10月5日 土曜日
【メキシコ】 エンセナダ
金丸文武の世界放浪日記。
旅も1年と3ヶ月が経過し、残すところ南米大陸とオセアニア、そして東南アジアを残すところです。
油っこいところが残ってますが、おかげさまでたくさんの方に日記を読んでいただき、これまでやってきました。
みなさん、ランキング投票のクリックやコメント、いつも本当にありがとうございます。
みなさんの暖かい応援のおかげもあり、これまで旅を続けてこられています。
そんな放浪日記ですが、最近この人にブログを乗っ取られつつあります。
「おんどれ、B動詞は2種類あるゆーとるやんけコラ?」
B動詞とか中学生以来ですよ、聞いたの。
「これくらい覚えられへんかったら南米やってけへんでー。龍馬はんが泣くでー。」
なんでも凝り性なジェニファーさん。
好きなことにはとことんのめり込む人で、幕末にハマってからは、週に3回のペースで八尾から龍馬の墓に通っていたらしい。
ついこの間も萩に行って、高杉晋作の家で我を失って家の人に嫌な目で見られたらしい。
この前の大河ドラマの龍馬伝で高杉晋作があまりにもカッコよすぎて大変なことになっていたそう。
「大変なことってどんなんですか?」
「えぇー?それはちょっと人には言われへんでー。ウフフ………」
ジェニファーさんがあまりにも変なことを言うので、ネットで龍馬伝の高杉晋作のところを見てみる。
うん、これはカッコいい。
着流しで三味線弾きながら戦場を歩く姿。
儚くて苛烈な人生。
高杉晋作は龍馬に並ぶ、男たちの憧れ。
「いやー、これはカッコいいですね。」
「せやろせやろ!!あー、たまらんでー!!」
「僕ちょっと高杉晋作みたいじゃないですか?ギター弾くし。」
「あ?ホンマしまいにはしばかれんで?鏡見たことあんのかいや。ほら、こんばんはは何や?」
「ブエノスノーチェ。」
「ブエノスやなくてブエナスゆーとるやろが!!何回ゆーたらわかんねん!!次ブエナスゆーたらペンで刺したるからな。」
ブログ上ではこんな冷血な人みたいに書いてますが、実は甘えん坊な可愛い人でもあります。
最初は気が合わなかったらどうなるかなってビビりまくってましたが、そんな心配一切することなく、とてもリラックスして何の気も使うことなく自然体でいさせてくれます。
これもコミュニケーションの達人の成せる技なのかな。
そんなジェニファーさんとの別れも、もうあと数日後に迫っている。
月曜日になったら俺たちは国境の町、ティファナに戻り、そこからジェニファーさんはロサンゼルスへ、俺はバスに乗ってメヒカリという町を目指す。
最初の予定からしたらずいぶん変わりまくってるけど、1日たりとも退屈な日はなかった。
こんな面白い人と一緒にいるんだ。
ジェニファーさんといて刺激的にならないほうがおかしい。
これからまた1人で南下。
気分を切り替えていかないとな。
と、その前に残りの週末2日間を楽しみ尽くさないと。
今日は土曜日。
町は最高の天気で、太陽がギラギラと輝く中をものすごくたくさんの白人たちが歩き回っている。
みんな話している言葉は英語だ。
このエンセナダは、アメリカのカリフォルニアからやってくるビルみたいな超大型の豪華客船が寄港する場所で、船がやって来る日にはそれはそれは町が活気に溢れる。
町の人たちの稼ぎ時ってわけだ。
通りには無数のお土産物屋さんがここぞとばかりに露店を出し、物売りの人たちも一生懸命、観光客たちに声をかけて回っている。
物乞いをしてるインディアンのおばちゃんたちも今日ばかりは出張っており、中には小さな子供がお菓子を売っている姿も。
こんなパフォーマーも。
「なんやねん、これもう、お笑い芸人しかおれへんやんけ!!」
「シャツの襟を立てたらアカン!!首がないのに立てたらアカン!!耳くらいまで埋まっとるやんけ!!ハァーハァー………もう死んでまうわ………」
ひたすら爆笑してるジェニファーさん。
そこに物売りのおじさんがやってきて、何かをジェニファーさんに差し出す。
棒の先っぽに小さな手みたいなものが取り付けられた謎の物体。
可愛らしいズングリしたおじさんがその小さな手のくっついた謎の棒を差し出してくる姿があまりにもシュールすぎて、転げ回るほど爆笑してるジェニファーさん。
「あ、あ、あ、ハァーハァー……あれなんやねん。なんで手がついとんねん……ハァーハァー、しかも色違いがいっぱいあるし……死んでまうわ。」
涙流して顔を赤くしてるジェニファーさん。
ほんと大阪人は何か面白いものを見つけたり、それに笑いを見出すのが好きな人たちだわ。
俺1人じゃ絶対そこまで笑えんよ。
後から聞いたら謎の棒は孫の手でした^_^
さて!!!そんなアメリカ人だらけの大賑わいの町で歌うぞオラアアアアアアア!!!!!!
