11月9日 土曜日
【メキシコ】 パレンケ ~
【グアテマラ】 フローレス
よっしゃあああああああああ!!!!!!!
ついにメキシコ脱出ウウウリリイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!
「おい!!ケータ!!!てめー分かってんのか!!旅なめんなよこの野郎!!!」
「はい!!舐めちょらんです!!旅舐めちょらんです!!」
「よーし、じゃあ今日の国境越えのルートを言ってみろこのチンカス野郎!!!」
「すみません!!!全然わからないです!!!!」
「ぬわぁぁあああんんだとこの野郎!!てめーそれでも宮崎県民かこのフニャチン野郎!!そんなんで小村寿太郎先生に顔向けできると思………」
「ここパレンケからコレクティーボで行ける国境はふたつで北のエルセイボと南のコロサルという場所からのグアテマラ入国となります。エルセイボは自力で行く方のルートで、コロサルはツアー会社が全ての移動手段を手配してくれるルートになりますが、あくまでどちからでも自力による国境越えが可能となっています。」
「え、なに、やだ………」
「どちらも深い密林の中を突破していくというかなり過酷なルートになりますが、その冒険度がより高いのはコロサルルートで、ジャングルの中の川をボロボロの渡し舟でグアテマラに渡るというレベルの高い道のりです。さらにすべてのバスや舟が地元の方達の日常的な交通手段なのでそこに紛れ込まないといけなく、もちろん外国人なので2倍3倍のボッタクリが普通、国境のカスタムも外国人なんてほとんど来ない場所なので田舎警察が平気で嘘の入国税などを要求してきたり、すべてにおいて高レベルの値段交渉技術が要求されるという旅人の真価を発揮するのにもってこいの国境越えとなります。」
「え、あ、なんかゴメン………」
「金丸さん、旅なめんな!!」
「そうだそうだ!!旅舐めたらいかんだぎゃー。」
う、く、くそぅ………
俺だってこれまで1年以上、日本もあわせたら10年以上様々なところを旅してきた男なんだぞ………!!
最年長だし、ここはカッコイイとこ見せて、愛知出身のナオコちゃんのきしめんにウイロウを天むすして長島スパーランドを…………
「長島スパーランドはギリギリ三重だぎゃー。」
はい、というわけで張り切って宿を出発してコロサル行きのコレクティーボ乗り場に向かうと、乗り場が見えてきた瞬間、ものすごい数の兄ちゃんたちが猛ダッシュで走ってきて、コロサルコロサル!!コレクティーボ!!タコスタコスウギャアアアアーーー!!!と叫んできます。
あああ………うるさいよ………
…なんでこの人たちは何も言ってないのに俺の荷物を勝手に持って行こうとするんだろう………
「コロサルコロサル!!コロサルウウウウウ!!!」
「コレクティーボタコス!!サボテンサボテンコレクティーボ!!!」
「ァァァ!!コレクティーボオオオオオオオオオ!!!!!」
うっせぇ!!荷物を触るな!!腕を掴むな!!顔を近づけてくるな!!
暑苦しすぎる!!
「よーし!!わかった!!ナンボだ!!ナンボだ!!」
「100ペソだよ!!100ペソ!!」
「うちが100だこの野郎!!」
「はいはい、50ペソね。50ペソで決まりね。」
「50ペソ!!うっひょおおおおおおううううう!!!50ペソで乗ってくださいませええええええええ!!!!!」
「さ!!こっちだよ!!50ペソでコロサルまで乗ってください!!!」
よし、なかなか順調な出だしだなと思いつつ、そいつらに先導されて道路を渡ろうとした瞬間、やってきた車にキャリーバッグが轢かれてキャリーバッグ惨殺。
メキメキメキ!!!!
ベキ!!バギ!!ガリガリガリ!!!
終了。
ロサンゼルスで買ったキャリーバッグ、天に召される。
「…………お、おほへ……な、何を……しくさり………ほひ………」
あまりの状況に呆然としていると、バッグをタイヤと地面に挟んで引きずっていた車、平然とした顔でバッグをかわしてブーンと走り去っていった。
「おほへ………ちょ……な、なんで………ちょっと……ちょっと待ってよ…………」
「コレクティーボ!!コレクティーボタコス!!!」
「サボテンサボテン!!コロサル!!グアテマラ国境!!サボテン!!」
「サボテンタコスコレクティーボおおおおおおおお!!!!!」
放心してる俺の顔にチューする勢いで顔を近づけて相変わらず叫んでくるボケども。
あ、もうダメ。
「タコスタコス!!コロサルコレクティーボ!!」
「コロサルコロサル!!国境おあおおお!!!!」
「…………ぉぉぉぉおおおおおお前らウルセエんだよオラアアアア!!!!!黙れボケどもがあああああ!!!!!」
怒鳴り散らすと、急にシュンとなって散って行く客引きたち。
ハァハァ…………
いい加減にしろよこのクソ野郎どもがー………
はっ!!
