカードを持ってないから代理店を探し出してクソ高いやつを買わないといけないのか?それともダミーチケットを作るか?いやそんなのどうやって作るかわからない。それとももういっそのことパナマなんか行かないでこのニカラグアからコロンビアに飛んじまった方が安くつくんじゃねぇか?っていうか今日中にニカラグア出るとかもう無理だね。よし宿に帰ってゆまちゃんを降臨させよう。
ここまで0.2秒。
いやああああああああ!!!!!!
え!!どうすればいいの!!
えええ!!
航空券を手配してここから6時間先にある国境まで走ってコスタリカを脱出ってのを今日中にやらないと不法滞在いいい!!!!?
無理だあああああああああ!!!!!
ああああああああああ!!!
宿の無料朝ごはんの時間が終わってしまったああああ!!!!
ひもじいよおおおおおお!!!!
あ!!そ、そうだ!!
ユウコちゃん!!
アンティグアでいつも一緒に飲んでいたあの元弁護士のユウコちゃんが現在このサンホセに向かってるんだ!!
ユウコちゃんは10時半にサンホセに到着してそのままティカバスでパナマシティーに向かうって言ってた!!
旅を長くやってるユウコちゃんならダミーチケットの作り方とか知ってるかもしれない!!!
ああああ!!!!
しまった!!!!
シャワー浴びてない!!!
ドロドロのベトベト、汚れた服、ヒゲも生えてるし爪も黒いし、おまけに早漏だし、こんな状態で再会なんでカッコ悪すぎる!!
本当だったらパナマシティーでワイングラスでも持ってギターポロポロやりながら、いつ見ても素敵だねとか言ってカッコ良く再会してコロリと落としてやりたかったのに!!
しかししょうがないか………
ターミナルの中で待つ事、1時間。
11時前くらいに見慣れた小さな女の子バッグパッカーが建物に入ってきた。
「あー、フミ君久しぶりー。元気にしてたー?」
「ほへええええええええええ!!!ユウコちゃあああああんん!!!キスしてくれええええええええええ!!!!」
「え?!航空券がいるの!?よし!!ダミーチケット作ろう!!私のバスが1時間後に出るから急ごう!!1時間あればなんとかなるよ!!それでもしかしたらこのバスも直前でキャンセルが出るかもしれないから上手くいったら一緒に行こう!!」
「ほひいいいいいいい!!!!天使やああああああ!!!キスさせてくれええええええ!!!!」
このティカバスターミナルにはWi-Fiが飛んでいる!!
急いでパスワードを聞いて接続!!
接続できない!!
なんでだー!!調子悪い!!
「すみません、Wi-Fiが繋がらないので一度オフにしてまたオンにしてもらえませんか?」
「は?知らないわよ。なにそれ?Wi-Fiはあるわよ。」
「だから調子が悪いときは一度オフにしてすぐオンにしたら戻るんです。」
「だからWi-Fiのパスワードはこれよ。はいさようなら。」
「ダメだ!!話にならない!!ネットカフェ探そう!!」
ダッシュで外に飛び出すけどネットカフェなんてこの周辺にはないよー!!
バス発車まであと45分。
「あ!!あああ!!ユウコちゃん!!野良があった!!野良Wi-Fi見つけた!!」
「よし!!じゃあすぐに作ろう!!……これね!!これが航空会社のサイトね!!まずはアカウントを作成して!!早く!!」
「アカウント!!?なんだそれえええ!!!」
「いいから早くここに情報を入力して!!」
「ひいいいいいいいい!!!!……………これでいい!!?」
「OK!!じゃあ後は私がテキトーにコロンビア行きの予約フォーム作っとくから!!4日くらいの滞在でいいよね!?」
「うん!!4日くらいでお願い!!じゃあ俺ホテルに荷物取りに行ってくる!!」
ユウコちゃんを路上に残してダッシュでタクシーを拾う!!
バス発車まで30分。
「運転手さん!!僕スーパー急いでるんです!!ラピドってるんです!!ラピってください!!ポルファボール!!」
「おお!?なんだてめー急いでんのか!??おおおおおおおおおれにいいいいいいいいいい!!!任せとけええええええええええ!!!!!!!」
赤信号全無視で爆走するオッちゃんタクシー。
ちょ、そ、それは大丈夫なのかな………
おかげでソッコーでホテルに到着!!
受け付けの日本語が話せる兄ちゃんに10ドルを渡してダッシュでタクシーへ!!