渋くレットイットビーを歌う。
誰1人マスクのことに触れてくれません。
あ、あれおかしいな……爆笑で人だかりができる予定だったのに………
まったくお金が入らないので、そっとマスクを脱ぎました。
素顔で歌えば、キチンとお金が入り始める。
ふざけてはいけませんね。
で、でも路上でルチャリブレがレットイットビー歌ってたら面白いと思ったんだけどなぁ。
場所を変えたりしながら、今日は昼から夜までガンガン歌った。
明日ドライブに行きましょう、って地元のご家族に誘っていただいたり、いろんな差し入れをもらったり。
1人の物静かなギター弾きが俺の前にやってきて突如弾き始めたので、どんなイカしたスパニッシュを聞かせてくれるのかなと、ドキドキしていたら、いきなりXのエンドレスレインを熱唱し始めます。
これがメキシコです。
頼むからこれ以上笑い死にさせようとしないでくれ!!メキシカン!!
なんなんだよ、このマーク。
これステッカーだからね。
どこに貼れってんだ!!
昼間はあまり足を止めてくれないが、夜になってムードが出てくると、だんだんと人だかりが出来始める。
調子良く歌っていると、見覚えのある顔がやってきた。
「オラー、フミサン。こんばんは。」
これまで何度も俺たちに会いにきてくれた日系のメキシコ人であるダイスケが、今日もまた俺たちを探しに来てくれた。
しかも可愛らしい彼女まで連れて!!
照れ屋さんな2人はモジモジしているけど、それが可愛らしくてたまらない。
今日のあがりは11ドルと132ペソ。
計320ペソ。
路上を切り上げて、昨日のスピリットカフェへ。
日本のテレビゲームが大好きだというダイスケ。
日本の漫画が大好きなイズミちゃん。
こうした日本のオタク文化にハマっている外国人の若者は世界中にいるけども、メキシコでのその割合の多さにはビックリする。
今日だけで日本語の挨拶ができる若者に5人以上会っている。
映画館ではドラゴンボールZも絶賛上映中だ。
そんな2人と日本の話で盛り上がっていると、また誰かが声をかけてきた。
「フミさーん!!ジェニファーさーん!!会いたかったですー!!」
テンションの高いこの元気な声は、エンセナダ最初の路上の日に仲良くなって夜中まで飲んだエドガルだ。
こいつもまた自慢の彼女をつれてきて会いに来てくれた。
「フミ、ちょっと何曲か歌って。」
カフェのサンディーがそう言ってくれ、お店の真ん中で歌わせてもらった。
木の店内は天井が高く、音が気持ちよく響いて、生音でリラックスして歌うに最高だった。
みんなゆったりと、気持ち良く聞いてくれている。
ジェニファーさんはやっぱり同性愛者のサンディーに体を触られまくっているが、同性愛者の相手はジェニファーさんも慣れたものみたいで、うまくかわしている。
スピリットカフェの気持ちいい空間でいい友達たちに囲まれていると、もう明後日にエンセナダを出るということが寂しくてたまらなくなった。
根を張ってしまう前に、早く先に進まないと。
ジェニファーさんとの別れにしても。
気が合う、というのは人だけでなく、土地にもあてはまるものだよな。