横で哀れなものを見るような目をしてるケータ君とナオコちゃん。
「金丸さん、怒ったらダメだぎゃー。」
「金丸さん、こんくらいで怒っちょったらアジアはやっていけんとよー。」
ほ、ほへ……た、旅の先輩としての威信を………
そ、そうだよね!!これくらいで怒ったらダメだよね!!うん!!全然キレたりしてないよ!!キレてないですよ!!俺キレさせたら大したもんだよ。
長州小力で巧みに場を和ませようと思ったけどあまりにも古いので気を取り直してコレクティーボ乗り場に行き、颯爽とお金を払おうとしたら、は?50ペソ?80ペソだよ?なめてんの?と言われる。
クソっ!!
さっきの客引き連中を見ると、鼻ほじりながら素知らぬ顔をしてる。
あああ………楽しいなぁ………旅楽しいなぁ………
メキシコ最後にリアルルチャリブレを自分が演じることになるとはなぁ、てんめぇぶっ殺してやる!!!
「ポルファーボールー、お願いだよー。もう少しまけてよー。ホラー、そんな固い顔しないでさー。ホラホラ!!アハハハー。」
柔らかな雰囲気でメキシコ人と肩を組んで仲良くなってほのぼのと値引き交渉をしているケータ君。
こ、こいつやりやがる………
さすがはアジアをバイクで旅してきた男。
心が広い………
「金丸さん、無理ですねー。70ペソだと途中どこかに止まるコレクティーボで、80ペソだとダイレクトで行くみたいです。どうします?」
ちゃ、ちゃんと年長者の意見を尊重するところなんて人間できてやがる………
それに比べて俺ときたら………
ありがとうケータ君、君といると勉強させてもらってばかりだよ。
もう少し俺も心を広くしないと………
さ、さぁコレクティーボに乗ろうか!!
80ペソのコロサルまでのダイレクトバンに乗り込む。610円。
バンはジャングルの中を駆け抜けて行く。
ものすごいスピードでかっ飛んでいくので、少しの凹凸で天井に頭を打ちつけるくらい跳ねる。
そしてスピードバンプも多いので、否応なしに揺さぶられ眠ることは出来ない。
周りには21世紀とはとても思えない弥生時代みたいな草葺の家屋が、南国の植物の間に見え隠れする。
こんなとこに暮らしてんのか……と思えば、小さな子供たちが元気に裸足で駆け回っている。
そして車がスピードバンプで速度を落とすたびに、それらの集落から人々が出てきて、フルーツやお菓子を持って車に群がってくる。
「カンボジアとかのアジアはずっとこんな感じですよ。」
世界は広いなぁ。
きらびやかな直線や平面に覆い尽くされた先進国があれば、マクドナルドってなんですか?みたいな人たちももちろんいる。
そんなジャングルの中を突っ走ること3時間。
バンは舗装されていない、土の地面の集落に入った。
ほ、ほぅ………江戸時代ですか……?