「オッちゃん!!またスーパーラピドでティカバスに戻ってポルファボール!!」
「値段は10ドルになりまする。」
「こっ……!!もうちょっと安くしてちょんまげ。」
「あああーーん?」
「わかった!!冗談だって!!わかったからラピドしてポルファボール!!」
「うっひょおおおおお!!!!俺こういうの大好きいいい!!!」
赤信号オールシカトでティカバスに戻ってきた。
バス発車まであと10分。
ターミナルの中はすでに手続きを済ませた人々が列を作っており大混雑。
ユウコちゃん!!ユウコちゃんどこだ!!
「あ!!フミ君ー!!予約フォーム作っといたから!!Gmailに送られたはずだけど見た!?」
「見てない!!」
「じゃあ見てきて!!」
スーパーダッシュで表の野良Wi-Fi拾いに行ってGmailに届いているコロンビア行きの航空券予約フォームを受信!!
そして写真に収める!!
ダッシュでターミナルに戻る!!
あ!!ユウコちゃんがもめてる!!
「だから!!もう1人乗りたいの!!お願い!!」
「ダメだダメだ!!フルだって言ってるだろー!!座る席はねぇ!!」
「お願い!!床に座らせるから!!ゴミのように地べたに座らせるから!!席なくていいから!!今日行かないとダメなの!!」
「ダメだっつってんだろ!!早くお前だけ乗れ!!もう出発するぞ!!」
「フミ君ダメだ!!席ないみたい!!でもなんとかなるよ!!パナマシティーで待ってるから!!私もう行かないと!!じゃあね!!」
「あああああ!!!ユウコ!!ユウコオオオオオオ!!!!」
「てめーは来んな!!あっち行け!!」
「あああああ!!俺のユウコを連れて行かないでくれえええええ!!!!チューさせてくれえええええ!!!!!!」
バス発車。
終了。
燃えつきたゴミみたいにへたり込む。
あへへ…………
ど、どうすればいいんだろう…………
もうこのままどこにも行けずに不法滞在になってこの中米でトルティーヤ焼きながらバナナ作って暮らそうかな………
その2時間後。
俺が乗り込んだバスは、
何を血迷ったかカリブ海に向かうバス。
あ、あへへ………だってまだカリブ海見てないからさ…………
きっと綺麗なんだろうな、えへへへ…………
トチ狂ったわけではなく、一応考えました。
コスタリカとパナマの間には2つの国境がある。
ひとつは太平洋側の誰もが通る大きな道。
中米は太平洋側に機能が集中しており、カリブ海側はまったく手つかずのジャングル地帯で、その中にポツポツと小さな町がある。
このコスタリカもカリブ海側は何もないんだけど、その何もないところからパナマに抜けるスーパーマイナーな山奥の国境があるのだ。
太平洋側のメインの国境はきっと厳しい。
色んな奴が通るから係員も訓練されてるはず。
でもこっちの山奥の猿と馬くらいしか通らないような国境ならきっとチェックもゆるいはず。
あー?飛行機のチケット?なんだそれオラ知らねーだ?勝手に入れば?
くらいのもんだろう。多分。きっと。うん。
そして選んだのはその国境まで向かうローカルバス。
6時間で14ドル。
あああ…………国際バスで一気に向かうはずだったのに…………
結局最後までローカル地獄からは逃れられないみたいだ。
どマイナーな道なので最初からバスの乗客は少なく、途中途中で少しずつ人が降りて行く。
どんどん少なくなっていく。
でもバスには白人の観光客が何人か乗っている。
よし、1人の国境越えじゃないみたいだ。
他に観光客がいるなら心強い!!
外が真っ暗になり、バスは明かりのないジャングルの中を駆け抜けて行く。
そしてようやく小さな村に到着した。
お、なんだか明かりがたくさんついてる。観光客向けのオシャレなレストランやバーがたくさんあって白人観光客がうじゃうじゃいるじゃないか!!
南国ムード漂うリゾート地といった雰囲気!!
いいじゃんいいじゃん!!
これなら心強いよ!!
よーし、早速夜の国境越えとしけこみますか!!
「あ?ここまだ国境じゃないよ。早く乗って。」
バスに乗り込む。
白人観光客、全員降りちまった。
10人くらいのローカルのおばさんたちがじーっと俺を見ている。
オワッタ(´Д` )
やっぱりローカルすぎる(´Д` )
真っ暗な道をひた走るバス。
1人、また1人と人が降りていく。
そしてついにこのデカイバスの中に俺1人になってしまった。
俺1人のために走るバス。
静寂。
ど、どんな地の果てに連れて行かれるんですか…………
するとバスがいきなり道端で止まった。
運転手が話しかけてくる。
「どこに行きたいんだ?」
「あ、パナマです。」
「国境はもう閉まってる。17時で閉まるんだ。」
オワッタアアアアアアアアアア(´Д` )!!!!!!