なんか見たことない鳥とかその辺歩いてる。
なんだこの鳥、怖えな。
そしたらやってきた車がその鳥を踏んづけて走っていった。
ピクピクなってる変な鳥。
怖えこの村(´Д` )
早く次の移動するぞ。
まずはこの村のバス停から船乗り場の川まで行かないといけない。
そしてもちろん川を越える前にメキシコのカスタムでパスポートにスタンプをもらわないといけない。
早速待ち構えていたボロボロのタクシーにイミグレシオン?と尋ねると、60ペソだと言う。
もちろんそんなにしない。
値切って45ペソに。340円。
結構遠いのかと思ったら速攻で到着。
多分歩いて20分てとこかな。
ただ道が未舗装で石ボッコボコなので、頑張れる人は歩きましょう。
この公民館みたいな建物でパスポートチェック。
公民館のやる気のない管理人みたいなオッさんに出国税で295ペソを払うと一瞬でスタンプを押してくれます。
2250円。
ここでこのメキシコの出入国税に関してだけど、色んな話が飛び交います。
僕やケータ君はアメリカから陸路で入ってきました。
この時国境で25ドル払っています。
しかし飛行機で空路入国をした人は払っていません。
なんだそれ?!って思うけど、飛行機のチケット代にすでにその25ドルが含まれているという噂もあります。
そして出国でも払わなければいけません。
これは必ずみたいです。どっちもとられるのメキシコが初めてだ。
さて、次はついに渡し舟によるグアテマラ入国のミッションになるんだけど、すでにイミグレーションの前でタクシーを降りた時からパスポートチェックをしている間もずっとオッさんが船乗ってけれー、船乗ってけれーと横でつぶやいています。
彼の言い値は40ペソ。これでグアテマラ側の岸まで行くとのこと。
まぁいきなりそんなことは信じず、まずは船乗り場まで行きましょう。
イミグレーションから歩いて5分くらいで川岸に着きます。
するとそこには何艘もの船があり、暇そうなオッさんたちがくっちゃべっています。
泥がぬかるんで足元ズルズルのべちゃべちゃです。
完全にランボーファイナルでゲリラに襲われるパターンの場所です。
地元民しか利用しないような激コアな場所。
早速オッさんたちと交渉開始です。
さて、ここで選択肢はふたつ。
まずひとつがすぐ目の前の対岸に渡るコース。
40ペソ。300円。値切れば20ペソ。
すぐ見えている向こう岸に渡り、待ち構えてるバスに乗り、グアテマラ側のイミグレーションに寄ってもらいつつ、フロレスまで行きます。
このバスが100ペソ。800円。
もうひとつが、30分ほど上流にある船着き場まで行くコース。
イミグレーションがある村です。
船代100ペソ。800円。
ここからもバスはあるみたいだけど、値段は不明。おそらく少しフロレスに近づくのでちょっとは安くなるはず。
これを元に交渉をしていく。
でももうこれに乗らないとどうにもなんないですからね。船頭側が有利であることは明らか。
「すぐ対岸のとこからのフロレス行きバスは15時で終わってるからもう明日しかないよ。」
多分嘘です。
ちなみに全てスペイン語なので、交渉も大変です。
ここでかなりごねます。
対岸までは20ペソで行くという人もいたんだけど、船頭が集まってきて何やらスペイン語で話していたら40ペソになりました。
彼らに相談させたらダメだね。
交渉はスピード勝負だなぁ。
そしたらビール飲みながら船を運転してきた泥酔したオッさんが絡んできます。
いい顔してます。
飲み終わったビールの缶をポイと川に捨てたらナオコちゃんがめちゃ怒りました。
まぁこんな田舎の人たちに環境美化の精神なんてあるわけない。
もうここでいくら値下げをしてもらちはあかない。
乗らないと向こうに行けないんだもん。
というわけで1人100ペソを90ペソ、700円にしてもらって、イミグレーションがある村まで行ってもらうことに。
船はエンジンをブンブン言わせながら、真っ茶色に濁った川をのぼっていく。
ほんの小さな船なので、手を少し伸ばせば水面に触れらる高さ。
周りにはどこまでもジャングルが広がっており、時たま人が岸で何かをしているのが見える。
余裕でゲリラが出てきて拉致されそうなほど周りにはジャングル以外なにもない。
これが旅という、そんなとてつもない冒険をしているような気分にさせてくれる。
ちなみにワニはいなかった。
多分ピラニアもいない。
30分経ち、船は岸の土の上にグインと乗り上げた。到着。
そして荷物をかついで坂を登って行くと、数軒の建物がある。
またあの気持ち悪い変な鳥がウロウロしている。
結構たくさんの人たちがおしゃべりしている。
テレビでしか見たことのないジャングルの中の人々。
ここでまた交渉開始。
この船着き場からフロレスまでは4時間の距離。
あのバスで行くのよーって指差したほうを見ると、スクラップのバスがあるなーと思っていたそのバス。
マジで動くのかよこれ?
値段は100ペソ。
え?おいおい、それじゃあさっきの岸から20ペソで渡ったすぐ対岸のとこから出てるバスと値段が変わらない。
ミスった。
さらに俺たちはグアテマラのお金、ケツァールを持っていない。
ここである程度換金しないといけない。
がこんなとこのレートが良いわけない。
聞いてみると、1ペソが0.5ケツァール。
正規レートは1ペソ0.6ケツァール。
んんん………悪い。
ドルだったらレートが良いらしく、1ドルが7.5ケツァール。銀行だったら7.65くらいらしい。正規だと7.9くらい。そこまで悪くない。
が、これからの南米に向けてドルはあまり減らしたくないところ。
みんなで相談して悩んだ結果、ペソで換金することに。
そしてフロレスまで80ケツァール、1000円というところを、ナオコちゃんの値下げ交渉により65ケツァール、820円で行くことに。
客待ちをするからもう少し待っててなと言われ、17時まで待ち、結局この大きなバスにたった5人を乗せたバスは出発。
笑えるくらいハイパーボロなバスは、未舗装のマジで笑えるくらいハイパージャングルの中の一本道をガタガタとゆっくり走っていく。
マジでなんもない。
冒険すぎる。
そしてバスはこの建物の前に止まった。
これがグアテマラのイミグレーションだ。
ここで注意すること。
グアテマラでは入国税はかからないとの情報なんだけど、たまに10~15ドルの嘘入国税を請求されてしまうケースがある。
完全に警察のポケットに入る賄賂だ。
請求された場合、払ったほうがいいと思う。
ここで断固拒否してモメてどっかに連れていかれたり、時間がかかったことでバスに置いていかれたりしたら、こんなジャングルの中で途方に暮れるしかなくなる。
後の人のためにも、毅然と断るのも大事なことだけどね。
しかし俺たちの対応をしてくれたのは、ただの駄菓子屋のおばさんみたいな私服の女性。
近所のおばちゃん丸出しみたいな人だったので、パスポート見せてスタンプ捺してもらって2秒で終了。
そしてバスに走って戻り飛び乗れば、後はまたどこか懐かしいガタゴト道のド田舎をのんびり走って、フロレスまで一直線だ。
4時間。
未舗装道路は2時間くらいで、アスファルトの道に出てからは一気にスピードが上がり、夜の21時にバスはフロレスに到着した。
グアテマラの北部、広大なジャングルが広がる中にポツンとある小さな町だけど、ここが北部の拠点となる町だ。
そして北部にはグアテマラ最大の観光地、ティカル遺跡がある。
ティカルを見たら一気に南に下って、そしてパナマに向かってかっ飛ばすぞ。
「こんばんは、セニョールセニョリータ。フロレス島まで行かれるのですか?それでしたら私めがタクシーで60ケツァールでお連れいたしますが。」
「20ケツァールね。」
「20ケツァール!!いやっほう!!さぁどうぞどうぞ!!」
2秒で3分の1の値段になるグアテマラのタクシー^_^
20ケツァール、250円。
このフロレスもまた美しい湖がある観光地となっており、湖に浮かぶ小さな島、フロレス島にはレストランやバー、お土産物屋さんたくさんあるとのこと。
フロレス島から見る夕日はなかなかの美しさなんだそうだ。
タクシーは町から飛び出した橋に乗り、湖の上を走ってフロレス島に上陸。
民家が入り組んだ、ただのひなびた漁村といった雰囲気のフロレス島。
そしてタクシーは宿の前に到着。
ドナゴヤという安宿。
ドミトリー35ケツァール、430円。
メキシコより下がったな。
Wi-Fiはあるけどキッチンはナシ。
ここに決定かな。
そして晩ご飯へ。今日1日、朝買った小さなパンしか食べていない。
雨の中、レストランか何かを探して歩いていると、地元の人で賑わうバーを見つけた。
このデカイ1リットルの瓶が10ケツァール。120円。
そして巨大なチキンブリトー2本入りが20ケツァール。240円。
グアテマラ安ぃ!!!!
メキシコの半分くらいじゃねぇか!!
外の雨は勢いを増したり、突然止んだりと不安定にもほどがある天気。
ここは今だジャングルの中。湿気でおでこに髪がはりつく。
そんな中、ビールのグラスを傾ける。
冷えたビールがすぐにぬるくなってしまうほど夜風が暖かい。
いやー、長い1日だった………
普通にもっとちゃんとした道路を使って行けば、ホテルまで迎えにきてくれたバスがグアテマラのホテルの前まで連れて行ってくれるというサービス。
もちろん道も舗装されているよ。
あんなバッグをまず轢き殺されるところから始まって、常にウソやボッタクリの戦いを繰り広げて、インディージョーンズみたいな川越えとジャングル突破なんてわけのわからないことをしなくても、あっさりグアテマラには行ける。
辛かったー………
でも…………
面白かった。