不法滞在、確定。
「この先はホテルもない。そこの民家がホテルだからそこに泊まるか?」
見てみると、真っ暗な中にただの民家がある。
ヤマンバがいて包丁研いでそうな民家。
「い、いくらなんですか?」
「20ドルだ。」
「そうですか、先に進んで下さい。」
ヤマンバの棲家にそんな大金払えない。
知らんからな、みたいな顔をするドライバーのおじさんがまたアクセルをふかした。
国境には小さな村があった。
明かりがポツポツとついて、音楽が鳴っている。
若者たちがウロウロ歩いており、ヤバイ臭いが充満している。
どうしよう………
もう国境閉まってるだと?
もうここで朝を待つしかねぇじゃねぇか?
こんな治安の悪そうな山里で夜を越せるだろうか?
怖え。
とりあえずイミグレーションの方に行って、その辺でひたすら朝を待てばいいだろう。
てめーなんで滞在日数超えてんだ?って言われても、ゆうべ来たけど閉まってたんですって言えるし。
トボトボ歩いていると、なにやら向こうから音楽が聞こえてきた。
バンドの音が聞こえる。
音のするほうに行ってみると、小さな民家のガレージみたいなところでバンドが演奏をしていた。
リズムもチューニングもめっちゃくちゃで、音楽と言えるかも怪しいような演奏。
そしておじさんが何かを熱弁していた。
どうやらクリスチャンのミサのようだった。
このど田舎の山里、夜の片隅で村人たちが神を讃えて歌っていた。
それがまるで秘密の儀式みたいで、とても神秘的だった。
村人たちに混じって音楽を聴き、最後に寄付のカゴが回ってきたので、余っていたコスタリカのコインを全部入れた。
ミサが終わると村の人たちがみんな話しかけてきた。
みんなが抱きしめてくれる。
神はあなたを守ってるとジェスチャーしてくれる。
なんて言ってるかわからないけど、神父さんらしき人が日本人の友達をみなさんで迎えましょう、みたいなことを言ってくれた。
何が起きてるのかよくわからないけど、よくわからないことにも、もう慣れてきた。
すると村の長老みたいなヨボヨボのお婆さんが、ゆっくりと近づいてきた。
人々に手を借りながら。
そして彼女は口を開いた。
「私の名前はローラ・チャン。ニカラグアで生まれたの。母親が中国人で、アメリカに40年住んでいたわ。ここは危険なところよ。外で寝てはいけない。ウチに来なさい。」
驚いた。
なんてネイティブな英語だ。英語を頼りにしてる俺が逆に聞き取れないくらい。
この山里の長老がこんな英語を喋るなんて。
ローラお婆さんの家にやってきた。
この村の真ん中にある建物の2階に上がる。
「この部屋で寝なさい。明かりはライトを持ってるでしょ?床に敷くマットも持ってるはずよ。」
まるで俺のことを前から知っていたかのように俺を見透かし、導いてくれる。
しわくちゃの顔が、不気味なほどに様々なことを物語っている。
空き部屋の中にはなにもなかった。
埃まみれの床にはベッドもなにもない。
「明日は好きな時間に出ていきなさい。国境は7時に開くわ。それじゃあ。鍵をかけて、誰かが来ても開けてはいけないわよ。」
そしてローラお婆さんは奥の部屋に消えて行った。
床にマットを敷く。
そこにゴロンと横になった。
寝袋を出さなくても、暑くて仕方ないくらい。
何が起きてんだよ。
やっぱりローカル移動の道は思いがけない展開の連続だ。
ああ……それにしてもお腹空いた………
お昼にチキンひとかけらと小さなパンを食べただけ。
その前の日もパンとポテトチップスを1食だけ。
もういい加減何が食べないとまずいかな。
でもこれだけ不摂生をしてるってのに、不思議なことに体には力が漲っているんだよなぁ。
バッグの中には小さなパンがひとつとポテトチップスの残りがある。
これで多分1日動ける。
大丈夫、俺は不死身だ。
真っ暗な部屋の中、目をつぶった。
【中米ローカルバス南下】 6日目
★サンホセ~シクサオーラ国境
14ドル 6時間
小計 14ドル
合計 51.5ドル
国際バス 126ドル